【春の風物詩】久々に登場したキム・チャンス博士、「ソメイヨシノと王桜は別種」に反論【王桜論争時系列まとめ】
公開:2022-04-09 18:28:33 最終更新:2022/04/09 19:02(ソース追記)
タイトルのキム・チャンス博士というのは、韓国と日本の桜起源論争(と言っても、韓国側が言いがかりを付けているだけですが)に於いては有名人で、ワシントンの桜が済州島の王桜だと起源を主張した人です。久々にこの名前が出ている記事があったので、エントリーすることにしました。
最初に書いておくと、どうやら、韓国国内での利権争いの臭いがプンプンします。
▲歌川広重の「名所江戸百景 吾妻橋金龍山遠望」
桜は浮世絵にも様々に描かれてきた。散る花びらだけでも季節を表現できる。(太田記念美術館さんのツイートより拝借)
韓国では今、民間団体による『王桜プロジェクト2050』が推進されています。2050までに韓国にある日本の桜(ソメイヨシノ)を韓国の王桜に植え替えようというもので、これも ”反日種族主義” の発露と言えます。〔→カイカイ反応通信:「日本の桜を抜いて、済州の王桜を植えよう」運動始まる=韓国の反応〕
1月にこのニュースを見たときには、どこまで本気なのか分かりませんでしたが、実際に調査をやっているようで、先日、汝矣島〔ヨイド/漢江の中州のエリアで国会がある場所。日本で言えば永田町〕の桜並木や国会の周辺に植えられている桜はほぼ全て日本のソメイヨシノであると発表しました。〔→カイカイ反応通信:韓国名所の桜は日本産…韓国種の王桜は一本もないことが判明=韓国の反応〕
尤も、このプロジェクトに関する記事の読者のコメントは冷ややかで反応も少なく、それ程韓国人が関心があるとも、支持をされているとも思いません。さすがに韓国人も無駄な事だと思っているようです。
実際に韓国の桜の名所は、日本統治時代に植えた桜か、朴正煕大統領の時代に、日本人と在日韓国人が協力して贈ったもので、これらは基本的にソメイヨシノです。
ここで、時系列を説明すると、
【CHRONICLE】※適宜追記していきます。
- 日本統治時代に朝鮮半島に桜の木が植えられる。
- 戦後、日本人が植えた桜を日帝残滓として伐採。〔有名なのは、日本軍の軍港だった鎮海→【※1】産経:36万本が咲き乱れ…軍港・鎮海の桜に秘められた日韓110年の歴史を紐解いた〕
- 1974年、朴正熙の大統領令による 「桜の大植樹運動」 開始。
70年代の朴正煕大統領による「セマウル運動」(地域開発運動)の一つとして、日本人から在日韓国人を通じて桜の寄贈を打診。当時は日本のソメイヨシノは韓国の桜が起源だと信じられていた〔※〕ので韓国側も了承し、日本人と在日韓国人により大量の桜が贈られる。鎮海の桜もこの時に復活。〔【※1】〕
※1962年に朴万奎、夫宗休2名の植物学者が、鎮海の桜は済州島の王桜だと主張。 - 2009年、韓国の学者〔キム・チャンス博士〕が、ワシントンのポトマック河畔に日本からの寄贈で1912年~20年に植えられた桜は済州島の桜であると言い出す。根拠の1つはアメリカ農務省による遺伝子検査だと主張していたが、米国では2007年に済州島の王桜と日本のソメイヨシノのDNA鑑定をして別種だと判明している。〔→ブログ記事/元記事は産経/こちらの『第63回 「ワシントンDCの桜とDNA特許」』に詳しい。以下に一部引用〕
>きっかけは、2009年4月6日に聯合ニュースが記事にした、韓国国立山林科学院暖帯山林研究所のキム・チャンス博士が、ポトマック川の桜の標本を採取し、DNA分析を行ったところ、済州島の王桜と同じで、結局、日帝強制支配期に日本人が済州島の王桜を改良、増殖して、それをワシントンDCに送ったものだ(資料④)、という論文を発展し、それ以降、韓国の色々な者が同じ主張を繰り返し始めているそうである。
>しかし、実は、米国農務省は自身でその前にDNA鑑定を行い、ソメイヨシノと王桜は別種であると2007年6月に既に結論しているのである(資料⑤)。しかも、この分析を行ったのは、Roh、Choi、Cheong、Joung各氏という全て韓国系か中国系の研究者であるので信憑性ははるかに高い。〔ブログ主註:実際の論文〕キム・チャンス博士が、この4人の研究者のテスト結果をどう評価しているのかという話は全く聞いていない。
- その後も韓国では「王桜はソメイヨシノの起源」であるという説が信じられ、毎年、桜の季節になるとそれを言い出していた。
これには、一つ理由があり、日本で20世紀初頭に上野で見つかった桜がソメイヨシノと名付けられると共に、しばらくは済州島の桜であると信じられており、20世紀半ばにようやく植物遺伝学者の竹中要により別種〔ソメイヨシノはエドヒガンとオオシマザクラの雑種〕であると判明。しかし韓国人はこれを知らないか受け入れない。〔→ブログ記事〕 - 2017年1月、日本の森林総合研究所が学名を整理。これにより、王桜の学名が「Cerasus × nudiflora (Koehne) T.Katsuki & Iketani」と命名され、ソメイヨシノの学名「Cerasus × yedoensis (Matsum.) Masam. & Suzuki 'Somei-yoshino'」と区別された。〔森林総合研究所HP『‘染井吉野’など、サクラ種間雑種の親種の組み合わせによる正しい学名を確立』/論文は2016年12月22日にTaxon誌でオンライン公開〕
- 2017年、国立山林科学院暖帯亜熱帯森林研究が済州島の桜の群生地・漢拏山(ハルラサン)で優良な桜を選んで「基準母樹」とし、これを増やし始める。日本から入ってきた王桜〔ソメイヨシノの事〕と置き換える為。〔→聯合ニュース:한라산 자생 우수품종 왕벚나무로 일본산 대체한다/この記事の翻訳(2chのログ)〕
- 2018年、韓国の国立樹木院が王桜とソメイヨシノのゲノム解析して、別種と発表。ワシントンの桜も日本のソメイヨシノである事を認める。但し、これ以降も、毎年桜の季節には「ソメイヨシノ韓国起源説」の記事が出続ける。韓国の記者が無知な為あまり品種の概念がない。〔→ブログ記事〕
- 国立樹木院は、2020年に『国家標準植物目録』で、王桜を自生植物から削除し、栽培品種「王桜」として再分類
→これにより、済州島の同種の桜は「済州王桜」と呼ばれることになる。 - 2022年1月、「王桜プロジェクト2050」が発表される。
不毛な事をやらせたら世界一の人達ですね。
日本人は王桜プロジェクト2050で、「ようやく韓国人も王桜とソメイヨシノは別種と理解したか」と思いきや...これに、今回、キム・チャンス漢拏山生態文化研究所長(元国立山林科学院暖帯亜熱帯森林研究所長)が噛みついたのです。〔記事後述〕
時系列のNo.7で見たように、済州島では基準母樹から採った王桜の枝を接ぎ木で栽培していましたが、この基準母樹5本の内の1本が日本のソメイヨシノであると国立樹木院が判定したからです。これをキム所長は漢拏山の王桜が貶められたと憤っています。
おそらくは、自分達で栽培した桜を全国に頒布したかったのに、この計画を「王桜プロジェクト2050」に横取りされてしまったことも原因だと思いますが。
しかしながら、あらためて時系列に沿って韓国の「ソメイヨシノ韓国起源説」を見てみると、国内外(日本や米国)の研究を一切無視、あるいは嘘をついて隠蔽するという、韓国の学者とメディアの不誠実さと無知さが原因だと言う事が分かります。
これって、歴史論争と全く同じですね。
* * * *
※緑色の文字はブログ主の補足です。
http://www.jemin.com/news/articleView.html?idxno=734710
済州の王桜、"日本産主張は明白な虚偽"
2022.04.06
・キムチャンス漢拏山生態文化研究所長、
国立樹木院の生物主権〔←www〕 放棄を叱咤
・根拠なしに国家標準植物目録から削除
・全国で王桜の交替論議を招く
樹齢140年と推定される済州島郷土遺産第3号「梧登洞 王桜」自生地。 国立樹木院がこれを含めた一部の王桜を根拠なく「日本の王桜」だと主張し、議論を呼んでいる。 〔記事では王桜もソメイヨシノも「왕벚나무(ワンボンナム)」という言葉が使われているので、「王桜」と訳します。「日本王桜」はソメイヨシノの事。〕
世界で唯一、済州道にだけに自生地が存在する王桜の一部樹種について、山林庁国立樹木院が「日本王桜」と明らかにしたのは明白な虚偽という主張が提起された。 国立樹木院の発表以後、王桜の生物主権が揺れて全国並木交代の主張まで提起されるなど国家機関が混乱を招いたという批判が出ている。
キム・チャンス漢拏山生態文化研究所長(元国立山林科学院暖帯亜熱帯森林研究所長)は6日、済州道議会道民カフェで記者会見を開き、「国立樹木院が済州の王桜は日本王桜の起源と種が違うと発表した後、汝矣島や鎮海など全国各地に植えられた王桜を日本産とし、伐採という動きが起きているのが実情」とし、「行政や解説者など社会的に王桜が日本産という認識が広がり、これ以上見過すことができなくなった」と表明した。
国立樹木院はこれに先立って、2018年9月、報道資料を通じて「ゲノム分析の結果、済州道王桜は、日本の東京と米国ワシントンに植えられた日本王桜と明確に区分される別の植物」と主張した。
また、国立樹木院は、2020年韓国の『国家標準植物目録』で、王桜を自生植物から削除し、栽培植物として再分類した。〔※〕
※王桜はエドヒガン(母系)とオオヤマザクラ(父系)が自然交配してできたもので、済州島に自生している事は事実ですが、個体にばらつきがあり、更に交雑して第2世代まで混ざっているので、優良な株を選別して、それを「王桜」と呼ぶことにした時点で『園芸種』と分類されたのだと思います。
これにより、最近は王桜を日本名である「ソメイヨシノ」〔←ここだけは「쇼메이요시노」(ショーメイヨシノォ)と書いてある〕と呼び、交代すべきだという主張が出ている。 済州道が王桜の自生地であることを立証する決定的証拠である梧登洞(オドゥンドン)王桜(済州道郷土遺産第3号)まで脅かされることになった。
▲画像は2017年4月4日の韓国の記事にあった梧登洞の王桜で「基準母樹」とされたもの。2018年以降、これが日本のソメイヨシノだと判明した。
▲画像は今年の記事(2022/04/06)に掲載された梧登洞の王桜とキム・チャンス所長。
シン・ジュンファン元国立樹木院長が会長を務めている社団法人「王桜プロジェクト2050」〔※〕は6日、「国会および汝矣島に植栽された王桜を全数調査した結果、90%以上に日本原産のソメイヨシノが見られ、地元の桜がほとんどない」と自生王桜の普及の必要性をアピールした。
※「王桜プロジェクト2050」は国立樹木院系の人達らしく、2018年にゲノム解析して済州島の基準母樹の1つをソメイヨシノだと判定したのも国立樹木院。キム・チャンス氏はこれに恨みを抱いている?
キム所長は「公式的に王桜から韓国固有種の地位を剥奪し、王桜に対する主権を放棄して日本に無償譲渡したもの」とし「国立樹木院が当時調査した道内5体のうち4体は済州王桜で、1体(梧登洞の王桜の木)は東京に植えられた個体のような遺伝体グループだったと主張したが、『日本王桜』という種自体がないだけでなく、比較個体である東京の王桜が日本原産という根拠もない」と明らかにした。
▲2018年のゲノム解析により、サンプルに使った王桜の5個体〔黄緑の点〕の内、4個体が同じ〔図では「済州島 自生 ソメイヨシノ」の位置〕で、1個体がソメイヨシノ〔図では「日本ソメイヨシノ」〕と同じだと分類された。この図は2018年9月13日のハンギョレの記事の物にブログ主が日本語を書き込んだが、元となった論文は『Genome Biology』に掲載された「Draft genome sequence of wild Prunus yedoensis reveals massive inter-specific hybridization between sympatric flowering cherries」(Published: 04 September 2018)
さらに、「樹齢140年と推定される梧登洞王桜が厳然と済州で自生しているが、国立樹木院はこれを日本王桜と呼び、『移植された木』や『栽培中に生態系から脱出した木』という奇想天外な主張でこき下ろした」とし、「王桜自生地の漢拏山の位相を回復し、生物主権を取り戻すために誤った発表を正し、科学的な研究が必要だ」と強調した。
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