【”徴用工”問題】3月6日、韓国側が解決策を発表
韓国政府が解決策を発表したのは3月6日(月)の午前中でしたが、その前後から情報が錯綜しており、また、今でも細かい部分が不透明で、なかなか総括する事ができませんでした。
全体としては、あくまで ”徴用工” 裁判、正確には、原告団が差し押さえている日本企業の資産の現金化を阻止するという部分のみですが、韓国内で解決し、被告となっている企業は財団には出資しないという形になりました。但し、後述しますが、日本側も徴用工問題には関わらない部分で ”お土産” を持たせてやるようです。
あくまで、と書いたのは、そもそも、「不当な植民地支配による不法行為」というのが虚構であり、「不当な植民地支配(=不法な併合)」も日韓交渉では妥協できずに棚上げした議論を一方的に韓国司法が認定した事であり、この根本的問題はそのままだからです。
2015年の慰安婦合意と異なるのは、(反故にはされましたが)「これ以上この問題を持ち出さない」というような約束はありません。相変わらず、自称徴用工達を政府が ”被害者” と呼び、佐渡金山の世界遺産登録にも反対の立場です。
テクニカルな話だけすれば、一番気になっていたのは、財団と被告企業が債務を譲渡する「併存的債務引受」契約をするかどうかでしたが、「第三者弁済」という表現が使われました。
違いは、「併存型債務引受」は、以前のエントリーで述べたように財団と被告企業の契約が必要で、肩代わりする財団は求償権(被告企業に請求できる)を持つ事、韓国の民法では、債権者(原告)の同意が不必要な事。「第三者弁済」は求償権を求めず、債権者の同意が必要である点です。但し、同意しない債権者の分の金は「供託」すればいいとの判断を韓国政府はしているようです。
ちなみに、韓国政府による「第三者弁済」がろくに議論にもならなかったのは、原告が猛反対した事と、政府が払う為には立法化が必要で、少数与党では絶対に無理、というのが建前です。
しかし、求償権については、曖昧にされているようです。
前述の ”お土産” とは、日韓の経団連が日韓の留学支援や交流といった青少年のための基金を設立する事に合意しました。恐らく、ここに被告企業が出捐する事になるのでしょう。この基金自体は否定はしませんが、徴用工の財団への出捐の代わりという印象は拭えず、何より、原告団は、そんな金があるなら財団に出せと、却って怒りに火を点けるかも知れません。
また、「ホワイト国復帰」(現在は「グループA」と表現)を視野に入れて、対話を再開する事となりました。佐藤正久議員によると、元々、韓国側の経産省に該当する部も日本の経産省からレクチャーを受けて、輸出管理をきちんとやる方向に行ってたそうで、それをいきなりWTOに提訴して、文在寅がぶち壊したのだそうです。
従って、韓国側さえ態度を改めれば、ホワイト国復帰を目指すというのには反対できませんが、やはり、この解決策と同時に出た事で、”取引” の観は拭えません。しかも、韓国側はその対話の間は、WTOへの提訴を取り下げるのではなく、「中断」するとの事です。
また、そもそも、輸出管理は日本が決める問題であって、交渉でどうにかするというのもおかしな話です。
それでも、恐らく韓国側(世間一般)は、6日以前から「ホワイト国復帰」が日本のメディアからも報じられていたので、即刻の復帰を期待していたらしく、結果としては、韓国の望むものは何一つ得られなかった事で、政権に批判的なメディアは『完敗』という表現で尹錫悦政権を批判しています。
一方、保守メディア、と言っても、内政に関しては右派というだけで、反日には変わりありませんが、政権を批判するよりは、日本に対する不満を述べる論調が目立ちます。
取り敢えず、そのような論調の『中央日報』のコラムをご紹介します。
* * * *
https://www.joongang.co.kr/article/25145476#home
민망한 과거, 졸렬한 이웃
2023.03.08 00:58
https://japanese.joins.com/JArticle/301781
【時視各角】韓国の恥ずかしい過去、拙劣な隣国日本
2023.03.08 11:43
日本側:被害者個人に対して補償してほしいという話か。
韓国側:われわれは国として請求する。個人に対しては国内で措置したい。
日本側:韓国人被害者に対してできるだけ措置しようと思うが韓国政府が具体的な調査をする用意があるのか。
韓国側:被害者に対する補償はわれわれの国内で措置する性質のことと考える。
日本側:日本援護法を援用して個人ベースで支給すれば確実になると考える。
韓国側:それをわれわれは国内措置としてわれわれの手で支給したい。
日本側:被徴用者の中には負傷者もおり、死亡者もおり、また負傷者の中でもその程度が違うはずだが、それを知らずにむやみにお金を支給することはできないのではないか。両国国民の理解を促進し国民感情を和らげるためには個人別に支給するのが良いと考える。
韓国側:補償金支給方法の問題だが、人員と金額の問題がある。とにかくその支給はわれわれ政府の手でしたい。
2004年に公開された韓日会談予備会談記録の一部だ。1961年5月10日に日本の外務省会議室で韓国側7人、日本側11人が日帝強制動員被害者補償問題を協議した。日本側は被害者に対する日本政府の個別支給を主張した。韓国側は資金をくれれば「国内問題として措置したい」と言った。結局日本が無償で提供する3億ドルに一括して盛り込むことで妥結した。そして1965年に結んだ韓日請求権協定第2条「両国は請求権問題が完全かつ最終的に解決されたことになることを確認する」とまとめられた。
日本政府が個別支給を主張したのは、払う金額を減らし交渉力を高めるためだったかもしれない。経済開発という課題を抱えた韓国政府は大金が切実だった。韓国政府は韓日基本条約締結から10年が過ぎた75年から77年まで強制動員死亡被害者8552人の遺族に30万ウォンを支給した。約26億ウォンが使われた。韓日国交正常化過程でその3億ドルを含め合計8億ドル(公共借款2億ドル、商業借款3億ドル)が日本から支払われた。その資金で浦項製鉄(現ポスコ)などの企業を作り、道路などのインフラを整備した。ポスコのほか韓国電力、韓国道路公社、韓国鉄道公社、韓国水資源公社、KT、KT&G、外換銀行(ハナ銀行と合併)が代表的受恵者だ。
「請求権協定は請求権項目別の金額決定ではなく政治交渉を通じて総額決定方式で妥結したため項目別受領金額を推定するのは困難だが、韓国政府は受領した無償資金のうち相当金額を強制動員被害者の救済に使うべき道義的責任があると判断される。(中略)1975年の韓国政府の補償当時に強制動員負傷者を対象から除外するなど道義的次元からみると被害者補償が不十分だった」。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代の2005年に「韓日会談文書公開後続対策関連官民共同委員会」が出した結論だ。その後特別法が作られ強制動員による死亡者の遺族に2000万ウォン(70年代に30万ウォンを受け取っていた場合は234万ウォン控除)、重傷者に最大2000万ウォンが支給された。大多数の負傷者が死亡していた時だった。
「ポスコの設立経緯と企業の社会倫理的責任を考慮すれば強制動員被害者と遺族に相当な努力をすることが望ましい」。2009年のソウル高裁の判決文の一部だ。日帝被害者団体会員らがポスコを相手取り起こした慰謝料請求訴訟でポスコの法的責任はないと判決し、自発的被害者支援を勧めた。他の恩恵企業、さらには韓国政府と国民にも該当するものだった。
韓国の恥ずかしい過去、過ちの認定とそれにともなう責任をどうにか避けようとする拙劣な隣国、政略的計算に汲々とした両国の政治のため強制動員問題はこじれるだけこじれた。一昨日韓国政府が国内の非難を甘受して未来に進むドアを開けた。今度は日本が変わる番だ。

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