【安重根】捏造まみれの作られた英雄(2)母の「手紙」の真実と伊藤博文を殺した15の理由
前回のエントリーの続きです。
2月10日で『朝鮮日報』が掲載した記事は、「[단독] “안중근 모친의 ‘편지’는 일본인 승려의 조작이었다” [유석재의 돌발史전]」([単独]「安重根の母親の『手紙』は日本人僧侶の捏造だった」 [ユ·ソクジェの突発史伝])というタイトルで、母の「手紙」とされるものがどういう経緯で捏造されていったのかが詳しく解説されています。
ユ・ソクジュという方は記者で、実際に手紙の真実に関する論文を書いたのは、都珍淳(도진순/ド・ジンスン)教授という、現代史専門の史学科の教授です。この記事はド・ジンスン教授に取材した内容を書いた物です。
以下、記事を読んでいきます。
* * * *
〔補足は緑字で追加。多少日本語として不自然でも理解に影響が無いと思われる翻訳は機械翻訳ママ〕
https://www.chosun.com/culture-life/relion-academia/2023/02/10/QZZWKAWTVRGVDJI4XADAMAN34Q/
安重根(1879~1910)義士の義挙を扱った最近公開された映画「英雄」で観客を大きく感動させた部分は、結末で安重根の母親チョ・マリア(1862~1927)女史〔※趙マリア/本名:趙姓女〕が登場する場面でしょう。 チョ女史は監獄にいる息子の安重根にハングルで書いた手紙を伝えながら「命を乞わずに大義のために死ね」と励まし、寿衣〔※死に装束〕を伝えます。〔中略〕
文の順序と一部の表現の違いはありますが、その手紙の内容はこれまで様々な書籍やメディアを通じてよく知られているものです。 すぐ下のⓐです(これからは資料を「ⓐ」と「ⓑ」に分けて区別します)。
ⓐ「お前がもし老母より先に死ぬことを不孝だと思うなら、この母は笑いものになるだろう。君の死は君一人のものではなく、朝鮮人全体の公憤を背負っているのだ。お前が訴えるなら、それは日帝に命を乞うことである。お前が国のためにこれに至ったのだから、他のことを考えずに死ね。正しいことをして受けた刑なのだから、卑怯に命を乞うのではなく、大義のために死ぬことがこの母への孝行である。おそらくこの手紙がこの母が君に書く最後の手紙になるだろう。ここに刺繍を施して送り出し、この服を着て行きなさい。母は現世でお前と再会することを期待していないから、次の世界では必ず善良な天父の息子になってこの世に出てきなさい。」
〔原文〕ⓐ”네가 만일 늙은 어미보다 먼저 죽는 것을 불효라고 생각한다면, 이 어미는 웃음거리 될 것이다. 너의 죽음은 너 한 사람의 것이 아니라 조선인 전체의 공분(公憤)을 짊어지고 있는 것이다. 네가 항소를 한다면 그것은 일제에 목숨을 구걸하는 짓이다. 네가 나라를 위해 이에 이른 즉, 딴 맘 먹지 말고 죽으라. 옳은 일을 하고 받은 형이니 비겁하게 삶은 구걸하지 말고, 대의(大義)에 죽는 것이 이 어미에 대한 효도이다. 아마도 이 편지가 이 어미가 너에게 쓰는 마지막 편지가 될 것이다. 여기에 수의를 지어 보내내 이 옷을 입고 가거라. 어미는 현세에서 너와 재회하기를 기대치 않으니, 다음 세상에서는 반드시 선량한 천부(天父)의 아들이 되어 이 세상에 나오너라.”
現在の大半の韓国人は、安重根の母親が死刑を控えた息子にこのような感動的な言葉を伝えたことを信じて疑いません。
ところが...私が先日、他の資料で見たチョ・マリアの伝言はかなり違う内容でした。
ⓑ「母は現世であなたと再び会うことを望まないので、あなたはその後神妙に刑を受け、早く現世の罪悪を洗い流した後、次の世界では、必ず善良な天の息子になり、世界に再び出て来なさい。あなたが刑を受ける時、ヴィレム神父があなたのために山を越え、水を渡り、長い道のりを行ってあなたの代わりに懺悔をするのだから、あなたはその時、神父の導きの下、私たちの教会の法度に従って静かにこの世を去りなさい。」
〔原文〕ⓑ”어미는 현세에서 너와 다시 만나기를 원하지 아니하노니 너는 이후 신묘(神妙)하게 형(刑)을 받아 속히 현세의 죄악을 씻은 후 다음 세상에서는 반드시 선량한 천부의 아들이 되어 세상에 다시 나오너라. 너가 형을 받을 때 빌렘 신부님이 너를 위해 산 넘고 물 건너 먼 길을 가서 너 대신 참회를 올릴 것이니, 너는 그때 신부님의 인도 아래 우리 교회 법도에 따라 조용히 이 세상을 떠나거라.”
〔中略〕
一体どうなったのでしょうか、真実は何なのでしょうか。
まず、「手紙」と呼ばれるⓐの実体と出所は非常に曖昧でした。2016年にこの手紙について「伝えられる話であり、実際の記録として残っているものはない」という報道もありましたが、いつ、どの経路で伝えられたのかは言及されていませんでした。
ところが、2019年3月7日、インターネットメディア「ニュースストップ」に意外な記事が掲載されました。 イスラム教の専門家であるキム・ドンムン氏が書いた記事です。 手紙ⓐが最初に登場した資料は、日本の大林寺の住職である齋藤泰彦が書いて1994年1月に出版した本「わが心の安重根」だったというのです。この文章は、「オンラインや日常で回覧されているチョ・マリア夫人の手紙は、日本人の斎藤泰彦住職を通じて唯一伝わっている口説に過ぎない」と結論付けています。
斉藤はどんな根拠でそんな「手紙」の内容を本に書いたのでしょうか。 先日、キム・フンの小説「ハルビン」が安重根を歪曲したと論文を書いて批判した(記事URL)学界の安重根専門家であり、韓国近現代史学者である昌原大のド・ジンスン教授に電話をしました。 彼はちょうど映画「英雄」を見た後、問題が深刻だと思い、「チョ・マリアの手紙」をテーマに論文を書いて「歴史批評」に投稿したそうです。
論文のタイトルは「安重根の母チョ・マリアの『手紙』と『伝言』、捏造と実体」です。ジョマリアの「手紙」の真偽問題に関する学界の最初の論文と言えます。では、この未発表論文の内容が何なのか分析してみましょう。〔後略・・・次回に続く〕
* * * *
ここまでで分かるのは、2016年に既に手紙が実在しないという報道があり、2019年3月7日には、大林寺の住職が捏造したという報道もあったのに、世間に広まることは無かった、という事です。
ここでお分かりでしょう。安重根と言えば韓国の英雄。その歴史に新発見があったのに議論も起きずに黙殺されたのは、韓国人が「信じたくないもの」だったからです。
詳しくは次回のエントリーに譲りますが、手紙では無く「伝言」でした。
ここでブログ主は記事中にリンクが貼られている別の記事とコメントを読んでみました。
小説『ハルビン』があまりにも創作が酷い事をド・ジンスン教授が指摘する内容ですが、ここには「母の手紙」については書かれていません。
歴史小説の場合、例えば台詞は作家の想像で書かれることは致し方ありませんが、教授は、基本的な事実が歪曲されていることを批判したようです。
コメントも、「小説と事実の乖離」に関する事が多く、教授の姿勢に賛同するものが殆どでしたが、中にブログ主の目を引くコメントかありました。以下に引用します。
2022.11.14 15:42:47
安重根が麗水·順天監獄で書いたという東洋平和論を読んでみることを勧める。 私はひどくがっかりした。
32
3
事実と自由
2022.11.14 15:50:33
天皇主義者の安重根は、日本中心の東洋平和論を主張したのだ。 チン・ミョンヘンの「朝鮮レジスタンスの二つの顔」。
前々回のエントリーでご紹介したように、実は、安重根は天皇を崇拝し、獄中で書いた『東洋平和論』では日露戦争の勝利を喜び、日本がアジアを牽引する事を望んでいたのです。
ここでコメントに出てくる「チン・ミョンヘン」とは以前のエントリーでご紹介した眞明行氏(ペンネーム)で、著書『조선 레지스탕스의 두 얼굴(朝鮮レジスタンスの二つの顔) 』は、韓国人にとって英雄とされる人物は実は歪曲されたものだとして、第13章と14章では安重根を扱っています。
ここでは最後に安重根が伊藤博文を殺した15の理由とそれに対する反論を、金完燮(キム・ワンソプ)氏の『親日の為の弁明2』よりご紹介します。この方の本は、荒削りというか、一部 ”ぶっ飛んだw” 主張もあるのですが、物事の真実を見抜く目は天才的だと思います。
※3の「五条約」と「七条約」とは、第一次日韓協約と第二次日韓協約を意味するもの。
次回に続きます。
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