【ロヒンギャ問題】報道されないロヒンギャ問題の真実~ラカイン州で起こったこと
現在、ミャンマーにおけるロヒンギャ(Rohingya)問題、特に、ミャンマーを追われ、バングラデシュ側に避難したロヒンギャの苦しい生活は主に人道上の問題として報道されていますが、そもそもどういう背景があるのかは詳しく説明されません。また、ロヒンギャを「迫害」したとされているラカイン州(アラカン州)の先住民の立場からの報道は一切されていません。
ラカイン州の原住民であるアルケン(またはアラカン/Arkhine)人であるラ・エ・マウン(U Hla Aye Maung)にペマ・ギャルポ氏がインタビューしたチャンネル桜の番組が放送されたので、内容を覚え書きとして書き留めておきます。
【アジアから世界へ #16】証言-報道されないロヒンギャ問題の真実~ラカイン州で起こったこと / The true history of Rohingya refugees
- https://youtu.be/IP5i9WhZ10o (約34分)
2018/08/26 に公開
キャスター:ペマ・ギャルポ(拓殖大学国際日本文化研究所教授・チベット文化研究所名誉所長)
アシスタントキャスター:滝川奈緒(翻訳)
ゲスト:ラ・エ・マウン/U Hla Aye Maung
上の画像は、番組の終わり部分のキャプチャですが、「番組では何の判断も行わず、ここで語られたことに何も加えず、差し引きもせず、歪曲もしない」というスタンスです。
判断は視聴者に委ねられているわけですが、この番組のように少なくとも、ロヒンギャを迫害しているとされているミャンマー側の主張にも耳を傾けるべきでしょう。
ラ・エ・マウン氏は1995年より日本に住み、亡命者による日本の「Arkhinely for democratic League」(ここでは「アルケン民主同盟」 と訳しました)iの事務総長として活動していらっしゃいます。
マウンさんの日本語は少したどたどしいのですが、ペマさんが整理しつつインタビューをしてくれているので、理解できるかと思います。また、全編、英語の字幕があり、固有名詞や日付、数字等はこれを見れば分かります。
とは言え、その固有名詞等もブログ主には馴染みがないものもあり、辞書などで調べたことを少し補足して以下にまとめます。
ロヒンギャを理解するための基礎知識
最初に基本情報や用語の整理です。
上はロヒンギャ問題が報じられるときによく見る地図ですが、ロヒンギャやマウンさんが住んでいたラカイン州(Rakhine)に住む民族は英国統治時代にアルケン(Arkhine)と呼ばれたそうで、そのため、日本語の表記も、例えばWikipediaではラカイン州(アラカン州)となっています。
百科事典の見出し語では「アラカン」という表記になっているようですが、ここ(当記事)では基本的に州名は「ラカイン」、民族には「アルケン」を使います。
ミャンマーは多民族国家で、人口の56%(ブリタニカ国際百科事典より)を占めるビルマ人は主に平地に住み、その他の民族は主に山岳地に住んでいます。ラカイン州はアルケン山脈(事典では「アラカン山脈」)に隔てられているため、この地方の最大少数民族であるアルケン人特有の社会を形成しています。
ベンガルとは上の地図で言うと「バングラデシュ」と表記されている部分、ガンジス川の下流に広がる肥沃な地域で、現在は東部はバングラデシュ領、西部はインド領となっています。従って、ロヒンギャはベンガル人であり、歴史的にも「ロヒンギャ」という民族は存在せず、政治的な意味合いを持って新しく作られた言葉です。
念のため書いておくと、ミャンマーの旧名は竹山道雄の児童書『ビルマの竪琴』でも知られるように、旧名はビルマ連邦でした。89年現名に改称するのですが、当時、テレビ朝日系列の『ニュースステーション』で久米宏キャスターが、軍事政権を認めないと、ビルマと呼び続けていたのを覚えています。
ロヒンギャ(Rohingya)とはどういう人達か
ミャンマーでは大きく分けて8つの民族が存在し、Burmese(ビルマ人)、Kachin(カチン族)、Chin(チン族)、Karen(カレン族)、Mon(モン族)、Rakhine(ラケイン族=アルケン族)、Shan(シャン族)等で、更に細かく言えば135民族がいると動画では説明されています。
ロヒンギャはミャンマー国籍はないが市民権は与えられています。
そもそもロヒンギャと呼ばれる人達は、英国植民地時代に労働者として連れてこられた人達で、英国統治(1886年英国領インドに編入)~第二次世界大戦中の日本統治時代を経て1948年にビルマが独立すると、初代首相ウ・ヌー(U Nu)により、参政権(投票権)が与えられました。選挙に有利と見たからだそうです。
マウンさんによると、この頃から、NHKを含む海外のメディアがベンガル地方でラジオ放送を始め、そこからフェイクニュースを垂れ流し始めたとのことです。この辺りの事実関係は不明ですが、前述の久米弘氏のエピソードでも分かるように、ビルマ政府に対して、海外は批判的な立場を取ったので反ビルマの放送内容だったのかと想像できます。
ウ・ヌー(U Nu) 1907.5.25~1995.2.14
1929年、ビルマ独立の父、アウン・サンと共に反英独立運動に参加、40年に投獄され、日本軍により釈放されてバ・モー対日協力政権の外相、情報相となるが日本の政権に失望し、アウン・サンの反ファシスト組織に参加。48年、ビルマ独立と共に初代首相となる
ロヒンギャ(Rohingya)問題の原因・歴史的背景は?
ここからが核心ですが、そもそも、ロヒンギャと先住民との確執は第二次世界大戦中から始まったとマウンさんは言います。
英軍が日本軍と戦うためにロヒンギャに武器を与え、友軍として利用しようとしたところ、彼等は日本軍に武器を向けるのではなく、アルケン人を虐殺しました。その数は3万にに及んだそうです。
1945年に日本が撤退すると、彼等はMujahid(ムジャヒディ?/Mujahideen?=ムジャヒディン, イスラム原理主義派ゲリラ.)という組織を作り、ビルマ政府軍に反抗。その後、ARSA(Arkhine Rohingya Salvation Army/アラカン・ロヒンギャ救世軍)と名乗っていますが、アルケン人とは全く関係ありません。最初に書いたように、アルケンとはラカイン州に元々住むマウンさんのような民族を指す言葉です。
また、最近問題とされているロヒンギャに対する「迫害」も、マウンさんによると、きっかけは2016年10月9日~15日に起きたロヒンギャによる襲撃だと言います。
Mauderという国境の町で30箇所(30箇所の警察署?あるいは警察署などを含む30箇所?)を襲撃して警察官約9人と5人の兵士が殺されたそうです。
この時、40の武器が押収され、30人のロヒンギャが殺されたが、これはテロリストなのでしかたがないとマウンさんは言います。
その時、多くのアルケン族の人々が村から逃げざるを得なくなり、国内において難民となりました。
下はその時の様子だそうです。
なお、番組内ではロヒンギャに殺害された人達のむごたらしい画像も紹介されます。画像が出る前に断りが入りますが、ご注意下さい。
* * * *
「ロヒンギャ問題」と言っても、実際に目にするのは、バングラデシュに逃れる様子や避難先のキャンプでの劣悪な状況のみで、確かに、そこだけ見れば人道的見地から手をさしのべるべきだとは思います。
しかし、「マイノリティ=善・被害者、マジョリティ=悪・迫害者」なのでしょうか。
なぜこのような事態になったのかを説明するメディアは皆無ですが、さすがによほどのナイーヴな(無知な)人間でない限り、その歴史的背景など、何か原因があるはずと思うのは当然で、この番組はその一つの答えを教えてくれました。
本来は国連の人権委員会がきちんと検証してくれればいいのですが、国連がそのようなフェアな機関でないことは日本人なら誰でも知っています。
そこは、「人権ゴロ」とでも呼ぶべきNGOが跋扈し、そのネットワークを利用した世論形成の場となっているからです。
単純に考えても、ミャンマーと(この問題のそもそもの原因を作った)イギリスとでは国連における発言力は比べようもないはずです。
下は番組の終わり頃のキャプチャですが、ネットを利用している人にはお馴染みの「ヒューマンライツナウ」とか「ヒューマンライツウォッチ」、「アムネスティ」といった団体名がマウンさんの口から出てきます。またぞろ、これら、怪しげな団体が絡んでいるようです。
They have destroyed villages and killed all villagers. The United Nations, the international society, NGOs, and organizations such as Human Rights Now, Human Rights Watch and Amnesty International are only saying that the Myanmar government carrying out genocide and ethnic cleansing only to make a bad image of Aung San Suu Kyi and the government.
彼等(ロヒンギャ)は村を破壊し村人を殺した。国連や国際組織、NGOやヒューマンライツナウ、ヒューマンライツウォッチ、アムネスティといった団体は、ミャンマー政府とアウン・サン・スー・チーの悪いイメージを形成するために、ミャンマー政府がジェノサイド(集団殺戮)や民族浄化を行っているとのみ言っている。
【参考】『第2次世界大戦(1941年)前のアジア』地図 (高校生用地図帳より)
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