【国会・加計学園問題】柳瀬元総理秘書官らの参考人招致質疑を視聴して
本日(2018/05/10)、午前中に衆議院予算委員会、午後に参議院予算委員会が開催され、加計学園獣医学部の件に関しての参考人質疑が行われました。
午前中の参考人は国家戦略特区諮問会議有識者議員でワーキンググループ座長の八田達夫氏と柳瀬唯夫・元内閣総理大臣秘書官、午後は加戸守行・前愛媛県知事と柳瀬氏でした。
午後の審議が終了後、引き続いて放送されたNHKの解説(政治部の中田晋也デスク、社会部の大河内直人デスク)では、以下のようにまとめていたので、まずそれを書き留めておきます。
午後の質疑の印象について、中田晋也・政治部デスクに問うと、
- 与党側は加戸前愛媛県知事に質問し、加戸氏は「国家戦略特区制度が素晴らしく有効な制度なのでもっと広めて貰いたい」という趣旨の発言をした。このような答弁を通じて、手続きが適正だったということを印象づけたい、一方で野党側は、なぜ柳瀬秘書官が総理に加計学園との一連の面会を報告しなかったのかというところに疑問が残るとしていた。
- また、なぜ、柳瀬秘書官が、加計学園関係者と会ったことをここまで言わなかったのかという点を指摘していたのが印象的。
続いて、参考人招致の焦点を大河内・社会部デスクに。
- 学園関係者等と面会したか…2015年の2月~3月の間、4月2日(愛媛県職員の備忘録のの日付)、6月の今治市が国家戦略特区の提案するタイミング、この計3回、加計学園関係者と面会したことを認めた。
4月2日に学園側の同席した人間について、午前中は柳瀬氏は元東大教授と会ったことは答えていたが、午後、蓮舫議員が文科省のOBと会ったのではないかと指摘したところ、やや答弁が曖昧になったという印象。(ブログ主註:後に獣医学部長となる吉川泰弘氏。柳瀬氏の当時の記憶では東大教授と千葉のどこかの大学の教授という程度で、面会したのもこの日か、その前の2~3月頃か記憶が定かでないと答えていた。加計学園関係者はもう一人いた記憶。)
- 「首相案件」と発言したかどうか…一貫して、個別の案件(今治市の獣医学部新設)の意味ではなく、安倍総理が前年の成長戦略の看板政策として獣医学部新設を含んだ(数多の)案件を早急に検討するという総理の発言をもってそういう風に答えたと発言。(ブログ主註:柳瀬氏は「首相案件」という言葉を使ったか否かは一貫して否定。そのような言い方はしないと明言。)
- 「安倍首相の関与の有無」…安倍総理は長年の加計理事長との友人であり、昨年1月20日まで知らなかったとこれまで述べてきた。これについては安倍総理による指示や総理に対する報告はなかったと一貫して発言。
今後の政府や国会の対応について中田晋也・政治部デスクに。
- 与党側はこれによって事態を収束させたい、野党側は引き続き追求したいということだが、今国会、会期は来月の下旬までなので野党のせめぎ合いになると思う。
依然として残った疑問や課題について、大河内・社会部デスクに。
- 総理に本当に報告がなかったのかどうか、自治体関係者ではなく、加計学園関係者と会ったことを繰り返し言ってたがこれが何を意味するのか? 腑に落ちない。「来るもの拒まず会った」と発言していたが、その後事業者になるわけなので、説明が足りなかった。
これを聴いて、野党の質問の矛盾点や疑問点は無視しているというのがブログ主の感想であり、印象操作の意図さえ感じます。
まず、与党が加戸氏の発言により手続きが適正だったと印象づけたいと言うのなら、野党は愛媛県職員の備忘録を引いて、アドバイスが親切すぎると何度も言い、福島瑞穂議員などは「裏口入学」のような表現を用いてまで特別の配慮があったかのように印象づけようとしていましたが、そもそも、柳瀬氏は備忘録の通りに発言したかどうかは記憶にないと言っており、あの備忘録のような趣旨の発言があったとしても、成長戦略の目玉案件の一つとして「実現させたい」と考えればあの程度の助言をしても何ら不思議ではないと思います。
「入試」に喩えるならせいぜい「傾向と対策」程度ですが、始めから「不合格にさせたい」野党の目を通すと、「特別サービス」に見えるのでしょう。
ここで今回の質疑より、問題となる2015年4月2日前後の流れを以下に確認します。
国家戦略特別区域法が成立したのは2013年(平成25年)12月13日で、獣医学部新設に関しては2014年(平成26年)7月18日に新潟市が提案したのが最初。
この時にヒアリングを行った民間議員より、2014年(平成26年)9月の国家戦略特区諮問会議で獣医学部新設の解禁の提案があり、それに対して総理が早急に検討していきたい旨の発言があった。
当時は制度設計の段階であり、柳瀬氏自身は個別の提案には関心がなく、柳瀬氏は2015年8月に異動したが、実際に制度設計が終わったのは2016年(平成28年)11月。
このような流れの中で、
- 2015年の2月~3月(柳瀬氏の記憶は4月2日の1ヵ月ほど前程度)、
- 4月2日(愛媛県職員や今治市職員が同席した面会)、
- その後の6月頃(6月4日に愛媛県と今治市が国家戦略特区での獣医学部新設を提案したタイミング)
の3回、柳瀬氏は加計学園関係者と面会しましたが、面会自体はアポイントがあったからで、柳瀬氏の表現では「来るものは拒まず」、積極的に外部の人とは面会しようとしていただけとのことでした。
このように説明しても、蓮舫議員は(愛媛県や今治市が)国家戦略特区で行こうとしたからには、事業者となる可能性がある加計学園ではなく、今治市と会うべきだと主張していましたが、どれほどの違いがあるのでしょうか。柳瀬氏は何度も繰り返していましたが、この当時はまだ「制度論の入り口」であり、個別の提案には関心がないと述べています。
それ以前に首相の別荘でのBBQで面識があったことを持ち出して、加計学園との親密さを強調し、特別な便宜を図ったのだろうと印象づけようとしていましたが、実際に国家戦略特区でのプロセスにおいて、柳瀬氏が介入したという根拠も示せていません。
長妻昭議員などは、BBQやゴルフの費用を誰が持ったのか(加計氏が奢ったと邪推しているらしい)を追求していましたが、招待(あるいは業務?)で出席してた柳瀬氏に分かる由もなく愚問。
総理に加計学園関係者と会ったことを報告しなかったことについて、野党だけでなくNHK記者も疑問を呈していましたが、柳瀬氏の、多忙な総理に、判断を仰ぐこと以外はいちいち報告をしていないという解答では不満なのでしょうか。単に「疑惑が残った」と言いたいだけではないでしょうか。
むしろ、柳瀬氏のような姿勢の方が優秀な秘書官であり、午前中に質疑に立った江田氏(かつて橋本総理の時に秘書官の経験があり)が執拗に、ランチの時など雑談でも言わないのは不自然と主張していましたが、むしろ、江田氏の口が軽すぎるのではないでしょうか。(大阪地検のリークのツィートを見てもさもありなん。)
入れ替わり立ち替わり質疑に立った野党の追求はこの程度で、柳瀬氏が加計学園に“特別な便宜を図った”ことすら立証できずに、“本丸”の安倍総理の関与など、到底追求できないでしょう。
また、柳瀬氏がやや語気を荒げたところがあったのですが、愛媛県職員が作成した備忘録と称するメモを「正」として質疑が行われましたが、このメモは明らかに議事録に近い内容であり、内容を同席者の同意や承認も得ずにあちこちに配ったり漏洩するのはいかがなものかということでした。
これは完全に同意で、中村時広愛媛県知事は会見で職員が作成した備忘録だと認めていましたが、まず、メモをこのような扱いをしたことを謝罪すべきでした。愛媛県のガバナンスが全く機能していないことは大きな問題でしょう。
なお、午後の質疑で参考人として答弁した加戸前愛媛県知事は相変わらずユーモアたっぷり、皮肉たっぷりで痛快でしたが、まあ、メディアはスルーするんでしょうね。
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奥穂3190様
コメントに気づく前に新たな記事を追加しましたが、仰るとおりです。
>おやおや、「説明用メモ」は事後作成ですか。それなら、「説明内容覚書」でしょうが。といっても、これから戦略特区の話が始まる段階のこと、「あ、そうですか」位が聞く者の感覚の相場でしょう。
先に弁明すべきことがあるでしょ?(4月13日付の朝日がスクープした備忘録)というのが、最新の記事です。
この県知事は信用できないですね。
投稿: 大師小ブログ主 | 2018/05/11 19:40
毎日記事:
『知事が会見
学校法人「加計学園」の獣医学部新設を巡り、柳瀬唯夫元首相秘書官(現経済産業審議官)が国会の参考人招致で、2015年4月2日の愛媛県職員や学園関係者らとの首相官邸での面会について曖昧な発言を繰り返したことに対し、同県の中村時広知事は11日の定例記者会見で「終止符を打ちたい」として、名刺交換で職員が受け取った柳瀬氏の名刺のコピー、県側が説明した内容を改めてまとめた文書を公開した。面会時は「職員がメインテーブルについて県の立場をはっきり説明した」と強調した。』
おやおや、「説明用メモ」は事後作成ですか。それなら、「説明内容覚書」でしょうが。といっても、これから戦略特区の話が始まる段階のこと、「あ、そうですか」位が聞く者の感覚の相場でしょう。
知事が重大事扱いするくせに、出てくるものが備忘か覚書。愛媛県の公文書管理はかなり問題がありますね。
投稿: 奥穂3190 | 2018/05/11 18:20
ブログ主様
柳瀬氏に関する質疑応答は、馬鹿々々しいので殆どスルーしていますので、以下のコメントには不正確な点があるかもしれませんが、news.yahoo.co.jp/pickup/6282131 で公開された、名刺と愛知県が準備したという「柳瀬首相秘書官説明用」メモについて以下。
名刺:
首相秘書官であれば、(政治家が良く多数と会う時にやるように)自分から配るだけで、相手から貰わないケースは十分あり得る。柳瀬氏は嘗ての答弁時、当然自分の持っている名刺をチェックしただろうから、愛媛県職員は名刺を渡していないのではないか。
説明用メモ:
主様記事から、当日午後の会見は急遽セットされたと記憶するが?この記憶が正しければこのメモは何時作成されたのか?このメモが実際に面談に先立って(急遽?或いは念の為)準備されたものだとしても、このメモに基づいて説明は実際行われたのか?(もし行われたのなら、例の備忘に柳瀬氏の発言だけでなく説明の事実を私なら書き添えたくて堪らない。)
つまり、中村知事は以下をチェックしたのか?
① 説明用メモ作成のタイミング
② 実際に説明が行われたかどうか
③ 県職員は名刺を渡したのか、自分で名乗ったのか
そして何より、
④ 正式の復命書
どうも彼の遣り口には疑問が多い。
投稿: 奥穂3190 | 2018/05/11 15:51