【”徴用工”問題】「強制労働」は forced to workかforced laborかの違いではない
『月刊Hanada』が2021年10月号に掲載した、山岡鉄秀氏の「もうひとりの河野洋平 “強制労働”を認めた日本のユネスコ大使」という論考をWeb上で公開しています。
ここでは、一部だけ引用します。
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2015年6月21日、尹外交部長官は訪日して岸田外相と会談を行うのだが、また日本はまんまと騙される。韓国も「百済歴史地区」の世界遺産登録を目指しているので、お互いに協力しようと合意する。
日本は約束を守って応援し、韓国の申請は無事に全会一致で可決されるのだが、日本の番になって案の定、韓国が約束を反故にして難癖をつけてきた。遺産群の描写に「強制労働」(forced labor)という表現を入れろというのである。
これでは卓袱台返しだ。日本側は反発するが、外務省が示した妥協案は噴飯ものであった。表現を和らげて、「労働を強いられた」 (forced to work)で合意したというのである。
私は当時、このニュースを聞いて耳を疑った。それら2つは全く同じ意味だからである。名詞形で表現するか、動詞形で表現するかの違いでしかない。難関大学を出て難関国家試験に合格したエリートの英語力と交渉力には、呆れかえるばかりだ。
当然ながら海外メディアは「日本が強制労働を認めて世界遺産登録を獲得した」と報じた。
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ここで、実は以下の毎日新聞記者の澤田克己氏の寄稿文は、前回のエントリーに追記したのですが、このエントリーに移動させて引用します。
表題を見れば分かるように、彼は、「forced laborとforced to workは違う」という趣旨でこの文を書いています。
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https://wedge.ismedia.jp/articles/-/5204
「forced labor」と「forced to work」日本人が知っておかなければならないこと
「日本が強制労働を認めた」と喧伝する韓国メディア
2015年7月28日
澤田克己 (毎日新聞記者、元ソウル支局長)
(前略)そろそろ本題の「forced labor(強制労働)」と「forced to work(働かされた)」の違いに入ろう。既に多くのメディアで指摘されているように、一般的には同じ意味に見えるフレーズだが、日本政府は「国際法的にはまったく意味が違う」と説明している。
最大のポイントは、日本が1932年に批准した国際労働機関(ILO)の強制労働条約第1条および第2条第2項との関係だ。第1条は「一切の形式における強制労働の使用を廃止する」と定めている(ILO日本事務所のサイトにある文語体の日本語訳を口語にした)。英文を見ると、「強制労働」は「forced or compulsory labour」だ。そして、条約でいう強制労働に当たらない場合を規定した第2条第2項(d)に、戦争や地震、洪水、飢饉などを例示した「緊急の場合」に強要される労務が挙げられている。
日本政府は、国民徴用令に基づいて行われた徴用は第2条第2項(d)に該当するので強制労働ではないという立場だ。国民徴用令は1944年9月から朝鮮にも適用されているので、それ以降に行われた朝鮮人の徴用も合法だったということになる。日本政府高官は登録決定後、「forced laborを使うと第1条のみが連想されて誤解を生むといけないので、forced to workを使った」と説明している。だから、韓国が「forced labor」という表現を使うことは受け入れがたいという判断になったのだ。(後略)
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”forced to work” と ”forced labor” の違いではありません。彼がいみじくも書いているように、重要なのは、「戦争の場合に強要される労務」は、国際法に違反する「強制労働」ではないという事です。
「徴用」には既に「強制的な」という意味が含まれており、日本では、一般的には「徴用」と言えば「戦時下」だと理解しますが、主張すべきは「戦時下での動員」ということです。〔漢字を知らない韓国人は「強制徴用」などと「馬から落ちて落馬した」的な事(=重言)を言いますが、漢字が分かる金柄憲所長のような方は呆れていました。〕
ちなみに、「compulsory labour」の「compulsory」とは「義務的な、強制的な、必修の」と言った意味で、「optional(任意の、選択制の)」の対義語ですが、いずれにしても、言葉の問題ではないのです。
だからこそ、前回ご紹介した、外務省のサイトでは、スピーチ全文の後に、以下のような注釈を書いているのです。
【注1】
「意思に反して連れて来られ(brought against their will)」と「働かされた(forced to work)」との点は,朝鮮半島出身者については当時,朝鮮半島に適用された国民徴用令に基づき徴用が行われ,その政策の性質上,対象者の意思に反し徴用されたこともあったという意味で用いている。
こんな注釈を、サイトの上だけで後からコソコソ付け加えた事に国民は怒り、そのくせ、「forced laborとforced to workは違う」等という詭弁を弄するから、更に許しがたいのです。
2月2日の『プライムニュース』でも佐藤正久参議院議員が同様のことを言っていました。佐藤氏に対しては日頃から評価していますが、彼でもこんなレベルの言葉遊びをしているのですから不安です。

山岡鉄秀氏が指摘するまでもなく、当時、多くの言論人が「forced to work」、しかもご丁寧に「brought against their will(意思に反して連れて来られた)」などとスピーチに入れている事を批判しましたが、恐らく、日頃から韓国寄りの澤田氏は、そういう言論人の無知?を嘲笑する文を書いたのだと思います。しかし、タイトルで無知を晒しているのは澤田氏です。
韓国が「forced to work」で納得したのは、国際法違反ではなくても、世界に「悪辣な日本人」を喧伝できるからです。
今回の佐渡金山の例で言えば、合計1500人程の朝鮮半島出身労働者の内、約1000人は募集、残りの500人程が官斡旋か徴用ですが、朝鮮半島で国民徴用令が発効したのは、終戦の前年の1944年9月から航路が遮断される迄の7ヵ月程の期間なので、どれほどの人数がいるかも分かりません。(恐らく、採用された日付などから、その内訳も分かっているのではないかとは思いますが。)
たとえ、500人全員が「徴用」であろうとも、戦時に伴うものなので、なんら疚しいことはありません。
今回こそは、「大半は応募してきた募集工であり、ごく一部は戦時徴用だ(ドヤッ)」と言わないとダメなのです。
言葉の問題はないと書きましたが、単独で使うときは、日本語では「強制労働」を使わずに「徴用」と言うこと、英語その他の言語では、「戦時下の動員(徴用)」と、誤解の与えない書き方をすべきです。
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