【朝鮮人の参政権】第17回総選挙（1930年）に於ける朝鮮人の投票率・ハングルでの投票率

『文化住宅』〔@4ptZLknbQy11466〕さんが「X」に興味深い資料を投稿していらっしゃいました。

1930年2月7日付け『每日申報』の「內地의（の） 朝鮮人有權者 五萬人以上 朝鮮文投票確認으로（へ） 權利는（は） 一層伸張」という記事です。「朝鮮文」とは「朝鮮文字」、即ち「ハングル（諺文）」の事です。

安田浩一が絶対に触れない話
日本内地在住朝鮮人の選挙権の話

內地의 朝鮮人有權者 五萬人以上 朝鮮文投票確認으로 權利는 一層伸張
每日申報
1930년02월07일 pic.twitter.com/aaBkPtZJcI

— 文化住宅 (@4ptZLknbQy11466) October 5, 2025

これに興味を持ち、1930年に行われた普通選挙について調べてみました。

記事に「第二次普通選挙」とあるように、1925年5月5日に普通選挙法が改正され、初めて納税要件に関わりなく25歳以上の男性に選挙権を認め、「内地」在住の朝鮮人、台湾人男性にも選挙権を認められます。1928年第16回総選挙で最初の男子普通選挙（第一次普通選挙）が実施されましたが、この時はハングル（朝鮮文字）での投票は無効とされました。

※参考：　アジア歴史ラーニング『普通選挙法』　

しかし、これは不当であると、次の第二次普通選挙（第17回総選挙／1930年2月）ではハングルも認められます。但し、漢字を朝鮮語読みするのではなく、「ヤマダ　タロウ」の様に日本語読みをハングルで表記した名前で、『宮城県公文書館だより』によると、予め名前の朝鮮語表記を決めていた様ですが、その際、朝鮮語には無い濁音をどうハングルで表記するか、苦労したようです。

▲「宮城県公文書館だより」よりキャプチャ

舛添要一 元東京都知事の父、舛添弥次郎氏は1930年の若松市議会選挙に立憲民政党陣営から立候補しますが、この時の選挙演説会のチラシは「X」でよく目にします。やはり、ハングルがルビのように記載されています。

第17回総選挙に関し、朝鮮人の投票率やハングルでの投票率などを朝鮮総督府が摘録〔要点をかいつまんだ記録〕していました 〔詳細後述〕。

それによると、実際の朝鮮人有権者数は約2万4千人程で、投票率は52％弱。選挙全体の投票率は83.34%なので、投票率は低かった様です。

そして、ハングルで投票した朝鮮人は21％程だった様ですが、朝鮮人有権者が多く住む選挙区の開票所ではハングルを理解する者を配置して臨んだところ、大きな混乱は無かったとの事です。

ちなみに、明治時代に始まったローマ字推進運動の為、1920年〔大正9年〕11月11日に大審院がローマ字投票有効の判決を出し、1924年〔大正13年〕には内務省が衆議院議員選挙にローマ字投票が有効を告示します。 〔文化庁『ローマ字に関する国語施策関係年表』より〕

前述の『宮城県公文書館だより』によると、1932年の第18回衆院選挙に於いて宮城県ではローマ字投票数が、215（有効182／無効33）票あったそうです。 なお、現在もローマ字での投票は有効なようです。

江戸川区（2024年10月16日）
Q. 「候補者名を漢字以外で書くことができますか。」
A. 「候補者名を漢字以外のひらがな、かたかな、ローマ字で書くことはできます。」

＊　＊　＊　＊

【朝鮮総督府調査月報_1930年6月】

※数字は読み易い様アラビア数字に書き換え／Google Lenzで読み取れずに修正した文字は元の旧字から新字にしたものあり。

朝鮮人の衆議院議員選舉權行使狀況と朝鮮文字の投票

昭和5年〔1930年〕2月執行せられた衆議院議員総選挙に際し、朝鮮人が如何に其の有する選挙権を行使したか。参考の為今地方局の調査から之を摘録して見よう。

一、選挙有権者と棄権者

選挙当日に於ける朝鮮人の選奉者数は、総敷24,101人（無投票選の選奉区143人を除く）で、市部15,311人　郡部8,790人であったが、其の内投票を為した者は9,191人に過ぎず、棄権者数はは12,512人に達し、有権者数24,101人の5割1分8厘に當る。　而して市部の棄権者は9,191人（市部有権者15,311人の6割）、郡部3,321人（郡部有権者8,790人の3割7分8厘）である。之を今回の総選挙に於ける総棄権者割合1割6分7厘（市部2割4厘、郡部1割5分6厘）に比すると、朝鮮人有権者は甚だしき棄権者を出したるものである。其の詳細は次の通。

（表省略）

二、朝鮮文字の投票

大正13年〔1924年〕の総選挙の時内務省は朝鮮文字を以て記載した投票は、無効と解すべきものと決定してゐたが今回の総選挙に際し昭和5年〔1930年〕2月之を有効と決定した。変更の理由は大正13年当時は内地在住の朝鮮人其の數10萬人に過ぎなかったが、昭和4年〔1929年〕6月に於ては27萬餘人の多数に達し、尚逐年増加しつゝあつて、朝師文字も既に相当多数の間に使用せらるゝに拘らず、単に本邦固有の文字を書する能はざるが為、 折角の権利を行使するを得ざらしむるが如きは、事実上甚だ不当であると云ふのである。

斯くの如く朝鮮文字を以て記載した投票を有効と認めた結果、内務省では開票に際し際し投票效力決定上著しく困難を生じ、又はこれが為紛議を生ずるの虞〔おそれ〕なきやを慮って、朝鮮人の多き開票区に対しては、特に朝鮮文字を解する者をして開票事務に従事せしむる等、適宜の措置を講ずる様地方長官に通牒したが。選挙の結果は別段投票効力の決定上著しく困難を生じ、又は之が為紛議を生じた開票区はなかった。

而して特に特に朝鮮文字を解する者を、開票事務に従事せしめた開票区数は120、開票区総数855（無投票選挙区の開票区14を除く）の1割3部強に当たる。

朝鮮文字の投票数は総数2,434票（市部1,375票、郡部1,059票）で、朝鮮人の投票数11,589票の2割1分（市部2割2分4厘、郡部1割9分3厘）に過ぎなかった。投票数の多きは大阪府537票（市部472票、郡部65票）福岡県498票（市部149票、郡部349票）東京府232票（市部76票、郡部156票）北海道202票（市部42票、郡部160票）と云う状況であつた。此の内有効投票は総数2,273票（市部1,293票、郡部980票）で投票総数の9割3分4厘（市部9割4分3厘、郡部9割2分5厘）に当たり、又無効投票は総数161票で、投票総数の6分6厘（市部5分7厘、郡部7分5厘）に当たる。其の内訳は左の如し。

一、成規〔正規〕の用紙を用ゐざるもの
二、議員候補者に非ざるに者の氏名を記載したもの
三、議員候通者の氏名の外他事を記載したもの
四、議員候補者の何人を記載したかを確認し難きもの
五、印鑑又は雑事を記載したもの

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