【慰安婦訴訟】ソウル中央地裁が「主権免除」の原則により李容洙氏らの訴えを却下。しかし、1月8日の判決と齟齬
本日(2021/04/21)午前10時に始まった裁判で、原告の訴えが却下されました。
これは前日に伏線がありました。今年、1月8日の別の慰安婦裁判の判決では原告が勝訴しましたが、敗訴した日本政府に、賠償支払い命令とともに訴訟費用の支払い命令が下されていました。しかし、昨日、1月8日の判決を下した同じソウル中央地裁が、訴訟費用の支払いを日本に求めたり、日本の資産を売却することは「主権免除」に反するという『決定文』を示していたのです。
これは、原告側が日本の資産を差し押さえるため、資産のリストを開示するよう求めていた事に付随して示されたものです。
従って、判決はそのままですが、これによって、賠償金を得るために日本の資産を差し押さえたり、売却するのは、国際法違反になるという牽制をしていたのでした。また、特筆すべき事は、2015年の慰安婦合意だけでなく、1965年の日韓請求権協定(日韓基本条約)にも言及したことでしょう。
1月8日の判決を下したのはソウル中央地方法院民事34部だそうで、今回、「決定文」を示したのも同じ民事34部。実は、判決後、人事異動で全員が入れ替わっていたそうです。(なお、ソウルには複数の地裁があり、中央地裁はその一つ。)
今日の裁判を担当したのは民事15部です。
青瓦台(大統領府)が直接指示したのかどうかは分かりませんが、韓国の司法や検察は基本的に政権に阿(おもね)るので、1月8日の判決も、今回の判決も政権への「忖度」かも知れません。
1月18日の新年の記者会見で、文在寅大統領は、裁判の結果に、「正直、困惑してる」、「慰安婦合意は両国間の国債合意と認めている」という発言をしていたからです。→【2021/05/10追記】これに関して、西岡力教授は1月8日の判決直後(文在寅発言前)に4月21日に判決言い渡しを延期したことから、既に判決文は書かれていたと説明。(別途エントリー)
政府の意に沿ったものかどうか、与党の共に民主党議員や正義連がどのような反応をするかで分かるでしょう。なお、李容洙氏は現在は別の団体がバックに付いています。
ここまで取り敢えずメモとして。後ほどソースなどを追加します。
【追記】この件に関する李相哲教授の解説(李相哲TV):【速報】慰安婦裁判の裏に何が(2021.4.21)
下図は動画のキャプチャ。(決定文)
李相哲教授の説明では、韓国の司法が、このままでは1月8日の判決が判例となってしまうのを防いだのではないか?ということでしたが、これが司法界の総意なのかどうかは、おそらく原告は控訴するでしょうから、二審の対応で分かるでしょう。李容洙氏がICJに付託せよと騒いでいるのは、あるいは、内々にこの判決は覆らないと伝えられているのかとも思います。
今回の判決が慰安婦問題解決の第一歩とも言えますが、ブログ主は、裁判を防ぐのには役に立っても、状況は変わらないと思います。なぜなら、慰安婦合意は生きていると言った文在寅ですが、相変わらず、日本大使館敷地前の慰安婦像は撤去されませんし、隙さえあれば、海外に慰安婦像を展示しています。(最近は、ドイツ、ドレスデンの美術館に期間限定ですが、展示されました。なぜか、安倍前総理を糾弾する横断幕も飾られています。→「なでしこアクション」のサイト参照)
これらのことは、民間人がやっていることだからと放置されています。
仮に、今後、大統領が替わっても、政権交代をしても、現在の野党には期待できません。野党「国民の力」は左派政党や左派を支持する国民から貼られた「親日」というレッテルを払拭するのに躍起になっているからです。
慰安婦問題とは離れますが、本当に韓国の行く末を憂いている方達は「第三の勢力」の出現を待っているようで、先日の釜山市長選挙に出馬した元「ペン&マイク」の鄭奎載 (ジョン・ギュジェ) 主筆もその一人で、昨年の総選挙の時には、むしろ国民の力も潰れた方がいいとまで仰っていましたが、韓国国民は二大政党制が好きなようです。今回のソウルと釜山の市長選挙でも、この2つの政党が互いに「親日」のレッテルで攻撃し合っていました。
ただ、韓国で真の保守の立ち位置が不安定なのは理解できます。嘗ては「反共」で結束できましたが、韓国国民にとって、国≓民族だからです。そして、日本の保守のように、守るべき伝統や文化、価値観が無いことです。と言っては失礼かも知れませんが、例えば、李氏朝鮮時代の伝統に守るべきものなど見いだせるでしょうか?
李栄薫博士のような方に「極右」のレッテルが貼られるとなると、右と左の対立軸が何なのか、訳が分からなくなります。
◇ ◇ ◇ ◇
記事を朝鮮日報の機械翻訳に差し替えました。
https://www.chosun.com/national/court_law/2021/04/21/AQPQYVKHCNB4BFYMB6QPV3SXIU/
慰安婦被害者の判決への大騒ぎになった。 日本政府に対する2回目の損害賠償敗訴へ
裁判所の訴訟却下… 「国家は他の国の裁判管轄権ではない」
入力 2021.04.21 10:53 | 修正 2021.04.21 10:53
2021年4月21日、ソウル瑞草区中央地方裁判所で日本軍慰安婦被害者らが日本政府を相手に国内裁判所に提起した二番目の損害賠償請求訴訟の判決公判が終わった後、李ヨンスさんが判決に対する立場を明らかにしている。 ソウル中央地裁民事合議15部はこの日、故クァク·イェナムさん、キム·ボクトンさんとイ·ヨンスさんら被害者と遺族20人が日本を相手取って起こした損害賠償請求訴訟を却下した。 オ·ジョンチャン記者
日本軍慰安婦被害者たちが日本政府を相手に起こした訴訟を裁判所が却下した。 一つの国家が他の国家の裁判管轄権から免除されるという「主権免除」理論を適用した結果だ。 先立った慰安婦勝訴判決と正反対の結果へと波紋が予想される。
ソウル中央地裁民事15部(閔聖哲〈ミン·ソンチョル〉裁判長)は21日、故·郭礼男(クァク·イェナム)、キム·ボクトンさんら被害者と遺族20人余りが日本政府を相手取って起こした損害賠償訴訟の判決で、「この事件の訴訟を却下する」と言い渡した。 却下は訴訟が適法でないため、本案の判断をせずに終えるという意味だ。
この事件の争点は「主権免除(国家免除)」の適用可否だった。 主権免除は、国家平等の原則上、一国が他国の裁判対象になり得ないという国際慣習法の原則だ。 これに先立ち、故ペ·チュンヒさんら被害者と遺族12人が起こした訴訟を担当していた中央地裁34部(金正坤〈キム·ジョンゴン〉裁判長)は今年1月、「人道に反する事件には国家免除が適用されない」として、日本の損害賠償責任を認め、原告1人当たり1億ウォン(約1億ウォン)を支払うよう言い渡した。
しかし民事15部は「2015年の韓日合意が現在も有効に存続しており、合意書の内容によって被害回復が現実的に行われた状況で国家免除を不当だと認めるのは妥当ではない」とし「(国家免除の認定が)国際法尊重主義と国際平和主義、均衡性を喪失したとは見られない」と述べた。
韓国の裁判所に法的拘束力はないが、これまで国際司法裁判所(ICJ)は主権免除を適用して判決を下してきた。 ICJは12年、第2次世界大戦の時、ドイツ軍需工場で強制労働をさせられたイタリア人のルイキ·フェリーニがドイツ政府を相手取って起こした損害賠償訴訟で、イタリア最高裁がドイツ政府の損害賠償責任を認めると、主権免除の理論を掲げてドイツに軍配を上げた。
同日、中央地裁民事15部も同様に、この判決に触れた。 それとともに「韓国の裁判所が当然解釈を通じて国際慣習法の一部を否定することは難しい」と述べた。
裁判部は「現在、国際慣習法は領土内で行われた主権的行為に対しては国際免除を認めた」とし、「1997年の大法院判決などでもこれを確認した」と述べた。
◇裁判部"韓日慰安婦の合意である程度の権利救済"
裁判部は特に2015年に行われた韓日慰安婦の合意について"外交的な要件を具備しており、権利救済の性格を持っている"とした。 同地裁は「合意過程で被害者の意見を聴取しなかったなど、内容と手続きの面で問題があるが、こうした事情だけで裁量権を逸脱乱用したとは考えにくい」と指摘した。
裁判所は「合意には相手方がいるため、大韓民国の立場だけを一方的に反映することはできない」とし「一部の被害者は和解治癒財団から現金を受け取った」と明らかにした。
裁判部は"国家免除によって侵害される私益と国際法を遵守する公益を比較し、後者がもっと大きい"、"2015年、慰安婦の合意を通じて、被害者240人のうち99人に対する現金支援が行われた点を考慮すると、代替的権利の救済手段が用意されたと見ることができる"とした。
裁判部は、判決の末尾に"被害者たちが多くの苦痛を経験し、大韓民国が傾けた努力と成果が被害者たちの苦痛と被害を回復することに不十分だったものとみられる"、"被害回復など、慰安婦問題の解決は外交的交渉を含めた努力によって行われなければならない"とした。
◇ほかの被害者は勝訴が確定、裁判所に二つの判決
今回の判決は、日本政府を相手に、慰安婦被害者らが起こした訴訟について'国家免除'を適用して訴訟を不適法だと見た初の判決だ。 これに先立ち、中央地裁34部が他の被害者に対して出した勝訴判決が、日本が対応せずに確定したため、現在としては同じ事件に対して勝訴と敗訴の二つの判決が存在することになった。
今回の敗訴判決に対し、被害者側が控訴すれば、「主権免除」の適用が正当かどうかは結局、大法院(日本の最高裁判所に相当)の判決が下される見通しだ。 先立って、法廷に出席した慰安婦被害者李ヨンスさんは敗訴の結果について"国際司法裁判所に行くという言葉しか言いようがない"、受け入れられないという意味を明らかにした。
すでに勝訴が確定した前の判決は強制執行の段階に入った。 しかし、中央地裁民事34部は定期人事で裁判部が変わった後の先月29日、「国庫による訴訟構造取立て決定」を下した。 当時裁判部は「1月初め、本案訴訟は日本政府の国家免除を認めず勝訴判決を下した」とし「しかし外国財産に対する強制執行は該当国家の主権と権威に損傷を与える恐れがあり、慎重な接近が必要だ」とした。 そして、約300万ウォンの訴訟費用に対して、敗訴者の日本ではなく、国が支払うべきだという決定を下した。
判決はすでに確定しており、勝訴の結論自体を変えることはできないが、訴訟費用の執行を判断し、国家免除の部分で前の裁判部と正反対の結論を下したのだ。 しかし、被害者側はこの決定にもかかわらず、日本政府の財産に対する強制執行を続けるという立場だ。
裁判所の関係者は、「同じ事件で矛盾した2つの結論が出た状況は、大法院(日本の最高裁判所に相当)が整理すべきだ」と語った。
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