【書籍】『北朝鮮がつくった韓国大統領 -文在寅政権実録-』(李相哲著)/日本人もストローマン論法に陥っていないだろうか
今朝(8月22日)の朝鮮日報電子版を見ていて目に留まった記事があります。
それは『李石基、朝鮮日報を訴えた「スパイ活動報道」損賠訴訟で敗訴が確定』(記事は2019/08/21付)というもの。
李石基(イ・ソッキ)とは2013年に現役国会議員でありながら、国家転覆を企てて有罪判決を受けた人物です。(求刑は懲役20年と10年の公民権停止→2015年、最高裁で懲役9年が確定)
21日付で報じられたこの判決自体は当時のメディアの報道が名誉毀損に当たると李石基が訴えたものですが、彼が計画したことは、反北の朴槿恵政権が成立した直後の南北の対立が高まったさなか、自分が率いる地下革命組織(RO=Revolutionary Organization)に、戦争が勃発したら、それに乗じて統一革命を起こすというもので、電話局や石油貯蔵施設などの主要施設を攻撃するといった具体的なものでした。
実は、ブログ主もこの人物のことは昨日読んだ『北朝鮮がつくった韓国大統領 -文在寅政権実録-』(李相哲著/産経新聞出版)で知りました。一昨日の夕方届き、面白くて昨日一気に読んだ本です。
この本は副題に「文在寅政権」と入っているので、現政権のことのみについて書いた本と勘違いするかもしれませんが、反北の立場のために左派勢力から徹底的に攻撃されて弾劾された朴槿恵、親北政権のルーツである金大中、そしてその直系の盧武鉉について論じられており、現在、韓国で起こっていることを理解するのに役に立つ本です。(この本については後述)
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ストローマン論法に陥る多くの日本人
日本では韓国の出来事は比較的多く伝えられているとは思いますが、今や多くの日本人が気づいたように、本質的なことには目が向かないようにバイアスをかけて報道されています。
反日デモと同時に起きた反文在寅デモがほとんど報道されないことがいい例ですが、日本のメディアは韓国の「反日」の部分にしかスポットを当てません。
日本でもすっかり知られた「積弊精算」という言葉もそうです。
これは単に「親日派の排除」という伝えられ方をしますが、正しくは(アメリカや日本といった)『西側』か(従北の)『東側』かという対立の中での、西側の象徴としての「日本」と捉えるべきで、韓国という国は1948年の「大韓民国」成立以来、特殊な「東西冷戦」が続いているのです。
もちろん、韓国国民全体に「反日感情」はあります。
しかし、これは「保守派」(反北)と「左派・進歩派」(従北)に関わらず根底にあるもので、「保守派」即ち「親日」ではないことは朴槿恵政権を見ても分かるでしょう。
別次元の話です。
韓国の政治を論じていて、「でも、どのみち反日でしょ」と結論づけようとするのは「知的に不誠実」です。
国民は散々反日教育をされているので単純な反日だと思いますが、政治の世界では「親日」は、敵視する相手、例えば「反・従北」派に張るレッテルとして便利だから使っているに過ぎないと思います。しかし、よくよく「親日」レッテルで攻撃する相手を見ると「反北派」であり、「韓米同盟を支持する人たち」です。
先日の反文在寅デモでも韓国国旗と共に星条旗が多数振られていましたが、韓国国内では頻繁に退役軍人が反文在寅デモを行っていることは日本ではほとんど報道されません。
この対立は門田隆将の言葉を借りると「ドリーマー」(dreamer:夢想家)と「リアリスト」(realist:現実主義者)です。
日本人も知らず知らずのうちにメディアの偏向報道にだまされて、韓国を「反日」か「そうでないか」(「親日」とまでは言いにくいので)という二元論でしか語らない人が多数見られます。
これは主に地上波メディアが、韓国政治家や労組の反日活動にしか目を向けさせないようにして、その裏にある親米勢力(というか韓米同盟肯定派)と従北勢力の対立を隠しているからだと思います。
韓国の反日運動(実際は従北勢力の労組などが主導)で、日本製品ボイコットをやりつつ「NO安部」をスローガンにしているのは分かりやすく、トランプ大統領と信頼関係を築いていると言われる安倍政権は彼らの敵であり、それを誤魔化すために「軍国化」等という理由を持ち出しているわけです。
こうした、"敵”の「本質」では無い「部分」を攻撃対象として議論をすり替えることを『ストローマン手法(論法)』と言いますが、韓国の「反日」部分にしか目を向けない日本人もまたストローマン論法に陥っています。
ブログ主は韓国国内の理不尽な反日は批判したり反論して当然だと思いますが、次元の違う話を一緒にするな、ということが言いたいのです。
韓国政府や日本の反日メディアが論点をずらすのはもう分かりきったはずなのに、こと韓国のこととなると「どのみち反日だし」で思考停止してしまうのは相手の術中にはまっているのです。
もう一つ分かりやすい例を挙げるとイ・ヨンフン教授やイ・ウヨン氏は別に親日ではなく、事実を追求して誤った歴史観を正そうとしているだけです。しかし、この活動が結果として「日本に利する」行為だと言って「親日」のレッテルを貼るのは、国民の多くが多かれ少なかれ「反日」なので、それを味方にしようとしているわけです。
イ・ヨンフン教授が取り立てて親日でないことは主催されている研究所に「李承晩学堂」と「李承晩」の名前を冠していることからも分かります。
おそらく、李承晩は日本人が最も嫌う韓国人の一人でしょう。しかし、ブログ主も韓国の歴史を知って分かったのは、大韓民国が成立する際、①共産主義者(親ソ)、②民族統一派、③親米反共の三組織(とその指導者)の選択肢があり、③で、初めから現実路線として南単独での国家樹立を目指したのが李承晩なのだそうです。
イ・ヨンフン教授が李承晩の建国の精神に立ち返れというのは、こういう理由があるのだと思います。
ところで、労組に牛耳られている韓国メディアが「親日」のレッテル張りして攻撃しているイ・ヨンフン教授等が著した『反日種族主義』ですが、今回は少し様相が異なります。
ブログ主は李承晩TVの日本語字幕のない番組のコメントも丹念に読んでいるのですが、「おじいさんに聞いた話と辻褄が合った」というコメントがありました。
ブログ主は韓国の教科書の詳細は分かりませんが、おそらく矛盾だらけのはずです。以前も書きましたが、「独立門」(元は清からの使者を迎えるための「迎恩門」で、清からの独立を祝ってそれを壊した跡に建てられた門)の建立年を知って意味が分からない韓国人も多いそうです。
以前、産経の記事で読んだのですが、韓国では歴史を語るときに必ず「善・悪」の評価を加える悪い癖があるそうで、"日本のお陰で独立できた”という事実はあってはならないこととして教えないのでしょう。
韓国人が学校で習った自国の歴史に疑問の目を向け始めた今、メディアはその攻撃の度合いを増しているようです。最新の李承晩TVの動画(韓国語のみ)を観て大凡分かったのは、今度はSBS(これは民間放送)が従来からの対日史観を改めて紹介し、イ・ヨンフン教授の発言を切り取って『反日種族主義』を攻撃する番組を報道したようです。(コメントを見ると、李承晩TVも切り取られないように録画した方がいいと、心配する声が多く上がっていました。)
まあ、日本のメディアと同じようなものですが、「自虐史観」に反発する日本人と、「自分たちにとって心地よい歴史観」を覆される韓国人とでは、乗り越える壁の高さが違います。
既にワイドショー(『モーニングショー』かなにか)で『反日種族主義』を青木理氏が批判していたようですが、今後、日本のメディアや左派勢力が露骨になると想像します。
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『北朝鮮がつくった韓国大統領 -文在寅政権実録-』について
『北朝鮮がつくった韓国大統領 -文在寅政権実録-』(李相哲著/産経新聞出版)について、もう少し補足しておきます。
著者の李相哲氏は、この本の中で、日本では報道されないか、されても断片的にしにか報道されない事件や出来事を時系列に沿って提示するだけでなく、その意味を韓国人記者や識者の証言や政治家の回顧録などから丹念に拾って論理的に検証しています。
例えば、冒頭にご紹介した李石基(イ・ソッキ)の事件など、ほとんどの日本人は関心を示さないでしょうが、朴槿恵政権時に提出された逮捕同意案に反対した1割の議員に文在寅が含まれていることなど、文在寅の「正体」を暴くエピソードが数多紹介されます。
彼(李石基)は90年代から地下組織で活動しており、2002年に逮捕、服役していますが、盧武鉉政権の時に「特別放免」、更にその2年後に公民権も回復してます。この時の大統領秘書室長が文在寅です。
朴槿恵が李石基を逮捕したことを著者は「ルビコン川を渡った」と表していますが、李が属していた統合進歩党の解散命令だけでなく、民労総(全国民主労働組合総連盟)の傘下で急進的な左派労組の一つである全国教職員労働組合(全教祖)を非合法団体に指定しています。
つまり、彼女は左派との全面戦争に突入したのです。
彼女にとって不幸だったのはセウォル号事件の発生です。これで、著者によると「無能」ぶりを露呈してしまいました。
現在、韓国で起こっていることが何に起因しているのか、それを詳しく知りたい方にはおすすめの一冊です。
李石基に関する記事
下に李石基に関する記事を時系列に集めました。なお、李石基について調べていたら、何故か日本の「レイバーネット」が李石基を擁護する記事がたくさん見つかりました。分かりやすいですね。
https://blogos.com/article/69499/
韓国統合進歩党・李石基議員の「内乱陰謀事件」は、北朝鮮による朝鮮半島統一・「大高句麗国建設」の前兆か板垣英憲 2013年09月06日 03:24
◆「内乱陰謀事件」で韓国統合進歩党の李石基(イ・ソッキ)議員に対する逮捕同意案が4日午後4時25分、国会本会議場で投票289人のうち賛成258票、反対14票、棄権11票、無効6票により可決された。李石基議員は同日午後8時26分、国家情報院の職員に強制拘引され、水原地裁に移送された。(以下略)
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http://news.onekoreanews.net/print_paper.php?number=74596
【統一日報】軽すぎた李石基への懲役20年求刑
2014年02月05日内乱陰謀罪などに問われていた統合進歩党の李石基議員に懲役20年・資格停止(公民権停止)10年が求刑された。この事件は、憲法機関である国会議員が、国会を革命の橋頭堡として大韓民国に抗敵した内乱陰謀だ。大多数の国民は李石基と、彼が中心となって組織したRO(革命組織=Revolutionary Organization)の国家に対する反逆が、この求刑によってある程度立証されたと見る。
しかし、李石基に対する求刑は軽すぎる。休戦状態の大韓民国で、交戦相手の北韓側に積極的に呼応し、大韓民国の転覆を図った李石基には、与敵罪(刑法93条)が適用されるべきだった。司法当局は、前職国情院長や警察庁長などを断罪する以上に、従北反逆勢力を断罪すべきである。従北勢力の跋扈は、韓国の法治が萎縮しているために起きたものだ。
1審裁判を通じて明らかになった李石基とROの反逆行為は、法の寛容の範囲を遥かに超えたものだった。彼らは主体思想で理念武装し、大韓民国を敵と規定した。北韓が6・25南侵戦争(朝鮮戦争)時、大韓民国を攻撃する戦場で歌われた「赤旗歌」を歌い、北韓式用語で学習し、革命家に徹底した。ちなみに李石基が所属する統合進歩党は、党の公式行事で愛国歌(韓国国歌)を歌わない。
李石基のROはあらゆる活動記録を暗号化し、捜査当局の押収捜索と逮捕に激しく抵抗した。ROやその”殻”にすぎない統進党は、法廷闘争を通じて大韓民国の司法制度を嘲弄、妨害した。
李石基とROの目標と活動は、戦時において敵地で破壊およびサボタージュ工作を実行する特殊部隊の任務、つまり旧ソ連の情報機関が自由世界に対して目論んだ破壊工作そのものだ。
統進党と李石基の「反逆性」
李石基は、1999年に国家情報院が摘発した民革党事件で、平壌との繋がりが立証されている。民主革命党は、朝鮮労働党の指揮下にあった地下政党で、南朝鮮労働党と並ぶ従北組織だ。別の言い方をすれば、ROは平壌の偵察総局に呼応する韓国内の別働隊だ。
統進党は、多くの党員が法の裁きを受けている状況で、反省するどころかROを正当化し、庇護することに総力を動員した。反逆を庇護する行為も反逆だ。つまり、統進党全体が国家と憲法に対する反逆勢力である。
統進党への政党解散請求があまりにも遅すぎたことを指摘する声は以前からあったが、こういう抵抗こそ、彼らがその「反逆性」を自ら証明したことになる。
憂うべき国会のサボタージュ
統進党の反逆を増長させたのは、ほかの政党と国会だ。国会は、李石基の逮捕動議案を通させておきながら、李石基の議員職除名に関しては5カ月も措置を取っていない。もちろん、この政治的サボタージュの中心は統進党と運命共同体である民主党内のいわゆる「386主思派」、「親盧グループ」だ。
相手政党の単純な失言や個人的スキャンダルに対しても議員職辞退。これは、や政界引退を強く要求してきた民主党が、李石基とROの内乱陰謀については、裁判中という理由で国会次元の懲戒を拒否している同じく裁判中である「国家情報院の選挙介入」という一方的な政治攻勢を既成事実化し、それを根拠に国家情報院を無力化させ、さらには大統領の辞任までを要求する野党の攻勢と矛盾する。彼らの主張が全く説得力のない政治的扇動であることを証明するものだ。
われわれは今の政界と国会を憂慮し慨嘆せざるをえない。北韓の核ミサイルの実戦配備によって、休戦後、大韓民国の安保が致命的な危険に陥った今、安保の中枢である国家情報院の機能を決定的に弱体化させる利敵行為で与野党が合意したからだ。国政の混乱の中心が国会であり既成政党だ。朴大統領は国家情報院法改正案を国会に戻すべきだ。
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https://www.sankei.com/world/news/150122/wor1501220027-n1.html
【産経】韓国親北左派の元議員、実刑確定
2015.1.22 17:59【ソウル=名村隆寛】韓国の最高裁は22日、北朝鮮に通じた地下組織を作り韓国の体制転覆を企てたとして、内乱扇動や国家保安法違反などの罪に問われた左派系野党、統合進歩党(解党済み)の元議員、李石基被告に対し、懲役9年(1審懲役12年、2審同9年)の判決を言い渡した。内乱陰謀罪は2審同様、認められなかった。
また、元同党員らも、2審と同じく懲役3~5年の判決を受けた。統合進歩党は昨年12月、憲法裁判所の政党解散審判で解散宣告を受けた。
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http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2019/08/21/2019082180221.html
【朝鮮日報】李石基、朝鮮日報を訴えた「スパイ活動報道」損賠訴訟で敗訴が確定
2019/08/21李石基(イ・ソッキ)元統合進歩党議員が、報道内容によって自身の名誉が傷つけられたとして朝鮮日報とTV朝鮮を相手取って起こした損害賠償請求訴訟で、同議員の敗訴が確定した。
大法院(最高裁)2部(主審:ノ・ジョンヒ大法官)は、李元議員が朝鮮日報とTV朝鮮などを相手取って起こした損害賠償請求訴訟の上告審で、原告敗訴との判決を下した原審を確定させたと21日明らかにした。
朝鮮日報とTV朝鮮は2013年9月、内乱扇動容疑などで逮捕された李元議員について「北朝鮮のためにスパイ活動をしたと見なければならない」「李元議員が息子に主体思想(北朝鮮および朝鮮労働党の政治思想)を徹底的に勉強するよう言っていたことが分かった」などの内容を報道した。
これに対し、李元議員は「虚偽の事実によって名誉を傷つけられた」として、慰謝料1億ウォン(現在のレートで約884万円)の支払いを求める訴訟を提起した。
一審と二審は「悪意的だとか、甚だしく軽率な攻撃によって相当性を顕著に失ったと考えるのは困難だ」として「報道当時、李元議員は現役の国会議員で、価値観・世界観まで国民の健全な監視と批判の対象だった」と指摘した。
その上で「(李元議員の)犯罪(容疑)内容は、国会議員が犯したとは到底信じられないほど衝撃的だった上に、事案が極めて重大で、各種の疑惑を迅速に報道しなければならない公益上の必要性が大きかった」とも説明した。
さらに「国会議員の神聖な義務を根源的にないがしろにする内容の容疑で捜査を受ける状況であれば、関連する報道は、メディア本来の機能である監視・批判・けん制が全て可能になるよう幅広く保障されなければならない」と指摘した。
大法院も原審の判断に誤りはないとの見方を示した。
李元議員は15年1月、内乱扇動などの罪で懲役9年、資格停止7年の刑が確定し、現在は収監されている。
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