【書籍・韓国】『韓国人、韓国人を叱る』(赤石晋一郎著/小学館新書)/「徴用工“被害者”」について(2)
公開:2020-06-06 18:43:06 最終更新:2020/06/07 6:12(画像等を修正)
前回のエントリーの続きなので本のタイトルもそのままタイトルに入れましたが、書評のようなものは既に前回書いており、ここでは、韓国が言う「元徴用工」についてや、元軍人・軍属の「被害者団体」と称する人達が主張する「日帝による被害を受けた“徴用工”(や軍人・軍属)への補償は日韓請求権協定で国家間の補償は済んでおり、その補償は韓国政府がすべき」ということについてもう少し考えてみます。
下は、掲題の本にも登場した、そのような団体の一つ、「日帝被害者報償連合会」の金仁成氏のインタビュー記事です。
もし、未払い賃金のようなものがあれば、それは日韓請求権協定での無償3億ドルでまとめて日本は支払っているので、韓国人は韓国政府に請求すべきです。日韓請求権の交渉は債権債務の清算という意味合いがあり、本来は日本が朝鮮半島に残した資産の方が大きいのですが、それは連合軍に没収されて韓国政府に渡されたので、債権債務に含めることはできず、日本が一方的に支払う形になったのはしかたがありません。
したがって、もし、韓国人が請求できるものがあるとしたら、韓国政府に請求するというのは正しいです。
しかし、日本が支払った額に「賠償金」のようなものは含まれていません。
上の産経記事を最初に掲載したエントリー)に書いたのですが、李承晩政権は生存者の精神的苦痛にたいする賠償もふっかけてけて来ました。しかし、日本側が拒絶するとあっさりと引っ込めています。したがって、日本に残した預金とか生命保険などの他は、軍人の恩給とか未払い賃金程度しか韓国政府に請求するものはありません。尤も、それ以上のものを韓国人が韓国政府に求めるなら、それは国内問題なのでとやかくは言いません。
また、日本人も勘違いしているのですが、朴正煕大統領時代に、受け取った金を国民に渡さずに「漢江の奇跡」と呼ばれている経済復興に全て使ってしまったというは誤りです。
既にこちらのエントリーに書いたことですが、1971年1月に「対日民間請求権の申告法」を制定し、申告対象を9件と定め、その内の8件は日本銀行券や日本国債、生命保険などの財産関係でした。残る1つは「軍人、軍属または労務者で召集または徴用され1945年8月15日以前に死亡した者」つまり被徴用死亡者が対象で、軍人・軍属や労務者でも負傷者は対象とならず、被爆者、サハリン残留者、元慰安婦などが漏れていたのです。
以前、元慰安婦の文玉珠という女性の事を書きましたが、彼女は貯金通帳を無くしたので下ろせなくなったお金を支払って欲しいと日本の郵便局に請求したのでした。ブログ主は彼女のことを書いた時に勘違いしていたのですが、彼女は通帳を無くしてしまい、韓国政府に請求できなかったのです。郵便貯金が原簿を調べて預金記録を見つけてあげました。(李栄薫教授も「元帳」と仰っています。)
恐らく、彼女以外にも、実は日本に残し資産があったにもかかわらず証明ができずに泣き寝入りした韓国人は少なからずいたのだと思います。
一部が漏れていたとは言え、請求権の交渉過程で見積もった額とほぼ同額は韓国国民に支払われているので、漏れた人達の請求できる額はたかが知れていたのです。産経の記事に“張基栄企画院長官が「無償3億ドルは実質的に被害国民の賠償的な性格がある」と説明”とありますが、前述のように請求権の交渉で「賠償は含まれない」としており、韓国国民が個人の請求権を持つとしても、それは3億ドル全額ではないのですから、発言の内容自体が間違っています。
韓国人は、一人の高官の発言だけでなく、日韓請求権協定の交渉記録を根拠とすべきですが、そういうことを指摘する人はいないのでしょうか?
しかし、いずれにしても、朴正煕大統領時代に個人の請求権が行使できなかった人がいたことは事実です。
そこで、盧武鉉政権の時に「強制徴用者」、この言葉もおかしいのですが、ここではひとまずそう呼ぶことにして、これに関する調査を官民共同で10年掛けて行い、国が補償をすることになりました。この調査委員会には政府側委員として文在寅も参加しています。
『反日種族主義』で「徴用工問題」のパートを書いたイ・ウヨン博士はこの時の調査報告が研究の役に立ったと仰っています。この時に「強制徴用」された証拠として提出された写真には、十分栄養が行き届いた姿で写真館で撮った写真とか、おしゃれをして観光旅行をしている写真もありました。
詳しくは上記エントリーを参照して戴くとして、例えば未収金については1円あたり2,000ウォンと換算して未収金支援金として支給したり、韓国政府は総額6,088億ウォンを支出しています。
この調査ではもう一つ特筆すべき事があります。「強制徴用」という言葉からも分かるように、韓国政府は、応募工や官斡旋による朝鮮半島出身労働者も「徴用工」であり「被害者」(あるいは「犠牲者」)と位置づけました。しかし、共同委員会は、強制徴用と関連して「政府が日本に戻って法的被害補償を要求することは信義則上困難である」と結論づけたのです。これは朝鮮日報が発見して2019年7月19日に報じました。(記事はこちらのエントリーに転記してあります。)つまり、所謂「徴用工裁判」での大法院判決はおかしいのです。そして、文在寅はそれを知っているはずなのです。
ここまで見てきたように、韓国国民が韓国政府に請求できるものは朴正煕時代と盧武鉉時代にほぼ支払われていると考えるのが妥当で、これ以上何を支払えと騒いでいるのかが上に貼った産経の記事を読んでも分からないし、掲題の本『韓国人、韓国人を叱る』でも全く触れられていません。
韓国政府に補償を求めている人達の根拠は「5億ドルは国民に配られるべき金」という誤った情報なのです。
ブログ主は彼等を見ると、使い古した斧を湖に落として、「私が落としたのは金の斧です」と欲張る男の話(イソップ童話『金の斧銀の斧』)を思い出します。
* * * *
下の図は、西岡力教授が「歴史問題研究会」に発表した論文『朝鮮人戦時動員に関する統計的分析』(PDF)に掲載した「戦時動員概念図」(後の号で若干修正)をベースにしてブログ主が作成したものです。
朝鮮半島と内地(日本)との人の移動は、中央の『戦時動員(旧朝鮮半島出身労働者・徴用工)の推移』を参照して下さい。西岡力教授が作成された図は大凡この部分です。
「朝鮮」の欄の左側に時間の推移と「募集」、「官斡旋」、「徴用」の期間を示してあります。
併せて、所謂「徴用工裁判」の原告4人がいつ頃日本で働いたのかも分かるように記述しました。
一番左端の「犠牲者(死亡者)」と「被害者(生存者)」の矢印は、盧武鉉時代の調査委員会がどの期間を対象にそれぞれを定義づけたのかを図示してあります。
« 【書籍・韓国】『韓国人、韓国人を叱る』(赤石晋一郎著/小学館新書)/「徴用工“被害者”」について(1) | トップページ | 【(自称)元徴用工裁判】韓国裁判所が日本製鉄に対し公示送達。株式売却は8月4日以降 »
« 【書籍・韓国】『韓国人、韓国人を叱る』(赤石晋一郎著/小学館新書)/「徴用工“被害者”」について(1) | トップページ | 【(自称)元徴用工裁判】韓国裁判所が日本製鉄に対し公示送達。株式売却は8月4日以降 »
コメント