【8.15光復節演説】尹奉吉を称賛する尹錫悦大統領は思想的な立ち位置に疑問がある
8月15日の光復節は式典が行われ、大統領が記念演説を行います。
この日は、日本から独立した日で、本来は1948年の建国記念日〔日付は同じ8月15日〕だったのが、大韓民国を認めたくない左派により徐々にその意味が変えられ、現在では多くの韓国人が日本の敗戦によって解放された日である1945年8月15日を記念する日だと思っています。
こうした性格の日なので、日本に言及せざるを得なく、当然反日的な内容になるのですが、関係改善に前向きな言葉もちりばめられ、日本のメディアの評価は大凡好意的です。
しかし、ブログ主は全文を読んだときに、反日しつつ、用日〔日本を利用するために擦り寄る〕もしている精神分裂症的な内容だと感じました。〔演説全文は後述〕
それと共に、これは恐らく、日本人よりも韓国の保守層が不安に思っている事ですが...尹錫悦大統領は本当の保守派の人なのだろうか?という疑問を抱かせる事を話しました。
それは、前述のように光復節を日本からの解放日と取るか、建国記念日と取るかのスタンスで、演説では開口一番、「今日は第77周年光復節です。」と言いました。つまり、1945年から77年目という意味であり、保守派は落胆しました。
また、独立運動家として尹奉吉(ユン・ボンギル)を称賛した事も首を傾げます。以下、演説の該当部分。
>日帝強占期において、独立運動は三・一独立宣言と中国・上海に設立された大韓民国臨時政府の憲章、そして尹奉吉(ユン・ボンギル)先生の独立精神に見られるように、国民があるじとなる民主共和国、自由と人権、法治が尊重される国を築くためのものでした。
尹奉吉は、1932年の上海天長節爆弾事件の実行犯であり、これにより死刑に処せられました。日本人からすれば単なるテロリストですが、韓国人にとっては独立運動家であり、抗日の義士なので、光復節の演説に相応しい人物ではあるのですが、他の独立運動家を差し置いて名前を挙げる人物かと言うと、少し違和感を覚えます。
しかも、「独立精神」に言及していますが、韓国の保守派にとって「独立精神」と言えば、李承晩が日露戦争の最中に獄中で書いた本〔←従って、日本からの独立というより、事大主義的な大韓帝国への批判〕で、そもそも、韓国の保守派にとっての保守の源流は、上海臨時政府の初代大統領としても独立運動家としても李承晩でないとならないのです。
ブログ主に言わせれば李承晩のロビー活動など独立には何の役にも立たなかったのですが、保守派にとっては絶対的な人です。〔韓国人の中には、左派も嫌いだが 李承晩に固執する保守派も嫌いと言う人もいます。〕
これは光復節に対する認識の違いによるものですが、大韓民国建国日と認識する保守派としては、尹錫悦大統領の軸足は左とは言わないまでも「(正統派の)右ではない」と思わざるを得ません。
尚、尹錫悦大統領はソウル大学の学生時代、全斗煥大統領の模擬裁判で判事役をして、死刑判決を出したそうです。〔西岡力教授談〕
これは、当時の学生は左派にかぶれていたからという理由も付きますが、西岡力教授や産経の久保田るり子氏に言わせると、尹錫悦大統領は北朝鮮に対しては厳しい姿勢を見せているが、共産主義に対してはやや怪しいのだそうです。〔過去エントリー:【韓国】久保田るり子氏の尹錫悦政権評〕
尹錫悦大統領の「尹奉吉好き」に関しては、朝鮮半島に詳しいジャーナリストの室谷克実が、親子二代に渡るものだという解説をしています。
>〔前略〕尹大統領は2021年6月、大統領選挙出馬を宣言する場所として、ソウル市内にある尹奉吉記念館を選んだ。父親(=元延世大学教授)は尹奉吉奉祝会の役員を務めた。
同姓・同族の英雄なら、無批判に信奉する韓国人はとても多い。しかし、尹大統領と尹奉吉は同じ「尹」姓でも、本貫(=伝説上の発祥地)が違う。別の家系だ。尹錫悦父子の「尹奉吉への入れ込み」は異様であり、その理由は謎だ。〔中略〕
〔韓国人の誰もが認める抗日の義士である〕安重根は一応、『東洋平和論』なる外国勢力の分析と対処を考えた論文を残した(これも思い違いした箇所が多いが)。しかし、尹奉吉には著作もないし、今日に語り継がれるような名言もない。
そうした人物の「精神」とは何なのか。「日帝に無差別爆弾テロをした」ことだけではないか。
その「精神」を、検事出身の大統領が公式の演説で称揚するとは、理解しがたい。日本のマスコミが、その発言を伝えなかったことも理解できない。〔後略〕
〔ZAKZAK(2022.8/18):なぜ日本のマスコミは伝えなかった 韓国・尹大統領が「無差別テロリストの精神」を称賛 日本人2人が死亡した上海爆弾テロ事件〕
保守にも左派にもいい顔をしようとして、保守の岩盤層の支持を失っている岸田首相にちょっと似ているような気がします。
* * * *
以下、聯合ニュースの翻訳による光復節演説全文です。
https://news.yahoo.co.jp/articles/8a3f48801c7bdaa3bbd5dc4359d4b17bfc269947
尊敬し、愛する国民の皆様、750万人の在外同胞の皆様。
今日は第77周年光復節です。
祖国の独立のため犠牲になり、献身なさった殉国先烈と愛国志士、そして遺族の皆様に深い感謝と敬意を表します。
日帝強占期において、独立運動は三・一独立宣言と中国・上海に設立された大韓民国臨時政府の憲章、そして尹奉吉(ユン・ボンギル)先生の独立精神に見られるように、国民があるじとなる民主共和国、自由と人権、法治が尊重される国を築くためのものでした。
自由と人権が無視される全体主義の国を築くための独立運動では決してありませんでした。日帝強占期において殉国先烈と愛国志士をはじめとする全国民が共に打ち込んだ独立運動は1945年のまさに今日、光復という実を結びました。
しかし、独立運動はそこで終わったのではありません。その後、共産勢力に立ち向かい自由国家を建国する過程、自由民主主義の土台である経済成長と産業化を成し遂げる過程、そしてこれを基に民主主義を発展させてきた過程を通じて継続され、現在も進行中なのです。
かつては弱小国が強大国によって抑圧され、剥奪された国民の自由を取り戻すため、主権国家を築くことが時代的使命でした。
これからの時代的使命は、普遍的な価値を共有する国々が連帯して自由と人権に対する脅威に共に対抗し、世界市民の自由と平和、そして繁栄を成し遂げることです。
自由を求めて始まった独立運動は、真の自由の礎となる経済的土台と制度的民主主義の構築へとつながりました。今や普遍的価値に立脚して世界市民の自由を守り、広げていくものへと継承、発展させていかねばなりません。
尊敬する国民の皆様。
光復節である今日、私たちは過去から未来までを貫く独立運動の世界史的な意味を改めて心に刻む必要があります。
私たちの独立運動は、歴史的な時期ごとにその性格と時代的使命を変えながら行われてきたダイナミックな過程です。
自由を求め、自由を守り、自由を広げ、また世界市民と連帯して自由に対する新たな脅威と戦い、世界の平和と繁栄を成し遂げていくものです。
祖国の未来が見えなかった真っ暗な日帝強占期に自らの命を投げ出して国内外で武装闘争を展開した人々、またノブレス・オブリージュを実践して武装独立運動家を育てた人々のことを考えると、今でも胸がいっぱいになります。
そして自由民主主義の国を建設する民族の力を養うために国内外で教育や文化事業にまい進した人々、共産勢力の侵略に立ち向かい自由民主主義を守るために戦った人々、真の自由の経済的土台を築くために汗を流した産業の労働者と指導者たち、制度的民主主義を定着させるため犠牲になり、献身してきた人々が自由と繁栄の大韓民国を築いた偉大な独立運動家であるということも、忘れてはなりません。
私たちは、大韓民国の自由と独立のために犠牲になり、献身してきた全ての人々を必ず記憶しておくべきです。
こうした人々を尊敬し、礼を尽くすことは私たちの義務であるだけでなく、未来の繁栄への第一歩です。
尊敬する国民の皆様。
かつて私たちの自由を取り戻し、守るために政治的な支配から脱すべき対象だった日本は今、世界市民の自由を脅かす挑戦に立ち向かい、共に力を合わせて進むべき隣人です。
韓日関係が普遍的な価値を基盤に両国の未来と時代の使命を目指して進んでいく時、歴史問題もきちんと解決できるでしょう。
韓日関係の包括的な未来像を提示した金大中(キム・デジュン)・小渕共同宣言を継承し、韓日関係を早期に回復、発展させていきます。
両国の政府と国民が互いを尊重しながら、経済、安全保障、社会、文化にわたる幅広い協力を通じて国際社会の平和と繁栄に共に寄与しなければなりません。
私たちの独立運動の精神である自由は平和をつくり出し、平和は自由を守ってくれます。
朝鮮半島と北東アジアの平和は世界平和の重要な前提であり、私たちと世界市民の自由を守り、広げる礎となります。
北朝鮮の非核化は朝鮮半島と北東アジア、そして世界の持続可能な平和に欠かせないものです。
私は、北朝鮮が核開発を中断して実質的な非核化に転じるなら、その段階に応じて北朝鮮の経済と住民の暮らしを画期的に改善できる大胆な構想を今、この場で提案します。
北朝鮮に対し、大規模な食糧供給プログラム、発電と送配電インフラ支援、国際貿易に向けた港湾と空港の近代化プロジェクト、農業の生産性を上げるための技術支援プログラム、病院と医療インフラの近代化支援、国際投資・金融支援プログラムを実施します。
尊敬する国民の皆様。
世界経済の不確実性が拡大している中、韓国経済の国際的信用度を守るためには何よりも国の財政が盤石でなければなりません。
私は公的部門の引き締めと構造調整によって財政をできる限り健全に運営していきます。
これによって確保した財政余力は、庶民や社会的弱者を一層手厚く支援するために使います。
庶民や社会的弱者に経済的、文化的な基礎を保障することは、私たちが追求する普遍的な価値である自由と連帯の核心です。
困難を抱える人々の生計を安定させるため基礎生活保障を強化し、突如危機に見舞われ苦境にある人々に対しても政府の支援を強化します。
障害者が日常生活で不便を感じないようケアサービスを大幅に補強し、保護施設からの自立を準備する青年たちにより細やかに気を配っていきます。
国民が住居の不安を感じないよう需要と供給をゆがめる各種の規制を合理化し、住宅市場を安定させます。
また、社会的弱者のための住居福祉にも最善を尽くします。
先の未曽有の集中豪雨による水害は、国民に大きな被害と苦痛を与えました。
災害は常に庶民と社会的弱者に一層大きな被害と苦痛をもたらします。よりきめ細かく、徹底して目配りしていきます。
国民が速やかに日常を取り戻せるよう被災地の支援と復旧に最善を尽くし、根本的な対策を講じていきます。
水害や新型コロナウイルスの感染再拡大などで苦しんでいる小規模事業者には、十分な金融支援により借入金の返済負担が重くならないようにします。
愛する国民の皆様。
一段と深刻化する二極化と社会的葛藤は必ず解決すべき社会的な課題です。
これを本質的に解決するには飛躍と革新が欠かせません。
飛躍は革新から生まれ、革新は自由から生まれます。
民間部門が飛躍、成長を遂げられるよう、規制を革新していきます。
企業が海外へ出ていくことなく国内に投資して雇用を創出できるよう、果敢に制度を革新していきます。
科学技術の革新は私たちをより速い飛躍、成長へと導いてくれるでしょう。
産業の高度化と技術発展に追従するのにとどまらず、これを主導していけるようにします。
人類の持続可能性を脅かす気候変動、パンデミック(感染症の世界的大流行)の危機も、先端科学技術を用いることで解決策を見いだせます。
偉大な国民の皆様。
私たちは険しく一寸先も見えない状況の中で、誰もが私たちの未来を信じなかった瞬間にも、自由、人権、法治という普遍的な価値を追求し、目覚ましい繁栄を成し遂げました。
自由を取り戻し、自由を守り、自由を広げていく過程の中で、一層強くなることができました。
私たちの独立運動は絶え間なく自由を追求する過程として現在も進行中であり、この先も続くことでしょう。
国民の皆様。
大韓民国に自由と繁栄をもたらした憲法の秩序は、厳酷だった日帝強占期に祖国の独立のために献身した人々の偉大な独立精神の上に成り立っているものです。
自由、人権、法治という普遍的な価値を基盤に共に連帯し、世界の平和と繁栄に責任を持って寄与することこそ、独立運動に献身した人々の志を受け継ぎ、守ることです。
私は偉大な国民の皆様と共に、私たちに与えられた世界史的使命を必ずや成し遂げます。
ご清聴ありがとうございました。
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