【関東大震災】1923年3月30日付『東亜日報』「朝鮮労働者の移入制限に対して）

ここでは『独立新聞』の虐殺犠牲者6千人説には触れませんが、流言飛語や自警団の過剰防衛の背景となる新聞記事を『文化住宅』（@4ptZLknbQy11466）さんというXアカウントの方がポスト（投稿）されていたので、ご紹介します。

以下は『東亜日報』1923年3月30日 夕刊1面トップ記事です。関東大震災はこの年の9月1日に発生します。

▲文化住宅さんのポストより拝借
（紙面URL）

「総督府の労働者保護策がこれか？」〔總督府의勞働者保護策이 이것인가？〕という副題が付いており、要するに、移入（渡日）に制限を掛けるな！と批判する記事のようです。

文化住宅さんが部分的に抜き書きしてくださっているので、それを引用して機械翻訳（一部修正）します。

＊　＊　＊　＊

海外に勞働者は出稼ぎしたいからこそ、擧皆〔※挙皆：一網打尽〕一時的移住の目的であり、その価値が年々増加する直接の原因は、一に朝鮮農村の疲弊であり、二に日本の勞働収入が多少有利だからである。

一時歐洲戰亂〔※第一次世界大戦〕の好況時代には 朝鮮勞働者として相当な財產を蓄えた者もあり、農村靑年の羨望の標點〔※標点：まと〕となった時代もあり、玄海灘越便に向かい陸續不絕したのは彼等多大數の勞勸者であったが、戰亂が終結し 時勢の好況は一変し、勞働過多の聲を告げるようになると 多少停頓の觀があり、昨年の旅行券廢止〔※〕以後で

突然激増の現象を呈するようになり、今や日本各地に散在する者は十数万に達するという。 彼らは大概農村の青年であり、農村の疲弊と生活の壓迫に・・・

※1922年12月に「旅行証明書」（ビザのようなもの）を廃止。これにより、内地渡航が自由となった。

惡辣な日本人の勞働者募集に応じるのは百般の甘言利說に依るものであり、一段勞働現塲に到着した彼らの一団は、不幾日にして營養の不足、勞働の虐待、風土の不適、日本勞働者の冷酷な壓迫等で、或は不治の難病に罹患したり、また不帰の怨鬼を作ったりするものであり、岩窟地獄を脫出することも徒〔※いたずら〕に不可能な事であり、鷲爪の中の小雀に過ぎないのである。

【原文】

海外에勞働을出稼코자함이니擧皆一時的移住의目的이로다 이와가치年々히增加하는 直接原因은一曰 朝鮮農村의疲弊요二曰日本의勞働收入이多少有利한까닭이로다

一時歐洲戰亂의好况時代에는 朝鮮勞働者로相當한財產을蓄한者도有하야農村靑年의羨望의標點이 되얏든時代도有하야 玄海灘越便을向하야 陸續不絕한것은彼等多大數의勞勸者이얏도다 그러나戰亂이了함애 時勢의好况은 一變하야 勞働過多의聲을告하게되자 多少停頓의觀이有하더니昨年의旅行券廢止以後로

突然激增의現象을呈케되야 方今日本各地에散在한者 十餘萬에達한다하는도다 彼等은大槪農村의靑年이라 農村의疲弊와生活의壓迫에・・・

惡辣한 日本人의勞働者募集에應하얏든것은 百般의甘言利說에依함이어니와 一段勞働現塲에到着한 彼等의 一團은不幾日에營養의不足 勞働의虐使 風土의不適 日本勞働者의冷酷한壓迫等으로 或은不治의難病에罹하거나 또한不歸의怨鬼를作하는도다 이와갓흔地獄을脫하랴하야도 徒히不可能事라鷲爪中의小雀과한지라

＊　＊　＊　＊

東亜日報は政府（朝鮮総督府）に物申す事が多い新聞で、別の例もいずれご紹介しますが、この記事から、第一次世界大戦の好景気が終わって日本に出稼ぎに行きたい朝鮮人が増加したために徐々に渡航制限がかけられていた事が分かります。

下は以前のエントリーでもご紹介しましたが、続々と来る朝鮮人に、内地の特高も警戒していた事が分かる資料です。再掲します。

＊　＊　＊　＊

内務省警保局保安課『特高警察例規集』から転載ですが、「六、朝鮮人労働者募集に関する件依命通牒」として、大正12年5月14日付け「内務省警閣第三号」（警保局長より各庁府県長官宛て）を掲載しています。関東大震災の3ヶ月半前です。

元 田中（@USmqsek3bkZMuQQ）さんのツイートより拝借

簡単に言えば、前年12月に内地渡来に必要な「旅行証明書」制度を廃止したこともあり、変な輩が入り込んでくるので、当面、朝鮮人の団体募集を控えて下さい、という通達です。下に、分かりにくそうな所を補って文字起こししました。

＞近時朝鮮人の内地に渡来するもの漸次増加し、殊に客年〔＝昨年〕12月に朝鮮総督府に置いて旅行証明書制度を廃止したる以来の増加著しく、内地経済界不振の際とて、彼等鮮人の多数は就職難苦しみ、浮浪無頼の徒を生ずるの傾向あるのみならず、往々にして社会運動および労働運動などに参加し、団体的行動に出でん〔＝出よう〕とする傾向の特に著しきものあり、尚、内地人の間にも各種の紛擾を頻発する等、将来種々の問題を醸成する虞〔（おそれ）＝恐れ〕あるを以（も）って、朝鮮総督府と教義を遂げ、自由渡航および団体募集に対してはかなり之（これ）を阻止する方法を講ずることに協定致し候所〔（そうろうところ）＝致しました所【謙譲表現】〕、朝鮮総督府に於いても爾後〔（じご）＝それ以来〕朝鮮人の団体募集は当分かなり之を許可せざる方針をとり、極めて少数の者または全然弊害なしと認むる元あるいは已（や）むを得ざる〔＝やむを得ない〕場合に対しては予め当省〔＝内務省〕と協議の上、許否を決することと相成り候については、貴管下に於ける朝鮮人労働者募集出願に対しては、当分の間、右の趣旨により十分ご調査の上、その必要無しと認めらるものに対してはかなり鮮地に於ける労働者募集の出願を阻止するの方法を採られ候様〔＝とって下さります様〕、お取り計らい相成り度、此段〔（このだん）＝上記／前述のこと〕依命および通牒候也〔そうろうなり＝いたす次第です〕

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