【武漢ウイルス】日本のPCB検査の少なさは「クラスター・サーベイランス」(感染者集団追跡調査)のお陰【4月1日専門家委員会記者会】
4月1日夕方に行われた専門家委員会記者会を観ましたが、そこで、尾身茂副座長が「日本モデル」という言葉を使っていました。(1:53:23~)
これは、今後「日本モデル」と呼ばれて欲しいという希望も込めた言葉ですが、それは、2009年の新型インフルエンザの世界的流行では日本の致死率は「ちょっと少ない」どころではなく「桁違いに少なかった」そうで、その原因として、①国民の健康意識、②医療制度、③学校閉鎖の3つの要素を挙げていました。
これが今回のコロナウイルス対策にも生かされているのです。
この内、②の医療制度としては、順番は前後しますが、1:27:45辺りに説明した、日本のクラスター・サーベーランス(感染者集団追跡調査)のノウハウが支えています。
このことは後述するとして、日本はコミュニティ(=地域社会等、ある集団)でどれほど感染が広がっているか調査するためにPCRをやるという発想は全く無く、『必要な人に必要な検査をする』ことに主眼を置いています。
日本の医療水準では、PCRをくまなくやらなくとも、肺炎の疑いのある人に対してはPCRをやり、CTも撮れているそうです。
恐らく、日本は人口当たりのCT台数が桁違いに多いことも理由でしょう。(下図)
つまり、クラスター対策班の働きで、無駄なPCR検査はしなくて済んでいるのです。但し、もう少しPCR検査の能力(受容力)を増やすべきだとは仰いってます。
クラスター・サーベーランスの専門家はFETP(Field Epidemiology Training Programme/実地疫学専門家養成コース)という2年間のコースで養成していて、日本では20年以上前から行われているそうです。
動画で尾身先生も仰っていますが、シンガポールは「感染連鎖の可視化」(ツリー化)はほぼ完全にできていると、クラスター対策班のレポート(後述の押谷仁先生の報告書)にも書いてありました。しかし、オーバーシュート(欧米で見られるように、爆発的な患者数の増加のことを指すが、2~3 日で累積患者数が倍増する程度のスピードが継続して認められるものを指す。)をが発生している欧米、少なくとも、イタリアやアメリカではまったくやっていません。
日本が辛くも持ちこたえられているのは彼等の働きによるのです。
今回のコロナウイルス対策でも「主戦場」で戦っているのはこの方達だそうで、(PCR検査の)検体の移送も担っています。このコースを卒業した人達は現在全員現場に出ているそうで、各都道府県で知事が依頼して集めた、在宅、リタイヤした保健師にクラスター・サーベイの講習会を開き、その人達が各都道府県に戻ってクラスター・サーベイを行っているとのことです。
このクラスター対策班が今、大変疲弊しているそうです。
それに加えて①の日本人の意識の高さ。
こうしたことが今世界から注目されていると仰っていました。
ブログ主はこの話を聞いていて驚くと共に、メディアが報道すべきと思ったのですが、全くと言っていいほど注目されません。
ダイヤモンド・プリンセス号でもメディアはあら探しばかりしていて、医療チームについて全く報道しませんでしたが、ブログ主もあとから知ったのですが、あそこで医療支援をしていたのは、自衛隊以外には医師会からの要請で集められた民間の医師なのですよね。(cf. 埼玉県の羽生総合病院『ダイヤモンド・プリンセス号へのDMAT派遣について』)
【参考】
- 公務員総研『災害医療の専門チーム DMATとは』
- 防災生活 『JMAT(日本医師会災害医療チーム)とは?DMATとの違いと仕事内容は?』
日本のPCR検査(の他国に比べての少なさ)に関しては、ネットではもう納得している人が多いのですが、未だに野党やマスコミは批判しています。
彼等は労働者の味方のようなフリをして、実は現場で働いている人達のことなど「物」のようにしか思っていないのです。
海外では決まった時間にベランダや庭先に出て、医療従事者を称えるために拍手をすることが流行っているそうです。
こうしたことは日本人には馴染まないとは思うのですが、日本のメディアはあまりにも現場の苦労に思いを馳せるという姿勢に欠けてるように思います。
ダイヤモンド・プリンセス号に関して言えば、日本を去るとき、下のような形で日本に対する感謝の気持ちを示してくれましたが、こうしたことも話題にしません。(プリンセス・クルーズの公式Twitterより)
話をコロナウイルス対策に戻すと、海外の反日的なメディア(New York TimesやWall Street Journal等)も日本のPCR検査を不十分だと言いますが、実は、日本のコロナウイルス対策のやり方には理由があるわけです。
恐らく、尾身先生が言ってたように、防疫の専門家は分かっていて、だからこそ尾身先生も自信がおありなのでしょう。
なお、クラスター対策班がどのようなことをやっているのかは、日本公衆衛生学会のサイトの「クラスター対策研修会(2020年3月29日)」に『COVID-19への対策の概念』(2020 年 3 月 29 日暫定版)という 東北大学大学院医学系研究科・押谷仁先生が作成した報告書(PDF)を読むと分かります。素晴らしい資料です。
【参考】会見資料は厚労省の『「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020年4月1日)』に掲示されている『「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」』(新型コロナウイルス感染症対策専門家会議)
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