歳をとっても愚民は愚民
最初にお断りしておきますが、タイトルは後半に書くことについてで、その前にちょっと沖縄県知事選について触れておきます。
9月30日に行われた沖縄県知事選挙は玉城デニー氏の圧勝に終わりました。これに関しては様々な分析がなされており、本日(10月2日)の虎ノ門ニュースでも論じていました。
今回の県知事選の結果は、虎ノ門ニュースでも語っていましたが、結局、県民は「現状維持」を望んだ、ということではないかと思います。これは、自民党の和田政宗議員もメルマガで要因の一つとして同様のことをお書きになっていました。
沖縄は景気が良いこともりますが、補助金(沖縄県民が享受している減税や公共サービスに係る費用の国庫負担も含む)によって、県民所得が最下位だろうと、生活に支障がなければ不満には思わないでしょう。県民所得を比べるなら、家賃や物価の指数で補正した順位も比較すべきです。
出口調査で、投票の際に何を重視するか、と言ったアンケートで経済的な項目より基地問題が上に来たのがそれを物語っています。
後ほどグラフを提示しますが、現役世代・子育て世代ですら経済政策を前面に押し出した佐喜真氏より玉城氏支持が多いというのも、経済政策への関心が薄いことを示しているのではないでしょうか。
では、経済政策に関心がないとなると、アンケートにどう答えるか?
基地問題と言ってもどのレベルまで考えてのものかは個人によって差違があると思います。直接、騒音などに悩まされている方も少なくはないと思いますが、「基地問題」を常に重要視する言論空間のせいで「基地(米軍・自衛隊)は悪である」という刷り込みが必要以上にされているからかもしれません。
これは米軍関係の事故・事件を殊更に大きく書き立てるメディアのせいもあるし、沖縄の教育環境も大きいのではないでしょうか。
要するに、条件反射的なものもあるのではないかとブログ主は考えています。
他県、例えば、我が県の神奈川で特に一つの項目が争点になることはないので考えたことはないのですが、国政選挙であれば、なんとなく「経済成長」辺りに○をつけてしまうような感じでしょうか。 あ、ブログ主なら「国防・安全保障」を選びますが。
政府の沖縄振興予算については、番組では“ごね得”のような言い方をしていましたが、実際に政府は何かあれば「沖縄に寄り添って~」とか手厚い補助を口にします。
翁長知事の在任中には沖縄振興予算が減額傾向にありましたが、2019年度の一括交付金の概算要求では3190億円と5.5%増。(記事後述【※1】)
ごね得かどうかはさておき、政府の方針に逆らおうが邪魔しようが金を貰え続けているのです。これなら、普天間飛行場の辺野古移設を長引かせて、いつまでも争点化していたほうがいいでしょう。
県民がこのような卑しい根性で玉城デニー氏を選んだとは言いません。沖縄では富の配分ができているとは言いがたいからです。言いたいのは、県民は現状に不満を持っていないのだろう、ということだけです。
沖縄県知事選そのものについてはこれくらいにして、本題に入ります。
* * * *
下はSNSで出回っている、沖縄県知事選の出口調査の年代別の投票先グラフを補正したものです。 グリッド線があった方が便利なので補正作業中の画面をキャプチャし、中心点(13.5マス=50%)に▲を置きました。
アプリケーションの補正機能が正確とは言えないのですが、この比率はおおよそ合っているでしょう。
近年、選挙の度にこういう世代別のグラフが注目されるようになりましたが、これはミスリードさせられやすいので注意が必要です。
よく、こういうグラフを見て「60代以上がいなくなったら(死んでくれたら )...」などと言う方がいますが、各世代の有権者数と投票者数で補正をかけたら、このグラフは上に行くほど短くなるのです。
それを表すのが下のグラフです。若い人は65歳以上に比べて絶対数も少ないし、選挙に行きません。
歳をとっても愚民は愚民
これを見ると、あることに気づきます。
例えば1980年の20~24歳は、総有権者数800万弱(内、実際に投票するのは500万)ですが、20年経って40~44歳になってもその数は変わっていません。線は引きませんでしたが、この世代が2000年から2017年になると、57~61歳、つまり、「65~69」と書いてある棒グラフの2つ前~1つ手前の棒の中間値くらいになるわけで、ここでも推定投票者数は500万ほどです。
要するに、
若いときに選挙に行かない人間は歳をとっても行かない
のです。
おまけに、若年層ほど人口が少なくなっているというのは既に言いました。
上の画像はグラフ部分のみを日経の記事から切り取ったものですが、タイトルは『投票者の4割 65歳以上』というものでした。(文字部分もある記事はこちら)
恐らく、2017年の60~65歳はあと15年や20年は余裕で選挙に行くでしょう。
若年層に限らず、日本で投票率が低いのは様々な理由があると思います。
55年体制が長く続き、基本的に、保>革の構図は変わらないということもあるだろうし、選挙に無関心というのは消極的現状維持派、ということもあるかもしれません。〔これに関しては面白そうな論文を見つけました。『衆議院選挙投票率の分析 - J-Stage』(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaes/25/2/25_83/_pdf) ご興味があれば。〕
ブログ主は上の論文を読んでいないのですが、一つの切り口を下に提示します。
* * * *
ところで、近年、選挙があるとSNSで盛り上がることは確かです。しかし、これも勘違いをしています。
いくらSNSが発達しても、興味のない話題に関するツイートを見るでしょうか?
例えば今回の沖縄県知事選では佐喜真支持であろと玉城支持であろうと、仮に中傷合戦があったとしても、それは選挙に興味がある者だけの内輪の祭。一生懸命リツイートをしても、仲間内で情報をグルグル回しているだけなのです。
尤も、拡散することで、それほど興味のない人の目にも触れる機会が増えるかもしれませんが、調べものをしようとネットで検索しても、ツイートそのものが検索結果に現れることはまずありません。
ブログ主がブログをメインに、特に、自分の意見より記事や資料を記録する記事を書いたり、読んだ本の書評を書き留めておくのはそのためです。
もちろん、ネット空間だけでなく、リアルな世界で活動する方がいいのですが、ね。
そういう意味では、チャンネル桜の「頑張れ日本 行動委員会」が街宣をするのは立派です。また、シンパシーは全く感じませんが、沖縄の活動家のような実際に行動するほうがよっぽど効果があるのです。もちろん、徐々に実態がバレてきており、逆効果なこともあるのですが、沖縄のような言論空間が歪んだ場所ではまだまだ効果があることは今回の県知事選で実証されました。
これについては、もう少し書きたいことがあるのですが、長くなるので別の機会にします。
* * *
【※1】
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34834790R30C18A8LX0000/
沖縄振興、概算要求3190億円 一括交付金5.5%増
2018/8/31 17:03 日経
財務省が31日に締め切った2019年度の概算要求で、内閣府は沖縄振興予算として3190億円を求めた。18年度と比べると当初予算に対しては6.0%増だが、概算要求では同額となった。県が自由に使い道を決められる沖縄振興一括交付金は5.5%の増加。沖縄健康医療拠点整備経費を大幅に増やし、新規では観光防災力強化市町村支援事業を計上した。
沖縄振興予算は政府が沖縄県で実施する公共工事費や交付金の総額。政府が21年度まで毎年3000億円台を確保する方針を決めている。翁長雄志知事が就任してから減額が3年続いたが、9月末に知事選もあることから19年度概算要求は前年度と同額になったとみられる。県は3600億円規模を要請していた。
15年度から減額が続く沖縄振興一括交付金は増額要求となった。内訳はインフラ投資など公共工事向けのハード事業分が617億円、産業振興や人材育成に充てるソフト事業分は636億円。合計で1253億円と18年度当初に比べて65億円増えた。
道路や港湾の整備などに使う公共事業関係費は同額の1420億円を要求。沖縄科学技術大学院大学(OIST)の補助金も203億円を維持した。沖縄健康医療拠点整備経費は88億円を要求。米軍西普天間住宅地区跡地で、琉球大学医学部と同付属病院の移設を中心とした健康医療拠点の整備を進める。
新規予算では観光防災力強化市町村支援事業に10億円を計上した。大規模災害時に想定される観光避難民への市町村の対応を支援する。
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