【慰安婦問題】『赤い水曜日』(金柄憲 著)プロローグ全文(日本語訳)
韓国の国史教科書研究所の所長であり、「慰安婦被害者法」の撤廃を求めて活動されていらっしゃる金柄憲(キム・ビョンホン)博士が『赤い水曜日』(빨간 수요일)という本を上梓されました。「30年間の慰安婦歪曲」(30년간의 위안부 왜곡)というサブタイトルが付いているように、挺対協(現・正義連)によってなされた歴史歪曲を告発する内容です。
画像はネット書店の画像から拝借
ブログ主は博士と特別な知り合いという訳ではありませんが、時々、活動費の足しに、と思って少額を寄付しているためか、わざわざ御本を送って戴きました。〔正確には、金柄憲所長の動画に字幕を付けてupしてくださる宮本さんという方が宅配で送って下さいました。→YouTubeチャンネル〕
日本語化が待望されますが、宮本さんが「プロローグ」の訳を付けて下さったので、少し長いのですが、全文、書き写します。(緑色の字はブログ主の註など)
◇ ◇ ◇ ◇
プロローグ
全てが偶然だった。
歳遅く(2011年)、大学院で史学を専攻したのも偶然だったし、わが国の歴史の用語を容易に解き明かしてみようと教科書に手を付けたのも偶然だったし、実際教科書を見てみると、歴史歪曲の深刻さに気付いたのも偶然だった。
国家統治のため、なんら地位もなかった興宣大院君(李氏朝鮮第26代高宗の父 )改革当時に先頭を切って通商修好の拒否政策を推進したと叙述した教科書を見ながら、唖然とした。有不利だけを問う通商条約を不平等条約だと繰り返す教科書を見ながら息が詰まった。一度読んでみても沙鉢通文の文献ではないことが分かるにも関わらず、教科書に載せて教えている無知さと勇気に舌を巻いた。そして2014年から現在まで、教科書の執筆者と激しく口論し、また修正させたりもした。
しかしながら、慰安婦問題だけは手を付けたくはなかった。いつの頃から、わが国の社会の中で聖域と化し、禁忌誤(語?)になってしまった慰安婦問題は手を付けた瞬間、攻撃されてしまうからだ。大学の講壇で「慰安婦は売春の一種だ。」と言い、学問の自由を保護しなければならない学校が先頭を切って学者としての生命を絶ってしまうのがわが国なのだ。長い間、研究した結果を本にして出版した途端、訴訟問題に巻き込まれ、生涯、消える事のない苦痛にさいなまれる国がわが国なのだ。学問と表現の自由は憲法が保障した国民としての基本権利ではなく、法廷の片隅に隠れている具色(?)にしかない。
しかしながら、小学校の「社会」教科書に載せられている水曜集会の写真の中の幼い子供達を見てじっとしていることができなくなった。水曜集会をする度ごとに、子供達を集めておいては、「性奴隷」、「戦争犯罪」、「集団強姦」等、歪曲された慰安婦に対する認識を植え付け、暴力と憎悪心を増長させている光景を見ながら胸が張り裂けんばかりだった。
何よりも日本軍が朝鮮の女性を強制的に連れて行ったという叙述に対し、教科書の執筆者が何ら証言も答弁も提示すらできない呆れた現実を経て、何もしないわけにはいかなかった。
慰安婦問題は大人の領域の話だ。性に対する正しい意識がまだ確立されていない子供達に歪曲された慰安婦問題を教える事は性に対する否定的な認識と暴力性を重文に植え付けてしまうのだ。よって私はピケット(プラカード)を持って慰安婦の少女像の横に立ち、団体を立ち上げ、慰安婦歪曲の中断を要求する集会を、これまで続けてきた。その結果、このように本を書く事になった。
この本は徹底して証拠を第一として書いた。そうでなければ攻撃されてしまうからだ。執筆に最も役に立った資料はアイロニー(皮肉)なことに挺対協で発刊した8冊の慰安婦達の証言集であった。この本だけをしっかり読むだけで慰安婦の実態をそのごとく理解でき、大きく役に立ったのだ。
今、執筆を終え、私の名前のある本がこの世に出るときを迎え、万感の思いが交差する。
これから先、この本によってまた何か事件が起こるかも知れないという心配もあるが、わくわくしたりもする。どうかこの本によって、この間、慰安婦問題で引き起こされた私達の社会の葛藤と反目に終止符を打ち、破綻の境地にある韓日関係が回復される契機となることを懇切に願っている。
この暑い日が続く中、資料収集はもちろん数多くの分量の原稿を詳細に目を通してくれた朴セオン幹事、私と志を共にする「国史教科書研究所」、「慰安婦法廃止国民行動」のメンバー、そして荒々しい文章に衣装を着せ、彩りを加え、寝るのも惜しんでくれた朴チョン作家に感謝の言葉を捧げる。
2021年8月 ある赤い水曜日に
金柄憲
« 【帰還事業】映画『キューポラのある街』と北朝鮮帰還事業への影響 | トップページ | 台湾の中学校の歴史教科書と韓国の大学生のレベル(柳錫春・元延世大学教授のコラムより) »
« 【帰還事業】映画『キューポラのある街』と北朝鮮帰還事業への影響 | トップページ | 台湾の中学校の歴史教科書と韓国の大学生のレベル(柳錫春・元延世大学教授のコラムより) »
コメント