【クマラスワミ報告】有馬哲夫教授が読み解く米公文書/河野談話を破棄(上書き)しなくてはならないわけ
公開:2021-08-28 10:46:46 最終更新:2021/08/28 12:56(現在ソースなどを追記中)
今回は有馬哲夫教授の2本の動画をご紹介し、内容について、ブログ主のメモを忘備録として残します。
- クマラスワミ報告書は支持されていなかった 前編(約21分)
- 「クマラスワミ報告書は国連で支持されていなかった」後編(約32分)
1996年2月の国連人権理事会にて報告・審議された「クマラスワミ報告」(※)は「take note(留意する)」という低い評価だったのは知られています。
※「クマラスワミ報告」は「本体」と「付属文書1」、「付属文書2」から成り、本体は今日的な女性への暴力を扱い、付属文書2は家庭内暴力の問題、慰安婦問題を扱ったのは「付属文書1」です。日本ではこの「付属文書1」をクマラスワミ報告と呼ぶ事が多いので、ここでも「クマラスワミ報告」と呼ぶ事にします。
内容に関しては、オーストラリア人ジャーナリスト、ジョージ・ヒックスの書いた通俗的な本に依存し、ヒックスの本も吉田証言など、偏った資料を元にしたものなので、事実誤認に満ちている。
ちなみに、評価については、上から、「commend(称賛)」、「welcome(歓迎)」、「take note with appreciation(評価しつつ留意)」で、「take note」はその次の4番目。それより下は「reject(却下)」です。
このクマラスワミ報告に対し、日本政府は何もしなかったのかというとそうではなく、反論書を各国に配布して水面下の交渉を行っていました。しかし、最終的には“取り下げ”(産経新聞の表現ですが、公式には提出しなかったということでしょう。)、「幻の反論書」と呼ばれていました。その後、産経新聞が入手し、月刊正論(2014年6月号、7月号)に全訳を掲載すると共に、西岡力教授や阿比留瑠比記者、島田洋一教授の評論を掲載しています。
しかし、前述のように、各国に配布していたので、米公文書としては存在し、また、クマラスワミ報告を巡って、米国務省とジュネーブの米国連代表との間でのやり取りの記録も存在します。それを入手した有馬哲夫教授が、米国がクマラスワミ報告に関してどのように考えていたのか、あるいは、日本や韓国に対してどのように助言していたのかを解析しました。〔反論書表紙画像〕
動画はそれを原文を参照しながら解説するものです。
簡単に概略を説明すると、クマラスワミは国際法を分かっておらず、「時際法の法理」、即ち、ある時点の日本の行為が国際法に違反しているかどうかは、条約に署名しているかどうかやその時に効力があった国際法に基づくべき(ウィーン条約法会議第28条)という事を全く無視しており、米国を含む西欧諸国は、クマラスワミ報告を酷いものと見なしていました。〔文書:many Western countries believe it(=レポート)has handled the entire issue poorly〕
しかし、一方、クマラスワミの、慰安婦に関する事実認識に関しては、米国は全面的に同意しているのです。
それは何故かというと、「日本は、『村山談話』(1995年8月15日)や『河野談話』(1993年8月4日)で、それを認めているじゃないか」という認識だからです。元々、欧米諸国は『東京裁判史観』であるところに、日本政府が認めたのですから、彼らの認識は「慰安婦は“性奴隷”」なのです。
結果的には、クマラスワミ報告が主張する日本の賠償義務は採択されなかったので、有馬教授の言葉を借りれば、日本は「名を捨てて実を取った」事になり、韓国としては不満の残るものでありました。
但し、日本の左派系メディアや韓国国内ではクマラスワミ女史がそのように勧告したという部分だけをクローズアップしており、特に韓国国内では、『河野談話』と『クマラスワミ報告』は “錦の御旗” のようになっています。いくら、韓国の学者が慰安婦の真実を追及しても、この2つが大きな壁となって立ちはだかります。
『河野談話』に関しては、その後、「慰安婦問題を巡る日韓間のやりとりの経緯~河野談話作成からアジア女性基金まで~」を外務省が公表しており、それを読むと、事前に韓国側と文言の擦り合わせをして、“女性の意に沿わない強制性があった”と読み取れる文章に、故意にしていた事が分かっています。〔cf. Wikipedia:慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話〕
しかし、それは調査報告と併せて読んで初めて分かる事であり、『河野談話』が一人歩きした以上、いくら日本人が、“極めて政治的な文書であり、証拠にはならない”と主張しても、国際的には通用しません。
従って、有馬教授は、『村山談話』や『河野談話』を破棄(上書き)しない限り、第二、第三のクマラスワミ報告が出てくる可能性がある、と警告します。
そして、今や根拠は揃ってきている、とも有馬教授は仰います。それは、身の危険も顧みずに慰安婦の証言を検証している韓国人学者の研究とラムザイヤー論文の存在です。
ところで、この動画の中で有馬教授が説明していますが、米公文書によると、「韓国政府はクマラスワミ報告を読んだ後で、(日本に賠償請求をすると)態度を変えた。」〔画像〕とあり、韓国政府が主導したと言うよりは、クマラスワミ報告に便乗したのだと言う事が意外でした。
という事は、韓国政府の主張とクマラスワミ報告の論理が似ているのも理解できるし、クマラスワミ報告が支持を得られなかった法的な問題(=当時は合法だった)をクリアするために、「重大な人権問題」という論理を全面に持ち出したのも分かります。
よく、「ICJ(国際司法裁判所)で白黒決着を付けよう」という日本人がいますが、島田洋一教授が仰っていましたが、日本はICJで勝つとしても、判決文に相当ひどい事を書かれる可能性があると警鐘を鳴らしています。(ドイツとイタリアの裁判の判決文でもそうだった。→国家基本問題研究所:国際司法裁判所の実態見据えよ 島田洋一(福井県立大学教授))
このことは、上述のように、欧米諸国が慰安婦に関してどのような認識でいるかを考えたら、納得できます。
日本政府は、今や腹を括って、国際的な認識を変える必要があるのです。
資料やソースなど、追々追加したりリンクを貼りますが、ここで一旦公開します。
* * * *
【関連資料】
◆デイリー新潮:「慰安婦問題」に日本政府の反論文があった 「クマラスワミ女史」を論破
新潮45 2017年5月号掲載 有馬哲夫 ・・・『新潮45』に掲載された論文の短縮版と思われる。
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