【韓国】今、ハリス米大使の「髭」へのヘイトを記事にする理由は?
18日付で様々なメディアからハリー・ハリス中韓米国大使の「髭」に関する韓国国内のヘイトを報じる記事が配信されました。
下はAFPの日本語版の記事ですが、英BBCも同様の記事を17日付(恐らく時差の関係)で報道しています。→『Harry Harris: South Koreans bristle at US envoy's moustache』(ハリー・ハリス:韓国人、米国特命全権大使の口ひげに苛立つ)
AFPは通信社なので、これを転載したらしい英文の記事は他の英字メディアにも見られます。
韓国メディアの朝鮮日報日本語版でも『韓国与党支持者ら、「ひげが日本の巡査みたい」「ハリスを追放せよ」と非難』が18日付で配信されています。
もちろん、日本語版を読んだ日本人は「つくづく異常な国だ...」と益々嫌韓感情を募らせるでしょう。
しかし、ちょっと変なのです。
https://www.afpbb.com/articles/-/3264046
韓国、米大使の口ひげが物議 日本の朝鮮総督を想起
2020年1月18日【1月18日 AFP】韓国で、同国に駐在するハリー・ハリス(Harry Harris)米大使の口ひげが物議を醸している。
ハリス大使は日本人の母親を持つ日系米国人で、韓国では1910~45年の日本植民地支配について現在も強い反感が残っている。大使の口ひげについては、当時の植民地時代の総督を思い起こさせるとの声が上がっている。
ハリス大使は16日の記者会見で、口ひげは個人の好みの問題であり、批判的な人々は「歴史から都合のよい部分だけを拾い出している」と反論。朝鮮独立運動の闘士やその他の歴史的人物の多くも口ひげをたくわえていたと指摘し、「両国間に歴史的な反感があることは理解しているものの、私は駐韓日米大使ではなく、駐韓米大使だ」と表明した。
ハリス大使はこのほかにも、その姿勢が高圧的だとして韓国国内で度々論争の的となってきた。16日の記者会見では、文在寅(ムン・ジェイン、Moon Jae-in)大統領が提案した北朝鮮との共同プロジェクトについて、韓国は米国に話を通すべきだと発言し、韓国政府の怒りを買った。
文大統領は今週、北朝鮮との対話を促進する策として、韓国人観光客の北朝鮮訪問を提案した。観光自体は国際社会による制裁の対象にはならないものの、資金移動などの関連活動が問題となる可能性がある。
ハリス大使は、韓国はこうした計画については米国と連携し、「誤解」を避けるために共同作業部会に「通す」べきとの見解を表明。これに対し韓国大統領府(青瓦台、Blue House)は17日、大使が文氏の提案に関してメディアにコメントすることは「非常に不適切」だと非難した。(c)AFP
ブログ主はこの記事をたまたまTwitterのTL(タイムライン)で見かけたのですが、既視感がありました。昨年12月に『在韓米大使館付近で「ハリス斬首大会」…ひげ抜き、顔つぶしパフォーマンス』(中央日報:2019.12.14)という記事を読んでいたからです。(記事後述)
ハリス大使は最近も韓国政府にホルムズ海峡への派兵を求めるなど、韓国人に厳しいことを言うので、文在寅支持派(=従北反米&反日)から嫌われており、昨年来、髭のことで粘着されているのは想像ができますが、今ここで髭に関するヘイトが全世界に一斉に配信するのは不思議だと思いませんか? 「顔つぶしパフォーマンス」が行われた直後なら分かるのですが、ここまで様々なメディアが足並みを揃えて配信するきっかけのようなものがないからです。
面白いことに、同じく昨年12月に北朝鮮メディアが同様な記事を配信しています。それを伝える中央日報の記事が、『北朝鮮メディア、ハリス駐韓米国大使を「倭人総督の姿」と非難』(2019.12.02)です。つまり、元々は昨年末に北朝鮮と南の従北派(恐らくバックは青瓦台)が呼応してやっていたキャンペーンなのです。
もう一つ、中央日報は、わざわざニューヨークタイムズの記事を引用する形で、『NYタイムズ「“ひげ”のハリス大使、朝鮮総督を連想させ韓国人反発」』という記事を書いています。しかし、本来、大使の髭を云々するのは大使あるいは米国に対する侮辱にも関わらず、下記のように、「韓国人への理解を示している」かのような記事を書いています。
NYタイムズは「日系米国人を駐韓米国大使に任命したのは韓国の人々には国家的自尊心に触れる問題」と指摘した。英ガーディアンも「日帝強占期は韓国国内で怒りの源泉」とし「日本系の出身と共にその時代を思い出させるひげは韓国人を侮辱したと見なされている」と分析した。
両メディアは「ハリス大使のひげは韓国に対して無礼であり、強圧的な米国の最近のイメージと関連している。ハリス大使は時々、大使でなく総督と冷やかされる」と伝えた。
NYタイムスの元記事は確認していませんが、前述のBBCの記事も日韓に於ける歴史的な確執を理由として説明しています。
ここから2つの意図が感じられます。一つはいつものように「被害者アピール」ですが、米国人に「反韓」あるいは「厭韓」を抱かせるためではないでしょうか。いくら日本が嫌いだからと言って、髭にまで文句を付けるのはあまりにも子供じみています。「馬鹿な国民だ」と思わせるのには十分でしょう。
中央日報は17日付で『青瓦台・統一部・与党が駐韓米国大使たたき…「内政干渉」「朝鮮総督」』という記事も書いていますが、この韓国語記事を翻訳して読むと、大統領府批判のコメントとそれに賛同する「イイネ」の方が圧倒的に多いことが分かります。少なくとも、中央日報の読者の間では「反文在寅で親米」の意見の方が多数なわけです。文在寅信者以外は、さすがに自分の国が置かれている立場は理解しているのでしょう。
なお、前述の12月の記事は以下のような内容です。実は、文在寅信者が「ハリス斬首大会」をやっている傍らで保守派(反北派)も「金正恩斬首パフォーマンス」を行っていました。
どちらもレベルが低いとは思いますが、「ハリス斬首大会」をやるような韓国人(団体)は、日本で言うなら「反天連」とか「在特会」みたいなものでしょう。
韓国人は簡単に煽られて日本製品不買運動とか日本旅行をしないように同調圧力を掛けたりするので、あまり擁護するつもりはないのですが、例えば韓国メディアが左記のような日本の特殊な団体のパフォーマンスを取りあげて、日本人全体のように紹介されたら、反論をしたくなります。
今回のハリス大使に関する報道では、韓国を笑ったり、嫌ったりするだけでなく、韓国政府による「韓国の孤立化」キャンペーンまで読み取るべきだと思います。
https://s.japanese.joins.com/JArticle/260517?sectcode=430&servcode=400
在韓米大使館付近で「ハリス斬首大会」…ひげ抜き、顔つぶしパフォーマンス
2019.12.14「この地はお前たちの植民地ではない。つぶせ、ハリー・ハリス。つぶせ、USA」。
13日午後4時、ソウル光化門(クァンファムン)KT建物の前でハリー・ハリス駐韓米国大使を糾弾する集会が開かれた。場所は在韓米国大使館の外壁から70メートルほど離れたところだった。国民主権連帯と青年党が10日、ハリス大使を狙って「斬首競演大会」をすると明らかにしたことで外国公館保護と名誉毀損に対する懸念が出たが、警察の制止で大きな騒ぎは起こらなかった。市民団体らは「斬首競演」という言葉を掲げたが、内容はハリス大使を滑稽に描写する事実上の「アドリブ競演」に近かった。事前にフェイスブックなどでアイデアを公募した参加者は、あらかじめ準備しておいた道具を活用してハリス大使を風刺した。
#ハリス大使のひげ抜き
「ハリスワックスショップにようこそ。ハリス大使のひげは本当に憎たらしく見えますが、そのひげをきれいにワックスしてみます。文在寅(ムン・ジェイン)大統領に対して『従北左派』妄言を吐いたハリス大使を私たちの力で抜きましょう」(参加者A)。参加者はハリス大使の写真に金色のひげを付けたパネルを準備し、1本ずつはがした。そのたびに歓呼の声が響いた。
#ハリス大使の顔つぶし
「ハリス大使は韓国をATM機と考えているようだが、防衛費分担金5倍以上の増額要求に怒りを感じます。防衛費を韓国と関係がないところに使うことを知っています。この思いを込めて叩きつぶします」(参加者B)。参加者はハリス大使の顔の写真を置いたコンニャクや豆腐などを手で叩きつぶすパフォーマンスを行った。韓米防衛費交渉をサッカーPK戦で表現し、ハリス大使の顔のステッカーを付けたサッカーボールをゴールに蹴り入れるパフォーマンスも用意されたが、「名誉毀損の余地がある」として警察が制止し、顔のステッカーなく進行された。
クォン・オミン青年党共同代表は「ユーモアを入れたパフォーマンスにすぎない」とし「名誉毀損は本人が告訴してこそ成立するが、警察が名誉毀損に該当すると恣意的に判断できるのか」と批判した。参加者およそ30人は「在韓米軍駐留費引き上げを直ちに中断しろ」「植民地総督のように振る舞うハリスを追放しろ」「在韓米軍は必要ない、今すぐ撤収しろ」などと叫んだ。
◆「金正恩を斬首しろ」 付近で保守団体が拡声器デモ
競演大会が行われる間、自由大韓護国団など保守性向の団体が主催者側を糾弾し、拡声器で「金正恩(北朝鮮国務委員長)を斬首しろ」と叫んだりしたが、警察の仲裁で双方間の衝突はなかった。ある保守団体の会員は拡声器で「反米を叫びながらなぜ米国企業が作ったiPhoneやマックブックを使うのか」「なぜナイキの靴を履くのか」と叫んだりもした。
これに先立ち、親北性向の進歩団体国民主権連帯と青年党は米大使館の前で「ハリー・ハリス駐韓米国大使斬首大会」を開くと警察に集会・デモ申告書を出した。警察は「斬首」「絞首刑」などのパフォーマンスは脅迫と侮辱性表現に該当して外国公館の保護義務を規定した国際協約を違反し、市民に不安感を与えかねないと判断し、主催者側に集会制限通告をした。この日の集会は警察の制限通告を守って進行された。
一応、中央日報も朝鮮日報も青瓦台の思惑について触れています。ここまで分析できているのなら、つまらない煽り記事など書かなければいいと思うのですがね...
(一部引用)
韓国大統領府、政府、与党が年頭から反米世論を煽り、北朝鮮関連事業に全力を投入する背景については「4月に予定されている国会議員選挙を意識したもの」との見方もある。現在、与党などは住宅価格の高騰、就業率の低下、景気不振、韓日対立など、国内外におけるほぼ全ての政策において「まともなものが全く見当たらない」との指摘を受けている。共に民主党の中からも「政権獲得から4年目になっても南北関係に何の成果がない場合、逆風にさらされる恐れがある」と懸念する声もある。そのため与党などは選挙前までに金正恩氏の韓国訪問といったイベントを実現させ、否定的な世論を一気に吹き飛ばしたい考えもあるようだ。金正恩氏の韓国訪問が難しいのであれば、南北離散家族再会や金剛山の個人観光など、選挙に向けた大きな材料を手に入れたい思惑もあるだろう。
ある政府関係者は「今年は年末に米国で大統領選挙があり、米朝交渉は行き詰まり状態が続いている」とした上で「南北関係によって米朝交渉を引っ張りたいと考えている」と説明した。このような中で文大統領はこの日、北方経済協力委員会の権九勲(クォン・グフン)委員長から「2020新北方政策戦略」について報告を受けた。この席では新北方政策を南北鉄道・道路連結や個人観光など、南北協力事業の基盤として活用する方策も話し合われたという。文大統領は権委員長の報告を受けた際「今年は二度と訪れることのないほど非常に良いチャンスを迎えた。そのため新北方政策において実質的な成果を出せるよう最善を尽くしてほしい」と激励した。
(朝鮮日報:『韓国与党支持者ら、「ひげが日本の巡査みたい」「ハリスを追放せよ」と非難』P.3より)
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