【自衛隊】自衛隊は合憲76%、一方で憲法改正に賛成51%/9条2項の「交戦権」とは?【読売世論調査】
4月30日(月)付読売新聞朝刊に憲法改正に関する世論調査(期間:郵送方式/3,000人、内、有効回答数1,936)の結果が掲載されていました。
憲法改正についての賛否
憲法改正については、
問い:「今の憲法改正する方がよいと思いますか、改正しない方がよいと思いますか」
改正する方がよい…51%、しない方がよい…46%、答えない…3%
前回は2017年3・4月調査で、賛成、反対ともに49%。
今回は、マスコミや一部野党が“モリカケ”、“日報”、“セクハラ”などで内閣のネガティブキャンペーンを行い、内閣支持率は下落していますが、その影響は見られないという結果になります。(17年3月末頃はまだ“カケ”はそれほど大騒ぎにはなっていなかったと思います。)
ちなみに、同時に「自民党の政治家に対するあなたの気持ちを温度にたとえて答えて下さい」というアンケートも採っているのですが、温度の平均値は、安倍晋三(39.7度)、石破茂(47.8度)、岸田文雄(42.3度)、小泉進次郎(60.4度)、河野太郎(44.1度)、野田聖子(38.8度)と、安倍総理に対する好感度は決して高くありません。
自衛隊を合憲と考える人:76%
次に、「自衛隊が合憲か違憲か?」という問いには以下のような結果です。
問い:「今の憲法の下で、自衛隊の存在は合憲だと思いますか、違憲だと思いますか。」
合憲…76%、違憲…19%、答えない…5%
憲法への自衛隊の明記と自衛隊に対する感情
面白いのは、下のアンケート結果です。
問い:「憲法への自衛隊明記に賛成か、反対か。」
合憲派で「賛成」…57%、違憲派で「賛成」…52%
つまり、自衛隊を合憲と考える人でも違憲と考える人でも自衛隊明記に賛成が多い訳ですが、当然、これは9条第2項の「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」という部分の解釈に“揺れ”があるからだと思います。
ブログ主個人は自衛隊は“陸海空軍その他の戦力”だと考え、2項を虚心坦懐に読めば、「(これを)保持しない」に反すると思う一方、自衛隊の存在や自衛官の身分を明らかにすべきと考えるので、『違憲派で「賛成」』に属することになりますが、同様に考える人が少なくないのだと思います。(政府の解釈は「自衛隊は“戦力”未満の“自衛力”というものです。)
なお、「自衛隊に対する温度」のアンケートでは、「合憲」派で66.1度、「違憲」派では61.0度。(平均:65.0度)と、上の説を裏付けそうですが、憲法に自衛隊の明記を「賛成」派では67.6度、「反対」派でも61.4度と、「自衛隊に“暖かい”人でも憲法明記の必要なしと考える人が多い」と見るのか、「明記の必要なしだが、自衛隊には“暖かい”」と見るべきか悩みますが、いずれにしても多くの国民は自衛隊を高く評価しています。災害時における自衛官の皆さんの活動を見れば当然のことでしょう。
年代別、憲法改正の賛否
気になるのは、やはり「憲法改正への賛否」に関する年代別の調査かと思いますが、以下のようになっています。
個人的には18~29歳代では意外と低いという印象です。
しかし、それもそのはず、というのが下の「憲法改正論議への関心度」の結果です。
18~29歳代ではあまり関心が高くないのですね。一方、60~、70~代の関心の高さ。
下は、今回のアンケートとは関係がないのですが、2月2日に日経に掲載されていた選挙の有権者数と投票者数の統計グラフです。
有権者数や投票者数のピークは常に“団塊の世代”なのは当然なのですが、注目すべきは、40代以下の投票率の低さです。選挙の投票率と国民投票の投票率とはやはりリンクすると思うので、「自衛隊の憲法明記は賛成」だけど「投票に参加」する絶対数が少ないという可能性もあります。(ちなみに、この記事は『進む、シルバー民主主義』というタイトルで、選挙には老人の意見が多く反映していて、若い人は損をしているかもしれないよ?という内容の記事です。)
これで思い出すのが大阪の都構想における住民投票の結果です。
ブログ主の周囲の非常に狭い範囲ですが、あの時ですら、当時の橋下市長のカリスマ性に負っていた感があります。
国民は憲法第9条を正しく理解しているのだろうか?
今回の読売新聞の記事にあった国際政治学の篠田英朗(しのだひであき)教授のアンケート結果の分析を一部ご紹介します。
9条2項改正の必要性で意見が二分されたのは「戦力」や「交戦権」の解釈が曖昧だからだ。9条が象徴する「平和主義」については、広範な合意があるが、自衛隊の関係で具体論に踏み込むと迷いが生じている。(…)
国連平和維持活動(PKO)などの国際貢献を十分にできるようにするためにも、曖昧な憲法解釈は放置すべきでない。9条改正の実現が求められる。
今回、自民党が提示した条文案はいわゆる“加憲”案です。1項はまだ良いとして、2項の解釈が個人間で“揺れ”があるということは、「9条の2」の前提となる条文の意味について、国民が共通して抱ける認識がないと言えます。
実際、政府の説明(解釈)もかなり無理があり、そのため、多くの憲法学者が政府の説明など無視して、違憲だ合憲だと言っているわけです。(しかも、8割近くが自衛隊は違憲またはその可能性があると答えている状態)
憲法第9条の「交戦権」とは?
「交戦権」は2項の最後に「国の交戦権は、これを認めない。」という一文で出てきます。(そもそも、日本語としておかしいのも問題で、それ故、個人的には2項そのものを削除(書き換え)すべきだと思っていますが...)
以前のエントリーでご紹介した冊子『「憲法9条と自衛隊明記」Q&A』(百地章著)で「交戦権」に関する解説を一部ご紹介します。
「交戦権」イコール「戦う権利」と解し、交戦権が認められなければ、わが国は攻撃を受けても戦うことができないと考える人がいます。確かに「交戦権」を文字通り「戦いを交える権利」と解する憲法学者もいます。しかし、国際法上は「交戦当事国が持つ権利」(例えば相手国兵力を殺傷する権利や中立国船舶の臨検拿捕権など)と理解されており、わが国政府も同様に解釈してきました。
しかも、政府見解によれば、「相手国兵力の殺傷及び破壊等を行うこと」などは「自衛権の行使」としてであれば可能であり、ジュネーブ条約ジュネーブ(※ブログ主註)に従って、「捕虜の人道的待遇」などを要求することもできます。
それ故、「交戦権」が否認されたからといって、侵略国と戦えなくなったわけではありません。
前提として、外国から武力攻撃を受けた場合、自衛隊は「防衛出動命令」が下されることによって「国際の法規および慣例」に従って行動(自衛隊法88条2項)し、「わが国を防衛するため、必要な武力を行使することができる」(同1項)と定められている、ということがあります。(『「憲法9条と自衛隊明記」Q&A』より。いざとなったら、軍隊として活動ができる、ということです。)
しかし、上の説明なら説明で、これを認識している国民がどれほどいるでしょうか?
しかも、憲法学者の中には違う見解をしており、最終的に判断するのは最高裁です。
だから、ブログ主は「まずは政府の解釈を国民に周知徹底させるべき」という意見を自民党のある議員に送ったことがあるのですが、官邸にも送るべきですね。
※ジュネーヴ‐じょうやく【ジュネーヴ条約】 ‥デウ‥
1949年にジュネーヴで調印された戦争犠牲者の保護に関する四つの条約の総称。国際人道法の根幹をなす。保護の対象は、条約ごとに、戦地の傷病兵、海上の傷病者、捕虜、文民。77年には文民保護のために二つの追加議定書が作成された。
広辞苑 第六版 (C)2008 株式会社岩波書店
憲法に対するイメージは?
最後に、国民が「憲法に対するイメージ」をご紹介します。
、
例えば、ブログ主が使用している日本語変換ソフト(ATOK)に付属している『広辞苑』や手元にある電子辞書の『ブリタニカ国際大百科事典』で「憲法」を引いてみると、
けん‐ぽう【憲法】 ‥パフ
(1)(古くはケンボウ)おきて。基本となるきまり。国法。
(2)(constitution)国家存立の基本的条件を定めた根本法。国の統治権、根本的な機関、作用の大原則を定めた基礎法で、通常他の法律・命令を以て変更することを許さない国の最高法規とされる。広辞苑 第六版 (C)2008 株式会社岩波書店
憲法(constitution)
憲法の語には、およそ法ないし、掟の意味と国の根本秩序に関する法規範の2義があり、聖徳太子の「十七条憲法」は前者の例であるが、今日一般には後者の意味で用いられる。(後略)
ブリタニカ国際大百科事典 @2007年4月
とあります。
「国家権力を制限するルール」と左翼政党はよく言い、実際、立憲民主党支持者は憲法を相捉えているのですが、国民の60%は「国のかたち、理想の姿を語るもの」と答えているのが面白いと思います。
日本人にとってはやはり「十七条憲法」(※)のイメージが強いのでしょうか?
※ けんぽう‐じゅうしちじょう【憲法十七条】 ‥パフジフ‥デウ
604年、聖徳太子制定とされる17カ条の道徳的規範。官人への訓戒で、和の精神を基とし、儒・仏の思想を調和し、君臣の道および諸人の則るべき道徳を示したもの。十七条憲法。広辞苑 第六版 (C)2008 株式会社岩波書店
皆さんは、憲法に対してどういうイメージをお持ちでしょうか?
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