【2024年韓国総選挙】総括
様々な数値やグラフィックを保存する為のエントリーです。ブログ主のコメントは最後に書きます。
◆投票率
71.9%を記録した1992年より後に行われた総選挙の中では最も高い67%を記録。世宗市の70.1%が最高値。
◆結果(議席数)
図中、”与党「国民の力」など”、”最大野党「共に民主党」など” と、「など」と書かれているのは、それぞれの比例代表制専用の政党(衛星政党)での比例議席を合わせたもので、「小選挙区」でのそれぞれの獲得議席は、下図にもあるように、90議席(与党)と161議席(野党)で、比例得票率の18議席(与党:36.67%)と14議席(野党:26.69%)を加味して、与党:108議席(改選前114議席)、最大野党:175議席(156議席)。
「祖国革新党」は曺国(チョ・グク)氏の比例のみの政党で、”国をどうしたい” よりも ”尹錫悦を大統領の座から引きずり下ろす” を明言している程なので、当然、反与党。従って、明確な反与党は175+12=187議席。
【小選挙区制の罠】
ただし、小選挙区の得票率を比較すると、
国民の力:13,179,769(45.1%)
共に民主党:14,758,083(50.5%)
と、約5ポイント差ですが、獲得議席数では、
国民の力:90(35.4%)
共に民主党:161(63.4%)
という結果になり、韓国では1人区であり、小選挙区に候補を立てる党は比例候補者を立てられない仕組みのため、日本の様な「小選挙区比例代表並立制」とは異なり、比例復活もありえません。
cf. 中央日報:국민 45%는 여당 뽑았는데…참패 자초한 '소선거구제 고집'
国民の45%は与党を選んだのに...大敗を招いた「小選挙区制へのこだわり」
後ほど書きますが、韓国民が現政権に不満がある事は事実で、”お灸をすえよう” としたら、小選挙区の怖さで、野党を勝たせすぎたのだと思います。
【地域別選挙結果(小選挙区)】(Wikipediaより)
紺が共に民主党が勝利した選挙区、赤が国民の力が勝利した選挙区。左上の囲みはソウル市で、漢江の南の一部が国民の力の橋頭堡となった。
▲韓国語Wikipedia『大韓民国第22代国会議員選挙』より
完全に東西地域対立が可視化された。
【世代別投票行動(比例)】
祖国革新党(曺国氏の政党)があるので、比例投票の割合と思われる。
但し、韓国の人口ピラミッドは下記の通り。(2020年の数値なので「+5歳」して見るべき)
◆選挙結果が国政に及ぼす影響
与党は惨敗とは言え、野党(共に民主党+祖国革新党=187議席)も大統領弾劾訴追が可能な200議席には届かず、180議席代というのは改選前と変わらず。野党だけで法案可決も可能だが、大統領には拒否権がある。
* * * *
日本では、日韓関係に関わる事以外はあまり報じられませんが、主に内政に関わる政策が原因で、国民の政権に対する失望感が広がっていたのは事実です。
物価高騰や失業率... 多くは文在寅の ”置き土産” のせいなのですが、有効な手を打てなかったのは事実です。
若い男性に限って言えば、(これも文在寅政権のせいですが、)男性だけ兵役がある事の不公平感を背景に、待遇に不満がある事、女性優先のフェミニズム政策(尹錫悦大統領の公約の一つが「女性家族部の解体」でしたが、それも実現されず。)、また、医師不足を理由にした最近の医学部2000人増員も、日本では既得権益(医者)の我が儘のように報道されていますが、実態は少し異なります。
様々な理由がありますが、李相哲教授が指摘するのは、李在明、曺国等の裁判が遅々として進まず、犯罪者がのうのうとしている事。文在寅に至っては捜査すらされておらず、国民、特に保守の苛立ちがあった事です。
この動画を見て、韓国民の一部には、「尹錫悦氏や党代表の韓東勲(ハン・ドンフン)氏は本当に保守なのだろうか?」と考えているというのを知りましたが、ブログ主が「X」でフォローしている韓国人の方達も疑っているのを知っていたので、これは驚きません。ブログ主も、何ヶ月か前に、李相哲TVのメンバーのみ書き込めるコメント欄に、尹錫悦氏は文在寅氏と密約があるのではないかと書いた事があります。あと、国軍にも厳しくは当たれない何か弱みでもあるのではないかとずっと思っています。
その理由は、レーダー照射事件を全く追及しない事です。
当初犯罪者とされていた北朝鮮の漁民2人、彼等は脱北を希望していましたが、板門店で北に引き渡したという事件がありました。これも結局尻すぼみになっていますが、この事件で真っ先に、日本海で拘束したにも関わらず、ろくに調査もしないで北に引き渡した ”漁民” に目が向いても良さそうなのに、レーダー照射を改めて正当化するだけで不問に付しています。
また、これも日本ではあまり話題にはなりませんでしたが、昨年10月迄国防相だった元軍人の李鐘燮(イ・ジョンソプ)氏を、昨年7月に海兵隊員が殉職した事故の件で出国禁止になっているにも関わらずオーストラリア大使に任命した事も韓国では問題視されていました。要するに、政府はオーストラリアに逃がそうとしていたわけです。結局、非難が高まり、オーストラリア大使は辞任しましたが。
そもそも、尹錫悦氏や韓東勲氏は、朴槿恵大統領弾劾の検事です。弾劾に大きな役目を果たした証拠のタブレット端末も偽造であると判明しており、この時の強引な捜査から、始めから尹錫悦大統領に疑惑の目を向ける保守もいました。
李相哲教授は、これから「与野党の戦争が始まる」と仰っていますが、与野党の戦争なんて以前からの話で、尹錫悦氏を始めとする現政権中枢の人間が3年後に ”ブタ箱に入るかどうか” を賭けての戦いです。
なお、今回の選挙は対日政策が争点とはならなかったので、”野党の勝利であらためて国民の反日が示された” というのは的外れです。
野党が勝とうが負けようが、韓国民は基本的に反日ですから。ただし、「(日本にマンションを持っている)お前は親日派だ」-「お前こそ親日派だ」みたいな、争点にもなっている事もないのに親日派かどうかのレッテル貼りで誹謗中傷し合う事には飽き飽きしているようです。また、もはや日本の文化(アニメやビール、日本旅行)が好きなことは隠し様もなく、以前の様な「No Japan」運動は、自分の欲望を満たす邪魔になるので起こり難いと思います。
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