韓国人の『反日反韓史観』(自虐史観)は北朝鮮の対南工作によって作られた
このところ、西岡力教授の本を、過去の本の再読も含めて読んでいるのですが、現在読んでいる『日韓「歴史認識問題」の40年: 誰が元凶か、どう解決するか』〔2021/8/26/草思社〕に、李栄薫(イ・ヨンフン)博士が書いた本の一節が紹介されており、韓国の左派によって作られた「反韓史観」がコンパクトにまとめられているので、孫引きします。
上記本に関しては、このエントリーの最後に簡単なレビューを記しました。
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誤った歴史観は、過去百三十年間の近現代史を汚辱の歴史として子供達に教えています。
宝石にも似た美しい文化を持つ李氏朝鮮王朝が、強盗である日本に侵入を受けた。
それ以降は民族の反逆者である親日派たちが大手を振るった時代だった。日本からの解放はもう一つの占領軍であるアメリカが入ってきた事件だった。
すると親日派はわれ先に親米事大主義にその姿を変えた。民族の分断も、悲劇の朝鮮戦争も、これら反逆者たちのせいだった。それ以後の李承晩政権も、また1960~70年代の朴正熙政権も、彼らが支配した反逆の歴史だった。経済開発を行ったとしても、肝心の心を喪ってしまった。歴史に於いてこのように正義は敗れ去った。機会主義が勢いを得た溥儀の歴史だった、
というのです。〔『大韓民国の物語』文藝春秋/2009年/pp.330-331〕
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この歴史観の言外には、”北朝鮮は金日成が抗日をして建国した国” であり、”北朝鮮は親日勢力は清算した” から、北朝鮮に正統性があるという考えがあり、”日本やアメリカという帝国主義国家に追従する韓国と違い、北朝鮮は主体性がある” というプロパガンダが漉けて見えてきます。
これが現在の韓国左派を支配し、一部は一般の韓国人も毒されている歴史観です。
では、これはどのように形成されたのでしょうか?
それは、北朝鮮による対南工作によるもので、西岡力教授の説明によると、漢江の奇跡〔1970年代の韓国の経済急成長〕の前までは、北朝鮮の優位性〔経済的にも韓国の方が貧しかった〕をプロパガンダしていたのが、韓国の経済成長によって国力が逆転するとそれが使えなくなり、反韓的な歴史観を韓国人に浸透させる工作に切り替えたのだそうです。
更に詳しく書くと、西岡教授の師匠にあたる李命英(イ・ミョンヨン)成均館大学教授の分析では、”この「反韓史観」が広まるのは60年代からで、「統一革命党」〔cf. 統一革命党事件〕が組織される過程とその前後(60~70年代)に大学、学会、宗教界などに深く浸透、特に80年代にはドイツを拠点とする工作が学会や労働界に作用、更に、79年から89 年にかけて6冊のシリーズ として出された『解放前後史の認識』という本が80~90年代に韓国の大学生や知識人社会に多大な影響を与えた” 〔←左記は要約〕のだそうです。
この本は6巻合計で100万部売れたそうで、これを読んで影響されたのが現在文在寅の周辺にいるような人達の世代です。
”反韓史観に毒される前の左翼は社会主義や共産主義を信奉していたが、反韓史観に取り込まれた左翼は、北朝鮮の社会主義が失敗しても、北朝鮮がある限り、北朝鮮を盲目的に支持する”〔要約〕
このように仕向けていったわけです。
前述の「統一革命党」は1985年から対外名称を「韓国民族民主戦線」と変更しました。
「民族」とか「民主」とか、韓国人の好きなワードですよね。こうした言葉を左翼の専有物のようにされてしまったのは韓国の悲劇でしょう。
ところで、ブログ主は韓国保守を批判するような事をよく書いていますが、それは「左翼が悪い事は分かりきっているから」です。その上で〔それなのに(?)〕、一般の韓国人が左翼に取り込まれて行きやすいのは何故か?という視点で、敢えて保守の弱点を考えています。
例えば、冒頭に引用した李栄薫博士の文章の中で、「強盗である日本に侵入を受けた」というのは、表現はともかく、保守を自認する人たちも含めて、未だに主流を占める認識ではないでしょうか。
「反韓史観」には抗えても、「反日史観」〔日本人は民族の敵であり、それに協力した親日派は民族の反逆者〕にはまだまだ弱いのです。
そもそも、日本との併合を支持した一部の朝鮮人達は、自力では近代化は無理と悟って、日本の力を借りようと考えていました。しかし、これらの人々は韓国史では過小評価されたり、李完用のように逆賊扱いされます。
そして、独立運動家ばかりもてはやしますが、朝鮮内で実力を養っていた多くの人達がいます。
朝鮮の人達は静かに実力を蓄え、社会も近代化できて、或いはできつつあったのです。
彼らは積極的に独立運動をしなかったかも知れませんが、彼らが新生国家「大韓民国」の建国に多大なる貢献をしたのです。
しかし、それらの人々にスポットを当てる事や、その人達が育った土台に日本の統治があった事は日本人の寄与を認める事になるのでできません。
日本統治時代を、「そう悪くは無かった」とは言えても、肯定的に評価する事は、たとえそう思っていてもまだ韓国では難しいです。そうした活動を積極的に行っているのは、YouTuberの『キムチわさび』氏くらいしかブログ主は知りません。
それ以外には、金柄憲(キム・ビョンホン)所長が時々Facebookに日本統治時代の新聞記事や新聞広告を貼って、当時の朝鮮でも娯楽があったり消費文化を享受していた事、実は普通の生活をしていた事を紹介されています。
ソウル大学を、戦後9つの専門学校等を統合してソウル大学になった事から京城帝国大学との連続性を認めないように、日本統治時代と分断して、一人の卓越した指導者の功績にするのでは、その人物が完全無欠で無謬の人でない限り、ここを攻撃されたら終わります。
最初からないものねだりをしても無理なので、慰安婦問題とか徴用工問題とか、最大の誤解から解いていくしかありません。だからブログ主も、これらを中心的に扱っています。
しかし、一方で、一つや二つの歴史問題が片付いても、「でもやっぱり日本人は悪いよね」となってしまうとも思っています。
だから、日韓間の問題がいつか解決するとしてもそれは長い時間が掛かるし、韓国人も知らず知らずのうちに「反韓史観」に侵食されてしまうのだと思っています。
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最後に、西岡力教授の『日韓「歴史認識問題」の40年: 誰が元凶か、どう解決するか』について、少し、レビューのような事を書いておきます。
ブログ主のように西岡力教授の書いた物やYouTube動画を熱心に観ている者にとっては、全体的には既に知っている事が多いです。
これもブログ主はそれ程積極的にはブログに取りあげませんが、「反日プロパガンダ」が日本発である事、日韓の相互理解を疎外してきた外務省関係者がいた事、日韓両国、特に韓国国内で保守がどのように左翼と戦ってきたのか、こうした事が長いスパンで網羅されています。
過去の報道や様々な方の発言もソースを示して提示されているので、ブログ主にとっては非常に助かります。
西岡教授には慰安婦や徴用工といった個別テーマの著書もおありですが、この本は過去の著書の集大成のようなもので、日韓間に横たわる問題の全体像を知るためにも有益な本だとと思います。
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