【北朝鮮・韓国】金正恩のリムジンの輸送ルート:リムジンを積んだ船が釜山を出航して何故か石炭を積んで帰る
公開: 2019-07-17 17:03:56 最終更新: 2019/07/18 9:12
前のエントリーにて、 C4ADS(Center for Advanced Defense Studies)が公表したレポート(https://c4ads.org/s/Lux-Loaded.pdf)をご紹介しました。
ニューヨーク・タイムズの記事はこの文書のうち、金正恩のリムジンの密輸ルートにフォーカスを当てたものですが、レポートは、それ以外にも、NHKが報じたように、日本製の自動車などが北朝鮮に流れたことを報告しています。
リムジンの密輸に関しては、①ロッテルダム(オランダ)→②大連→③大阪→④釜山(韓国/ここでトーゴ籍の貨物船に積み替え)→⑤ナホトカ(航空便?)→⑥北朝鮮というルートで、釜山までの輸送には尼崎市の企業が関わっていると書かれています。(取締役やCEOは中国名らしき名前で、瑞祥株式会社、美濃物流、MINO Logisticsと名前は異なれど、同一の企業らしい。→【2019/07/18 記事追加】)
しかし、ルートの中で一番不可思議なのは、釜山を出てナホトカに向かったはずのリムジンを載せた貨物船が自動船舶識別装置(AIS)の送信を止めて18日間、行方不明になっていることです。
この船はナホトカに入港した記録はないのですが、再びAISを作動させてから釜山港に「ナホトカからの石炭」を積んで戻ります。この石炭の荷受人(=consignee/貨物の引き取り人)は韓国のEnermax Koreaという会社で、この会社は今回と同じ船「DN5505」で、2018年4月に北朝鮮の船から石炭を瀬取りしており、相手の北朝鮮の貨物船「ワイズ・オネスト」はアメリカに差し押さえられています。
リムジンの密輸ルート
以下、レポートから拾った日付を時系列に並べてみました。(急いで拾ったので、もう少し精査する必要があるかもしれません)
2018年6月14日 ロッテルダム(オランダ)でメルセデスベンツ2台がそれぞれコンテナに搭載され、中国に本社がある船会社に引き渡される。
2018年6月20日 ロッテルダム出航
2018年7月27日 (貨物船「Xiang Jin」、香港の会社からDo Young Shippingに売却され、「DN5505」と名前を変える。)
- DN5505はDo Young Shipping(登録地はマーシャル諸島だが、ロシア人のDanil Kazachuk氏がオーナーらしい)の船。Do Young ShippingはKatrinというオイルタンカーを2018年に1ヵ月間保有していた。
2018年7月31日 大連(中国)着 コンテナ荷下ろし(~8月26日まで港に置いたまま)
2018年8月26日 大連出航(船会社は不明) コンテナの状況も不明→9月18日 大阪に存在する記録あり
2018年9月27日 別の船にコンテナ積み替え・出港
- 韓国のB/L(船荷証券)上では荷送人(consignor)は美濃物流、荷受人(consignee)はMINO Logistics(韓国)だが、この2社の関係は不明。
2018年9月30日 釜山(韓国)着~その日のうちに貨物船DN5505(トーゴの旗)に積み替え、ナホトカへ向けて出港
2018年10月1日 DN5505、韓国の領海で、自動船舶識別装置(AIS)を切って消息を絶つ(18日間)
- AISを切る前のデータによると、ナホトカ到着は10月5日と想定されるが、10月1日~19日の間、DN5505がナホトカを含むロシアの港に入港した記録はない。
2018年10月7日 北朝鮮の飛行機3機(Ilyushin-76)が平壌からウラジオストクに飛ぶ。
2018年10月19日 DN5505が再びAISを作動させ、韓国領海で釜山に向けて進んでいるのが確認される。
2018年11月1日 DN5505、石炭(2,588トン)を積んで通関後、ポサン(浦項)港に入港
- B/L(船荷証券)にはナホトカから積んだとの申告だが、ナホトカに入港した記録はない。
- ベンツの荷受人(consignee)はDo Young Shippingで且つ石炭の荷送人で、石炭の荷受人は韓国のEnermax Korea。
- Enermax Koreaは2018年4月にワイズ・オネスト(北朝鮮の船)から石炭を瀬取りしたと国連に報告されている。
2019年1月31日 平壌でリムジンが目撃される。
2019年2月 韓国当局、DN5505を留め置く。
2019年4月18日 韓国政府は「2ヵ月前にDN5505がナホトカ経由で北朝鮮の石炭を輸入しようとしたとして拿捕した」と発表。Enermax Koreaについては言及しなかった。
2019年5月 韓国政府、Kazachuk氏の要請で、確保していたオイルタンカーKatrin をスクラップ
- (NYTの記事より)理由は「累積したドック料金を支払いたくない」というもので、これでKatrinは密輸の疑いが掛けられて係留されていた6隻の船の一つで、Kazachuk氏は北朝鮮との密貿易に深く関わっていることが分かる。
- (原文) The South Korean authorities have seized at least six ships since late 2017 on suspicion of sanctions violations. Last month, it began scrapping the Katrin. Officials said the dismantling was done at the request of Mr. Kazachuk, who did not want to continue accruing docking fees for the seized ship.
関係図
【2019/07/18 記事追加】
読売新聞は10月5日にナホトカに入港したように書いていますが、前述の通り、「船舶識別装置の信号が途切れる前の情報で順調にいけば」10月5日にナホトカに到着するだろうというだけで、ロシアのどこにも入港した記録はないと報告書は書いています。
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