『韓国「反日主義」の起源』雑記6 - 李承晩
このところ、『『韓国「反日主義」の起源』雑記』としてシリーズでブログを書いていますが、『韓国「反日主義」の起源』(松本厚治 著/草思社 /2019/2/27)を読んで、覚え書きなどを書き留めるだけでなく、この本を読んでブログ主が考えた事も書いています。
ブログ主のみならず、多くの日本人は、「どうして異常なまで韓国人は反日なのだろう?」と不思議に思います。これは、ある日突然反日になったわけでなく、様々な要因があるのですが、やはり、建国以来の反日教育に一番の問題があると思います。そして、それを始めたのは李承晩です。
この本では、歴代大統領の反日政策にはあまり触れていないのですが、制度として「反日」を行った大統領として朴正煕を挙げています。〔これに関しては別のエントリーに書くつもりです。〕
李承晩に至っては始めから「反日」として片付けていて、李承晩政権時代については、国民は「親日派」〔日本統治時代に単に日本人として生きた人々も含む〕であったという検証がなされています。
ただ、李承晩が反日である事と、当時の人々が「親日派」である事は矛盾しません。なぜなら、教育が影響してくるのは、ひと世代以上後の国民だからです。
では、李承晩の時代、どのような教育がなされたのか、というと、松木國俊(まつき くにとし)氏が様々な媒体で同様の事を書いているので、それを引用すると以下のようになります。
「日本は李朝を亡ぼし、朝鮮を植民地化して残虐な支配を行った」「上海に亡命した独立運動家が『大韓民国臨時政府(臨政)』を立ち上げ、『光復軍』を組織して朝鮮解放に貢献した」「その臨政を引き継いだのが李承晩政権である」
このように自己政権を正当化したうえで、「朝鮮戦争で同族同士が殺し合うことになったのも、すべて南北分断をもたらした日本統治に原因がある」ことにしたのだ。彼は日本時代の真実を語る者を「政治犯」として徹底的に弾圧し、強烈な反日教育で国民に日本への憎悪を植え付けた。
その後の歴代政権も、国民の反日感情を利用してきた。今や統治時代の真実を知る者はごく少数となり、反日感情が自家中毒して、日本の立場を考慮するだけで「売国奴」となる国になってしまったのだ。
〔『【目を覚ませ韓国】初代大統領・李承晩に歴史ねじ曲げた大罪 反日強制、自己政権を正当化』より〕
このように松木氏が書かれる根拠となるものを探して見つけたのが、『李承晩政権の反日政策 : 韓国における日本文化の受容と拒絶・1945年8月15日から現在まで (2) 』(中村 均)という論文で、pp.19~23に李承晩政権時代に日本に関して教科書にどのようなことが書かれていたのかが述べられています。〔PDFのURLはこちら〕
P.23からまとめを引用すると、以下のようになります。
①日本は過去に侵略者として韓民族を虐待した。
②日本はこざかしく伸びている国である。
③日本は自由世界の信義を守らない国である。
④日本人は自己の利害のためには、どんな悪辣な手段も辞さない、残忍な国民である。
恐らく、現代の韓国人が日本に抱いている認識と変わらないでしょう。韓国人は、建国以来、このような教育を受けてきたのです。
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ところで、李承晩と言えば、『反日種族主義』を著した「李承晩学堂」が思い出されます。
この本を読んだ方なら同様の事を感じたかと思いますが、李承晩に関しては歯切れが悪いというか、むしろ李承晩の反日を擁護しています。
読んでいない方のために、ここでは、PHPの『web Voice』から、統一日報主筆の洪熒(ホン・ヒョン)氏と李栄薫(イ・ヨンフン)博士の対談の一部を引用します。
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https://shuchi.php.co.jp/voice/detail/7075
李承晩大統領は反日の政治家ではなかった! ベストセラー『反日種族主義』著者が語る日韓の歴史
2019年11月22日 公開
李栄薫(ソウル大学元教授)&洪ヒョン(『統一日報』主幹)
【洪】『反日種族主義』は韓国人に厳しい本です。しかし必要な本です。たとえば李承晩大統領を文明史の次元で評価し、紹介した本は、私の知るかぎり日本では本書が初めてです。日本でも李承晩と韓国の精神史に対する議論が起きるのではないか、と予想します。
【李】本書のエピローグに李承晩大統領の話が詳しく出ていますが、日本語版の序文では、李承晩大統領について簡略に書きました。
多くの日本の方々が、李承晩を「反日民族主義者」と思っています。「李承晩は反日主義者なのに、なぜ李承晩学堂が『反日種族主義』を批判する本を出したのか」という点が理解し難いだろうと思い、李承晩を評価する理由を書きました。要約すると以下のとおりです。
まず、韓国は1945年8月の解放、建国後も国民の大半が文盲で、人口の3分の2が小農社会の構成員でした。国民を一つの政治的統合体へと秩序をもって統合しなければならない時代状況だったため、国家主義や民族主義のイデオロギーが不可欠でした。
次に、李承晩大統領は「日本は韓半島に残してきた財産を取り戻すために戦後、再び韓国へ来るはずだ」と考えました。そこで急いで海軍を育成し、海軍が困難なら商船でもいいので数多く建造せよ、と語ったほど、日本を警戒していました。
日本が1956年、ソ連と国交を回復し、在日韓国人を北韓へ送還するのを見て、李大統領の日本への不信はますます強まります。
そうした状況で米国は、日本をアジア防衛の軍事拠点とし、経済的復興を積極的に支援しました。韓国に対しては、日本と仲良くしながら農産物や水産物を日本に輸出し、工業製品を輸入する経済的関係を保つよう要求しました。
そこで李承晩大統領としては、韓国が軍事・経済的に再び日本に従属させられる危険性があるため、米国の政策に反旗を翻しながら、経済的に日本から独立した国民国家の経済を追求するため、日本との摩擦や軋轢を意図的に大きくするしかなかった。当時の内外の政治的状況のなかで政策の合理性を理解すべきだと思います。
しかし、李承晩は基本的に自由主義者であり、自由通商主義者です。将来の韓国が日本と協力し、自由通商の時代を開く未来を否定したわけでは決してありません。
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これを読むと、国民の統合のためには「反日」は不可欠だったと、「反日」自体を擁護しています。また、李承晩の想像や妄想を事実であるかのように書いています。
ただ、国民の統合の為に「何か」が必要であった事は理解できます。「反共」というイデオロギーだけでは国はまとまらないからです。朝鮮半島は、解放以来、東西冷戦の縮図のような状態で、共産主義者や社会主義者と李承晩の勢力とが対立していたのです。共産主義者を内包したまま「反共」イデオロギーで国民がまとまるはずがありません。
『反日種族主義』という本の批判の対象は、文在寅に代表されるような、民主化勢力を標榜する「左派」なのです。著者達が戦っているのは、「1948年に建国された大韓民国を正当な国とは見なさない勢力」です。韓国は、建国を、「1948年か1919年(臨時政府の樹立年)か」で未だに争うような国です。したがって、悲しいかな、保守派は李承晩は否定できないのです。
尤も、李承晩学堂の先生方は、李承晩が獄中で書いた『独立精神』を尊重しています。念のため書いておきますが、この『独立』とは、日本からの独立ではありません。投獄された理由は、1897年に高宗退位要求の檄文散布に加わった罪です。〔Wikipedia『李承晩』〕
彼は改革派ではあったのです。
いずれにしても、現代韓国の保守派論客というのは、李承晩を否定しない人達です。
彼の思想と反日主義は分けて考えたら良いのではないかと思うのですが、それが韓国人保守派の限界なのかもしれません。現在、慰安婦像撤去を求めて活動している方々も、竹島の占拠は正当性があると言い、名前は書きませんが、その中のお一人は、竹島に上陸した時の写真をFBに載せていたりします。〔誤解されないように書いておきますが、ブログ主はこれらの人々を、「それはそれ、これはこれ」の是々非々の精神で評価し、尊敬しています。〕
本当の意味での「親日派」の韓国人が韓国保守に抱く不満はここにあります。
「保守は『反日』を左派のせいだと言うが、右派だって反日では無いか」とは、よく見る意見です。
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