【沖縄】翁長知事国連演説訴訟・台湾人日本兵戦後補償請求訴訟(1)
最近観た動画の覚え書きです。
故翁長雄志前知事が2015年9月に国連人権理事会で、本来、県知事としてはその資格がないにも関わらずスピーチをした際に発生した費用を公費から支出しました。
それを違法として住民訴訟を起こしましたが、一審では「却下」(「棄却」と異なり、要件を満たしていないということで門前払いのようなもの)、それを不服として控訴していたところ、今月9日に「棄却」という判断がなされました。
原告団は更に不服として最高裁に上告するとのことです。
【沖縄の声】特番!翁長知事国連演説訴訟~原告の請求棄却で敗訴 最高裁に上告へ~[H31/5/10]
令和元年5月10日金曜日の『沖縄の声』。故翁長雄志前知事が2015年に国連人権理事会に出席した際に関係者の経費を公費から支出したのは違法として返還を求めた住民訴訟。今月9日に福岡高等裁判所那覇支部で判決が言い渡され、裁判長は控訴を棄却とした。本日は、ゲストに徳永信一氏をお招きし、裁判の判決およびに今後の対応について解説いただきます。
出演: 江崎 孝(沖縄支局担当キャスター)
ゲスト: 徳永 信一(弁護士)
この裁判の件は何度か当ブログでも経緯を取り上げていますが、今回の「棄却」は地裁での「却下」と異なり、一応、内容を判断してのものです。
しかし、高裁ではその理由は詳しく述べず、「一審同様の理由」(住民監査請求が行われるのが遅すぎた。つまり時効のようなもの)という旨の説明しかなかったそうです。
以下にこの裁判の要点を整理してみます。
Ⅰ 公費不正支出問題
- 2015年9月に翁長県知事がNGOと共にジュネーブに行き、「沖縄に基地の負担を押しつけるのは沖縄県民の『自己決定権』を蔑ろにするものだ」とスピーチ。
- 本来、自治体の長の立場ではスピーチできないルール(ここで発言できるのはNGOのような非政府組織のみ)。にも関わらず、随行員などを含めた旅費を公費から支出した。
- しかし、一般の県民がそのような事実(ルール)を知るよしもなく、そのことに気付いたのは産経新聞のスクープ記事であり、住民監査請求の時効(2年)は、スピーチあるいは支出時ではなく、事実を知った時点を起算日とすべきだ、というのが原告側の主張。
Ⅱ 翁長氏の発言内容や沖縄メディアの問題-蔑ろにされた住民の『知る権利』
- 「沖縄に基地の負担を押しつけるのは沖縄県民の『自己決定権』を蔑ろにするものだ」という発言(原文は英語)は正しく訳せば、「沖縄人の『民族自決権』を蔑ろにするものだ」(Okinawans’ right to self-determination is being neglected.)であり、国連の場でこの言葉は「少数民族の民族自決権」を主張するもの。即ち、『琉球独立』論に立つ発言である。
- しかし、同行していた沖縄メディアは示し合わせたように「自己決定権」と報道。
- また、翁長氏に枠を与えたNGOとは「市民外交センター」(代表・上村英明恵泉女学園大教授)であり、日頃から、『琉球独立』論を煽っている団体である。
翁長知事が「私人」としてジュネーブに行ったとしたら、その費用を公費から支出すべきではなく、また、公費で参加した理由を「県知事の立場」とするならば、一首長(いち・くびちょう) が勝手にこのような発言をすることが許されるべきではありません。
しかも、ジュネーブに発つ前に警戒した自民党県議から「慎重に発言を」と釘を刺されていたのです。
また、自分のスピーチを世界151カ国の大使などに勝手にばらまいてもいたようです。(全文は読めませんが、番組のキャプチャを提示します。)
番組では、裁判の行方についてはやや悲観的な見方のような印象を受けましたが、一方、孔子廟裁判なども通じて世の中に故翁長知事の失政を知らしめることに意義があるということも仰っていました。そのために、微力ながら当ブログでも以前からこの裁判を注視してブログに記録しています。
なお、このエントリーのタイトルにある「台湾人日本兵戦後補償請求訴訟」は雑談のように番組の終盤に言及されたのですが、こちらも重要なので別エントリーとして記録しておこうと思います。
以下、補足です。
『自己決定権』という言葉
沖縄関連で『自己決定権』という言葉が使われるのは翁長知事のスピーチが最初ではありません。
「琉球独立」運動のキーワードとして以前から使われています。
琉球の魂 取り戻す 沖縄出身研究者ら 祖先の足どりたどる
2017年7月16日 東京新聞
沖縄でかつて本土から差別された祖先の琉球人の足跡を探る動きがある。戦前に本土の人類学者により地元の墳墓から持ち出された遺骨の返還要求と、明治の琉球処分(琉球併合)時に琉球王国の救国を訴え、宗主国の清国(中国)に亡命し、北京で死亡した琉球人の墓の保存運動だ。沖縄出身、在住の研究者らが主体。今なお続く差別的な状況の中で、沖縄が本来持っている「自己決定権」を取り戻す運動の一つでもある。 (白鳥龍也)
上は以前のエントリー『【沖縄】『自己決定権回復運動』とはなにか【虎ノ門ニュース(2017/11/28)】』に引用した東京新聞の記事です。
産経:国連演説の翁長知事を提訴へ 沖縄の有志 資格外で「公費返還を」(2017.11.19)
住民訴訟を起こしたときの産経の記事。
この記事のライターは不明ですが、住民が翁長県知事の公費不正支出に気付いたのは、高木記者が国連でのスピーチ資格を外務省に問い合わせて知り、スクープしたもので、そうした経緯が書かれています。また、翁長氏に「枠」を与えたのはNGOの「市民外交センター」(代表・上村英明恵泉女学園大教授)で、後述しますが、この団体は北海道と沖縄で「アイヌ問題」と「琉球独立」運動を繰り広げています。
なお、上村氏がいる恵泉女学園大学と言えば、よくテレビの韓国問題で出演する李泳采(イ・ヨンチェ)教授もまた恵泉女学園大学。そういう大学なのでしょうか。
https://www.sankei.com/politics/news/171119/plt1711190004-n1.html
2017.11.19 07:42更新
国連演説の翁長知事を提訴へ 沖縄の有志 資格外で「公費返還を」翁長雄志(おながたけし)沖縄県知事が平成27年9月21日にスイス・ジュネーブの国連人権理事会で、参加資格がない「県知事」の立場で演説を行いながら公務としたのは不当だとして、県民有志でつくる「沖縄県政の刷新を求める会」(江崎孝代表)のメンバー5人が21日、公費から支出された約96万円(渡航・宿泊費、日当など)の県への返還を求めて翁長氏を那覇地裁に提訴することが分かった。
5人は10月13日、地方自治法に基づき、県監査委員に住民監査請求を行った。しかし同27日に「1年以内の請求期限を経過した不適当な請求」などとして却下されたため、住民訴訟に踏み切ることにした。
国連人権理演説で翁長氏は、沖縄に米軍基地が集中する現状を強調し「(沖縄の)人々は自己決定権や人権をないがしろにされている。あらゆる手段で新基地建設を止める覚悟だ」などと述べ、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設阻止への決意を示した。
「辺野古移設阻止」を掲げる翁長氏には国際世論に直接訴えかけ、移設をめぐり対立する日本政府を牽制する狙いがあったようだ。
外務省によると日本の首長が国連人権理で演説するのは初めてだが、翁長氏には県知事として演説する資格がなかった。規定で演説が認められるのは(1)非理事国政府代表者(2)国際機関代表者(3)国連経済社会理事会に認められた協議資格を有するNGO-の3者に限定されているためだという。
翁長氏は、(3)に当たるNGO「市民外交センター」(代表・上村英明恵泉女学園大教授)に発言枠を譲り受けた。同センターは、沖縄県民を先住民に認定させる運動を展開している。
加えて県関係者によれば、民間団体「沖縄『建白書』を実現し未来を拓く島ぐるみ会議」がNGOとの調整に動き、翁長氏の「ジュネーブ外遊」に関しては県側はほぼ蚊帳の外に置かれていたという。
原告団関係者は「演説での翁長氏の身分はNGOの一員にすぎず、費用はNGOが負担するか、個人で賄うべきだった。民間団体の国際世論工作に血税で加担し、結果的にNGOに公金を横流した形だ」と指摘する。また「沖縄独立」志向をにじませた演説内容も「日本国民の歴史的民族学的見地とは相容れない。県民を愚弄している」と批判している。
産経新聞が8月、県に公文書公開請求したところ、ジュネーブに同行した知事秘書と通訳の経費も公費から計約131万円支出されていた。原告団は今後、これらの返還も求めて翁長氏を提訴する方針だ。
地方首長が国の安全保障・外交政策をめぐって国連を舞台に訴えることは極めて異例。菅義偉官房長官も27年9月24日の記者会見で「強い違和感を覚える」「国際社会では理解されない」などと批判していた。
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NGO「市民外交センター」の上村英明恵泉女学園大教授とは
上村英明氏に関しては探せば色々な記事が出てくると思いますが、以下はブログ主が保存していた記事。
翁長県知事の国連スピーチを報じる琉球新報
番組で紹介されていた、翁長県知事の国連スピーチを報じる琉球新報。見開きで報じていたようです。
翁長氏国連スピーチ英文/国連スピーチを報じる琉球新報の記事
以前メモしておいたのを失念してしまったので、沖縄問題を告発していらっしゃる篠原章氏のブログ『翁長沖縄県知事の国連スピーチ(全文と訳文)』(批評.COM 篠原章)から英文スピーチの部分をブログ主の覚え書きとして記録しておきたく、引用させて戴きました。日本語訳は上記ブログでご確認下さい。
Thank you, Mr. Chair.
I am Takeshi Onaga, governor of Okinawa Prefecture, Japan.
I would like the world to pay attention to Henoko where Okinawans’ right to self-determination is being neglected.
After World War 2, the U.S. Military took our land by force, and constructed military bases in Okinawa.
We have never provided our land willingly.
Okinawa covers only 0.6% of Japan.
However, 73.8% of U.S exclusive bases in Japan exist in Okinawa.
Over the past seventy years, U.S. bases have caused many incidents, accidents, and environmental problems in Okinawa.
Our right to self-determination and human rights have been neglected.
Can a country share values such as freedom, equality, human rights, and democracy with other nations when that country cannot guarantee those values for its own people?
Now, the Japanese government is about to go ahead with a new base construction at Henoko by reclaiming our beautiful ocean ignoring the people’s will expressed in all Okinawan elections last year.
I am determined to stop the new base construction using every possible and legitimate means.
Thank you very much for this chance to talk here today.
下は、翁長氏が帰国後、それを報じる琉球新報の記事とその記事の英語版。日本語の記事を英訳したものなので、原文の「Okinawans’ right to self-determination」(沖縄人の民族自決権)が日本語記事では「沖縄の人々の自己決定権」となり、それが再び訳すことで「Our right to self-determination and human rights」(我々の自決権と人権)のような言葉に変わってしまっています。
https://ryukyushimpo.jp/movie/prentry-249254.html
新基地は「人権侵害」 知事、国連で演説 辺野古阻止訴え
2015年9月22日 11:37【ジュネーブ21日=島袋良太】翁長雄志知事は21日午後5時すぎ(日本時間22日午前0時すぎ)、スイス・ジュネーブで開かれた国連人権理事会総会で演説し、日米両政府が進める名護市辺野古の新基地建設に県民が同意していないことを強調し、強行は人権侵害に当たり、あらゆる手段で阻止することを国際社会に訴えた。翁長知事は「沖縄の人々の自己決定権がないがしろにされている。辺野古の状況を世界から関心を持って見てほしい」と呼び掛けた。
日本の都道府県知事が国連人権理事会で演説するのは初めて。知事は沖縄県民の過重な基地負担を放置するのは人権問題だと強調し、国内外の批判の高まりによって新基地計画を止めたい考えだ。
翁長知事は「沖縄の米軍基地は第2次世界大戦後、米軍に強制接収されてできた。沖縄が自ら望んで土地を提供したものではない」と述べ、米軍普天間飛行場の返還条件として県内に代替施設建設を求める日米両政府の不当性を主張した。
また、「沖縄は国土面積の0・6%しかないが、在日米軍専用施設の73・8%が存在する。戦後70年間、いまだに米軍基地から派生する事件・事故や環境問題が県民生活に大きな影響を与えている」と強調した。その上で「沖縄の人々は自己決定権や人権をないがしろにされている」と訴えた。
翁長知事は昨年の県知事選や名護市長選、衆院選など県内主要選挙では辺野古新基地建設に反対する候補が勝利したことに触れ「私はあらゆる手段を使い新基地建設を止める覚悟だ」と述べ、建設を阻止する決意を表明した。
2015年9月22日 11:37
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http://english.ryukyushimpo.jp/2015/09/22/23715/
Gov. Onaga gives speech at UN calling for stop to US Henoko base construction
September 22, 2015 Ryukyu Shimp Ryota Shimabukuro reports from GenevaOn September 21, shortly after 5:00 p.m., Governor Takeshi Onaga gave a speech at the United Nations Human Rights Council in Geneva, Switzerland, speaking about the fact that Okinawans do not agree to the new base construction being carried out by the governments of Japan and the U.S. in Henoko, Nago, and arguing to the international community that the forceful implementation of the base construction plans constitutes a violation of human rights and must be stopped by any possible and legitimate means. Governor Onaga called upon the international community, stating, “I would like the world to pay attention to Henoko, where Okinawans’ right to self-determination is being neglected.”
It was the first time a prefectural governor from Japan gave a speech at the UN Human Rights Council. Governor Onaga emphasized that the overwhelming burden of military bases being shouldered by the Okinawan people is a human rights issue, hoping that rising criticism at home and abroad will prevent the new base from being constructed.
Governor Onaga emphasized the unjust nature of the demand by the U.S. and Japanese governments that a replacement facility be built within Okinawa in order for Futenma to be closed, stating, “After World War II, the US military took our land by force…we have never provided our land willingly.”
He also stated, “Okinawa only covers 0.6% of Japan. However, 73.8% of US exclusive bases in Japan exist in Okinawa. Over the past seventy years, US bases have caused many incidents, accidents, and environmental problems in Okinawa.” Based on this, he concluded, “Our right to self-determination and human rights have been neglected.”
Governor Onaga also mentioned the fact that candidates opposing the construction of a new base in Henoko won a series of important elections last year, including the gubernatorial election, the Nago mayoral election, and the lower house election. He announced his determination to prevent the base construction, stating, “I am determined to stop the base construction using every possible and legitimate means.”
(Translation by T&CT and Sandi Aritza)
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