【赤い水曜日】金柄憲所長に対する朝日新聞記者の攻撃
昨日(11月17日)に行われた金柄憲(キム・ビョンホン)所長の記者会見で、朝日新聞の記者が質問しました。
先に、質問の対象である『赤い水曜日』の該当箇所を提示します。〔pp.61-63〕
この部分の前段を説明すると、2022年2月24日に金柄憲所長が、政府からの慰安婦補助金支給が適切かどうかを監査請求した所、棄却されたという話から始まります。
補助金は慰安婦被害者法に定義された被害者だと認定された元慰安婦に支給されますが、その要件は「日本政府・軍によって強制的に連行された」事、「日本軍によって性を搾取された」事〔=性奴隷〕なので、金柄憲所長は、それに該当する元慰安婦はいないという確信を持って監査請求を提出したのですが、監査院は棄却しました。
そして、棄却の事由の一つとして、「日本政府も『河野談話』で認めているではないか」という趣旨の事が書かれていました。
そこで画像の箇所に繋がります。
朝日新聞の北野記者(恐らく、北野隆一編集委員)が以下のような質問をしました。
該当の質問は54:22~で、記者が質問したのは以下の箇所に対してです。
>『河野談話』では直接であれ間接であれ『関与した』とし、第三者の立場で一定の役割を行ったかのように表現したが、むしろ『慰安婦制度の直接運営』の方が表現として適切だろう。
質問は、「金先生は、慰安所が日本軍が直接運営したという解釈なら日本軍は当事者なので、『関与した』という第三者的な表現はまだ生ぬるいと考えているのか?」という趣旨です。
つまり、「この一文は河野談話を説明しているのではなく、金柄憲所長ご本人の慰安婦制度に対する認識か?」という質問で、実はブログ主もこの箇所は分かり難かったのですが、もう少し先まで読むと、河野談話の説明だと言う事が分かります。
と言うのは、この先で、「河野談話のポイントはこうだ」とし、
- 慰安婦募集には甘言、強圧があった。
- 官警等が直接これに加担したこともあった。
- 朝鮮人女性の募集、移送、管理等には日本政府の甘言、強圧があった
- 総じて本人達の意思に反して行われた。
- 慰安所における生活は、強制的な状況下での残酷なものだった。
と要約しているからです。
しかし、その後、「これは誤りで、実態はこれこれこうだ」と、実情を説明する文章に繋がるのです。
あらためてこの章を読んでみましたが、画像の部分を読んでいる時には、確かに金柄憲所長の認識を述べていると勘違いしそうな文章だとは言えるでしょう。
但し、章全体を読めば、このような質問は出てこないはずです。
* * * *
ところで、このブログでも過去に何度か説明していますが、金柄憲所長の『河野談話』の解釈は誤りです。
いえ、そう読み取ってもしかたがない悪文なのですが、これは外務省と韓国政府が打ち合わせて、誤読される(=誤解されても構わない)ように作成された文章だからです。
「誤り」と書きましたが、河野談話は日本と韓国では解釈が異なるので、日本側の解釈に沿えば誤読という意味です。
詳しくは過去のエントリー「【河野談話】「河野談話を取り消せ!」という人達は正しく『河野談話』を理解しているのだろうか?」に書きましたが、河野談話そのものは「朝鮮人女性の強制連行は認めていない(つもり)」なのです。
言ってみれば、「1910年8月22日以前に大日本帝国と大韓民国との間で締結されたすべての条約及び協定は、もはや無効である」〔日韓基本条約 第2条〕という玉虫色の表現と似ています。日本側は「もはや無効」を「(日韓併合は)合法だったが無効になった」と解釈し、韓国側は「始めから無効(不法)だった」と解釈しているようなものです。これは、これ以上お互いに「合法か不法か」で争うのは止めようという合意の上での条文でしたが、2018年の大法院判決〔正確には、李明博政権の時(2012年)の高裁差し戻し〕で韓国に裏切られました。
そして、これが河野談話の厄介な所なのですが、素直に読めば、”官警等が甘言・強圧によって朝鮮人女性を本人達の意思に反して動員した” と読めるのです。
金柄憲所長もそのように解釈しているのは、『赤い水曜日』に書かれた「河野談話のポイント」を読んでも分かるでしょう。
しかし、その後の安倍総理の国会での中山恭子議員〔日本のこころ所属〕の質疑に対する答弁「第190回国会 参議院 予算委員会 第3号 平成28年1月18日」(PDF:pp.32-34辺り)を読んでも分かるように、それは明確に否定しています。
そして、だからこそ、安倍総理や菅(すが)総理も河野談話を継承すると発言しているのです。
https://www.nikkei.com/article/DGXLASFK28H6E_Y5A420C1000000/
日経新聞:安倍首相「河野談話見直す考えない」
2015年4月29日 1:48
安倍晋三首相は28日昼(日本時間29日未明)の日米首脳会談後の記者会見で、従軍慰安婦問題について「人身売買の犠牲になり、筆舌に尽くしがたいつらい思いをされた方を思うと非常に心が痛む」と強調した。そのうえで旧日本軍の関与を認め謝罪した1993年の河野洋平官房長官の談話を「継承し見直す考えはない」と語った。
https://www.sankei.com/article/20210625-QN6VY4SPQ5LN3G4HSXE6J2GIKE/
産経新聞:村山、河野談話を「継承」 答弁書決定
2021/6/25 18:56
政府は25日、先の大戦をめぐり「植民地支配と侵略への反省とおわび」を明記した戦後50年の村山富市首相談話を、菅義偉内閣として継承しているとの答弁書を閣議決定した。慰安婦問題で旧日本軍の関与を認めた平成5年の河野洋平官房長官談話も、政府の基本的立場として「継承している」とした。
答弁書では、27年に当時の安倍晋三内閣が決定した答弁書で、7年の村山談話と、その内容をほぼ踏襲した戦後60年の小泉純一郎首相談話を「全体として引き継いでいる」としたと紹介。「菅内閣においても変わりはない」と明記した。
慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した27年の日韓合意に関しては「韓国政府の確約を取り付けたものであり、合意が着実に実施されることが重要と考えている」と強調した。立憲民主党の那谷屋正義参院議員の質問主意書に答えた。
ブログ主自身は、このように誤読されたり悪用される河野談話は破棄すべきだと思います。
但し、破棄する場合にはその理由を述べる必要があるので、それを「談話」と呼ぶかどうかは別として、これ以上誤解を与えないような政府の公式見解を表明すべきだとは思っています。
ブログ主の立場は「単なる談話の破棄」に留まらず、「日本政府は、きちんと慰安婦の実態を発信せよ」という考えです。
西岡力教授は「新談話で上書きせよ」と主張されていますが、西岡教授に近い立場です。
安倍総理ですら撤回しなかった河野談話を今後誰が撤回できるでしょうか? もし、河野談話を ”無効化” するとしたら、新たな談話(的なもの)で上書きする方が現実的かも知れません。
« 【レーダー照射事件】海上幕僚長「ボールは韓国側に」 | トップページ | 【隣の日本人】「お詫び」に対する受け止め方、日韓の違い »
« 【レーダー照射事件】海上幕僚長「ボールは韓国側に」 | トップページ | 【隣の日本人】「お詫び」に対する受け止め方、日韓の違い »
コメント