【旧朝鮮半島出身労働者問題】所謂”徴用工”裁判に見る尹錫悦の自家撞着
『ハンギョレ』が珍しく良い事を書いていました。
「自家撞着」とは自己矛盾の意味ですが、尹錫悦氏が検事時代にやった事と、大統領として「旧朝鮮半島出身労働者問題」の解決策として『第三者弁済』〔財団による、被告企業の債務の肩代わり〕案を出した事は矛盾しているという指摘で、記事のタイトルにも使われている言葉です。
まずは、元になった読売新聞とのインタビュー記事から該当の部分を引用します。
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https://www.yomiuri.co.jp/world/20230314-OYT1T50303/
日韓友好への出発点…尹韓国大統領 単独インタビュー詳報
2023/03/15 05:00
強制徴用(元徴用工)問題については、1965年の(日韓基本条約と日韓請求権・経済協力)協定を結ぶために50年代から韓日間で進められてきた過程がある。65年協定の規範的な解釈と両国政府が協定をどう解釈してきたのか、そして2018年の韓国大法院(最高裁)の判決もある。これらのことを総合的に考慮し、矛盾したり食い違ったりする部分があっても、調和するようにするのが政府の役割であり、政治指導者がしなければならない責務だと思う。
過去に強制徴用と関連し、65年の協定や両国政府の措置を問題にして、韓日関係に否定的な影響を与えることはなかった。ところが、18年の大法院判決により、韓日関係がとても困難な状況に直面することになった。この間の政治・外交的な両国の立場と、協定に関する司法府の解釈との相反する部分は、政府が知恵を絞って問題を解決しなければならないと、私は政治を始める前から考えていた。
今回、第三者弁済という解決法は、そのような次元から出たものだ。私が政治をする前、(検察官という)法律家として活動していた時にも、このような解決策が合理的ではないかと考えていた。そして、強制徴用問題で悪化した韓日関係を、必ず正常化し発展させることは、私が大統領選挙で国民に約束した公約でもあった。
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同様な事は3月21日の国民に向けたメッセージでも言っていすが、そちらはもっと簡潔でした。
>韓国政府は1965年の国交正常化当時の合意と2018年の最高裁判決を同時に満たす折衷案として第三者返済を進めることになったのです。〔全文はこちら〕
では、ハンギョレは、これに対してどこが自家撞着だと書いているのでしょうか。
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https://m.hani.co.kr/arti/opinion/column/1085921.html
[아침햇발] 양승태 기소했던 ‘검사 윤석열’의 자가당착
[朝の日差し] 梁承泰(ヤン・スンテ)を起訴した「検事尹錫悦」の自家撞着
イ·チュンジェ記者
登録 2023-03-30 18:27
修正 2023-04-03 11:24
〔画像省略〕2019年2月11日、当時ソウル中央地検3次長検事の韓東勲(ハン・ドンフン/한동훈)がソウル中央地検で梁承泰(ヤン・スンテ/양승태)元最高裁長官に対する中間捜査結果を発表している。
※韓東勲氏は現法務部長官(法務大臣)で、尹錫悦大統領の右腕とも言える人物。なかなかの敏腕。梁承泰氏は朴槿恵政権の時の大法院院長(最高裁長官)。所謂 ”徴用工” 裁判は、1審、2審と原告敗訴の判決だったものを、2012年に大法院で差し戻しされた事で、高裁で逆転勝訴、大法院でも勝訴する事が確実だった。外交問題に発展する事を危惧した朴槿恵大統領は意見書を出して、大法院の審理を止めていた。これを検事時代の尹錫悦氏と韓東勲氏は立件・有罪にまで持って行った。この後記事に出てくる金能煥(キム・ヌンファン/김능환)判事は、2012年に差し戻し判決を出した主判事。
「第3者返済という解決策は、私が政治をする前に法律家(検事)として活動する時にも(強制動員問題の解決策として)合理的ではないかと考えていた」
尹錫悦大統領が3·16韓日首脳会談を控え、日本の<読売新聞>とのインタビューでの発言を聞いて首をかしげた。
「検事尹錫悦」の行動はこの言葉と全く違っていたためだ。 むしろその反対だった。
彼は2019年ソウル中央地検長の時、朴槿恵政権の第3者弁済解決法準備を司法的に後押ししようとした梁承泰元最高裁長官を「司法壟断」で起訴した。 朴元大統領は、日本企業の強制徴用賠償責任を認めた「金能煥判決」(2012年)が父親(朴正熙)の「業績」(韓日請求権協定)を傷つけると考えた。
そのため、〔朴槿恵は〕梁承泰最高裁長官が再上告された金能煥判決を覆すか、少なくとも外交的解決策をまとめるまで時間を延ばすことを望んだ。 梁承泰は大統領の苦情を聞き入れながらも、裁判の独立性侵害論議を避けるために小技を駆使した。 尹錫悦検察長はこれを「裁判取引」と規定し、元最高裁長官を拘束してしまった。
「検事尹錫悦」が本当に第3者返済解決法が合理的だと考えたなら、強制動員裁判の件は梁承泰の嫌疑から外すべきではなかっただろうか。 梁承泰は、「最高裁の判決が韓日関係の障害にならないよう、それなりに最善を尽くしたと見ることができたはずだからだ。
むしろ「ソウル中央地検長尹錫悦」と「3次長韓東勲」はこれを最も罪質が悪い疑惑と見た。 強制動員裁判介入を公訴状に一番多くの分量を割いて最初の「犯罪事実」と記載した。 それだけではない。 裁判所が梁承泰の拘束令状を発行せざるを得ないよう世論集めにも努力した。
先立って梁承泰長官の拘束令状が棄却されるや、韓東勲は記者たちの前で裁判所による「自分の身内庇護」と猛非難した。 「ソウル中央地検長尹錫悦」は2018年、国会国政監査に出席し、「(令状棄却に)失望した。 梁承泰の捜査なしに司法壟断捜査終結は想像し難い」と脅しをかけた。 梁承泰の捜査は、金能煥判決が正当だという前提が敷かれていた。 今「大統領尹錫悦」はこの判決を外交的現実と国際法を無視した誤った判決と見ているようだ。 本当にそうなら、深刻な認知不調和だ。
大統領の意中を見抜いたかのように、側近たちは金能煥判決をけなすのに忙しい。
大統領室高位当局者は金能煥判決を再確認した2018年最高裁全員合議体判決に対し、日本が合意を破ったと言い張るのが当然だというように話す。 大統領の大学の友人である石東鉉(ソク·ドンヒョン)民主平和統一諮問会議事務処長は、「最高裁判事1人が一通り独立運動をするかのように判決した」と暴言を吐いた。 〔後略〕
この後は、金能煥判決を擁護しているので、その辺はハンギョレらしいのですが。
現在、大統領となった尹錫悦氏は、原告が差し押さえた日本企業の資産を売却するか否かという大法院の審理を止めていますが、これは朴槿恵大統領がやった事とどう違うのでしょうか。
実は、2012年の差し戻し判断が元凶であるというのは、西岡力教授も仰ってて、更に、朴槿恵大統領と梁承泰最高裁長官がやった事を罪に問うた検察官尹錫悦が2018年の大法院判決を引き出したとも仰っています。ブログ主はその受け売りです。
尹錫悦大統領は検事長時代に強引な捜査で朴槿恵大統領を有罪にしました。過去にも強引な逮捕で1ヵ月の停職処分になった事もあります。西岡教授は、別件〔国情院長の大統領に対する贈賄容疑〕を例に挙げて、「私は尹は真の法治主義者ではないと判断している。」とも書いています。〔※『日韓「歴史認識問題」の40年:誰が元凶が、どう解決するか 』(p.178) 草思社〕
ブログ主も同意見で、尹錫悦という人の行動原理は、検事としては狙いを定めた相手をどんな手を使っても有罪にしたように、「組織(職務)」であり、「法」や「真実」ではないと思っています。
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