【武漢ウイルス】ドイツのコロナウイルス対策(2)ヨーロッパの近隣諸国より死者数が少ない理由(4月21日放送『国際報道2020』)
前回のエントリーの続きです。
番組では、ドイツが医療崩壊を免れた理由を「ドイツの取り組み」として3つのポイントを挙げて解説していました。
- 大規模な検査態勢
- 自宅療養のサポート
- 集中治療のベッド確保
以下、その内容と補足を追加していきます。
大規模な検査態勢(PCR検査の実施)
ドイツではドライブスルー形式だけでなく、バス車両を臨時の検査場にしてアクセスをしやすくし、100超の民間研究所の協力を得て1週間に35万件実施しています。。
これにより、重症化前の感染者を見つけ出し、いち早く自宅療養に繋げているそうです。
なお、ドイツでPCR検査は無料です。後ほどご紹介するニューヨークタイムズの記事によると無料化が決定されたのは3月とのことですが、これにより、更にPCR検査へのアクセスが容易になりました。
希望すれば誰でも受けられる(た)のかは不明です。
ブログ主が以前調べたところでは、PCR検査を受けられる基準は、「熱や咳などの症状があり、2週間以内に下記のいずれかの場所(として、イタリアとかスイスの○○地域とか列記)を訪れた者」となっていました。
日本では、①PCRの精度の問題や②検査場所での感染の心配、③マンパワーなどのリソースの不足に加え、④陽性確定者は入院措置という原則(ベッド不足を招く心配)からPCR検査を積極的に行うことは否定的な意見がありました。
この内④に関しては、ドイツでは次項で説明するように問題がありませんでした。
自宅療養のサポート
ここではある夫婦(妻が陽性)を取りあげ、ドイツのホームドクター(かかりつけ医)によるサポートを紹介していました。
10年以上前にドイツ語の授業で知りましたが、ドイツではホームドクター制度が徹底していて、最初は必ずクリニック=町医者=に行く必要があり、大きな病院に直接掛かることはできません。
番組で取り上げたケースでは、PCのwebカメラやスマホを通じて医師が状態を確認する様子が紹介されていましたが、ホームドクターは毎日2回確認の電話をすると説明されており、最低、電話での観察が義務づけられています。(自宅療養者が受ける診察の費用については言及がありませんでした。)
これにより、ホームドクターや保健当局が症状が悪化する兆候を見つけ、専門の病院に繋ぐ役割を果たします。
この方が住む州で陽性が確認された人の内、自宅療養になったのは8割以上だそうです。
ここで、Worldmeterで23日時点の数字を拾うと、下のようになっているので、ドイツ全体で8割とすると、3万3,600人程が軽症で自宅療養をしている計算となります。(同サイト上では日本はこの数字は公開されておらず、東京都のサイトでも公表していません。)
- Currently Infected Patients(現在の感染者数):42,033
- in Mild Condition(中等症患者数):39,125 (93%)
- Serious or Critical(重症患者数):2,908 (7%)
ドイツがいつ頃から軽症者は病院に入院させずに自宅療養とすると決定したのかは不明ですが、日本では当初は入院が原則で、ベッド数の不足が心配されるようになった3月下旬からホテルの借り上げが話題になりました。神奈川県の黒岩知事が「神奈川方式」といって患者と収容施設を3段階に分けて軽症者は自宅またはホテルで療養という方針を会見で発表したのが4月1日です。
日本では自宅かホテルを選択する場合、自宅を選ぶ方が多いそうですが、埼玉で自宅療養中の男性が急死したことを受け、厚労省が「宿泊療養」を積極的に活用する方針に転換しました。
早期の医療体勢確保
先月中旬には緊急性のない手術を延期するよう各病院に要請。政府は、要請に従ってベッドを開けた病院には1床につき1日約6万5千円の補助金、集中治療のベッドを新たに設置した場合、1床につき約580万円の給付金を出しています。
この辺りのことはドイツのシュツットガルト在住の川口マーン惠美氏が3月27日付の記事(現代ビジネス『ドイツ政府の「新型コロナ対策」で日本が今すぐ真似すべきこと』でこのように書いていました。
“実はドイツの病院では、2週間ほど前まで、重症者に対する備えなどまったく整っていなかった。
シュトゥットガルトのある病院でも、州政府に、急遽、受け入れ準備を整えることを要請されたとき、新米の女医は「あまりにも混乱していて、何が何だかわからない」と悲鳴をあげていた。しかし、2週間経った今、「もう、いつ重症の感染者が押し寄せても大丈夫」と胸を張る。
2週間で何が起こったか? 隔離ベッドと、集中治療用のベッドを用意。緊急でない手術は延期にし、スタッフを伝染病に適切に対応できるよう指導。そして、人工呼吸器など必要な医療器具も揃えた。
ドイツの医療保険制度は日本ほど平等ではなく、プライベート保険と強制保険に分かれている。いわば、グリーン車と普通車のような格差だ。グリーン車の人は、あらゆることで優遇されることになっており、もちろん、入院すれば個室があてがわれる。
なのに、前述のシュトゥットガルトの病院では、今、グリーン車患者までが、普通車患者とともに3人部屋に押し込めらている。もちろん激しい苦情が出たが、看護師が「今は戦時下だ」と一喝したと言うから凄まじい。
いずれにしても、こうしてドイツの病院では、コロナの感染爆発の前に準備万端が整った。緻密な計画で、ガンガンと秩序を整えていくのは、ドイツ人の一番得意とするところだ。巷では、普段なら全く違ったものを生産している多くの企業が、総出でマスクを作っている。これこそが、まさに彼らの底力である。
ただ、病院としては、手術を止めて、空のベッドを抱えてコロナ患者を待っているだけでは大赤字となる。そこで、用意したベッドには、1日につき1台560ユーロ(約72000円)が保障されることになったという。また、人工呼吸器を備えた重症患者のベッドの場合は、準備代として5万ユーロが支給される。この資金は、国と医療保険会社の連携で支払われている。
ちなみに3月の初め、医療品の不足を恐れたドイツ政府は、防御マスクや人工呼吸器などの国外への持ち出しと輸出を禁じ、困っていた隣国の顰蹙を買った。一方、フランスは、国中のすべての医療用マスクを没収し、国家の管理としたというから、こちらも凄い。日頃、「ヨーロッパは一つ」などといっていた国々が、いざとなると、皆、あっという間に自国ファーストだ。”
これにより、元々2万8千床あった集中治療のベッドの数は4万床まで増加したそうです。
前回のエントリーで、ドイツのICUベッド数(10万人当たり)が29~30床(日本は5床)と紹介しましたが、2万8千床なら33.7床、4万床では48.7床と驚くべき数字になります。
ここまで読まれたら、ブログ主が前回書いたように、それでなぜ日本の16倍もの死者が出るのだ?と疑問に思うのも理解して頂けると思います。
番組ではこのあと国民や事業者に対する給付金の話題に移るのですが、これは別のエントリーにまとめることとして、もう少し医療体勢について補足します。
まず、ドイツの死者数が近隣諸国より圧倒的に少ない理由の一つに、感染者の平均年齢が考えられます。(下記は前回のエントリーから引用)
※1 ヨーロッパ各国の感染者数累計と死者数(番組で紹介された数字から)
スペイン(感染者数:20万210人/死者数:2万852人)、イタリア(18万1,228人/2万4,114人)、フランス(15万6,493人/2万265人)、イギリス(12万5,856人/1万6,509人)に比べ、ドイツは感染者数14万7,065人で死者数は4,862人と少ない。
ドイツは最初の陽性者(1月27日)こそ武漢帰りのビジネスマン(バイエルン州)でしたが、ドイツにコロナウイルスを持ち込んだのは多くのスキーヤーだったとニューヨークタイムズが書いています。
- 『A German Exception? Why the Country’s Coronavirus Death Rate Is Low』〔ドイツの例外?なぜコロナウイルス死者率が低いのか?」(Published April 4, 2020 Updated April 6, 2020)
感染者の平均年齢は、他の多くの国よりもドイツで低い。初期の患者の多くはオーストリアやイタリアのスキー場でウイルスに感染し、比較的若くて健康であったとKräusslich教授は述べた。
「それはスキーヤーの流行として始まった」と彼は言った。
感染が拡大するにつれて、より高齢の患者が命を落とし、死亡率も高くなったが、2週間前に比べてわずか0.2%の上昇だった。しかし、最新の全国報告によると、この病気に罹患した患者の平均年齢は、フランスでは62.5歳、イタリアでは62歳なのに比べ、49歳と比較的低いままである。
【原文】The average age of those infected is lower in Germany than in many other countries. Many of the early patients caught the virus in Austrian and Italian ski resorts and were relatively young and healthy, Professor Kräusslich said.
“It started as an epidemic of skiers,” he said.
As infections have spread, more older people have been hit and the death rate, only 0.2 percent two weeks ago, has risen, too. But the average age of contracting the disease remains relatively low, at 49. In France, it is 62.5 and in Italy 62, according to their latest national reports.
別の記事で読んだことがあるのですが、ドイツでは老人ホームで感染して亡くなるケースが多いそうです。
これだけ称賛すべきドイツでなぜ毎日200人も亡くなっている(下図)のか今のところブログ主には答えは見つかっていません。
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