【公用文】「こども」の表記は「子供」→「子ども」→「子供」?
TwitterをのTL(タイムライン)を見ていたら、こんなツイートが目に留まりました。
「子ども」の「ども」を「供」と書けと言ったのは萩生田氏。今文科省の公式文書ではすべて「子供」と表記されている。
前川某と室井某の名前で笑ってしまったのですが、「子供」と表記して何がいけないの?と思う一方で、ちょっと心当たりがあったので「おや?」と思いました。
心当たりとは、ブログ主は市販の漢字変換ソフト「ATOK」をわざわざ購入して使っているのですが、ATOKは良く言えば、推薦される表記に忠実、悪く言えば“言葉狩り”をするソフトで、漢字に変換できない言葉もあります。
現在はATOK2017(2017年度版)を使っていますが、それ以前のバージョンで「こども」と入力して最初に変換されるのが「子ども」だったので、変だなと思った記憶があるからです。(ATOK2017ではこの「言葉狩り」は解消されたのか、有名だった「白痴」も3番目くらいに候補に出てきて、一度変換した後は学習してくれます。)
少し好奇心が湧いたので調べて見ました。
1973年以来、一貫して『公用文の書き表し方規準』では「子供」
まず、「子供」表記に統一したときの日経の記事。
https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1902T_Z10C13A9CR8000/
文科省、「こども」表記を漢字に統一 公用文書で
2013/9/19付文部科学省はこのほど省内の公用文書の「こども」の表記を漢字書きの「子供」に統一することを決めた。
「子供」の表記は1973年の内閣訓令で、漢字表記とされた。ただ「漢字より柔らかい印象がある」として、各省庁とも漢字と平仮名の交ぜ書きの「子ども」を使う例が増えていた。
文科省は、子供と表記しても大人の「お供」のような否定的な意味はないと判断し、公用文書は漢字表記との原則を再確認。7月刊行の文部科学白書では語句を「子供」に統一した。
文化庁国語課によると「こども」という言葉は「子」の複数形として古くから使われ、江戸時代に「供」が当て字として使われるようになったという。
答えはここに書いてあることで十分で、以前から公用文では漢字の「子供」だったのを、「柔らかい印象」という理由で「子ども」と表記することが多くなって混在するようになり、あらためて2013年(平成25年)に「子供」に統一した、というだけです。つまり、一時的に“乱れて”いただけです。
ただ、記事には「柔らかい印象」という理由しか書いていませんが、今回調べて、一部で「子供」の「供」は「お供え」や「お供」(家来や従者?)の意味があるから「『親の所有物』の意味があり差別的」という、前川氏のような“左巻き”がいたことを知りました。
(「子供 子ども 表記」などのキーワードで検索すると、そのようなサイトはたくさん見つかります。)
ブログ主などは、単純に複数形だと思っていて、記事にあるようにこれで正しいのですが、まさか「差別的」だなどとは思ったこともありませんでした。それで、小学校で「供」の漢字を習った後は「子供」と書いていたし、これが普通だと思ってきました。記憶は不確かですが、「供」の用例として「子供」という熟語を習ったと思います。
おとも【お供・お△伴】
つき従って行くこと。また、その人。岩波 国語辞典 第七版 新版 (C)2011 株式会社岩波書店
こ‐ども【子供】
(1)自分の儲(もう)けた子。むすこ。むすめ。
(2)幼いもの。わらわ。わらべ。小児。まだ幼く世慣れていないことにもいう。枕草子(28)「あからさまにきたる―わらはべを見入れ」⇔大人。
(3)(「子」の複数)数多の子。続日本紀(22)「この家の―」
(4)目下の者達を親しんでいう語。みんな。万葉集(1)「いざ―早く大和へ」
(5)歌舞伎役者の若衆。かげま。
(6)抱えの芸娼妓。江戸時代、特に深川で、遊女のこと。洒落本、辰巳之園「新地の播磨屋などはよくいたしますよ。―は揃うて居るなり、女共もよくいたします」
(7)遊里のかぶろ。傾城買四十八手「―をやつて見てくんなんし」
→こども‐あがり【子供上がり】
→こども‐あつかい【子供扱い】
→こども‐かい【子供会】
(以下略。全て漢字表記は「子供」となっている)広辞苑 第六版 (C)2008 株式会社岩波書店
ちなみに、ブログ主の手元には『公用文の書き表し方基準(資料集)』(昭和61年9月/文化庁)という本があります。
趣味で日本教育能力試験の勉強をしていたときに購入したもので、これは現在でもAmazonなどで買えますが、1986年版なので、日経の記事にあるよう「1973年の内閣訓令で、漢字表記とされた」後のため、「4 文部省 語例集」に提示されている表には「こども」の書き表し方は「子供」となっています。
別の例を挙げると、「ころ」は「頃」が「▲表外漢字」(常用漢字表に収録していない漢字)なので「ころ」と書くように定められています。
また、「これ」は「是」が「△表外音訓」(常用漢字表に掲げられていない音訓)、「之」は「▲表外漢字」なので「これ」と平仮名で書くことになっています。(▲と△は電子辞書などでも「表外漢字」や「表外音訓」の意味でも目にします。)
要するに、「常用漢字表」が規準なのです。
そして、理由はともかく表記が乱れていたので、公用文では統一しましょうというだけの話です。
「常用漢字」とは?
で、「常用漢字」と、もう一つ「当用漢字」ですが、ブログ主もうろ覚えだったので、ATOKに付いている辞書(広辞苑)で調べました。それを一応メモしておきます。
じょうよう‐かんじ【常用漢字】 ジヤウ‥
(1)多数で複雑な漢字の不便を避けるため、1923年(大正12)5月、臨時国語調査会が指定した日常使用の漢字1962字と同略字154字。1931年(昭和6)5月に1858字に改定。
(2)当用漢字に代わるものとして、1981年3月に国語審議会が答申し、同年10月に告示された漢字。一般の社会生活において使用する漢字の目安として1945字の字種と音訓を選定。→当用漢字。
とうよう‐かんじ【当用漢字】 タウ‥
現代国語を書き表すために、日常使用する漢字の範囲を定めたもので、国語審議会が決定・答申し、政府が訓令・告示をもって公布した1850字の漢字。1946年(昭和21)11月発表。その後、48年2月に当用漢字音訓表・当用漢字別表(いわゆる教育漢字)が、49年4月には当用漢字字体表が発表された。現在は常用漢字(1981年10月告示)がこれにかわる。→常用漢字。広辞苑 第六版 (C)2008 株式会社岩波書店
萩生田光一氏が変更したのか?
これについては分からないのですが、検索したら「第183回国会 文部科学委員会 第2号」(平成25年3月27日)の議事録が見つかりました。
この委員会には萩生田氏が理事として所属しており、関わっていたことは確かなようです。
この委員会では、文科省や文化庁の役人を政府参考人として呼び、見解を訊いていますが、その回答も「差別的ではない」というものです。
当時の前川氏の肩書きをWikipediaで調べると、「2012年1月、官房長[7]。2013年7月、初等中等教育局長[8]。2014年7月、文部科学審議官[8]。2016年6月、文部科学事務次官[8]」とあり、赤字で示した役職の時代です。
ここでふと、加計騒動の時に出た「怪文書」に萩生田氏の名前があったことを思い出しました。
あれは、単純に、獣医学部新設申請を禁止するだけの合理的な説明を文科省の役人がWG委員対してできなかっただけで、萩生田氏や菅官房長官などが工作するまでもない話だったので関与は考えられないのですが、今回調べた「こども」問題で、文科省から萩生田氏が執拗に攻撃された理由もなんとなく分かるような気がしました。
少なくともこの時期から、萩生田光一氏に対して苦々しく思っていたのでしょう。もしかしたら、前川氏以外にも当時の文科省内で「子供」表記に反対する意見があったのかもしれません。(だとしたら、この時から文科省はおかしかったわけですが...)
前川氏の偏った考えが垣間見える話だったのでブログエントリーにしてみました。
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