【韓国】「相対的剥奪感(상대적 박탈감)」という言葉
韓国人YouTuberの『キムチわさび』の最新の動画「W杯から解く反日の本質/월드컵에서 당신은 주인이었나요?」で、ある言葉を思い出しました。
それは掲題の「相対的剥奪感(상대적 박탈감)」。
動画の内容は、サッカーW杯2022で、16強に一足先に進出を決定した日本チームが、「韓国チームも16強に来て欲しい」と言ったのに対し、〔恐らく、どこかのメディアがわざわざ質問したのでしょうが、〕韓国のある選手が、「日本の16強入りは正直憎らしかった」と答えた事を比較し、批判する動画です。
問題の韓国選手の発言は、そもそも、記者から「日本の16強入りは憎らしかった?」という誘導的な質問があったから、という擁護の声もあるようですが。
* * * *
前述の「相対的剥奪感」とは、元は社会学の言葉で、例えば、英語のWikipediaにも「Relative deprivation」という見出し語になっています。
日本語で「相対的剥奪感」を検索すると上位に韓国メディアの『東亜日報』日本語版の記事が出てきて、このように説明されています。
https://www.donga.com/jp/article/all/20030928/276771/1
[オピニオン]相対的剥奪感
2003/09/28
◆第2次世界大戦中、米軍の進級と士気の相関関係を扱った研究でかなり興味深い内容を読んだことがある。空軍兵士の進級率が平均47%で、憲兵隊の進級率24%より高いにもかかわらず、空軍兵士が自分の進級可能性に対して憲兵より悲観的に考え不満を抱いているという事実だった。これは客観的な状況はどうであれ、人は自分を取り巻く条件がよくなるほど期待感が高まり、その期待が満たされない時、周囲の人と比べて一種の剥奪感を感じるということを意味する。まさに「相対的剥奪感(relative deprivation)」の問題だ。
◆「米国の軍人(The American Soldier)」というタイトルの本にあった上の事例は、進級希望者4人のうち1人だけが昇進して多数が脱落する場合ならむしろ不満はないかもしれないが、ほぼ半分が昇進するにもかかわらず自分だけが除外されるという事実は耐え難く、結局相対的剥奪感による不満が大きくなるしかないという普通の人の心理を反映していると思われる。このような相対的剥奪感の理論は、フランス革命に関する名著を残したトックビルが、高い発展を築いた地域で大衆の不満がより高いと指摘した、いわゆる「トックビルのパラドックス」を説明する根拠としてもよく援用されている。
この例は何となく理解できます。
しかし、韓国では「相対的剥奪感(상대적 박탈감)」が、ちょっと違ったニュアンスで比較的よく使われ、産経の黒田勝弘氏は以下の例で、韓国人の「相対的剥奪感」を説明していました。
曺国(チョ・グク)というソウル大学教授で、文在寅政権で民情主席秘書官や法務長官〔法務大臣〕に抜擢された人物がいますが、クリーンなイメージとは裏腹に、その地位や肩書を利用して娘や息子の内申点を嵩上げし、実力以上の大学に合格させたり、奨学金を貰ったというスキャンダルで、現在裁判中です。
日本で言えば、裏口入学とかコネ入学という類いの話で、確かに憤りを感じますが、韓国人はこの娘や息子の件を知って、「相対的剥奪感」に見舞われる、と黒田勝弘氏が説明していました。〔 『反日 vs. 反韓 対立激化の深層』』(角川新書)p.210〕
>声が大きく力のある者、特権層が役得や人脈などで甘い汁を吸うなど限られた者だけがいい思いをしたとなると、周りはそれに対し「相対的剥奪感」を感じさせられるといって批判、非難の声を上げる。
それでは、韓国人の言う「相対的剥奪感」はどういうものなのでしょうか? この「相対的剥奪感」については、以前、ジャーナリストの崔碩栄氏がツイートしていらっしゃいました。
崔碩栄
@Che_SYoung
韓国には「相対的剥奪感상대적 박탈감」という言葉がある。金持ちの外車、豪邸等を見て、それを持ってない一般人が金持ちに対して「反感」を持つこと。嫉妬に近い感情。他の国では金持ちを見て「羨ましい」「私もあのようになりたい」が多いらしいが、韓国では反感、嫉妬のような反応が多い。
崔碩栄
@Che_SYoung
承前)なぜ「剥奪感」かというと、
「私はいい環境に恵まれてない」「最初からチャンスを与えられなかった」「不公平の犠牲者」のような思考に繋がるからだ。つまり被害妄想。金持ちや成功者を見る→被害妄想→反感、嫉妬。今回、その対象になったのが「サムスン」。古くから対象にだったのが「日本」
午後7:31 · 2017年8月31日
先の米国軍人の昇進の例のように直接の競争相手に対する感情ではなく、成功した他者がいるだけで、自分が被害を受けたように感じるのが韓国の「相対的剥奪感」のようです。
黒田氏は、これを映画『パラサイト(寄生虫)』を解説する中で使っているのですが、この映画に出てくる被害者の富豪一家は、韓国のドラマでステレオタイプ的に描かれる財閥と違って善人として描かれているのだそうです。その家に入り込んだ元半地下の家族を搾取して金持ちになったわけではありません。
しかし、この半地下家族や、おそらく映画を観ている韓国人も富豪一家に対して「相対的剥奪感」を感じるという事を言いたいのでしょう。
面白いことに、先に挙げたWikipediaの「Relative deprivation」には、これを書いている現在、日本語版の説明がありません。単に社会学の分野で日本語に訳して使わないだけなのかもしれませんが。
以前も取りあげた事がありますが、スケートの浅田真央さんがキム・ヨナさんに次いで2位だったときに発した「くやしい」という言葉が韓国語で曲解されて、韓国でバッシングを受けた事があります。
日本人にはさほど違和感の無い「くやしい」は、「実力を出し切れなかった自分に腹立たしい」のだろうと解釈しますが、この感情を表す言葉が韓国語にはなく、これに近い言葉に訳した所、「他人のせいで自分が不遇で憎たらしい」という意味になってしまったからです。
つまり、韓国では、自分の不幸は他人のせい なのです。
黒田勝弘氏は、この例で、朴槿恵弾劾の原因となった「崔順実(チェ・スンシル)スキャンダル」も挙げています。
朴槿恵の親しい友人の崔順実の娘が名門の梨花女子大学に裏口入学をした事で韓国人が感じた「相対的剥奪感」ですが、その娘は少なくとも馬術でアジアチャンピオンになる程度の実力があり、特待生として有名大学に入学しようと、日本人なら、そういうケースもあり得るだろうと納得しますが、韓国人はこれが一番許せなかったのだろうと黒田氏は分析しています。
最後に、「相対的剥奪感(상대적 박탈감/サンデジョッ パッタルガム)」の解説として、『KONEST』というサイトの「Today's はんぐる」での説明を転記します。
상대적 박탈감
発音:サンデジョッ パッタルガム
意味:相対的剥奪感
他人と比べがちな時に…
他人が自分に比べて多くの権利や資格、地位、財産などを持っている時に、実際には失ったものはないはずなのに何かを自身が奪われたり、疎外されていると感じることを言います。
元は社会学で使われる用語でしたが格差が広がり、SNSが普及した韓国ではこの表現を目にすることが間々あります。
スターの日常を紹介するテレビ番組の中で、豪華なマンションに住み私生活を満喫する芸能人の姿にこの「相対的剥奪感」を感じるという視聴者の声があがったこともあります。
韓国人が「反日」の理由の一部はこれではないでしょうか?
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