公開: 2018/10/29 07:30 最終更新: 2018/10/29 15:32
沖縄県で辺野古移設の賛否を問う県民投票の実施とその概要が決まりました。(参考記事【※1】)
県民投票を求める集めた署名が有効数に達したことにより県議会に諮(はか)られたもので、条例(『辺野古米軍基地建設のための埋め立ての賛否を問う県民投票条例』)が可決され、選択肢は「埋め立てに『賛成』か『反対』の二択」となりました。
同時に投票に掛かる費用のための補正予算案も可決され、その額は約5億5千万円とのこと。
これは県の予算なので、実際に投票会場の運営は選挙のように市町村に依頼することになるので、これとは別に各自治体で補正予算を組む必要があります。
9月に県が事前協議を行ったところ、5市が協力要請に回答を留保、先日、石垣市は県民投票に反対する決議を可決しているため、場合によっては、一部の有権者は投票できない事態になるかも知れません。(ブログエントリー『【沖縄】「私的検問」を巡る民事訴訟/石垣市、県民投票に反対意見を決議、他』)
各自治体は今後、県民投票の経費を盛り込んだ補正予算案を議会に諮ることになりますが、これが否決された場合、石垣市に続くことになります。
県民投票の実施は条例公布後6ヵ月以内と定められているため、遅くとも来年4月まで、県では年内の実施を想定しているそうです。
一方、これに先立つ26日、岩屋毅防衛相はこれに関してインタビューに答え、「県民投票の結果をどう受け止めるかという以前に、私どもの基本的な考え方に変わりはない」と述べ、投票結果にかかわらず移設を推進する考えを示しました。(【※2】)
これに示されるように、県民投票の結果に法的拘束力はありません。
* * * *
可決された条例には「普天間飛行場の危険性を除去するため」という本来の目的が書かれていません。
県民投票の実施を求める署名を集めたのは「『辺野古』県民投票の会」という市民団体で、彼等の求める答えは「普天間飛行場の無条件撤去」。最終目標は「アメリカ海兵隊の国外退去」です。 また、基地反対派にしてみれば、県外や国外撤去は現状無理なのが分かっているので、反基地のシンボルとして「普天間飛行場の固定化」です。
しかし、それを問うことはできないので、「辺野古埋め立てへの賛否」と誤魔化しているわけですが、この選択肢は手段と目的を履き違えています。
正しくは、「普天間基地の縮小」であり「普天間飛行場の危険性除去」(目的)ですが、「辺野古の埋め立て」はそのための手段の一部です。
その意義を説明することなく、埋め立てに賛成か反対かを問うのですから、いくら沖縄メディアが偏向していても、この住民投票の実施に署名した沖縄県民の首の上についているものは飾りか?と言いたくなります。
そもそも、国防に関することは国の専権事項ですが、だからと言って好きなところに基地を移設することはできません。地方自治体の理解と承認を得る必要があり、それは沖縄「県」ではなく、名護「市」なのです。
沖縄県に承認を得る必要があるのは埋め立てに関する部分です。
だから、翁長前県知事も玉城県知事(謝花副知事)も、埋め立てに難癖を付けることしかできないわけです。
そして名護市に権利があるからと言って、市長が勝手に決めることはありません。当然、地元住民の理解を得る必要があり、当時の島袋吉和市長がそれを行いました。(この件、『名護市辺野古地区の民意』の項で解説)
そのため、辺野古のある北部地区は国から特別予算を受けています。(【※5】)
その額は年50億円にもなります。穿った見方をすれば、辺野古の工事が長引けば長引くほどどんどんお金が入ってくるのです。
これをやっていたのが稲嶺前市長。
お金を貰っていたもかかわらず、辺野古周辺は下水処理施設さえ造られていないため、汚水は海に垂れ流し、「辺野古の美しい海を守れ」などと言っていますが、遊泳禁止なのです。稲嶺前市長のときには北部のためにこの資金が使われなかったため、途中から市の頭越しに北部に直接支給されることになりました。
辺野古移設に反対するなら、まずそのお金を国に叩き返してからやりなさい。
基地反対派の思惑とは別に普天間飛行場を抱える宜野湾市民にとってはこの危険性を除去してほしいはずで、それは9月30日の県知事選の結果にも表れています。
宜野湾市の投票は、佐喜真氏:26,644票、玉城氏:22,379票という結果でした。また、市長の佐喜真氏の辞任により同時に行われた宜野湾市長選挙は佐喜真氏の後継として自民、公明、維新、希望が推薦する松川正則氏が26,214票、オール沖縄が推す仲西春雅氏が20,975票と、保守系が勝利しています。
ちなみに辺野古のある名護市は、佐喜真氏:15,013票、玉城氏:16,796票と、他市に比べて得票差は小さなものでした。
沖縄メディアは「民意、民意」と騒ぎ、都合が悪い結果が出ると「少数派の意見を認めないのは民主主義ではない!」などと意味不明なことを言い出しますが、宜野湾市民の民意は無視するのでしょうか。
「民意」というのであれば、辺野古地区では既にコンセンサスがとれています。
名護市では、第2代市長の比嘉鉄也氏の時代〔1986年(昭和61年)2月8日~1997年(平成9年)12月24日/連続3期〕の1997年に普天間飛行場の受け入れ賛否を問う住民投票を行っています。
この時は結果としては反対が賛成を上回ったのですが、買収が横行し、市長は民意を反映していないと受け入れを決めて辞任しました。(ブログエントリー『【沖縄】1997年の普天間飛行場の名護市受け入れを巡る住民投票における比嘉鉄也名護市長の決断の理由は?』)
名護市ではその後、第3代・岸本建男氏(1998/2/8~2006/2/7/連続2期)、第4代・島袋吉和氏(2006/2/8~2010/2/7/連続2期)と続き、島袋氏の時代に辺野古に建設される滑走路の「V字案」が地元の合意を得て決まりました。(第5代は稲嶺進氏、現職は渡具知武豊氏)
しかし、つい最近(10月24日)まで、沖縄県は「合意は無い」と嘘をついていました。(【※4】)
当時の島袋市長も6月に出演したチャンネル桜の『沖縄の声』で以下のように語っています。
「マスコミは「政府に押し切られた」ばっかり言ってたが、地元の三区の区長さん、有識者の皆さんと合議して「これ(V字滑走路)で行ける」と決めた。地元の後押しがあった。
しかし、当時はマスコミによって歪曲して伝えられ、合意があったことは隠されていたのだと想像できます。
さて、実施されることが決定した県民投票ですが、選挙と異なり候補者がいないわけですから、県民へアピールする活動は市民団体等によるものになります。ここで、自民党や公明党といった保守系政治団体は実際そこまで保守ではないので目立つ活動はしないでしょう。一方、オール沖縄(左翼)はここぞとばかりに派手な活動をするはずです。
県民投票は公職選挙法が適用されないため、普通の選挙でも公選法違反がまかり通る沖縄では、反基地活動家はもとより、沖縄メディアも徹底的にプロパガンダを行うことは火を見るより明らかです。
昔の住民投票の頃と異なり、SNSの発達した現在では多くの告発が想像できます。
まともな思考力を持った沖縄県民にとっては、こんな法的拘束力のない投票にうんざりでしょうし、上述のように、投票に反対する自治体の住民は投票の機会がないかも知れません。
総額6億円近くもかけて無駄なことをやる沖縄県を他県の人間は冷ややかな目で見ています。
【※1】
記事中にある「沖縄県内の米軍基地をめぐる県民投票は、平成8年以来2度目となる」というのは、1996年9月8日に沖縄県で実施された住民投票のことで、前年の1995年9月4日に沖縄米兵少女暴行事件が起こったことを契機に実施されたもの。(Link先はWikipedia『1996年沖縄県民投票』)
https://www.sankei.com/politics/news/181026/plt1810260009-n1.html
辺野古移設賛否問う県民投票実施へ 沖縄県議会が条例案可決 来春までに
2018.10.26 11:27
沖縄県議会は26日午前、本会議を開き、米軍普天間飛行場(宜野湾=ぎのわん=市)の名護市辺野古移設の賛否を問う県民投票条例案を賛成多数で可決した。投票は条例公布から6カ月以内に行われると規定されており、県は今年度内の実施を想定している。ただ、投開票事務には県内市町村の協力が必要で、5市が県の協力要請に回答を留保している。
玉城(たまき)デニー知事は県民投票について「県民投票の実施により、改めて民意を問うことは意義がある」と述べている。政府に辺野古移設計画の見直しを求める上で、県民投票の結果を説得材料としたい考えだ。
条例案とともに、投開票経費約5億5千万円を計上した補正予算案も採決。沖縄県内の米軍基地をめぐる県民投票は、平成8年以来2度目となる。
条例案は、市民団体が9万2848筆の署名を集めて県に直接請求したことを受け、県が県議会に提出した。辺野古移設について「賛成」か「反対」の二者択一を問う。賛否いずれかの票が全有権者の4分の1以上に達すれば「知事は結果を尊重しなければならない」と定めている。
自民、公明両党は26日の県議会本会議で「県民の多様な意見を反映するべきだ」として「やむを得ない」「どちらとも言えない」を加えた4択とする修正動議を行った。しかし、社民党や共産党など玉城知事を支持する県議らが「請求者の趣旨は2択だ」として自公修正案を否決した。
県の説明によると、県内41市町村のうち、宜野湾市や糸満市など5市が投開票事務の協力要請に態度を保留している。石垣市議会は17日、県民投票に反対する意見書を採択した。市町村が投開票事務を行うためには関連経費を盛り込んだ補正予算案を可決しなければならない。
県は投開票事務への協力を強制できない。県内の一部を除いた形で行われる「虫食い県民投票」(自民党県議)となる可能性もあるが、県は「仮に一部の市町村で実施されないとしても、意義があるものと考えている」と説明している。
【※2】
https://news.nifty.com/article/domestic/government/12145-112523/
沖縄県民投票、政府方針に影響せず=岩屋防衛相
2018年10月26日 12時38分 【時事通信社】
岩屋毅防衛相は26日の記者会見で、沖縄県議会で米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の名護市辺野古移設の賛否を問う県民投票条例が成立したことに関して、「県民投票の結果をどう受け止めるかという以前に、私どもの基本的な考え方に変わりはない」と述べ、投票結果にかかわらず移設を推進する考えを強調した。
【※3】
V字滑走に決まる前のX案やL字案など、当時の資料を示しながら島袋氏が地元の合意を得たものだと語っています。
【沖縄の声】島袋元名護市長の「決断」~辺野古V字型滑走路建設の経緯~[桜H30/6/22]
https://youtu.be/h7mNwtnjSak
出演:
又吉 康隆(沖縄支局担当キャスター)
金城 テル(沖縄支局担当キャスター)
ゲスト:
島袋 吉和(元名護市長)
【※4】
https://www.sankei.com/politics/news/181024/plt1810240038-n1.html
沖縄県、辺野古「地元合意」一転認める
2018.10.24 23:01
沖縄県の池田竹州(たけくに)知事公室長は24日の県議会米軍基地関係特別委員会で、米軍普天間飛行場(宜野湾(ぎのわん)市)の移設先として名護市辺野古に2本の滑走路を建設する政府の「V字案」について「平成18年4月7日に防衛庁長官と当時の(名護)市長との間で基本合意をされた」と述べた。地元合意はないとする過去の答弁を修正した。
池田氏は10日の同委で「V字案については地元の合意等は取られたものではない」と答弁していた。自民党の末松文信(ぶんしん)県議がこれに反発し、撤回を求めた。
辺野古移設をめぐっては、稲嶺恵一知事(当時)も18年5月にV字案を基本とする対応に「合意する」とした基本確認書に署名している。池田氏はこの点も認めたが、稲嶺氏の記者会見での発言を引用し「V字型案への合意を明確に否定している」と述べた。(以下略)
【※5】
https://mainichi.jp/articles/20180212/k00/00m/010/114000c
沖縄北部予算 増額へ 名護市長に自公系、翁長氏けん制
毎日新聞2018年2月12日 07時30分(最終更新 2月12日 07時30分)
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政府は、沖縄県名護市を含む同県北部12市町村に交付している北部振興事業予算を2019年度から増額する検討に入った。4日の名護市長選で自民、公明両党などが推した渡具知武豊氏が当選し、米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画を進めやすくなったと判断した。秋の知事選に向け、移設反対を掲げる翁長雄志知事をけん制する狙いもある。
北部振興事業は、内閣府が所管する沖縄振興予算の一環。1999年に当時の稲嶺恵一知事と岸本建男名護市長が辺野古移設を容認したことを受け、那覇市など県南部に比べて経済発展が遅れていた北部のインフラ整備や雇用拡大を目的に創設された。県に対する一括交付金と異なり、12市町村で構成する事務組合に国が直接交付する。事務組合の理事長は慣例で名護市長が務めている。
政府は北部振興事業に2000年度から10年間で1000億円の予算を措置した。その後、制度は延長され、現行の沖縄振興計画では21年度まで少なくとも年50億円(公共事業、非公共事業の合計)を確保することになっている。12、13年度は50億円、14~18年度は51.4億円を計上した。
内閣府は夏の概算要求までに増額幅を検討し、19年度予算案に反映させたい考え。知事選前に、北部振興に取り組む安倍政権の姿勢を示そうとしている。
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