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2019/05/02

【書籍・動画】日米開戦 陸軍の勝算(林千勝著/祥伝社新書)

掲題の本、『日米開戦 陸軍の勝算』(林千勝著/祥伝社新書)を読もうと思っているので、著者が解説している動画を覚え書きとしてメモ。

書店に買いに行ったところ、大型書店2店回っても在庫がなかったので、しかたなくネット書店で注文し、今日届く予定、つまり未読なので、書評は書けないのですが、動画のURLなどを記して一旦このエントリーを公開することにします。

  

 

 

この本を簡単に紹介すると、大東亜戦争について、巷間よく言われる、

 

「陸軍の暴走により日本は無謀な戦争をした」

 

というのは嘘で、実は、陸軍は戦争やむなしとなったときのために戦略(腹案)は立てており、海軍もその情報は共有していたのに、その通りに戦わなかった、ということのようです。

タイトルになっている秋丸機関とはその戦略を立てた機関で、そのポイントの一つは「ヨーロッパを重視している米国との戦争は極力避けるべし」というもの。

しかし、我々が既に知っているように、初っ端からその計画は壊れました。

 

山本五十六連合艦隊司令長官が真珠湾攻撃に固執したからです。

 

 

上の3冊は互いに関係しており、著者の林氏によれば、『近衛文麿 野望と挫折』(ワック)の中に『日米開戦 陸軍の勝算』の要約が書かれているそうです。

ブログ主はまだ『日米戦争を策謀したのは誰だ! ロックフェラー、ルーズベルト、近衛文麿 そしてフーバーは』を読みかけなので、上記2冊に取りかかれるのはもう少し先になりそうですが、読んでいる最中にも多の2冊は参照したくなりそうだと思って入手したのでした。

 

* * * *

 

この動画の②で『昭和16年夏の敗戦』(猪瀬直樹著/中公文庫)に書かれた「総力戦研究所」に言及されます(23:50あたり~)が、それで、ブログ主はこの本を“読んだ”ことを思い出しました。

動画をご覧になれば分かりますが、林氏に対し、この『昭和16年~』を引き合いに出して反論する方が多いそうです。

 

そこで本棚から引っ張り出して見たら、途中で読むのをやめていたことを思い出しました。(半分ほどのところに文庫本カバーの「折り返し」を挟んでいて、その後を読んだ形跡がありませんでした。) 後述しますが、この本はタイトルで結論を言っているので、読まなくてもいいやと思ったのでしょう。

 

「総力戦研究所」とは、ご説明すると、以下のような組織です。

 

霞が関の各省を中心に、丸の内や大手町の民間企業、それから日銀からも一人、新聞記者(同盟通信、現在の共同通信)も一人、三十人ほどの若手エリートを集め「模擬内閣」を作らせて閣議を行った。データは自分の役所や会社から集めた。そして、彼等が昭和16年夏に出した戦争の経過は実際とほぼ同じだった。この研究成果は東条英機陸将も聴いている。

 

要するに、『昭和16年夏の敗戦』というタイトルでも分かるように、既に敗戦は分かりきったことであるのに、日本が「無謀な戦争」に突入したのだ、という結論をもって書かれた本なのです。

また、この本は小説仕立てになっていて、登場人物に直接話法で語らせています。従って、非常に読みやすいのですが、一方、著者の思うとおりに登場人物に語らせているわけで、読者にミスリードさせるものとなっています。

 

林氏が言うには、この研究機関の主目的は教育と訓練であり、この研究は単なる物量比較しかしていないそうです。また、ほぼ同時進行的に戦略を練っていた秋丸機関とは異なり、インドやインド洋には全く目を向けていません。

動画の中で『昭和16年~』から引用して紹介される、報告を聞き終わっての東条の発言も何かに記録されたものではありません。(但し、後に研究生が記憶を呼び起こし、総合させたものは一致していると書いています。)

 

東条の発言(小説での台詞)を以下、引用します。

 

諸君の研究の労を多とするが、これはあくまでも机上の演習でありまして、実際の戦争というものは、君たちの考えているようなものではないのであります。

日露戦争で我が大日本帝国は、勝てるとは思わなかった。しかし、勝ったのであります。

あの当時も列強による三国干渉で、やむにやまれず帝国は立ち上がったのでありまして、勝てる戦争だからと思ってやったのではなかった。戦というものは、計画通りにいかない。意外裡なことが勝利に繋がっていく。

従って、君たちの考えていることは、机上の空論とは言わないとしても、あくまでも、その意外裡の要素というものをば考慮したものではないのであります。

なお、この机上演習の経過を、諸君は軽はずみに口外してはならぬということでありますッ。

 

研究生達の記憶を信じ、実際に東条英機がほぼこの通りのことを言ったとしても、秋丸機関の作成した案の存在を知らずにそのまま受け取れば、総力戦研究所の出した結論を無視して無謀な戦争に突入した証拠と取れるし、「やむにやまれず」戦争に突入するとしたら、この研究成果を参考にしつつも更なる戦略を練るのが軍人であるという発言にも取れるでしょう。

 

 

 

上にご紹介したもう一冊の『大東亜戦争の真実―東條英機宣誓供述書』 (東條 由布子著・渡部昇一解説/WAC BUNKO) は、この動画で言及されるので覚え書きとしてリンクを貼ったのですが、秋丸機関の研究報告に基づく戦略が本来の作戦であったということが、この宣誓供述書にもはっきりと書かれているとのことです。

 

 

 


 

 

 

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