【武漢ウイルス】ドイツのコロナウイルス対策(3)給付金制度(4月21日放送『国際報道2020』)
前回のエントリーの続きです。
4月21日放送のBS1『国際報道2020』で紹介されていたドイツのコロナウイルス対策では医療体勢だけでなく給付金に関しても扱っていました。
まずは番組の内容をご紹介します。
取りあげていたのはベルリン在住のピアニスト(峯麻衣子さん/国籍は番組では説明無し)で、ベルリン市は3月から総額1,000億円規模の経済対策を実施、という説明があり、その内容は以下のようなものでした。
- 従業員5人以下の事業所や個人事業主に約60万円の補助金給付。(この金額はおかしい。後述)
- インターネットで申請が可能で、納税者番号を打ち込み10分ほどで完了。峯さん談「簡単すぎで詐欺ではないかと思った」
- 2日後に3ヵ月分の補助金(60万円)が振り込まれた。
- ベルリンは速さ最優先で簡素化したため、給付金を掠め取るための偽サイトも現れた。
* * * *
ここで気付かれたかと思いますが、彼女はフリーランス(個人事業主)です。
ドイツには日本やアメリカのような一律の個人向け給付はありません。(と言うか、個人給付がある国の方が珍しい。アメリカの「Stimulus Check〔Money〕についてはこちらのエントリーで説明。韓国も所得下位70%の国民に数万円規模の給付を公約に選挙を戦ったが、選挙が終わったら案の定みみっちくなっていく方向らしいwー韓国のケースは後日追記。)
但し、ドイツの場合、子供を持つ家庭には児童手当の形の給付金(最大月額185ユーロ〔2万円強/@116円〕で、当面は前月の収入を基準)や学校閉鎖により12歳未満の子供の世話をするために仕事に行けない場合に賃金の最大67%の補償金(最大6週間)という制度があります。
【参考記事】
番組ではベルリン市(ベルリンは州と同等)の例として紹介されていましたが、これは国(連邦政府)の政策で、「Corona Zuschuss」(コロナ助成)と呼ばれる「緊急援助金」的に給付される返済不要の給付金です。申請の受付や給付処理自体は州が行っているのだと思います。(これとは別に「Rettungsbeihilfe Corona」という制度もありますが、こちらは「最長2年間で最長50万ユーロの無利子の橋渡し融資」です。)
なお、調べた限りでは番組で言っていた「従業員5人以下の事業所や個人事業主に約60万円の補助金給付」に該当するような金額を見つけられませんでしたが、番組に出演した方のケースの間違いではないかと思います。
フリーランスならその程度でしょうが、従業員5人以下の事業所では少なすぎます。恐らく、下の記事にあるように最大9,000ユーロ(100万円強/@116円)の給付でしょう。
https://www.jetro.go.jp/biznews/2020/03/9202a2d228e79387.html
JETRO:中小企業への給付金など、新型コロナ経済対策を大幅拡張(ドイツ)
2020年03月26日
(一部引用)追加された1,225億ユーロの補正予算では、ウイルス拡散防止策(個人保護具の調達、ワクチン開発と治療法の開発促進、連邦軍による支援サービス、および住民への情報提供)に35億ユーロ、パンデミックへの緊急対策用として550億ユーロ、保証および保証の分野で考えられる請求について約59億ユーロの引当金増額、中小企業への給付金500億ユーロなどが盛り込まれた。特に注目されていた中小企業ならびに零細企業(従業員10人未満)に対する支援は、融資ではなく給付金(課税対象)に決定した。コロナ危機の影響で2020年3月11日以降に経済的困難に陥る企業が資金の流動性を確保できるようにするため、従業員5人以下(フルタイム相当)の事業者に対しては3カ月分の緊急支援として、最大9,000ユーロが、従業員10人以下(フルタイム相当)の事業者には同じく最大1万5,000ユーロが、一括で支払われる。もし、家主が家賃を20%以上減額し、かつ給付限度額を超えない場合は、さらに2カ月間の必要資金を申請額に計上できる。
番組では申請後2日で振り込まれたと迅速性を強調していましたが、これはアメリカと同様、納税者番号(アメリカは社会保険番号、日本ではマイナンバー)と口座が紐つけされているためにできることで、日本がマイナンバーを利用できないのは、政府だけでなく「国民総背番号」対する(一部の)国民の根強い反対があるので、半分は国民自身のせいです。
また、企業も欧州では「付加価値税登録者番号」で管理されています。
イギリスの例ですが、以前、IPS細胞の山中伸弥氏がテレビで「英国は飲食店を営む友人に三百万円を振り込み従業員給与も3カ月分補償。法人税も1年間免除」と発言をしたそうです。これを疑う声がSNSであったので、調べたら、事業規模が£15,000~£51,000の事業者は£25,000の給付を受けられるそうで、134円のレートで計算すると335万円くらいなので、本当です。おそらく、山中先生の知人はこの事業規模に該当するのでしょう。
そして、オンラインでの簡単な申請が可能なのは、付加価値税登録者番号に申請に必要な情報が紐付けられているのだと思います。
【JETRO】
- 2020年03月18日『英国政府、新型コロナ受け3,500億ポンド超の大型追加経済対策を発表』
- 2020年03月23日『新型コロナ経済対策第3弾、休業従業員給与の8割を補填』
【イギリスの政府サイト】Financial support for businesses during coronavirus (COVID-19)
ドイツも同様の制度があり、しかも、インターネットで簡単に申請ができると別のニュースで見ました。(そのニュースでは複数の州に会社を持つ男性が、州によって加算金が異なっていて別々に申請しないとならないので、州毎にスピードに差があるという事を話していました。)
企業への補助金に関しては、もちろん日本とドイツやイギリス等とを単純に比較することはできません。
* * * *
大きな違いは、ヨーロッパ各国は強制的に休業を命じていることです。
日本の場合、緊急事態宣言により各都道府県に委ねられていますが、あくまでも「要請」レベルで、休業補償に該当するようなものは「休業協力金」のような名目で、各自治体の財政状況に応じて額はまちまちです。
しかも、額は海外と比べるとかなり見劣りがします。
また、休業要請をされていない企業(商店や飲食業、etc.)も、国民が接触率8割減が求められて外出を「自粛」しているのですから、実際には多くの企業が売上減を余儀なくされています。
自民党の安藤裕議員らの議連は「粗利補償」を提言していますが、日本ももう少し「安心して休業」できる政策をすべきだと思います。
ドイツの感染者数(陽性確定者数)のグラフを見ると、波はあるものの、トレンドとしてはピークアウトしているように思えます。これは強制力ある休業命令やで接触率を減少させたせいでしょう。(相変わらず100人、200人単位で死亡者が出ていますが、医療現場には余裕があるので、PCR検査の多さ=陽性確定者数とは因果関係がありません。)
ドイツや他のヨーロッパ諸国と同程度の厳しい営業停止措置が日本に合っているのかは分かりませんが、この「緩さ」では収束に時間がかかり、補償も少ないので零細企業が持ちこたえられないのではないかと危惧しています。
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コメント
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>閑人さん
コメント、ありがとうございます。
ドイツは、経済規模でも医療状況でも日本と比較するのにいい例かと思って、情報を集めてみました。
しかし、結局、国によって、できることとできないことがあるのですよね。
日本は法律(と言うか、憲法かな?)の制約もあり、休業を「命じる」ことはできず、経済活動をしながらの対策となった事、「納税者番号」や「ソーシャルセキュリティ番号」と納税口座が紐付いていない事から、「貧困者だけ」とか条件付けして給付しようとすると、申請ベースで時間が掛かる、等々、単純な比較はできません。(ドイツは納税者番号で管理されているから給付も簡単)
個人的には、「粗利補償」とか「劣後ローン」(利息だけ返せばいい貸付)とか、もう少し、零細企業(例えばライブハウスとか居酒屋とかも)が安心して休業できる制度があれば良いとは思っています。
でも、代わりに、国民(外国人も)皆10万円給付を決定したので、ベストではないかも知れないけど、それなりには対応されていると思っています。
西浦モデル(8割おじさん)は批判があるのは知っています。でも、結果として、国民の多くはそれに従って8割近く接触を減らす努力をしたから、ピークアウトはしたと思います。後々、検証はすべきだとは思いますが。
>けど、こういう話はそれこそ会議で話されていて、その中から決断していく首相の仕事はやりたくないなぁ、と思いますね
上記のように書きましたが、誰も正しい答えなんて出せないですよね。責任がないから皆勝手な事を言っているだけ。
ところで、超過死亡率(「統計的に予想される死者数:実際の死者数」で特定の流行病による影響を見る指標)というものがあって、殆どの国、特にヨーロッパではコロナで超過死亡率は極端に増加しました。
でも、ドイツは3%くらいだそうで、コロナで7千人くらい亡くなったからと言って、例年に比べてそれ程死者数は増えていないのだそうです。(インフルエンザ等で亡くなるケースが減ったのかも)
だから、「ドイツは良くやった」というのは案外間違っていないようです。
>丁寧な記事を集めて頂いてありがとうございます
自分が興味がある事、疑問に思った事をまとめているだけですが、お役に立ったなら幸いです。^^
私はえらそうに意見を書くつもりはないのです。(そんな優秀な人間ではないし)
こうして、自分でも、或いはたまたま見て下さった方にも、考える為の材料になればと思って情報をまとめています。
投稿: 大師小ブログ管理者 | 2020/05/10 20:35
ここら辺はどうなんでしょうね
日本が要請という形なのをまずどう見るかですよね
①法律上禁止が出来ない
②要請という形で責任を国民に押し付けた←野党やマスコミはこれですかね
③元々はギリギリで経済を回しながらゆっくり収束させるつもりだった
個人的には③かなぁと
休業に関して日本は、持続化給付金、要請協力型、家賃補助と全てを使えると額が多いと言われてます。政府は当初③のように経済を回しつつやっていくつもりだったとすればやや少なくても当然ですし、諸外国の対応は死者数が多いことに対する人気取りの政策ではないかと。
もし、海外の指導者が日本の首相ならばもっと何もしていなかったかもしれません
休業要請以降1週間経たずにピークを迎えたようなので、都知事の対応は行き過ぎな気がしてます
西浦モデルは現実に合っていませんし、都や政府の対応は逆の意味で疑問に思ってます
けど、こういう話はそれこそ会議で話されていて、その中から決断していく首相の仕事はやりたくないなぁ、と思いますね
丁寧な記事を集めて頂いてありがとうございます
投稿: 閑人 | 2020/05/10 19:26