【エネルギー】再生可能エネルギーの課題 (1)発電調整/太陽光発電の出力制限
13日に九州電力が太陽工事業者の発電施設(9759件、出力計43万キロワット)を一時停止させるという措置をとりました。14日も実施される予定とのこと。
以前のエントリー『【北海道】ブラックアウトはなぜ起きたのか? 発電所連鎖停止のメカニズム』で書いたように、電力の需給バランスで電力の周波数が決まりますが、これが崩れると周波数が乱れると発電機のタービンの軸が振動で破損する可能性があるからです。
九州電力は6月までに管内の原発4基が再稼働したことにより供給力が底上げされています。(玄海原子力発電所3、4号機、川内原子力発電所1、2号機)
九州は比較的土地が安いため、他地域より太陽光発電の業者の参入が多いそうで、九州は日本全国土の1割の面積ですが、太陽光発電の発電量は日本全体の2割に当たるそうです。
下は一時停止を報じる読売新聞の記事です。
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20181013-OYT1T50033.html
読売新聞:太陽光発電、停電回避へ初の一時停止…九州電力
2018年10月13日 12時21分九州電力は13日、九州の一部の太陽光事業者の発電所を一時停止させる「出力制御」を実施した。九州7県で対象となる計約2万4000件の太陽光契約のうち、今回の実施は熊本を除く6県の計9759件(出力計43万キロ・ワット)。週末でオフィスや工場などの需要が減る一方、好天で太陽光の発電量が増えて需給バランスが崩れ、大規模停電につながる恐れがあるためだ。離島以外では全国初。
九電は13日午後1時の太陽光の出力が594万キロ・ワットに達し、総供給力は1293万キロ・ワットに及ぶとみている。需要(828万キロ・ワット)を大幅に上回るため、火力発電の抑制や本州側への送電などを実施する方針だが、それでも供給力が需要を上回るとして、12日に対象事業者に一時停止を指示し、13日朝の気象状況を踏まえて最終決定した。一般家庭は対象外だ。
イメージとしてはこんな感じです。
元々、発電は時間帯や季節によって異なる需要を見越して調整するわけですが、太陽光発電という自然頼みの発電はコントロールができず、今回、供給過多になる分(斜線)を遠隔操作でストップさせたということですが、上の図でもう一つ注意して見なくてはならないのは火力発電の部分。
コントロールが効かない太陽光発電の出力のデコボコを吸収しているのは火力発電の部分で、これにより運用が煩雑になっているのです。
以前、チャンネル桜の『エネルギーは現在(いま) 』シリーズ(どの回かは失念)でドイツの例を学びましたが、上の図に更にコントロールの効かない風力発電が加わり、そのため、再エネ発電ではない従来型の発電所では天気図ともにらめっこで事前に計画を立て、出力をコントロールしていると知りました。(当初は遠隔で再生可能エネルギー発電を止めることは考慮していなかったため。なお、その後、新規事業者に対しては遠隔操作での遮断を受け入れることを義務づけた。)
今回に限らず、このように火力発電の運用で必要な電力量をコントロールしているわけですが、今日(10月14日)の読売新聞によると、この運用には国が定めたルールがあるのだそうです。
それは、
- 火力発電の抑制や揚水活用
(揚水発電所は水をくみ上げて放流して発電するが、そのくみ上げに電気を使用する) - 他地域への送電
- バイオマス発電の抑制
(バイオマスとは生物由来のエネルギー源) - 太陽光・風力発電の一時停止
- 原子力、水力、地熱発電の抑制
という順番で電気を消費したりコントロールするとのことです。
* * * *
ところで、この件でブログ主が気になっていたことがあります。それは、今回のように九州電力が再エネ発電事業者からの送電を一方的に遮断したした場合、再エネ業者はその分、売上が減ることになりますが、この部分の取り決めはどうなっているのか?ということ。
その疑問の答えも今日の読売新聞に書いてありました。
原則として、
発電を止めた事業者に電力会社が
補償金を支払う義務はない
のだそうです。
これは政府は良い措置をしておいたものです。
というのは、欧州でも再エネ業者からの電力の買取と供給過多にならないように遮断を行っているそうですが、アイルランドでは2014年の補償額が1億7600万ユーロ(約230億円)に達し、英国では今、この補償金を国民負担としているのが問題になっていて、2014年には1億ポンド(約150億円)が出力制御の費用としてかかったそうです。(2018/10/14読売)
今回、一時停止の対象から一般家庭は外され、停止させられた事業者名は公表されていません。しかし、今後同様な措置がとられる場合に不公平感が出ないように、対象事業者の選定をコントロールするとのことです。
7月に閣議決定されたエネルギー基本計画では再エネを主力電源化する方針を決めましたが、果たして、再エネは電源の主力に適当なのでしょうか?国民は「再生可能エネルギー発電促進付加金」という負担も強いられており、このまま好き勝手に再エネ事業を始められてはたまったものではありません。
「再生可能エネルギー発電促進付加金」についてはまた別の機会に論じたいと思います。
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