【河野談話】「河野談話を取り消せ!」という人達は正しく『河野談話』を理解しているのだろうか?
先日、馬場伸幸衆院議員の、「『(いわゆる)従軍慰安婦』という表現」と、「朝鮮半島出身労働者に関する『強制連行』・『強制労働』に関する」質問主意書に対する閣議決定された答弁書が公表されました。
これに対して中韓、特に韓国が強い反発を示しており、また、国内でも、「『河野談話』を継承したことについて失望した」と言う声も多く聞かれます。
ブログ主は心情的にはこの国内の声に同調しますが、一方で、「河野談話を取り消せ」と言う人は、どれほど『河野談話』を理解しているのだろう?と疑問に思います。
◆「広義の河野談話」と「狭義の河野談話」
まず、河野談話とは官房長官記者会見の中で①談話文が朗読され、その後の記者との質疑応答で②強制連行を認める発言をした事の2つに分けることができます。〔以降、「談話文」と「発言」と呼ぶことにします。〕
韓国などは、一連の記者会見での官房長官の発言なので、①と②を併せて「河野談話」と理解しています。一方、日本政府はあくまでも「談話文」(←①、正式には『慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話』)を「河野談話」と言っています。つまり、「広義の河野談話(①+②)」と「狭義の河野談話(①)」があるとも言えます。
河野洋平氏の記者会見自体は閣議決定されたものではありませんが、その後、例えば安倍総理が2015年の日米首脳会談後の記者会見で「(河野談話を)継承し、見直す考えがない」と発言したのも、今回の答弁書で「政府の基本的立場は、平成五年八月四日の内閣官房長官談話(以下「談話」という。)を継承しているというものである。」と書かれたのも「狭義の河野談話」のことです。河野洋平氏と記者との質疑応答はあくまでも河野洋平官房長官個人の発言だからです。
◆「談話文」そのものは朝鮮人女性の強制連行は認めていない
官房長官記者会見の全文テキストがないので産経の記事を以下に引用しますが、記者が念を押すように質問したのは、「談話文」だけでは、日本軍や日本政府による「強制性」や「強制連行」が認められないから言質を取りたかったのです。
--河野談話発表後の記者会見で、記者から強制連行はあったという認識でいいか、と質問された。それに対し河野氏は「そういう事実があったということで結構です」と答えた。公文書の記述など客観的な文書は見つかったのかという質問には「強制ということの中には、物理的な強制もあるし、精神的な強制もある。精神的な強制は官憲側の記録に残るというものではない」と答えた。いわゆる慰安婦の議論をするときに、強制性というのは集めるときに日本の軍、業者の誰かによって、強制的に集められたかどうかが問題だ
「談話文」はその後も政府が何度も継承すると公式に認めているので、政府の統一見解です。一方、河野氏個人の「発言」は河野洋平自身で取り消すしかないのです。
今回の答弁書に関して韓国がギャーギャー言っているのは、日本政府が「発言」部分、即ち、「強制連行」を、事実ではないと否定したからです。〔質問主意書と政府答弁全文は以前のエントリー参照〕
ここで改めて「談話文」をブログ主の注釈付きで読んでみて下さい。「官警の直接の関与(③)とは何なのか」、「当時の朝鮮半島に於いて、特に『募集』の主語が誰なのか(⑤)」が曖昧な悪文であることはブログ主も十分理解していますが、強制連行は認めていません。(わざと誤読できるように書かれている、とも言える。)
今では、この河野談話が韓国政府との密約の上で作られた文だと言うことは分かっていますが、密約と言えども、国家間ですりあわせた文章を一方的に破棄をするのは、韓国政府と同じようなレベル(※)に堕ちます。談話文に不備があるとは言え、ここでの謝罪は、その後の慰安婦合意にも引き継がれているので、簡単に談話文は取り消せるものではないのです。
※今では、「強制性を認めれば二度と慰安婦問題は取りあげない」という約束を韓国政府が破ったことは周知の事実。
もう一度書きますが、「広義の河野談話」の“キモ”は、韓国にとって「強制連行」なのですから、現政権が談話文だけ取り消しても意味はないし、一度発言したものを無かったことにもできません。今回、「強制連行」をピンポイントで否定したことに意義があるのです。
韓国メディアが騒いでいるのですから、“効いてる”証拠です。
それに、吉田清治の発言や朝日新聞の報道が虚偽だということも、今回の答弁書には盛り込まれました。だから、ブログ主はこの答弁書は現在できうるベストな閣議決定だと評価します。
◇ ◇ ◇ ◇
なお、今回、河野官房長官記者会見のフル動画がないかと探した所、慰安婦研究の権威の一人、秦郁彦教授がプライムニュースに出演した時のの発言を元にしたニュース動画が見つかったので、ご紹介します。
アナ:「いわゆる従軍慰安婦」に関する河野談話の作成過程を検証したチームのメンバーで現代史家の秦郁彦氏が昨夜、BSフジのプライムニュースに出演し、「河野談話は義援金を出すことを日本国民に納得させるため、悲惨さを誇張して出されたものだ」との認識を示しました。
(以下、プライムニュースの映像を交えながらニュースが続くので、発言を部分的に紹介)
秦:(強制連行の)文書上の証拠が出てこない。何かの、義援金みたいなものをとにかく出そうと。そうすると国民に対して説明しなきゃいかんわけです。要するに、慰安所の生活が非常に悲惨であったと。そこへですね、(焦点を)絞らなきゃあかん。私は対日本国民向けの説明の必要性から(河野談話が)出てきたものではないかと考えている。
(中略)
アナ:そして、(秦氏は)河野談話が発表された当日の事務方が作成した元々の文書には「官憲等~」の文言と「総じて~」の文言は入っていなかったと指摘し、これらの文言が河野官房長官以上のレベルで入った証拠になると述べ、政治的な判断があったとの認識を示しました。
その上で秦氏は、河野談話が明示した慰安婦募集への「官憲等の加担」については、「実際にはほとんどないと考えていい」と指摘しました。
今回の検証結果について河野官房長官が、「新たに付け加えることも差し引くこともない」とコメントをしたことに対し、秦氏は、「河野さんに責任があるのに他人事みたいだ。日本人の通常の感覚では『お騒がせして申し訳ない』とか、『不徳の至りだ』とかの言い方をするものだ。」と批判しました。
アナ:今回の検証作業のきっかけとなる国会質疑を行った日本維新の会の山田宏衆議院議員は同じ番組で、「談話は元慰安婦16人の証言を元に作ったわけではないことが明らかになった。河野氏は外で談話を出すのではなく、国会できちんと説明するべきだ。議長まで務めた人のやることではない。」と批判し、河野氏の参考人招致の必要性を強調しました。
【おまけ】
◆山田宏ch:慰安婦問題 朝日新聞の嘘を暴いた!山田宏の歴史的質疑(2014年2月20日 衆議院予算委員会)
◆Wikipedia『慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話』#河野談話の検証
◆日本政府の河野談話検証報告書:外務省 トップページ > 外交政策 > その他の分野 > 歴史関連 > 日本政府による調査と内閣官房長官談話
慰安婦問題を巡る日韓間のやりとりの経緯~河野談話作成からアジア女性基金まで~(平成26年6月)
日本語:https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000042166.pdf
英語:https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000042167.pdf
河野談話作成過程等に関する検討チーム
弁護士(元検事総長) 但木 敬一(座長)
亜細亜大学国際関係学部教授 秋月 弘子
元アジア女性基金理事,ジャーナリスト 有馬 真喜子
早稲田大学法学学術院教授 河野 真理子
現代史家 秦 郁彦
事務局(内閣官房、外務省)
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