「光州事件」を取り扱った動画で『李承晩TV』が炎上
1980年5月に光州市で起こった光州事件に関する講義が『李承晩TV』で始まったので、どうなることかと思っていたら、3回目の放送で、政府見解に沿った内容が予感され、真相究明を期待していた視聴者の不満が爆発しています。コメント欄は「炎上」と言っても良いかも知れません。
- 李承晩TV:이동욱 기자의 현대사로서의 5.18 : 제1부 현대사 리터러시 3편
イ·ドンウク記者の現代史としての5.18:第1部現代史リテラシー第3編
9割以上が批判コメントで、その多くは、「池萬元博士と討論せよ」という内容でした。
池萬元博士は、その著書の一つが『元韓国陸軍大佐の反日への最後通告: 日本は学ぶことの多い国』として日本でも出版されており、痛烈に韓国社会を批判しています。その中でも1章を割いて光州事件に対する自分の見解を書かれています。〔もしかしたら、日本語版だけに追加されたのかも知れない。〕
しかし、韓国では、「5.18歴史歪曲処罰法」という法律があり、公式見解以外の解釈をすると罰せられます。また、かつては「光州事件」や「光州事態」と呼ばれていたこの件は、現在では「民主化運動」と呼ばなくては批判されます。それでも、視聴者は、数々のタブーを打破してきた李承晩学堂なら違う解釈を提示してくれるかも、と期待していたのでしょう。
この事件の最大のミステリーは、暴動の首謀者は誰か?で、北朝鮮の特殊部隊首謀説〔下記記事参照〕の池萬元(チ・マンウォン)博士は、毀誉褒貶はありますが、この研究の第一人者です。池博士の北朝鮮主導説の大きな根拠は、暴動中に撮られた写真の男が平壌にいる男という事で、脱北者からもそのような証言がありました。〔但し、池萬元博士は部分的な誤りを指摘されても耳をかたむけない頑迷さがあるそうで、批判も多い。〕
出典:カイカイ反応通信:韓国人「5.18の写真を見た日本人の反応」
李承晩TVの動画ではこの2人の男性の「同一人物説」は否定され、それには視聴者も納得しても、池萬元博士の研究が全否定される事への不満が大きいようです。多くの謎が全く解明されないからです。
何故、この男は英雄なのに名乗り出ないのか?
この男を知っている者すらいないのは何故か?
一般市民が蜂起したにしては、あまりにも効率よく武器庫を襲撃して武器を奪ったり、複数箇所で同時多発的に騒擾を起こしたりできたのは何故か?
何故、刑務所を襲撃したのか?
北朝鮮が「5.18」を祝っているのは何故か?
等々。
上記はコメント欄から拾ったもので、これらを納得させる回答が既にあるのかどうかは分かりません。また、ブログ主には、この件に関して意見を述べる知見もありませんが、この機会に調べてよく分かったのは、光州市がかなり特殊な場所だという事。
日本人から見て、韓国は、慰安婦像はあちこちに建てられているし、日本を非難する博物館の類いも多いし、国中で「恨」が渦巻いている所のように思えますが、光州市はそれを凝縮したような所で、モニュメントなども多く、町中で「被害者」アピールをしている感じがします。都市の規模に不相応な巨大な金大中コンベンションセンターも、平壌のような雰囲気です。〔この動画とは別の動画ですが、光州市内の様子を見た視聴者は一様に「北朝鮮みたいだ」と言っていました。〕
視聴者からすれば、「有功者」のリストが一切公開されないまま、有功者や、その遺族等が様々な恩恵を受けていることへの不満もあるのでしょう。〔但し、有功者は追悼碑に刻まれているという反論が動画のコメント欄にありました。〕
しかし、何故、李承晩TVは光州事件を取りあげたのでしょうか?
李承晩学堂の関係者(李宇衍博士)で、独自に光州事件を調査しようとしている方がいるので、機先を制したのかなとも思っています。
ついでに、『文春オンライン』の産経 黒田勝弘記者の寄稿文『全斗煥時代の韓国は本当に“暗黒”だったのか? 事実を直視しない「韓国人の歴史観」には付き合いきれない』(2021/12/17)より、光州市の特殊性が垣間見える記述を引用します。
”全斗煥将軍ら新軍部は、政情不安の中で野党政権誕生に危機感を抱き5月17日、戒厳令を拡大。すべての政治活動を禁止し金大中氏ら有力政治家を連行、拘束した。これに反発したのが、金大中氏の故郷の全羅南道・光州市だった。ソウルや釜山など他地域でなくなぜ「光州」だったかというと、次期政権に金大中氏への期待が強く、それだけ反発が強かったのだ。”
ところで、この動画を担当したイ・ドンウク氏はどういう人物なのかを少し調べて見ました。
月刊朝鮮〔朝鮮日報系の月刊誌〕の記者で、現在は、「5·18民主化運動真相究明調査委員会」の非常任委員をされている方のようです。2019年2月12日付けのハンギョレ新聞によると、当時の自由韓国党〔保守系の政党〕が委員として推薦したイ・ドンウク氏を文在寅大統領が拒否したとあります。〔文大統領、自由韓国党推薦の「5・18真相調査委員」2人の任命を拒否〕
これで分かるように、基本的には保守系の方です。
また、昨年11月に亡くなった全斗煥元大統領の葬儀の記事にもイ・ドンウク氏の名前がありました。
タイトルは、『「あなたは私たちの味方じゃなかったの? このアカが…」元月刊朝鮮記者の災難』。
この記事で色々なことが分かるので、以下に機械翻訳(ママ)したものをそのまま引用して終わりにします。これを読むと、李承晩TVの講義の方向性も予想ができます。
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月刊朝鮮の記者で現在、5·18民主化運動真相究明調査委員会非常任委員のイ·ドンウク氏が、全斗煥氏の葬儀場で「赤」扱いされる寸劇が起こった。
光州民主化運動を「光州事態」として言及し、5·18団体や遺族に謝罪を要求されたイさんは、2013年の「趙甲済現代史講座」で、「5·18当時、多くの善良な市民が少数の扇動家によって扇動された」と発言し、論議を呼んだ。 その後、2019年当時、自由韓国党(現国民の力)の推薦で5·18真相究明調査委員になった李氏は、現在まで非常任委員として活動している。
しかし24日、ソウル新村(シンチョン)セブランス葬儀場に設けられた全斗煥(チョン·ドゥファン)氏の遺体安置所を訪れた李氏は、以前とは少し違った態度を見せた。 「光州事態」という表現ではなく「5.18」と呼んだパク元部長〔←?〕は「5.18犠牲者は誰の命令や扇動ではなく正義感に燃えて命をかけた方々」と説明した。 過去、同氏は「メディアが5.18被害者の肩を持つ」とし「被害者がすべて真実ではない」と述べ、5.18犠牲者に2次加害をしたという指摘を受けた。
続いてイさんは一部の保守YouTuberの前で「韓国社会ではいつも5.18と対立している。 もどかしいのは保守陣営だ」とし「この方々が5.18によって胸を痛めている光州市民に痛みを与えている」と保守陣営に向かって苦言を呈した。
そして、保守YouTuberの前で1枚の写真を見せた。 極右論客の池萬元(チ·マンウォン)氏が5·18民主化運動の北朝鮮軍の介入根拠として「北朝鮮特殊軍第1グァンス」と言及した写真だった。〔ブログ主註:前掲の写真。脱北者が光州事件の写真を見て「グァンスだ」と言った事から、北の特殊軍の疑いのある人物を総称してグァンスと呼ぶらしく、この男性はグァンス1号。〕 イさんは保守YouTuberたちに「皆さんもきちんと知っておく必要がある」とし「チ·マンウォンさんが写真の中の人物が北朝鮮軍という証拠だと明らかにした機関銃は自動小銃にすぎない。 無線機も分隊級無線機で、韓国軍人が使っていたものと同じ機種だ」と指摘した。〔ブログ主註:今回の李承晩TVも下線部のような内容〕
イさんは「5·18犠牲者の方々を暴徒と決めつけてはならない」とし「もう一度言うが、光州市民は暴徒ではない。 北朝鮮軍が主導したわけでもない」と強調した。 これに対し、ある保守YouTuberが「北朝鮮でなければ金日成・金大中が主導したのか」と主張し、イさんの胸ぐらをつかもうとして管理者の制止を受けた。(後略)
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