【言葉】日本語の「庶民」と韓国語の「庶民」
単純にニュアンスの違いが興味深かったのでエントリーします。
3ヵ月ほど前の『キムチわさび』さんの動画「日本の庶民と韓国の庶民/삶의 주인」からです。
動画では、日本語の「庶民」にはネガティブなニュアンスが無いのに比べ、朝鮮時代の「庶民(서민/ソミン)」には、「貧しく暮らす苦しい(人々)」、「両班から被害を受ける(人々)」といったニュアンスがあるのだそうです。この感覚を現代の韓国人も持ち続けていて、政府の補助とか特別措置を当てにする...という内容です。
日本語で「庶民」という言葉がいつ頃から使われていたのかは分かりませんが、調べたら中国の『礼記』〔※五経の一つ。中国古代周末から秦・漢にかけて行なわれた社会的儀礼に関する多くの儒者の所説を編集したもの。【広辞苑】〕に見られる、儒教の用語なので、これを由来として古くからあった言葉だとは思います。
中国語の『庶民』のWikipediaを調べると、
>周王朝の封建制度の下では、貴族に属さない平民は、権利や義務、さらには法律の面でも貴族とは異なる扱いを受けており、例えば『礼記-屈折』には「礼は平民以下に及ばず、罰は大官に及ばず」と記されている。 西周時代には庶民と貴族の動きが少なくなり、春秋時代には庶民が武功によって貴族に昇格し、貴族はどんどん平民に解体されていき、戦国時代には、この貴族と庶民の分離の秩序が崩れていったのである。 戦国時代に貴族と庶民の区別がなくなり、それ以来、爵位を持たず、下層階級に属さない平民のことを「庶民」と呼ぶようになった。〔機械翻訳〕
と、身分の違いによるものではあっても、階層間の移動も古くからあったようで、「下層階級に属さない」普通の人々を指すようです。
一方、朝鮮では身分が固定化され、庶民層である『常民(サンミン)』は、「賎民」(奴婢・白丁)では無いものの、「良民」の中の、両班>中人(医者や通訳といった専門職)の下に位置し、その多くは小作人で、搾取される対象であった歴史が長かったため、現在でもネガティブなニュアンスが残っていると思われます。サンミンを軽蔑していう『常奴(サンノム)』という言葉もあります。
以下はnum.wikiという韓国版のWikipediaのようなサイトの「서민(庶民)」の説明です。〔機械翻訳ママ〕
>たまに中流層[2]の生活をはるかに超えた、豊かな生活を送る人でさえ自分に情感があり、有利なイメージを作るために自分を庶民と名乗ることもあるが、あくまで謙遜で実際には平均より下位所得を稼ぐ人たちが庶民に当たる。 言い換えれば、庶民は下流層に近い。
>夏休みや名節シーズン、仁川空港に出てみると、海外に出国する人たちでうじゃうじゃする姿が見られるが、韓国で休暇で海外、特にヨーロッパや北米の方に行ってくることができるということは、ある程度中上位圏の経済力を持つ人たちだという意味だ。 いくつかのマスコミはこのような現象を「民族大脱出」という用語まで使いながらレポートをしているが、庶民層には相当な異質感と違和感として感じられる。
同じ漢語を使っていても、いえ、漢字にすると同じだからこそ、ニュアンスの違いには敏感であるべきですね。
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