【自衛隊】違憲?合憲?憲法学者に対する調査で世代格差【読売アンケート】
5月2日(水)の読売朝刊に、憲法学者に対して「自衛隊は合憲か違憲か?」という調査の結果が掲載されていたのでご紹介します。
憲法学者(※)203人に書面を郵送し、その内回答を得られた59人というやや少ない母数ではありますが、半数以上の31人(約52.5%)が「違憲」、4割弱の21人(約35.6%)が「合憲」という解答でした。
これを年代別に見ると下のようなグラフになります。
この調査は3月26日に郵送して4月24日までに返送されたものをまとめたそうで、更に詳しい分析は5月10日発売の『中央公論』6月号に掲載されるそうです。
ご参考までに、しばしば引用される2017年に朝日が採ったアンケート結果も前回エントリーから再度掲載します。国会答弁などで「憲法学者の約8割が自衛隊を違憲と~」と言うのはこの結果が根拠です。
読売のグラフは年代による差違に目が行きますが、そこは後回しにして、順番に記事を読んできます。
9条2項の政府解釈と憲法学者の解釈の齟齬
記事に書かれた政府解釈をそのまま引用します。
“(9条2項は)自衛のための必要最小限度の実力を保持することまでも禁止する趣旨ではない”
とした上で、
“我が国を防衛するための必要最小限度の実力組織としての自衛隊を、憲法に違反しない”
しかし、憲法学者の間で違憲と合憲を分けるのはこの解釈の違いによる、と記事は分析します。
- 装備実態から… 編成や装備などの実態から見ると、災害派遣以外の活動を行う自衛隊は、2項の『陸海空軍その他の戦力』に該当する可能性が高く、違憲の疑いが強い。(右崎正博・獨協大学名誉教授)
- 安倍内閣が限定的な集団的自衛権の行使を可能にしたことから… 現在の自衛隊は、少なくとも集団的自衛権行使としての防衛出動が定められている点で、『必要最小限度自衛力』の行使を逸脱しているので、違憲である。(塚本俊之・香川大教授)
個人的には上記意見に異論はありません。“戦力ではない(=戦力に満たない)自衛力”などという解釈は詭弁だと思うからです。
記事は、上記のような個別の意見を挙げるだけで、他にどのような質問をしてどのような回答があったのかが明らかになっておらず、より深い分析を提示していませんが、疑問に思うのは、「違憲」だと考える憲法学者はどうしたらいいと思っているのでしょうか?
そもそも、“必要最小限度自衛力”というのが曖昧なのですが、過剰な装備をしていると言う学者は装備を解いて、実力を削ぐべきと考えているのでしょうか?
もしそうなら、戦後間もなくの状態(GHQの、“日本だけが悪く”て、“日本人は軍備を持たせると暴走する民族”で、“周囲は善意の国”という考え)から頭の中は時が止まっているのでしょうか。
これ以上は個人の意見は控えますが、一つ言えるのは、政府解釈など“砂上の楼閣”のようなものです。これを判断できるのは最高裁だけなので、有事の際に身をもって国民を守ってくれる自衛隊はそんな脆い足場の上に存在しているのです。
30代、40代の憲法学者に「合憲」論が多い理由も、記事では個々の意見を掲載するだけで分析はありません。
リアリストが多いからでしょうか。
紹介されていた意見をご紹介すると、「基本的には、独立国固有のものとして自衛権の保持が認められる以上、自衛のための必要最小限度の『自衛力』は9条2項が禁止する『戦力』には当たらず保持することが許されるとする、長年通用してきている政府解釈を尊重したい」(上田健介・近畿大教授〔40歳代〕)というものでした。
「自衛隊の存在は合憲だと思う国民が多い」ことに対する憲法学者の見解は?
前回のエントリーに書いたように、直近の読売の世論調査では76%が「合憲」と答えました。
これに対して、多い指摘は、「災害救助等の活動に対する支持が背景にある」というもので、例えば、「国民は必ずしも憲法9条等の法解釈に基づいて合憲だと思っているわけではないと思われるが、自衛隊の諸活動、特に災害派遣活動に対する高い評価が自衛隊の肯定的評価に繋がっているのではないか。」(小針司・岩手県立大名誉教授)という意見が掲載されていました。
この意見で心に留めておくべきことは、自民党案では(1項2項はそのままで)「自衛隊の明記」を追加するというものですが、このまま国民投票にかけられるとして、仮にこれが否決されても、対象は「自衛隊の明記」の是非であり、「自衛隊の合憲性」が否定されるわけではありません。
改憲阻止派は否決されたら「『自衛隊の合憲性』が否定される」と不安を煽って発議や国民投票の実施を阻止しようとしていると、百地章・国士舘大学特任教授などは注意喚起をしています。
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