お中元の由来-なぜ中元に贈り物を贈るの?-
公開: 2018/08/19 20:51 最終更新: 2018/09/15 9:57
ふとしたきっかけで、「お中元」について調べてみました。そのきっかけとは後述します。
と言うか、本当はそちらの話がメインなのですが...。
暑いこの時期にちょっとした怪談話のような動画(台湾のCM)のご紹介です。
まずは、中元の由来から。
そもそも、中元とは道教(※)の三元と呼ばれる節会の一つで、上元(正月15日)と中元(7月15日)と下元(10月15日)とあり、上元は小正月とか女正月という形で日本に定着し、小豆粥を食べて邪気を祓うという風習になっていますが、下元は定着しなかったそうです。
※どう‐きょう【道教】 ダウケウ
中国漢民族の伝統宗教。黄帝・老子を教祖と仰ぐ。古来の巫術や老荘道家の流れを汲み、これに陰陽五行説や神仙思想などを加味して、不老長生の術を求め、符呪・祈禱などを行う。後漢末の五斗米道(天師道)に始まり、北魏の寇謙之(こうけんし)によって改革され、仏教の教理をとり入れて次第に成長。唐代には宮廷の特別の保護をうけて全盛。金代には王重陽が全真教を始めて旧教を改革、旧来の道教は正一教として江南で行われた。民間宗教として現在まで広く行われる。→太上老君(たいじょうろうくん) →元始天尊
広辞苑 第六版 (C)2008 株式会社岩波書店
そして「中元」については、本来は、「善悪を分別し、人間を愛して罪を許す神の誕生日」として祝うものだったのが、シナにおいて仏教の盂蘭盆会(うらおぼんえ)と習合して祖先崇拝の信仰に連なる行事となった(「ブリタニカ国際大百科事典」より)そうです。この辺は辞書によって微妙に説明が異なるのですが、「日本で盂蘭盆会と混同された」と説明する事典もありました。(「平凡社マイペディア」など)
となると、別々に伝わり、日本で再び結びついたのでしょうか。
実際、日本のお盆の行事は、盂蘭盆会が更に民間の祖霊信仰と結合として現在のような形になったのは江戸時代とされているそうですが、伝播や変遷ははっきりしておらず、異説が多いようです。
いずれにしても、中元はお盆と結びついていることは確からしく、「盂蘭盆会の仏前に供える品物を贈る」もので、かつては白米や麺類、菓子、果物などの食品を贈ったものが、今日では「供物」の意味より「交際」の意の方が強くなったそうです。(「ブリタニカ国際大百科事典」より)
となると、仏教行事に盂蘭盆会由来の「お盆」が、贈り物に「中元」の名前が残ったように思えます。(※)
※その後、沖縄の孔子廟裁判の原告側弁護士の話を聞いて納得したのですが、そもそも仏教発祥の地のインドでは、「輪廻転生」という考え方なので、死後、何年、何十年とに渡って、お盆に地上に戻ってくるという考えはありません。仏教が中国に渡ったときに布教のために儒学の「考」の精神-先祖を敬う-という精神世界と融合したのだそうです。従って、日本の仏教には“儒教が乗っかっている”形になっています。
こんなことを調べたきっかけは台湾の「中元」の習慣を知ったからで、まずはこのCMをご覧下さい。
なぜに貞子が!?と思われるでしょうが、台湾では特に、中元は「無縁仏の霊を供養する」意味があるそうです。
http://japan.cna.com.tw/news/asoc/201608150006.aspx
台湾のお盆 中元節の普渡、お供え物にはすしやピザも 外国人の霊を供養2016/08/15 16:40
(台北 15日 中央社)旧暦7月15日は中元節。今年は8月17日にあたる。この時期が近づくと、台湾では家や会社の前などにお供え物を並べ、線香を上げたり、紙銭を焼いたりする光景がよく見られるようになる。無縁仏の霊をまつる“普渡”の儀式だ。そのお供え物からは、台湾人の慈悲深い心を感じ取ることができる。
▽台湾最大の年中行事
一年で最も大規模な民俗行事である中元節。民俗学者で台中教育大台湾文学科の林茂賢副教授によると、かつて漢民族が台湾にやって来た際、多くの人が台湾海峡で溺死し、無事たどり着いた後も異なる民族間による争いや疫病が発生し、先人たちはこの地を開発するために大きな犠牲を払ってきた。そのため、中元の普渡が盛大に営まれるようになったという。(以下略)
そして、近年、全聯というスーパーが、販促のためのCMをこの時期放送し、工夫が凝らされていると話題を集めているそうで、2013年版のCMでは貞子が無縁仏として使われたようです。
洗面器が出てくるのは、霊が汚れを洗い落とせるようにとのことで、中元には3本の線香とともに洗面器と洗面用具を供えるのも習慣だそうです。
今年も3種類のCMを用意したのですが、その一つが物議を醸して放送を中止するという騒ぎがあったそうです。
それがこちら。(3つ連続して流れますが、問題となったのは3つ目のCM)
1つ目は日本統治時代の日本語教育がなされていた母子という設定で、日本語で供養に対する感謝の言葉を述べています。死者という設定なので、机の上に姿が映っていません。
2つ目は外省人(第二次世界大戦後に大陸から渡ってきた)のおじいさんだそうで、途中、左側の壁に影が映りますが、それは椅子の影だけでおじいさんの影はありません。
そして問題のCMは、国民党による政治的弾圧が行われた戒厳令下の1981年に不審死をした陳文成という男性を彷彿させるとネットで話題になり、自粛することになったそうです。
このCMでは男性の背後に鏡がありますが、男性の姿は映っていません。そして、鏡には彼がが亡くなった「民国70年」の文字が入っているので、同社は否定したそうですが、実際にこの人物をイメージしているのでしょう。(髪型や顔など、雰囲気の似た俳優を起用しています。)
日本語をしゃべる母子、外省人、国民党による戒厳令下の白色テロと、台湾の近代の歴史を象徴しているのですね。
いずれにしても、幽霊話仕立てになっているCMで、かなり凝っています。
http://japan.cna.com.tw/news/afav/201808080006.aspx
戒厳令下で不審死の青年を連想?大手スーパー中元節CM打ち切りに/台湾
【社会】 2018/08/08 19:46(一部引用)
今年のCMでは、日本統治時代に教育を受けた母親や戦後、中国大陸から台湾に渡った高齢男性などが登場。これらの無縁仏が中元節に感謝する様子が描かれた。そのうちの1人として登場したワイシャツ姿の青年が、国民党による政治的弾圧が行われた戒厳令下の1981年に不審死した陳文成氏を連想させるとの声が上がった。外見の特徴が似ていることや、人物の背後に置かれた鏡に陳氏が亡くなった「民国70年」の文字が入っていることなどがインターネット上で相次いで指摘された。
陳文成氏は1950年、現在の新北市林口で生まれた。台湾大学で数学を専攻し、卒業後は米国で博士号を取得。渡米後、台湾の民主化運動に深い関心を示し、反体制派機関誌「美麗島」に寄付を寄せた。1981年、台湾に帰省した際、公安当局に呼び出され、翌日台湾大学で遺体で発見された。陳氏の死に関する真相は未だに明らかにされていない。
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