【日韓首脳会談】輸出管理の一部緩和〔補足〕レジストに関しては2019年既に12月に緩和をしていた
前回のエントリーの補足です。
前回、青山繁晴参議院議員のブログから、
>今回の3品目については、西暦2019年12月にすでに、レジストについてその日本企業の韓国にある子会社に限定して輸出を認めていて、今回はさらにフッ化水素、フッ化ポリイミドを加えた上で「子会社に限らない」となりました。
という部分を引用しましたが、これの2019年12月云々の部分は以下のように報道されていました。『日経新聞』と『NHK』の菅官房長官(当時)の発言を報道した記事からの引用です。
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https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53628880Q9A221C1MM8000/
韓国向け輸出管理を一部緩和 経産省、20日から
経済
2019年12月20日 19:39
経済産業省は20日、韓国向けに厳格化した輸出管理を一部緩和した。半導体材料3品目のうち、レジスト(感光材)については、特定企業間で最長3年間は1件ごとに許可をとる手間が省ける仕組みを使えるようにした。「健全な輸出実績が積み上がったため」という。日韓は24日に首脳会談を控えており、輸出管理を含めた両国関係の改善が注目されていた。
20日付の通達でレジストを特定包括許可と呼ぶ仕組みの対象とした。経産省は7月以降、3品目については、日本企業が韓国に輸出する場合に1件ごとに個別の許可を取るよう求めてきた。厳格化以降、韓国向けの管理体制を緩和の方向で見直すのは初めてだ。
20日からはレジストの輸出許可実績が年6件に達した日本企業と韓国企業の継続的取引の場合、最長3年間は1件ごとに許可を得る必要のない包括許可を取れるようにした。輸出する日本企業にとっては、事務手続きの手間が省ける事実上の緩和措置となる。
7月の厳格化以降、対象3品目のうち最初に個別許可が出たのがレジストだった。経産省の飯田陽一貿易管理部長はこれまで、3品目の厳格化措置を見直す条件として「健全な輸出実績の積み上げ」を挙げていた。
経産省は今回の見直しが客観的な輸出実績に基づく判断であることを強調。日韓の外交関係を考慮した判断との見方を否定している。同省の担当者は「今回、特定の企業間で6件の実績が積み上がったため、この企業間取引のみが対象となる」と説明した。
3品目のうち残るフッ化水素とフッ化ポリイミドに関しては、管理の仕組みを一切見直していない。
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https://www.nhk.or.jp/politics/articles/statement/27951.html
2019年12月23日
輸出管理の運用一部見直し
「緩和措置ではない」
韓国向けの半導体などの原材料のうち「レジスト」と呼ばれる品目で、輸出管理の運用を一部見直したことについて、菅官房長官は単なる申請手続きの変更で、輸出管理の緩和措置ではないという認識を示しました。
韓国への輸出管理をめぐって、経済産業省は今月20日、半導体などの原材料のうち「レジスト」と呼ばれる品目について、日韓の特定の企業どうしの取り引きに限って、運用を一部見直しました。
これについて菅官房長官は閣議のあとの記者会見で「これまでの審査を通じて確認した取り引きの実態を踏まえた、単なる申請手続きの変更だと承知している。今後も、個別に許可申請を求める方針に変更はなく、緩和措置ではないと聞いている」と述べ、輸出管理の緩和措置ではないという認識を示しました。
また22日、中国で行われた日中韓3か国の経済貿易相会合のあとに、梶山経済産業大臣が韓国のソン・ユンモ(成允模)産業通商資源相と立ち話をしたことについて、菅官房長官は「短時間、立ち話をしたと聞いているが、内容へのコメントは控えたい」と述べるにとどめました。
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「最長3年間は1件ごとに許可をとる手間が省ける仕組み」というのが2019年7月以前と同じ運用方法を意味しますが、「特定企業間」という部分が、韓国側の輸入者を限定したという事のようです。
念の為、どんな通達が出ていたのだろう?と思って経済産業省のサイトを探したのですが、プレスリリースのような分かりやすいものではなくて、下記のような通達で、韓国の「か」の字もありませんでした。
https://www.meti.go.jp/policy/anpo/law09.html#20191220
包括許可取扱要領の一部を改正する通達について
包括許可取扱要領で定める条件を満たした当該企業の当該品目の反復継続的な取引に限り、個別の取引ごとに申請書を提出する必要がないよう、手続を変更します。
■通達改正 令和元年12月20日公布、施行
条文・新旧 https://www.meti.go.jp/policy/anpo/law_document/tutatu/191220.pdf
添付のPDFを見ると、「り地域」〔←ここに属するのは韓国のみなので韓国のこと〕の取扱を変えています。※画像は一部キャプチャ
変更点は、「輸出令別表第1の7の項(19)に掲げる貨物であって、貨物等省令第6条第 19 号に該当するもの」について、【旧】では「り地域」は適用外だったものを、【新】では「特定包括輸出許可/特定子会社包括」という扱いにしています。
ここで、「貨物等省令第6条第 19 号」は何かと調べると、これがまさしく「レジスト」なのですが、これを読むと、レジストとは言っても、特にセンシティブな性質のものしか対象になっていなかったことが分かります。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=403M50000400049
十九 レジストであって、次のいずれかに該当するもの又はそれを塗布した基板
イ 半導体用のリソグラフィに使用するレジストであって、次のいずれかに該当するもの
(一) 一五ナノメートル以上一九三ナノメートル未満の波長の光で使用するように最適化したポジ型レジスト
(二) 一ナノメートル超一五ナノメートル未満の波長の光で使用するように最適化したレジスト
ロ 電子ビーム又はイオンビームで使用するために設計したレジストであって、〇・〇一マイクロクーロン毎平方ミリメートル以下の感度を有するもの
ハ 削除
ニ 表面イメージング技術用に最適化したレジスト
ホ 第十七号ヘ(二)に該当するインプリントリソグラフィ装置に使用するように設計又は最適化したレジストであって、熱可塑性又は光硬化性のもの
これに該当するレジストは、CISTEC(安全保障貿易情報センター)の『2019.9 No.183 CISTEC Journal』ー「〈2〉日韓間の混乱を招いた安全保障輸出管理に関する誤解」〔PDF〕によると、
>(p.3)しかし実際にリスト規制対象として許可対象となるのは、レジストでは、極めて波長の短い紫外線(極端紫外線)を使う「EUV」用などに限られ、現在、半導体の量産で使われているものは非該当で許可対象ではない。数量ベースでは、1%にも満たないごくわずかな量
でした。
上記記述に続いてフッ化水素やフッ化ポリイミドに関しても同様の説明がありますが、大量破壊兵器等に使われる恐れの無いものも含めた「対日依存度が91.9%(レジスト)、43.9%(フッ化水素)、93.7%(フッ化ポリイミド)」という数字だけが一人歩きして、韓国だけで無く、日本のメディアなども、「規制だ、厳格化だ」〔←これも言葉遊びであると個人的には思う〕だと騒いでいたのです。
いずれにせよ、上記3品目は厳格化以前の扱いに戻りましたが、韓国はホワイト国(グループA)復帰はなりませんでした。つまり、キャッチオール規制〔※〕の適用は免除されません。
※大量破壊兵器及び通常兵器の開発等に使われる可能性のある貨物の輸出や技術の提供行為などを行う際、経済産業大臣への届け出およびその許可を受けることを義務付けた制度。
但し、何度も指摘しているように、このタイミングで運用を見直したのは、韓国に対し ”輸出規制は徴用工裁判の報復である” という韓国側の主張を裏付けるような結果になってしまいました。
今後「対話」を開始するようですが、これは「協議」という「交渉」を感じさせる言葉を避けたのだと思います。しかし、言葉に拘るならば、「実務者間で管理状況の定期報告」というようなもっと「事務的」なものを匂わす言い方にすべきだと思います。
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