日経夕刊を読んでいたら、ちょっと面白い蘊蓄があったので、メモしておきます。
それは、株主優待が普及しているのは日本だけという話です。
株主優待というのは、説明するまでもないかも知れませんが、株主に対して現金以外の形で与えられる配当で、割引券や優待商品(割引で購入できる、あるいは自社製品やノベルティグッズなどのプレゼント)の形で配られます。
配当金同様、この優待を受けるには『権利落ち日(決算日)』の4営業日前に株を所有していることが条件です。言い方を変えると、4営業日前を過ぎたら、その銘柄を売却しても配当金や優待を受けられます。
日本では明治になり株式会社が設立されましたが、大和インベスター・リレーションズ株式会社の情報によると、最初の株主優待は鉄道会社が発行した「株主優待乗車証」だそうで、これが普及したのは、中元や歳暮を贈る習慣のある日本ならではということです。
同じ紙面に「個人の株保有、再び長く」という見出しの記事があり、サブタイトルに「昨年度3.3ヵ月伸びる/NISA効果」と書いてありました。
タイトルからも分かるように、2014年度平均保有期間が8.9ヵ月と前年より3.3ヵ月伸び、株主がやや長期に株を保有するようになったという内容で、その理由を推測した記事ですが、、記事のタイトルの内「NISA効果」は「昨年度3.3ヵ月伸びる」よりも大きなフォントになっています。
どうも、日経は投資を促すために、やたらに“NISA推し”するのですが、記事を読むと、「日本株に対する先高感」も理由に挙げています。
ブログ主個人の想像としては、後者の影響の方が大きく、NISAと長期保有の傾向はあまり関係がないのではないかと思うのですが...(確かに、NISA口座があるから株への投資が増えたということはありそうですが。)また、企業の業績が上がり、株主への還元のために配当を増やしていることも長期保有の原因だと思います。
そう思うのは、NISAは株の長期保有には向かないと感じるからです。
根拠は後述しますが、実際、昨年よりスタートしたNISAは、今年3月の日経記事によると、約800万件の口座が開設されたが、実際に投資に使われない休眠状態の口座が半数に上っているとのことです。
NISAは現在は1年間に100万円という投資額の制限があることもさることながら、かなり“クセ”があり、その最たるものが5年という期限があることです。つまり、毎年100万円ずつ投資したとして、5年目はマックス500万を投資している状態ですが、6年目には1年目に投資した商品は非課税口座から課税口座に移さなくてはならないのです。(但し、さらに5年の延長が可能で、2016年からは枠は120万円に拡大します。※これ以降の話には100万か120万かはあまり関係ないので、100万円で話をします。)
“5年後にどうするか考えなくてならない”というのは、投資という不確実なものに、“運”の要素も加わってくるので、NISA口座を使って何に投資していいか分からないという人が多いようです。(ブログ主も、口座開設キャンペーンの2,000円目当てで開いただけで休眠状態です。)
100万円という限度も、株式では購入できる銘柄が制限されてしまいますね。
ここでNISAの特徴をまとめておくと、以下のようになります。
- 非課税対象: 上場株式等の配当、上場株式投資信託等の分配金、およびその譲渡益⇒株式や一般の投資信託以外に、ETF(上場株式投資信託)やREIT(上場不動産投資信託)なども含まれる。また、配当金は「株式数比例配分方式」を選択していなくてはならない。株式数比例配分方式を選択している場合、配当金は証券会社のMRFに入金される。複数の証券会社で株を保有している場合、1箇所で株式数比例配分方式の手続きをすると、強制的に全ての配当金が各社のMRFに入金されるようになる。
- 投資額限度: 毎年、新規投資額で100万円(2016年からは120万円)まで⇒新規投資額が100万円以下でも差額は翌年の限度枠に繰り越し不可。同一年度に売却してもその額(枠)は復活しない。
- 期間: 5年⇒ロールオーバー〔roll over(繰り越し・移動)〕による投資可能期間は10年間⇒暦年で計算されるので、年の途中に購入しても翌年1月1日で2年目となる。
- 損益通算: NISA口座と他の課税口座の損益通算は不可。⇒課税がない代わりに損失もないものとされる。従って、3年間の繰越控除も使えない。⇒同一銘柄をNISA口座と特定口座に保有している場合、別々の銘柄と扱われ、譲渡所得の金額が計算される。
メリットとしては、上記1ですが、3と4はデメリットとなります。このデメリットをもう少し詳しく見るために下に簡単な図を示します。

ある株式の銘柄を100株/取得価額100万円で購入した場合、5年目(あるいはロールオーバーして10年目)には自動的に特定口座に移動します。
5年目終了時点で時価で50万円だとすると、6年目の1月1日にその評価額が取得価格となってしまいます。このように取得時より株価が下がっていた場合、例えば売却時に値上がりして80万円となっていた場合、実際は20万円の損失ですが、30万円の利益が発生したと見なされ、所得税がかかります。
5年目終了時点で100万円より値上がりしていた場合は課税対象とされる利益が少なくなるのでメリットになるのですが、運に左右されるというのは不安を感じてもしかたがありません。また、評価額が限度枠を超えていた場合、ロールオーバーもできず、常に5年ごとにどうするか考えなくてはならないというのは面倒です。
上記は株式の例で説明しましたが、投資信託の場合はどうでしょうか。
株式の場合、上記例のように100万円きっかりという投資は株価と単元株数(売買できる株数の単位が100株単位などのように決まっている)で難しいのですが、投資信託では100万円分というような買い方ができるので限度額を有効的に利用できます。
分配金を受け取る場合はいいのですが、再投資をする場合、限度枠ぎりぎりだとどうなるのだろうと調べてみたら、SBI証券のサイトで『NISA預りの分配金再投資はNISA(非課税)扱いと課税扱いの選択が可能! 』という説明がありました。これによると、“2014/11/21より、NISA預りにて保有されている分配金再投資の投資信託について、再投資の預り区分をNISA(非課税)扱い、または課税扱いのいずれかで選択ができるようになります。”とのことなので、限度枠が余っていればNISA枠内で再投資できますが、余っていなければ、同一の投資信託で、非課税管理勘定と課税管理勘定(特定口座の勘定)の2つを持つことになるようです。
この投資信託を翌年も持ち続けた場合、非課税枠は新たに100万できるので、翌年からは再びNISA口座で再投資されると思うのですが(←NISA枠で再投資ができるかどうかは証券会社によるらしい。詳細は【追記】参照。)、NISAに持つ同一銘柄でも取得年度が異なり期限が異なるので、把握するのが面倒ですね。
非課税期間内に銘柄をNISAから特定口座への移動は可能で、「移管依頼書」といったものを証券会社に提出します。
但し、上の投資信託の例で見たように、NISA枠で購入した金融商品は「○○年度分」という区分がついてまわるようで、証券会社から貰った「税金読本」の説明によると、“同一年分の非課税管理勘定で保有している同一銘柄は、全て特定口座に移さなければならず、一部を特定口座に移すことはできません。”とあります。
つまり、株式を例にすると、ある銘柄の株式を同年度に300株(売買単位は100株)購入した場合、200株はNISAに残して100株は特定口座へ移す、ということはできないということです。
繰り返しになりますが、NISAは常に5年という期限を考慮しなくてはならず、更にNISA枠で購入した銘柄個々に「これは何年目」と考えなくて成らないのは非常に煩雑です。
こういったことから、NISA口座を利用して株式を保有する場合、長期保有するためにというよりは比較的短期間で利益確定売りをするために利用する人の方が多いのではないかと考えています。
参考資料:大和証券、野村證券および、SBI証券のNISA説明サイト、大和証券より入手した「税金読本」
【追記】同一銘柄のNISA、課税口座の管理について
証券会社(野村證券)に確認したところ、投資信託の分配金を再投資する分に関してはNISA口座での買い付けはできないとのこと。あくまでも新規購入分だけ。(と言うことは、SBI証券の説明とは異なるので、証券会社毎の決め事?)
野村の場合は、2015年に新規で100万買って、再投資分は課税口座に入る。2016年に再び100万の枠を使って同一銘柄を買い増しはできるが、再投資分は課税口座に積み上がっていくということになる。
また、ネットでの残高確認の方法も確認したところ、資産一覧のような画面には、NISA分と課税分の2行で表示されるとのことだが、購入年事の“色分け”はされない。(2015年分、2016年分というように分けて表示はしてくれない。)
野村の場合はNISA口座の保有資産一覧画面も用意されていない。確認する場合は、取引履歴で期間を範囲指定して検索するしかないというやる気のなさ...
これからNISA口座を使って投資を始めようと思う方は、管理画面がちゃんと用意されているか、把握が容易かということも考慮して証券会社を選んだ方が良いと思う。
幸い、2015年からNISA口座の4年縛りが外れて、証券会社の変更が毎年変更になったので、証券会社に不満がある場合は変えることができる。
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