朝鮮戦争の英雄・白善ヨプ(ペク・ソンヨプ)将軍死去
朝鮮戦争の英雄・白善ヨプ(ペク・ソンヨプ)将軍が逝去されました。
99歳でしたが、韓国では数え年のため、100歳として報道されている場合もあるようです。
間違いなく、この人がいなかったら朝鮮戦争で韓国は負けていたと思うのですが、韓国政府の扱いがあまりにもぞんざいで、国民から批判の声があがっているようです。
朝鮮日報日本語版でもそれを批判する記事やコラムが何本も掲載されており、その内、社説を読むと、文在寅政権や与党の考え方がよく分かるので、それをご紹介します。
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2020/07/13/2020071380004.html
記事入力 : 2020/07/13 08:59
【社説】ペク・ソンヨプ将軍を弔問するのは大韓民国大統領の義務だ
享年100歳でこの世を去った6・25戦争の英雄、ペク・ソンヨプ予備役大将に各界から弔問と哀悼の声が相次いでいる。ペク将軍がいなければ、今日われわれが享受している自由と平和と繁栄はなかったし、大韓民国そのものが存在しなかっただろう。70年前に破竹の勢いで押し寄せてきた北朝鮮軍の前で、洛東江に最後の防衛戦を敷いたペク将軍は、恐怖におののく兵士たちに「われわれが引き下がれば米軍も撤収する。私が後退したらおまえたちが私を撃て」と言って先頭に立って突撃した。ペク将軍は8000人の兵力で北朝鮮軍2万人の総攻勢を1カ月以上防ぎ、戦況をひっくり返した。奇跡のような出来事だった。ペク将軍は仁川上陸作戦成功後、米軍よりも先に平壌に入城し、1・4後退後のソウル奪還の際にも先頭に立った。
ペク将軍は韓国軍創設にも参加し、休戦会談では代表を務め、韓国軍初の大将になり、陸軍参謀総長に2回就任するなどして韓国軍を再建した。韓国軍を「民兵隊」のように扱っていた米軍も、ペク将軍にだけは「最高の野戦指揮官」として尊敬の念を惜しまなかった。在韓米軍司令官が新たに任命されたときは、必ずペク将軍を訪問して転入を報告し、米陸軍歩兵博物館には彼の肉声による証言が永久保存されている。「6・25の生きた伝説」「救国の英雄」「韓米同盟のシンボル」など、ペク将軍を説明する多くの言葉をいくら使っても、彼の業績を全て説明するのは難しいほどだ。
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ここに書かれていることは決して誇張では無く、まず白将軍の偉大さが分かるかと思います。
退任後は中華民国大使や、フランス、カナダ大使などを歴任し、1970年(昭和45年)に起きた「よど号ハイジャック事件」の時には交通部長(運輸大臣)として金浦(きんぽ)空港で対処されました。
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ところがこの偉大な護国元老が、自ら命懸けで守り抜いた祖国から晩年に受けた仕打ちを考えると、惨憺(さんたん)たる思いがするどころか信じられないほどだ。左派執権勢力は彼が日帝強占期に日本軍にいた記録だけを強調し、機会があるたびにあしざまに非難し罵倒してきた。ペク将軍は日帝治下で生まれた。その世代の人たちにとって、大韓民国という国そのものが想像もできないものだった。今の観点からその時代を裁き、ペク将軍を「独立軍を討伐した親日派」と呼んでいる。ペク将軍は「当時は中共八路軍とは戦ったが、独立軍など見たこともない」と語ったにもかかわらず、その言葉は聞こうともしない。
文在寅(ムン・ジェイン)大統領はペク将軍のような人物ではなく、南侵の功績で北朝鮮で重用された人物を「韓国軍のルーツ」と呼んだ。韓国与党・共に民主党はペク将軍の死去に哀悼の声明は一言も出していないが、これはどう考えても異常だ。ソウル市長の自殺について「過は過、功は功」として美化する人間たちが、国を救ったペク将軍の「功」からは顔を背け、「過」ばかりを無理やりつくり上げ歪曲(わいきょく)しているのだ。
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韓国で常に問題にされるのは、「親日派」かどうかで、日本統治時代に生まれ、優秀さ故に活躍した人物は必ずこれで名誉を毀損されます。白将軍の場合、特に問題とされるのは「間島特設隊」(満州国の朝鮮人部隊)に所属していた時の任務で、基本的に敵は八路軍(中国共産党軍)ですが、共産ゲリラの掃討も行っていました。上記の「独立軍」とは要するに抗日ゲリラです。臨時政府などと言いますが、中華民国の指導を受けていた謂わばシナの傀儡で、従って軍隊などといっても正式な訓練も受けたこともなく、たかが知れています。
しかし、韓国の左派政権は(臨時政府が樹立した)1919年を建国とし、「日本と戦って独立を勝ち得た」という幻想に固執しているのです。
ところで、昨年(2019年)6月6日の「顕忠日」(戦没者慰霊祭)に文在寅大統領が物議を醸すスピーチを行いました。「韓国軍のルーツ」を臨時政府の司令官だった金元鳳(キム・ウォンボン)だと言って称えたのです。この人物は第二次世界大戦後、北朝鮮に渡り、北朝鮮の国家樹立に参画しました。朝鮮戦争の戦没者などを慰霊する日に北朝鮮の要人を称えたのですから、いかに異常なことか分かるでしょう。
これらのことで、文在寅のような従北左派にとっての敵国は「日本」(或いは米国=連合軍)だということがハッキリ分かります。
また、今年の6月25日、6.25(朝鮮戦争)記念式典でとんでもないことが起こりました。
이것좀 보세요 이정권은 정말 답이 없습니다 여적죄 사형이 답이네요 pic.twitter.com/6ldMz0ka3x
— woojin (@woojin01294187) June 29, 2020
上のツイートに埋め込まれた動画が意味することは、今年の6.25記念式典で演奏された韓国国歌の前奏部に北朝鮮の国歌の前奏が使われたということです。(韓国語は「これを見て下さい。この政権は本当に答えがありません。与敵罪で死刑が正解」と書いてあるようです。)
また、3年前にも6.25に合わせて文在寅氏が書いた文の中で、米軍の一員として参戦した韓国系米国人キム・ヨンオク大佐を伝説的英雄として称え、卑怯(ひきょう)な国軍指揮官と比べているのだそうです。(朝鮮日報:【コラム】「英雄」ペク・ソンヨプたたきの精神構造)
確かに弱かった韓国軍ですが、釜山まであっという間に押し込まれたのを踏みとどまったのが白将軍の部隊です。
よく、西岡力教授が「(文在寅のような)従北左派にとっては、大韓民国は生まれてはならなかった『汚れた国』で、抗日の末に独自で独立した北朝鮮に正当性がある(と考えている)」と説明しますが、彼等にとっては「大韓民国の否定」、つまり「反韓」が根底にあり、そして、北朝鮮に対しては大いなる憧憬を抱いているのです。
日本人にとっては「反日の権化」のような李承晩が左派に評価されないのは、民族統一派や共産主義者のライバルを退けて南(韓国)単独で政府を樹立したからです。(民族主義>反日)
つまり、白将軍は、従北左派にとっては「北朝鮮の韓国併呑による統一」を阻止した憎い相手という論理になります。
従って、よく、「韓国政府が日本の輸出管理厳格化を解除させようとGSOMIA破棄をちらつかせる」などと言いますが、これは認識が間違っていると思います。目的と手段が逆です。「GSOMIA破棄」(→最終目的は韓米同盟破棄)こそが目的で、そのために日本を挑発したり、「日本が不当な経済侵略をしている」などと言って韓国国民の反日感情を煽っているのだと思います。国民に「GSOMIA破棄は当然」と思わせることが重要で、貿易管理の問題は利用しているだけです。
少し話が逸れますが、韓国国民は概して「民主主義」を絶対視します。しかし、煽動された民衆による民主主義は、例えば朴槿恵弾劾を求めるろうそくデモのように単なる「衆愚政治」です。民主主義は「手続き」であって、目的(イデオロギー)ではないので、民主的に間違った選択をしうるわけですが、何故間違った選択をしたのかを自省することを省略して、再びデモや集会で民意を変えようとする傾向があるように思えます。
そして、もう一つやっかいな「民族主義」があり、これが絡むと理性より情緒が勝ってしまい、毎度毎度、見せかけの「南北融和(の兆し)」というプロパガンダに騙されるのだと思います。
「大韓民国国民」と「朝鮮民族」というアイデンティティで揺れている間は従北左派につけいられる隙があるように思います。他人(外国人)がとやかく言うことではありませんが、ドイツ人とオーストリア人、オーストリア人(の内、チロル地方)とイタリア人(南チロル)のように割り切った方が楽だとは思うのですが...
以下、社説の残りです。
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韓国政府はペク将軍を12万人の6・25戦友が眠るソウル顕忠院に埋葬するよう求める各界の求めを無視した。「場所がない」というあり得ない理由で大田顕忠院に埋葬するという。しかも与党の一部議員らは「親日派破墓法」の成立を推進しているのだから、後になって何が起こるか分からない。左派団体からは「ペク将軍が行くべきところは顕忠院ではなく靖国神社」という言葉まで出ている。国と民族のために命をささげた英雄の安息の地である顕忠院にペク将軍が入れないのなら、一体誰が入るのか。金元鳳(キム・ウォンボン)のような人物を移葬するのだろうか。今の大韓民国を存在させた護国英雄の最後の道が、このような論争の対象になるのは恥ずかしいことだ。全ての国民を代表する公職者であり、韓国軍統帥権者である大統領がペク将軍を弔問するのは最も基本的な義務だ。
なお、葬儀は個人の希望で家族葬で行われたとのことですが、市民が自主的に焼香会場を設置したようです。一つは(よくデモを行う)「光化門広場」で、韓国人はこういうことに慣れているのか、ネットでの中継を少し観ましたが、テントを何張りも建てて整然と挙行されていました。こうした行動力は韓国を羨ましいと思います。参列者もSNSなどの口コミで集まったとのことです。
【おまけ】経緯が分かるフラッシュ動画
- 朝鮮戦争前半:https://youtu.be/DGFKMKi-Cck
- 朝鮮戦争後半:https://youtu.be/nmAmTKM38lk
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