台湾人日本兵戦後補償請求訴訟
公開: 2019-04-24 22:39:19 最終更新: 2019/04/26 11:27
※公開後、もう少し詳細が分かったので加筆修正しました。このエントリーの続きは、次の『台湾籍日本人の国籍復帰と戦後補償』に記していますので、併せてお読み下さい。
今日、たまたまネットで聴いたラジオ「沖縄防衛情報局」(YouTube)で知ったのですが、「台湾人日本兵戦後補償請求訴訟」の準備が進んでいるそうです。
「沖縄防衛情報局」とは、沖縄で保守活動を行っている我那覇真子さん一家とブログ「狼魔人日記」の筆者である江崎孝氏がパーソナリティを務める番組ですが、それだけでは少し飲み込めないところもあって調べてみました。
「台湾人日本兵戦後補償請求訴訟」と聞くと、韓国の「慰安婦訴訟」とか「(自称)徴用工訴訟」とかと同じようなものと思われるかも知れませんが、意味合いが全く異なります。ご存命の台湾人の元日本軍属の方達はお金より、日本人として戦ったという証が欲しいのです。
それを認めて欲しいが故の訴訟なのだそうです。
ご存知のように、同じ日本であった韓国はと言うと、日韓基本条約により、戦後補償という事実上の賠償金のようなものを日本は支払いました。それを韓国政府が戦時徴用された韓国人にきちんと支払わなかったことが現在の「(自称)徴用工訴訟」に繋がるのですが、それはまた別の話で、日本は韓国人には補償をしました。
しかし、台湾に関しては、日本兵として戦った彼等には恩給などの補償もされず(詳細後述)、その後、台湾は蒋介石の国民党時代になり、彼等は迫害される立場になりました。
また、日本がその後、日中国交回復を重視し、台湾についてはなおざりにしてきたという背景もあります。
訴訟の原告になろうとしている方々の願いは日本軍人だったことを認めて貰って死にたい、ということだそうです。
「沖縄防衛情報局」を聴いただけでは分からなかったのですが、その後、調べたら、この訴訟の世話人となっているのは、先日、勝訴した「孔子廟裁判」の弁護士である徳永信一弁護士であることが分かりました。このことは、ニッポン放送のラジオ番組「須田慎一郎のニュースアウトサイダー」(3月16日放送)YouTubeで聴いて分かりました。
http://www.1242.com/lf/articles/166032/?cat=politics_economy&pg=outsider
弁護士徳永信一 「靖国神社参拝問題」や「台湾人日本兵戦後補償請求訴訟」を語る!
2019/03/22 13:00(中央が徳永弁護士)
※以下の記事部分はこのエントリーのテーマとは関係ないのですが、徳永弁護士のスタンスというか、過去に行ってきた弁護活動が分かるのでそのまま引用します。
靖国神社参拝訴訟はどうやって起きた?
東島: 徳永さんは1958年、昭和33年生まれ大阪府のご出身です。京都大学法学部を卒業され、司法修習生を経て、1988年に弁護士登録。大阪弁護士会所属の弁護士でいらっしゃいます。薬害エイズ事件、北朝鮮拉致問題などを積極的に担当されて2014年には首相による靖国神社参拝が憲法違反であるという、いわゆる「靖国神社参拝訴訟」では靖国神社を支援する代理人を務められました。
須田: 色々と注目を集めている裁判・事件を扱ってきたということなんですけれども、まず伺いたいのは安倍総理の靖国神社参拝が憲法違反だということで訴訟を起こされた際の法定代理人でしたが、これは何が問題だったのですか?
徳永: 遡って、小泉さんが靖国神社に参拝された時のことを覚えていらっしゃいますよね?小泉さんが参拝した後、日本全国で7箇所の裁判所に「政教分離に違反する=憲法に違反するんだ」という裁判がおこされました。これは憲法20条の「政教分離」に違反するから許されないぞと。しかも当時は珍しかったのですが原告たちをインターネットで募集して何百人も原告を集めて、訴えました。その中に在日韓国人だけでなく、在韓韓国人や在中中国人の方々が「アジアの人たちは怒っているんだぞ」ということで小泉さん・日本・靖国神社まで訴えたという事件がありました。私は当時は靖国神社も国も小泉さんもどの代理人も務めていないんですよ。
その裁判をやるときに彼らが言っていることは、「戦後の清算もきちっとされていない中で日本の首相が靖国神社に参拝するということは絶対に許されない!しかも靖国神社には私たちの祖先の魂が強制連行されてきているんだ」と言っていました。傍聴に行かれた遺族の方々がそれを見て、靖国神社が好き放題にやられているわけですよ。それに対して、当時の日本の裁判担当のお役人たちは積極的に反応しなかったんですね。それで靖国神社を大切に思う人たちの補助参加というやり方を考えて、彼らの裁判の中に割って入ったということです。
その裁判が小泉さん側の勝訴で終わったんだけれでも、今度は安倍さんが靖国神社参拝をした後、また同じ人たちが大阪と東京に同じような裁判を訴えたわけです。それで補助参加という形でまた裁判をやってきたというということです。
須田: そうすると一連の訴訟の背景に中国共産党や中国政府の意向というか狙いを感じることができるのですが、そのあたりはどうなのでしょうか?
徳永: そこについては流石の僕も慎重に言葉を選ばないといけないところなのですが、前面に出ているのは常に韓国の人たちなんですよね。それから北朝鮮。そしてその背後にやはり中国の影が見えるなというのはあって、その辺がスキッと見えたのがこの台湾人訴訟なんですよ。
須田: 今日のメインテーマでもあるのですが、台湾人の日本兵戦後補償請求訴訟という訴訟が提起されていて、これは入り口のところではやはり台湾人日本兵に関して戦後、賠償が行われていないからその補償を求めてという裁判ですよね?
徳永: もちろんそうですね。ただ、大事なことはその裁判はまだ起こしていなくて、今その準備をしているということです。
須田: 今、日本では徴用工の問題や従軍慰安婦の問題などを韓国とやっているわけですが、それに台湾の人たちも参加してきたという理解でいいわけですか?
徳永: それは全く違うんです!(続きは以下のラジオで)
須田慎一郎のニュースアウトサイダー 第59回 2019年3月16日放送分 ゲスト:弁護士 徳永信一さん
この番組を聴けば分かるのですが、日本の国会議員も、戦後なおざりにしてきた台湾籍日本軍属の補償問題について動いていたようですが、実現には至りませんでした。
また、「慰安婦問題」に関する「償い金」の支払いと一緒に補償金を支払う話もあったようですが、そのような形では受け取りたくないという気持ちから反対運動があり、実現しませんでした。
以下、これに関連する情報をメモしておきます。
沖縄県糸満市摩文仁の台湾人戦没者の碑「台湾之塔」
記事は掲題の件とは直接関係はありませんが、昨年(2018年)6月に「台湾之塔」を李登輝元総統が訪れて慰霊をされました。
https://vpoint.jp/okinawa/115161.html
中国の覇権主義を批判
2018/6/25(月)沖縄を訪問中の台湾の李登輝元総統(95)は24日、糸満市摩文仁の平和祈念公園にある台湾人戦没者の碑「台湾之塔」で開かれた慰霊祭に出席した。慰霊祭では、李氏が「為國作見證(国のために実践せよの意味)」と揮毫(きごう)した石碑を台湾人元日本兵らと除幕し、参列した日台の関係者約120人と共に新たな碑の設置を祝った。
李氏は講話の中で、「戦争では多くの尊い命が犠牲になった」と涙ぐみながら、「先人たちが示してくれた道筋は、私たちの生きるべき道を示唆してくれている」と強調。「それが、碑に書かれている国のために実践するということで、平和、自由、民主主義が後世まで永続するよう願ってやまない」と述べた。
李氏は23日夕、糸満市のホテルで開かれた歓迎晩餐(ばんさん)会では中国の脅威と日台連携をテーマに講演。「中国は周辺国と絶えず緊張状態をつくり出し潜在的な軍事衝突の可能性を生み出している」と指摘、「台湾も中国の軍事的恫喝(どうかつ)を受けている」と訴え、海洋進出を狙う中国の覇権主義を厳しく批判した。
その上で、「日本の関与なくして朝鮮半島とアジアの平和は実現しない」と強調。さらに「自由や民主主義の価値観を共有する日台米が経済、文化、軍事面で連携して専制的な独裁国家(中国)の覇権主義を抑え込まなければならない」と訴えた。
除幕式は日本台湾平和基金会(西田健次郎理事長)が主催。晩餐会は同会と日本李登輝友の会(渡辺利夫会長)が共催した。
日本台湾平和基金会のサイト
この団体(日本台湾平和基金会)この訴訟に関わっているということは後日分かりました。
「マスコミ報道」のページに「台湾之塔」に関する記事が多数掲載されています。下はその一つ。
- 《八重山日報》 日本と共に戦った証に 2016年6月29日(PDF)
『台湾』(中公新書/伊藤潔著) P.129~ 「戦時体制下の台湾人」
以前もこの『台湾』という本をご紹介したことがありますが、伊藤潔と日本名ですが、元々は台湾の方です。
この章から部分的に抜粋してご紹介します。
戦局の悪化と著しい兵員の消耗に伴い、1944年9月に台湾にも徴兵制が施行され、この時には2万2千余名が徴集された。(中略)終戦を迎え、あまつさえ日本の台湾放棄により、台湾人は「日本人」でなくなるのである。
1973年4月の厚生省援護局の史料によれば、戦争に駆り出された台湾人の軍人は8万433名、軍属と軍夫は12万6750名で、合計20万7183名であり、戦士及び病死者は3万3040名となっている。これは7人に一人の高率であり、終戦時の台湾の人口(約600万人)のほぼ200人に一人が戦争の犠牲になったことになる。
これら3万余名の台湾人犠牲者を始め、負傷した軍人、軍属、軍夫は、戦後、日本国籍を失ったことを理由に、なんら補償も受けていない。
その後、1974年末にインドネシアのモロタイ島に残留、30年ぶりに発見された元日本兵で先住民のスニオン(日本名は中村輝夫)の救出を契機に、台湾人元軍人、軍属、軍夫の補償運動が展開された。そして、訴訟では日本国籍の喪失を理由に敗訴となったが、1987年9月に成立した議員立法の「台湾住民である戦殁者の遺族等に対する弔慰金等に関する法律」で、戦病死と重傷者を対象に一人につき200万円の弔慰金が、日本政府から支払われた。
しかし、同じ「日本兵」として戦地で血を流しながら、戦後における日本人と台湾人の処遇には雲泥の差がある。また、アメリカやイギリス、フランスなどは宗主国として植民地の民を戦場に送った国々は、手厚い戦後補償を施している。この彼我の違いを見れば、台湾人に対する「一視同仁」や「皇民化」の同化政策は、ただの統治の手段に過ぎないと批判されても、致し方あるまい。
「沖縄防衛情報局」でこの話をされた江崎氏も徳永弁護士も中村輝夫さんについて語っていますが、ブログ主は、中村輝夫さんというは、たまたまつい最近Twitterで見て知りました。
小野田寛郎さんや横井庄一さんが発見された直後に見つかったそうですが、30年間、日本人と思って潜伏していた中村さんが故郷に戻ったときは、国民党の台湾でした。そのせいかどうかは分かりませんが、発見された当時は非常にお元気だった中村さんは台湾に戻られて数年後にお亡くなりになったそうです。
最後的武士.高砂義勇軍
— carl lin (@carl_lin_tw) 2018年9月19日
李光輝(阿美語:Suniuo,日本名:中村輝夫,又稱史尼育唔或史尼雍,是一位生於臺灣臺東廳新港郡都蘭莊(今臺東縣東河鄉都歷部落)境內的阿美族臺籍日本兵,於太平洋戰爭中加入日軍高砂義勇隊赴南洋參戰,因與部隊分散後獨自在摩羅泰島的叢林中生存三十年而聞名於世。 pic.twitter.com/Vk49emQfU1
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しんちゃん様
当方も以前同じことが気になり、調べたことがあるのですが、その限りではそうした賠償・補償の例は見つかりませんでした。
あるのは個別の賠償請求で、軍人恩給や補償ではありませんが、例えば、オランダとインドネシアの間で2011年に国際司法裁判所(オランダ・ハーグ)でオランダ人による虐殺に対してインドネシア側が賠償を求めた裁判で勝訴しています。
以上が、不十分ですが、ご質問への回答ですが、以下、私の考えなどを補足します。
思うに、伊藤潔氏のような「台湾人」の感覚は、欧米による植民地支配を受けた国に人達とは異なり、「日本人であった」という意識や感情があるからではないでしょうか。
台湾人だけでなく朝鮮人も、「日本軍人」としてB、C級の戦犯として処罰されています。そして、日本側(日本人の多く)も、台湾や朝鮮半島の統治は欧米の「植民地」とは異なり「内地の延長」であり「日本人」として扱ったという主張をします。また、韓国との請求権協定の議論では、半島出身の軍人に対する保障も行っています。(日本側は個別の補償を申し出るも、韓国側はまとめて受け取り、実際は元軍人への支払いは不十分でしたが。)
となると、台湾人の旧日本軍人だけが取り残されてしまったことになります。
ブログでも振れたように、小野田寛郎さんや横井庄一さんが発見されたほぼ同じ頃、台湾出身の中村輝夫(スニヨン)さんという方がインドネシアで発見され、最後の日本軍人となりました。しかし、小野田さんや横井さんと異なり、正式な補償は受けられず、有志による義援金のような形でお金が贈られました。
私はこのことをチャンネル桜『沖縄の声』で知ったのですが、中村輝夫さんの一件から、台湾で補償問題が議論されるようになったと聞いています。
恩給や補償を求めることは、即ち、日本人であった「証」が欲しいということなのでしょう。
さて、今回準備されている裁判ですが、実際はそう簡単にいかないのではないかと思っています。
単純な補償ではなく、「日本人だという確認」を求めているからです。
これは、「台湾」の戦後の帰属問題も含んでいます。(中国が黙っていないだろうという意味)
また、仮に「日本人」であると認められたら(日本国籍を有していると認められたら)、その子や孫も日本人となるのか?という問題もあります。
もし、原告の主張に応えるなら、特別立法が必要ではないかと思います。
投稿: 大師小ブログ管理者 | 2019/10/16 13:28
御ブログでも紹介されている伊藤潔氏著の「台湾」は私も読みました。但し、当ブログにも引用されている箇所が気になっていました。以下抜粋引用「しかし、同じ「日本兵」として戦地で血を流しながら、戦後における日本人と台湾人の処遇には雲泥の差がある。また、アメリカやイギリス、フランスなどは宗主国として植民地の民を戦場に送った国々は、手厚い戦後補償を施している。この彼我の違いを見れば、台湾人に対する「一視同仁」や「皇民化」の同化政策は、ただの統治の手段に過ぎないと批判されても、致し方あるまい。」と書かれていますが、私の勉強不足かもしれませんが、かつて欧米諸国が国の名において、自らの植民地及びその民に対して事後保証はおろか謝罪さえも無いと思いますが?ご教授願えれば幸いです。
投稿: しんちゃん | 2019/10/15 13:04