この記事はブログ主の覚え書きで、ミニチュア和菓子を作るために調べたことをまとめておくものです。和菓子以前に、まず日本の行事や暦について知らないことが多すぎたので...
和菓子には日本の古来からの行事に結びついたものが数多くありますが、その行事の中にはブログ主にとってあまり身近ではないものもあり、分からない言葉を調べては(ブログの下書きに)メモをしていました。多くは電子辞書などのブリタニカ国際大百科事典、大辞泉、広辞苑といった辞書類を参照しています。
月ごとの和菓子はこの記事の後半にまとめました。
季節と和菓子
季節や月ごとの和菓子を調べていたら、季節の和菓子とは、
- ①年中行事や風習と結びついたもの、あるいは
- ②季節や月を象徴する花鳥風月、自然現象を題材にしもの、
- ③材料に旬があったり、季節感が表現できる素材つくるもの、
があるようです。
もちろんこれ以外に、季節を問わない定番のお菓子もあります。
①は正月の正月の花びら餅や端午の節句の柏餅、夏越の祓(なごしのはらえ)の水無月(みなづき)など、縁起を担ぐものや邪気や厄災を防ぐようなものが多く、②は若鮎・焼き鮎(鮎の形の焼き菓子)や練り切りで作られたお菓子など、素材は様々ですが、例えば、玉椿、花菖蒲、菊、柿などと時期に合ったものを題材とし、形を模していたり、彩りで表現したりするものがあります。③は芋や栗などの旬のある素材を使ったもの、夏に見た目で涼を呼ぶ、葛や寒天を使った透明な和菓子などもあります。
霊力のある小豆
祝祭の和菓子は「めでたいもの」をかたどったものが多いのですが、「邪神や厄災を防ぐ」という意味で多くの和菓子に欠かせないものは「小豆」(あずき)です。小豆は古来より霊力を持つとされていて、季節の変わり目(身体が弱る頃)に供される和菓子には小豆が多く使われています。
それと、もう一つのキーワードとして、「尖ったもの」というのが何度か出てきました。
例えば、三角形の水無月。「夏越の祓」という毎年6月晦日(30日)に行われる大祓の神事に振る舞われるお菓子で、この日、神社では参詣人に茅(ち)の輪をくぐらせて祓い浄めます。(夏越の祓について書いたブログ記事はこちら。)
雛祭りに供える菱餅の尖った先端も厄除けの意味があるそうです。
和菓子ではありませんが、地方によっては節分に柊(ひいらぎ)を戸口に飾ります。これも、尖った柊の葉が鬼を寄せ付けないからです。
節句は節供
柏餅は端午の節句の代表的なお菓子ですが、節句とは節日(せちにち)、すなわち人日(1月7日)・上巳(3月3日)・端午(5月5日)・七夕(7月7日)・重陽(9月9日)などの式日をいい、季節の変わり目の祝祭です。
節句は節供とも書きますが、節供とは節日に供する節供(せちく)すなわち供御(くご)のことです。従って、節句には何らかのお供えがつきものとなります。
元日の膳であるお節料理が代表的ですが、正月15日(上元)の粥(かゆ)、3月3日(上巳/じょうし/元は陰暦3月初めの巳(み)の日に行われた。)の草餅、5月5日(端午)の粽(ちまき)、7月7日(七夕)の索餅(さくべい)、10月初の亥の日の亥子餅(いのこもち)の類をいいます。(リンク先はたねやさんの亥子餅のページ)
索餅はお菓子ではなく、縄のようにねじった油で揚げた食品ですが、現代ではこれを模したお菓子があるようです。
(上の画像は漢字変換しようとしたらATOK(日本語変換ソフト)の広辞苑にイラストがあったのでキャプチャしたものです。)
節分は一年の終わり
節分というと狭義では2月3日頃の豆まきの行事を行う節分を指しますが、立春・立夏・立秋・立冬の前日のことで、季節の分かれ目、移り変わる時を指します。
特に立春の前の節分が重要なのは、1年は立春を以て始まるという考えからで、「八十八夜」や「二百十日」などはこの日から起算します。
- 八十八夜: 5月1~2日頃にあたり、播種の適期とされる。茶どころでは茶摘みの最盛期となる。
- 二百十日: 9月1日ころ。ちょうど中稲(なかて)の開花期で、台風襲来の時期にあたるから、農家では厄日として警戒する。
これら四つ以外にも様々な節気、即ち季節があり、二十四節気と呼ばれています。これは中国伝来の語で、太陽の動きに基づいています。
太陰と太陽暦
現在使われている暦を新暦(しんれき)といい、それ以前の暦を旧暦(きゅうれき)と呼びますが、旧暦とは、1873年(明治6)から採用した太陽暦に対して、それ以前に使用していた太陰太陽暦(たいいんたいようれき)の通称です。
太陰太陽暦とは太陰暦と太陽暦とを折衷した暦で、両者の調節のため、19年に7度の閏月を設けて平均させます。
太陰暦あるいは陰暦とは月の動きをもとに、1カ月を29日あるいは30日とし、1年を12カ月としたもの、一方、古い太陽暦では地球から見た太陽の動き〔=黄道=黄緯(こうい)と黄経(こうけい)で座標を表す。〕をもとにしています。
明治維新後に採用された新暦では、旧暦の明治5年(1872)12月3日を、新暦の明治6年1月1日としたので、よく日本の行事で「陰暦○月」という表現を目にしますが、現在の暦とはだいたい1ヵ月ずれています。
二十四節気のほうは現在の季節感に沿っているので、天気予報でも、大寒とか冬至などという言葉をよく耳にします。
(左の画像はWikimediaから直接表示していますが、これより大きな画像は使用できないため、拡大画像はクリックして表示して下さい。)
二十四節気
以下、二十四節気とそれがいつ頃なのかをメモしておきます。
- 立春(りっしゅん): 太陽の黄経が315度の時。太陽暦の2月4日頃。暦の上で、春が始まるとされる日。
- 雨水(うすい): 太陽の黄経が330度の時で、正月の中(ちゅう)。太陽暦の2月19日頃に当たる。
- 啓蟄(けいちつ): 蟄虫、すなわち冬ごもりの虫がはい出る意。太陽の黄経が345度の時で、2月の節(せつ)。太陽暦の3月5日頃に当たる。驚蟄。
- 春分(しゅんぶん): 太陽の中心が春分点上に来た時の称。春分を含む日を春分の日といい、太陽暦では3月20日頃。春の彼岸の中日に当たる。昼夜の長さがほぼ等しい。
- 清明(せいめい): 清く明るい気が満ちる意。太陽の黄経が15度の時。春分後15日目、すなわち3月の節(せつ)。太陽暦の4月4日頃に当たる。
- 穀雨(こくう): 春雨が降って百穀を潤す意。太陽の黄経が30度の時。春の季節中の最後。太陽暦4月20日頃。
- 立夏(りっか): 太陽の黄経が45度の時。夏の始め、太陽暦の5月5日頃。
- 小満(しょうまん): 草木が周囲に満ちはじめる意。太陽の黄経が60度の時で、4月の中(ちゅう)。太陽暦の5月21日頃に当たる。
- 芒種(ぼうしゅ): 芒(のぎ)のある穀物を播く時期の意。太陽の黄経が75度の時で、5月の節(せつ)。太陽暦の6月5日頃に当たる。
- 夏至(げし): 太陽の黄経が90度に達する時で、北半球の昼が最も長く、夜が最も短い。太陽暦では6月21日頃。
- 小暑(しょうしょ): 太陽の黄経が105度に達する時で、6月の節(せつ)。太陽暦の7月7日頃に当たり、この日から暑気に入る。
- 大暑(たいしょ): 太陽の黄経が120度の時で、6月の中(ちゅう)。太陽暦では7月22日頃に当たり、暑さが最もきびしい。
- 立秋(りっ‐しゅう): 太陽の黄経が135度の時。秋の始め、太陽暦の8月7日頃。
- 処暑(しょしょ): 暑さがおさまる意。太陽の黄経が150度の時で、暑さが止み、新涼が間近い日。7月の中(ちゅう)。太陽暦の8月23日頃に当たる。
- 白露(はくろ): 太陽の黄経が165度の時。秋分前の15日、すなわち太陽暦の9月7日頃に当たり、この頃から秋気がようやく加わる。
玄鳥帰(げんちょうかえる)。鴻雁来(こうがんきたる)…玄鳥(つばめ)が南へと帰っていく時節。鴻雁(雁)が日本で冬を過ごす雁が、ツバメと入れ違いに北から渡ってくる時期。
- 秋分(しゅうぶん): 太陽が秋分点上に来た時の称。秋分を含む日を秋分の日といい、太陽暦では9月23日頃。秋の彼岸の中日に当たる。昼夜の長さがほぼ等しくなる。
- 寒露(かんろ): 太陽の黄経が195度の時で、9月の節(せつ)。太陽暦の10月8日頃に当たる。
- 霜降(そうこう): 太陽の黄経が210度の時で、9月の中(ちゅう)。太陽暦の10月23日頃に当たる。
- 立冬(りっとう): 太陽の黄経が225度の時。冬の始め、太陽暦の11月7日頃
- 小雪(しょう‐せつ): 太陽の黄経が240度に達する時で、10月の中(ちゅう)。太陽暦の11月22日頃に当たる。
- 大雪(たいせつ): 太陽の黄経が255度の時で、11月の節(せつ)。太陽暦の12月7日頃に当たる。
- 冬至(とうじ): 太陽の黄経が270度に達する時で、北半球では、正午における太陽の高度は一年中で最も低く、また、昼が最も短い。太陽暦では12月21日頃。
- 小寒(しょう‐かん): 太陽の黄経が285度の時で、12月の節(せつ)。太陽暦の1月5日頃に当たる。
- 大寒(だいかん): 太陽の黄経が300度の時で、12月の中(ちゅう)。太陽暦の1月21日頃に当たる。
和菓子の歳時記(月ごとの和菓子)
下記はこちら(https://oshiete.goo.ne.jp/qa/4879424.html)をベースにして、他の和菓子店のサイトや辞書を参考に追加しています。いわゆる和菓子ではない菓子や食べ物も一部含まれます。(色を付けたのは個人的に根拠が不明なもの)
- 一月/睦月(むつびづき。むつびのつき。【季】春。):
- 【迎春 初釜】 花びら餅 リンク先はブログ記事
- 【鏡開き】 お汁粉(おしるこ)、善哉(ぜんざい)
- 【歌会始】 お題菓子
- 【小正月(1月15日)】餅花
- 二月/如月(「生更ぎ」の意。草木の更生することをいう。着物をさらに重ね着る意とするのは誤り。【季】春。):
- 【節分】厄除け饅頭、福豆
- 薯蕷饅頭・草餅(ヨモギの若芽が出る頃?)・蕨餅
- 三月/弥生(イヤオヒ〔=草木がますます生い茂ること〕の音が変化したもの)【季】春。):
- 【桃の節句】菱餅、雛あられ(蒸した糯米(もちごめ)を乾して煎り、砂糖をかけて熱しながらほぐして乾かしたあられ。)、草餅(3月3日の節句を草餅の節句とも呼ぶ。邪気を祓うと言われていた。古くはハハコグサで草餅を作った→『【ドールハウス工作】 No.315 桃と春の和菓子のミニチュア/桜餅、草餅、花見団子』参照)
- 金花糖(きんかとう/砂糖を溶かして木型に流し込み、鯛や笹の葉、竹の子などの形を作り、鮮やかな色をつけたもの。金沢のものが有名)リンク先は金沢市の和菓子のページ
- 桜餅
- 【彼岸】牡丹餅(ぼたもち)
- 四月/卯月(十二支の卯の月、卯の花の咲く時期とも、また、ナエウエヅキ〔苗植月〕・ウヅキ〔植月〕の転とも)うのはなづき。【季】夏):
- 五月/皐月(「早月」とも書く。早苗(さなえ)月。【季】夏) 植物のサツキはこの時期に咲くから:
- 六月/水無月(古くは清音。「無」は「の」で「水の月」。水を田に注ぎ入れる月の意)【季】夏。:
- 【夏越の祓】水無月
- 【嘉祥(6月16日)】嘉祥菓子(かじょうがし/現在はこの日は「和菓子の日」。本来は疫気をはらうため16個の餅や菓子を神に供えて後に食べる行事。)リンク先は虎屋さんの嘉祥菓子のページ
- 水饅頭(くず粉を用いて作った透明の生地で餡を包んだ夏季の生菓子 下図はWikimediaより表示)
- 若鮎(リンク先はたねやさんの稚鮎のページ)
- 七月/文月(ふみづき・ふづき、ふつき。【季】秋):
- 若鮎
- あんころ餅(土用餅…夏の土用についた餅。食べると力が出るといい、佐渡ではヨモギを入れて食べ、はらわたになるという。はらわたもち。リンク先はたねやさんの土用餅のページ)
- 水饅頭
- 八月/葉月(古くはハツキと清音。【季】秋):
- 【お盆】ところてん(地域により、精進ものとして出され、一本箸で食べる風習のあるところもある)
- 水ようかん、水饅頭
- きんつば(金鍔焼き)
- 九月/長月(古くはナガヅキとも。菊月【季】秋):
- 【十五夜(旧暦8月15日の夜)】月見団子・月見うさぎの薯蕷饅頭
- 栗饅頭
- 【彼岸】おはぎ
- 十月/神無月(神の月の意か。)・神在月(出雲国のみ)
また、八百万(やおよろず)の神々が、この月に出雲大社に集まり他の国にいないゆえと考えられて来た。また、雷のない月の意とも、新穀により酒をかもす醸成月(かみなしづき)の意ともいわれる。かみなしづき。かんなづき。神去(かみさり)月。【季】冬。
神在月 出雲国で旧暦10月の異称。日本国中の神々が、この月出雲大社に参集するとの俗信に基づく。[季]冬):
- 【十三夜(旧暦9月13日の夜)】月見団子・月見うさぎの薯蕷饅頭
- 栗饅頭
- 十一月/霜月(霜降月。【季】冬):
- 【七五三】千歳飴(浅草で売られていた「千年飴」が原型とも。子供の長寿を願って細長い)
- 【亥の子の祝(いのこのいわい)】亥子餅(陰暦10月上の亥の日の亥の刻に亥の子餅を食う行事。万病を除くまじないとも、また猪は多産であるから子孫繁栄を祝うためともいう。)
- 薯蕷饅頭・栗饅頭
- 十二月/師走(極月(ごくげつ)。【季】冬):
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