【「徴用工」問題】「強制連行」「強制労働」という表現に関する質問主意書と政府答弁【教科書問題】
前回のエントリーで書いたように、歴史教科書に「従軍慰安婦」という表記〔山川出版社のような姑息な「いわゆる従軍慰安婦」という表記も〕が使えないようにする閣議決定がなされました。
教科書検定基準には、「閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解」及び「最高裁判所の判例」があるときは、それらに基づいた記述がされている事、となっているからです。
昨日ようやく馬場伸幸衆院議員〔日本維新の会〕の質問主意書に対する政府答弁〔←政府答弁とは閣議決定されたもの〕がPDFで公開され、早速、『WILL増刊号』が取りあげました。
馬場議員の質問主意書はもう一通あり、『「強制連行」「強制労働」という表現に関する質問主意書』というものです。(第204回国会 質問一覧の項番97と98)
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「強制連行」「強制労働」という表現に関する質問主意書
「強制連行」「強制労働」等の表現に関する問題は緊急を要すると考える。
したがって、次の事項について質問する。
一 昨年六月、一般公開された「産業遺産情報センター」においては、朝鮮半島から来て長崎県・端島(軍艦島)の炭鉱で労働者として働いていた人々やその家族の証言が展示されている。その中には、在日韓国人二世の元島民が「周囲の人とか、いろいろな方からかわいがられたことはあるけど、指さされ「あれは朝鮮人ぞ」とか、そういうことは、まったく聞いたことがないですね。」といった証言もある。
1 終戦前に朝鮮半島から労働者として本土に来た人々には、自らの意志で渡航を決めた人もいるし、渡航に至る形態で見ても、募集に応じた人、官斡旋で来た人、徴用された人など、様々な経緯を辿って来た人がいるにもかかわらず、これらの人々を一括して「強制連行された」とか「強制的に連行された」と呼んでいたり、同様の趣旨で「連行された」と呼んでいたりする向きもある。そもそも「連行」とは、主要な国語辞典において、「犯人を連行する」というような形で使用される語として書かれており、例えば、岩波国語辞典(第八版、岩波書店)では「人を引っ張るようにしてつれていくこと。」、大辞泉(第二版、小学館)では「本人の意思にかかわらず、連れて行くこと。特に、警察官が犯人・容疑者などを警察署へ連れて行くこと。」とされていたり、また法令においては、例えば警察官職務執行法における「連行」という言葉は、相手の意に反し、有形力を用いて警察署などに同行させる行為などを指して使われていたりするなど、一般的には極めて強い意味合いのある言葉と言える。こうした表現を用いることは不適切きわまりないと考えるが、政府の考えを問う。
2 また、国民徴用令に基づいて徴用された朝鮮半島出身者がいたことは事実であるが、当時日本人も同様に徴用されたのであり、徴用と「強制連行」を混同するのはおかしいと考える。政府は、過去に「強制連行について、「その意味するところについて確立された考え方があるとは承知していない」旨の答弁書を閣議決定しているとおり、「強制連行」について確立した定義は存在しない。徴用については、国民徴用令に出頭手続き等が規定された「徴用」というれっきとした法律用語があるのであるから、「強制連行」や「連行」との誤った用語を用いるべきではなく、「徴用」を用いるべきであると思うが、政府の考えを問う。
二 戦時中に朝鮮半島から多くの人々が労働者として「募集」「官斡旋」「徴用」により本土に連れてこられ、強制労働させられたとの見解があるが、政府の考えを問う。
右質問する。
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衆議院議員馬場伸幸君提出「強制連行」「強制労働」という表現に関する質問に対する答弁書
一について
御指摘のように朝鮮半島から内地に移入した人々の移入の経緯は様々であり、これらの人々について、「強制連行された」若しくは「強制的に連行された」又は「連行された」と一括りに表現することは、適切ではないと考えている。
また、旧国家総動員法(昭和十三年法律第五十五号)第四条の規定に基づく国民徴用令(昭和十四年勅令第四百五十一号)により徴用された朝鮮半島からの労働者の移入については、これらの法令により実施されたものであることが明確になるよう、「強制連行」又は「連行」ではなく「徴用」を用いることが適切であると考えている。
二について
強制労働ニ関スル条約(昭和七年条約第十号)第二条において、「強制労働」については、「本条約ニ於テ「強制労働」ト称スルハ或者ガ処罰ノ脅威ノ下ニ強要セラレ且右ノ者ガ自ラ任意ニ申出デタルニ非ザル一切ノ労務ヲ謂フ」と規定されており、また、「緊急ノ場合即チ戦争ノ場合・・・ニ於テ強要セラルル労務」を包含しないものとされていることから、いずれにせよ、御指摘のような「募集」、「官斡旋」及び「徴用」による労務については、いずれも同条約上の「強制労働」には該当しないものと考えており、これらを「強制労働」と表現することは、適切ではないと考えている。
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参考までに、ブログ主が作成した『戦時動員概念図』を提示します。韓国の所謂「徴用工裁判」の原告4名〔2018年10月30日の韓国大法院判決〕は募集工または官斡旋です。最初は企業が募集していましたが、不正渡航が多くて問題になったので、行政が募集に関与しました〔=官斡旋〕。
所謂「徴用工裁判」の原告もそうですが、朝鮮半島出身労働者はほとんど自由意志で渡航したのです。そして、『反日種族主義』(李栄薫、他・著)などで明らかになったように、日本人と朝鮮系日本人との間で賃金の差はありませんでした。
再び、山川出版社の中学生用歴史教科書を再掲しますが、これは「戦時下の国民生活」という単元の、小見出し「戦時体制下の植民地・占領地」にあります。
本文には問題のある記述が多々ありますが、特に赤枠の「多くの朝鮮人や中国人〔※〕が日本に徴用され鉱山や工場などで過酷な条件の下で労働を強いられた。朝鮮や台湾でも徴兵制が施行された。」という記述は全くの誤りです。
※2021/03/30の参議院・文教科学委員会の日本維新の会・松沢成文委員の質疑で「中国人は『国民』ではないので『徴用』というのは明白な誤りである」という指摘があったが、答弁により、昨年11月に出版社からの訂正申請があり、既に訂正されていたことが判明。
鉱山や工場での仕事が過酷なものだとしても、特に朝鮮人だけを「過酷な条件の下」で働かせたわけでも、それを強いたわけでもありません。
直接的に「強制労働」という表現を使っているわけではありませんが、「強制労働をさせた」と言っているも同然の文で、そもそもこれが何の検定意見も付かずに通ってしまったのが問題ですが、これも今回の閣議決定で修正されるべきでしょう。
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