沖縄タイムスが珍しく玉城デニー知事を批判する記事を書いています。
玉城デニー知事を「反基地原理主義者」と呼ぶならば、沖縄タイムスは「反米軍原理主義者」とでも言うべきでしょうか。
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/472041
「同じ立場だと思っていたのに…」グアムから見た沖縄 デニー知事の姿勢が波紋
2019年9月24日
玉城デニー知事の8月末の訪問を伝えるグアム地元紙の報道に接した、複数の友人・知人から問い合わせを受けた。米団体幹部や連邦議員、運動家と立場は違うが、いずれも沖縄とグアムの闘いを支援する彼らは「沖縄県知事は、米海兵隊のグアム移転を支持しているのか」と不快感をあらわにした。
テニアンやグアムの米軍基地を視察した玉城知事が、移転推進派のグアム知事との会談で協力を表明し、米軍幹部やグアム知事と笑顔で並ぶ写真が添えられた報道は、「大国から抑圧されているグアムと同じ立場だと思っていた沖縄は、日米両政府と同じ視点なのだろうか」との疑問をもたらしたようだ。
沖縄本島の半分にも満たない面積のグアムの人口は約16万7千人(2018年7月時点)。約37%は先住民族のチャモロ人で、次いでフィリピン系約26%、白人は7%。スペイン、アメリカ、日本の占領を経て、現在は米国が統治する。
米国は、米空軍嘉手納基地の4倍もの大きさのアンダーセン基地や軍港、弾薬庫などの基地施設をグアムに配備し、B29などの爆撃機が戦地へ出撃する最前線基地という役割は、昔も今も変わらない。
一方、連邦議会で一議席を持つ下院議員は本会議での投票権を持たず、グアムの人々には大統領選挙の投票権も認められていない。貧困に悩むグアムは米軍と密接な関わりを持つが、日米両政府の06年の移転計画の発表以来、反対運動が台頭した。
チャモロ人の聖地に実弾射撃場を建設する計画を巡っては、住民らが米軍相手に訴訟を起こし、環境影響評価をやり直させ、建設予定地を変更させるなど米軍を窮地に追い込んだ。
こうした住民の力が事態を突き動かし、11年5月、当時の米上院軍事委員会のレビン、マケイン正副委員長らが米軍再編計画の見直しを唱え、日米両政府は翌12年に米軍再編見直し合意を発表した。
政府に抑圧される沖縄とグアムは共通点も多い。
法定拘束力はなくとも、名護市辺野古の新基地建設に反対する意思表示をしようと、沖縄は2月に県民投票を実施したが、グアムでもチャモロ人は自己決定権を求める取り組みを続けている。
米連邦議会で現在、審議が大詰めを迎えている米国防権限法案の上院案に、地元の支持があるかどうかについて再検証を求める条項が盛り込まれた背景には、こうしたグアムの動向が深く反映しているのである。
在沖米海兵隊のグアム移転は、当地では「ビルドアップ(増強)」と表現されている。沖縄にとっての「負担軽減」は、海兵隊がやってくるグアムにしてみれば「負担の増強」だ。「負担」を強いているのは、望まれない土地に米軍基地を置き続ける米国なのだ。
政府の抑圧と闘う私たち沖縄は、負担を押し付ける側に回ることがあってはならない。
沖縄とグアムに共通する問題を解決するためにも、私たちは住民の視点から物事の本質を理解し、手をつなぎあう必要があるのではないか。(平安名純代・米国特約記者)
平安名 純代(へいあんな すみよ)
沖縄タイムス米国特約記者
沖縄県那覇市出身。1995年渡米。日英両語のロサンゼルス日系紙「羅府新報」でカリフォルニア州議会やロサンゼルス市議会などの担当を経た後に副編集長。2010年12月から現職。米軍普天間飛行場の移設問題をめぐるラムズフェルド元国防長官との単独会見などの一連の取材で12年に第16回新聞労連ジャーナリスト大賞優秀賞を受賞。
沖縄タイムスの記者らしく、現地の友人知人は反基地活動家しかいないようです。
玉城デニー知事の立場としては、「米軍基地を追い出したい」ので、グアムに移転を望んでいるのですが、沖タイの記者(の知人)はそれでは不満で、「自己決定権」という言葉からも分かるように、独立運動の立場です。
「自己決定権」などというのは本性がばれないようにをソフトにした言い方ですが、意味するところは「民族自決権」(self-determination)のことで、琉球民族による琉球独立を唱える活動家が好んで「自己決定権」という言葉を使います。
それでこの記者は、「グアムに基地を押しつけていいのか?」と批判しているわけです。
しかし、左に傾いている沖縄タイムスなので、実際に現地の報道はどうなのか?と思って調べて見たのですが、通り一遍の内容の記事が多い中で、沖縄タイムスのスタンスに近いと思われる記事がありました。グアム・デイリーポストという新聞です。
一つは『Guam, Okinawa governors agree to help each other』(グアム、沖縄県知事は互いに協力を同意)という記事で、ここでは、玉城デニー知事の「沖縄は日本の僅か0.6%の土地に、全国の70%の基地を負担して~」というお決まりの数字のトリック。そして、「経済発展のために米軍が移転して後の土地の利用を県民は望んでいる」という発言を紹介しています。
「トリック」と書いた理由は、70%というのは米軍専用基地の割合で、自衛隊との共用基地を含んでいないからです。また0.6%の土地について、以前、チャンネル桜で惠隆之介氏が発言した内容を引用してご説明します。
翁長知事はよく沖縄の面積は日本の0.6%に過ぎないというが、沖縄に属する領域は広大である。45万平方キロメートルで、本州の地図と重ね合わせるとここまで広い。この領域をどうやって守るかが大きなテーマである。日本の領海で勝手に海底資源を掘削している。
記事の中で、玉城氏が通訳を介してグアム知事(Gov. Lou Leon Guerrero)の発言をこのように伝えていました。「グアムはアメリカ政府と良好な関係にあり、『海兵隊を歓迎する準備ができている』と言った」(Tamaki said, through an interpreter, that Leon Guerrero mentioned Guam has a good relationship with the U.S. government and "she is ready to welcome those Marines." )
ここからがポイントなのですが、このグアム・デイリーポストの記者は、「海兵隊を歓迎するなどとは言っていない」として、一部の住民の、文化的および歴史的遺跡の破壊や環境への害を理由とする反対活動に言及しています。
この辺りで、この記者のスタンスがなんとなく見えてきます。
記事によると、グアム知事の発言は以下のようなものです。
Leon Guerrero said she told Tamaki that Guam had no say in the military buildup because it was an agreement between the U.S. and Japan. She said she made no statement specifically about welcoming the military buildup. (私は、グアムは軍備増強については特に発言していない。なぜなら、それは日米(国家間)の同意だからだ。)
当たり前です。
基地の移転なんて知事同士でどうこうできる問題ではありません。
では、記事タイトルの「互いに協力」とは何かというと、グアムでは労働力不足のために外国人労働者のビザの緩和(H-2B visas云々)を望んでいるようで、玉城デニー知事は、「自分が米政府に掛け合ってみる」、みたいな安請け合いをしています。(Tamaki said he would appeal to the U.S. government regarding this issue. )
つまり、グアム知事は基地の引き取り(但し、元々国家間での取り決め)、沖縄県知事はビザの問題を米政府に掛け合うことです。(できもしないくせに...)
ここで、この記事からリンクされている別の記事『Governor supports buildup due to China, NKorea risks』(知事は、中国、北朝鮮のリスクの為、(基地の)増強を支持)を読んでみました。
この記事は、主に基地増強の反対派の意見を伝えるもので、沖縄の仲井真知事と同じように、「金のためにグアムを売った」と言われている、かどうかは分かりませんが、知事は、「経済的理由ではなく、私は国家安全保障上の理由で支持しているのだ」と答えています。
"I don't support it for the economic reasons. I support it for the national security reasons."
また、以下のような発言をしています。
"When I go to these military briefings, I can see the possible outside invasion to us. And why is that? Because we are in a geographic position where the military sees us as a place where we are the first line of defense."(軍事説明会に行くと、外部からの侵入の可能性が分かる。何故か? それは、軍が防衛の最前線である場所として考える地理的位置にあるからです。)
書いていて思ったのですが、サラッと恐ろしいことを言ってますね。
グアムがアメリカの防衛の最前線...(日本はもう射程距離だしなあ)
それはさておき、知事の発言は素晴らしいですね。
ビザの問題があるので、多少は条件闘争の要素もあるのでしょうが、沖縄のように、「基地の負担が~」と言いながら、右手を(「お金」と言って)差し出すのとは大きな違いです。
沖縄タイムスの記事に関して言えば、基地移転に関しては玉城知事とグアム知事の利害関係は一致していますが、沖縄タイムスは活動家の視点で伝えている、と言えそうです。
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