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2018/04/19

政府の検討する放送事業見直し (4) 規制改革推進会議で実際に議論されていること(第20回)

公開: 2018/04/19 10:10  最終更新: 2018/04/19 13:26

前回のエントリーに引き続き放送事業の見直しについて。

内閣府 規制改革推進会議 会議情報のサイトに20回の議事録(PDF)が掲載されているので読んでみました。(「○ 投資等ワーキング・グループ」の項)

 

最終的にどのような答申がなされるのかは分かりませんが、18回と19回、そして最新の議事録を読むと、委員会がどんなことにポイントを置いているかが見えてきます。

 

 

 

 

18回と19回では「放送倫理」(放送法と監視組織)、「ハードとソフトの分離」(放送局とコンテンツ=番組=製作の分離-関係の適正化)、「ネットを含めた視聴環境の多様性への対応」といったテーマに関して議論しており、識者から海外の例としてイギリスの放送事情をヒアリングしていました。

この中で、地上波への新規参入は本格的に実現方法を考えているらしいことも分かりました。

以下に、20回の議事録を読んでいきます。

 

20回(開催日:4月4日)に何が議論されたのか

今回の議事録の出席は下記の通り。

 

淑徳大学人文学部 田中則広准教授
全日本テレビ番組製作社連盟メディアセンター 下温湯健執行理事
全日本テレビ番組製作社連盟メディアセンター 松村俊二執行理事
総務省 奈良俊哉大臣官房審議官
総務省情報流通行政局 湯本博信放送政策課長

 

田中則広准教授は韓国の放送事情をレクチャーしています。

「全日本テレビ番組製作社連盟メディアセンター」というのは、いわゆる“下請け”であるコンテンツ制作会社の連盟。いかにテレビ局に虐げられているか、生々しい話が出てきて面白かったです。

ここから読み取れるのは、委員会はコンテンツ制作会社の地位向上とともに、ソフトとハードの分離をやる気、ということです。

今後、インターネット>テレビの世の中になっていくのに、“作品はテレビ局の物”という現在の形では、コンテンツの二次使用もできないし、視聴者の利益を妨げるからです。

ソフトの自主自立を進めて、政府がクールジャパンなどの枠で補助もし、国際的な競争力もつけて行こうという考えも見えます。

 

なお、過去の議事録から、「放送法」は残りそうですが、俎上に上ったからには、何らかの提言はありそうです。

ネットでの二次使用に関してはNHK(NHKオンデマンド)と民放(TVer)のプラットフォームの統一も提案がありそうです。(ブログ主の考えた例ですが、入り口は一緒で、NHKは契約者番号の入力で番組の選択ができる、とか。無料化にも是非踏み込んで戴きたい。視聴料との二重取りなので。)

前回書きましたが、一部報道で「外資の参入」を検討しているとされたのはフェイクニュース。

外資の話が出たのは識者がイギリスの例をレクチャーしたとき、イギリスではソフトとハードの分離が進んだ結果、コンテンツ制作側のトップ3がアメリカ資本の企業になったという話が出ただけです。

 

以下、議事録から興味深いことをピックアップして覚え書き。

 

■韓国の放送事情

今回の議事録は全24頁で専門用語も少なく、読みやすいので、これを読めば韓国の放送事情がだいたい分かります。

いくつかメモをしておくと、

  • 韓国の公営放送はKBS1とKBS2。受信料は250円程度で電気代とともに徴収(障害者や貧困家庭などの免除制度もあるが、国民の90数%は支払っている。)
  • KBS2はCMあり。広告はメディアレップ(メディアと広告主を繋ぐもの。日本では電通、博報堂などの広告代理店がその役割で、韓国はKOBACO(コバコ))を通じて広告主を得る。(韓国の公営放送は元々民放だった名残)
  • MBC(株式の70%を政府が全額出資)も公営放送の位置づけ。
  • EBS(教育放送公社)は教育番組に特化した公営放送。(NHKからEテレが独立したようなもの)
  • 韓国では、かなり昔の番組でも著作権をクリアした番組やスポーツなどをインターネットで見ることができる。

 

以上が公営放送で、

  • 日本の民放のキー局に相当するのが、韓国ではSBSの1社のみ。全国の主要都市ごとに民放があり、系列局のネットワークを持つ。
  • ケーブルテレビ始まり新設されたのは4局。韓国はケーブルテレビなどの有料放送に加入している国民が多く、ほぼ全国民が見られる環境なので、地上波との区別はない。特に、人気があるのは中央日報社系列のJTBC(昔、傘下の東洋放送という放送局が日本と一緒にアニメの『妖怪人間ベム』や『黄金バット』を作っていた。)朴槿恵のスキャンダルを暴いたのがこの局で、韓国人はKBSよりJTBCの報道を信頼。

 

■日本の下請け(コンテンツ制作会社)の実態

  • 一般社団法人全日本テレビ番組製作社連盟(ATP)は、1982年に21社という少ない数の製作会社の集まりからスタート。現在は約120社の会社で構成。
     
  • 2016年に『ATPの主張』という簡単な冊子を作成。要するに、弱い立場のコンテンツ制作会社が協力して待遇改善に取り組むための組織。番組製作会社に発意と責任があって提案した企画なのに、著作権が全くない、制作協力、クレジットがないというところから、ATPはそもそも始まった。
     
  • テレビ局の経営状態悪化から制作費を減らされ、しかし、クオリティの高い作品を要求されるという立場。クリエイターとして良いものを作りたいということとのジレンマ。
     
  • 制作会社が企画から取材、撮影、編集し納品した作品、即ち『完パケ』(完全制作委託型番組)は著作権を持てるが、放送局側が「制作の一部の責任、リスクを負担している」のだから完パケではないなどと主張して、著作権が放送局の帰属になってしまうケースも多い。つまり、制作者側が作品の二次使用をすることは難しい。(公正取引委員会も問題を指摘)
     
  • テレビ局との契約書には著作権譲渡価格の明記がない
     
  • 製作会社が著作権を持っていても、放送局側が窓口になっているので結局二次使用されていない、“塩漬け”の作品も多い。
     
  • ドキュメンタリーにおいては、Tokyo Docsという、国際企画提案会議のようなことで、世界に出ていくようなこともやり始めている。
    Tokyo Docsというのは、2011年からATPが主催で、独立系の番組製作会社が世界の放送事業者やプロデューサー等、ドキュメンタリーの予算と枠を持っている人を集めて公開のプレゼンを行うもの。
 

■コンテンツの海外展開

  • 韓国では国が小さい=国内マーケットが小さい=ために、早くから政府が海外展開に目を向けていた。韓国ドラマが海外展開することで、副次的にK-POPの拡大や韓国製品のPRというメリットがあった。この点、日本は遅れていたが、5~6年前、再び自民党政権になってから相当規模の予算も付き放送コンテンツの海外展開を進めている。(クールジャパン)
  • (委員より総務省に:)日本の良いところを紹介のような発想は古い。放送事業にこだわっているから、そういう発想になる。純粋に良い作品を作って海外展開するという発想にならないと。(それに対して総務省:)国際共同制作的なものに支援するという形で、必ずしも放送事業者だけではなくて、いろんな人がコラボレーションして取り組んでいくものに、さらに重点的に支援していくという流れになっている。(委員:)それはよい発想。

 

■Netflix

コンテンツ制作会社の自立に関し、Netfllixについて言及していました。

既に日本でもサービスを提供しており、これについて少し調べたので追記しておきます。

Netfllixとは元々レンタルビデオの会社だそうで、ネットを利用して、レンタルしたDVDを観られる、というだけでなく、独占配信やオリジナル作品も扱っているそうで、(アメリカでは)このオリジナル作品がコンテンツ制作会社にとって作品を売る、あるいは世に出す“出口”になっています。

 

Netflix Panasonic remote controller 01

 

既に、上のように「Netflix」ボタンがあるリモコンもあるそうです。

Amazonプライム・ビデオというものがありますが、これをテレビで観るならFire TV Stickという外付けのモデム(+専用リモコン)を付けたり、ネット接続のためのアプリが組み込まれたスマートテレビを買えば、テレビで観られるそうで、Fire TV Stickを買えば、プライムビデオだけでなくHuluやYoutubeの動画配信サービスも観られるとのことです。

実際に使っていないので分かりませんが、現状では、以前からレンタルビデオ(DVD)をよく利用するユーザなら、それにかかっていた費用や受け渡しの手間との比較で導入を検討する、というようなものかと思います。

 

 

 

 

 


 

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コメント

【ブログ主】
とくめい様

こんにちは。コメント、ありがとうございました。

>「放送法改革すると現政党に有利な放送を強要されるようになる」
→放送法自体は悪くないんですよね。問題は守っていないことであって。
「現政党に有利な放送を強要」なんて妄想ですね。

>「ソフトとハードの分離を行うと持ち込み番組が出てくる。持ち込み番組を許可すると、ニュース女子で沖縄の人への不当な表現があったような問題が再発する」
→買うか買わないかは放送局側の自由です。買って貰うためには、制作側はニーズのある番組を作るだろうし。ネット上にプラットフォームがあれば、放送局に売れなくても、そこで発表してもいいわけですし。

ニュース女子の例の番組は「沖縄の人への不当な表現」じゃなくて(BPOによると)在日韓国人へのヘイトが問題でしたよね。

DHCテレビは気骨もあり、親会社というスポンサーと一体なので、公開の場がネットでも構わないので、妥協しなかったのでしょう。

本文にNetflixのことを書くのを忘れました。追って追記しますが、視聴者がテレビ放送(地上波、衛星放送、ケーブルテレビ)と区別せずにリモコン一つでテレビ受像機で観られる放送形態も今後でてくるでしょうね。それなら、BPOなんかに口出しされずに済みます。

前回の議事録ではBPOの偏向についても言及されていました。

記事ありがとうございます、勉強になります!

毎日新聞系の地方紙が
「放送法改革すると現政党に有利な放送を強要されるようになる」
「ソフトとハードの分離を行うと持ち込み番組が出てくる。持ち込み番組を許可すると、ニュース女子で沖縄の人への不当な表現があったような問題が再発する」
等の妙な理屈で放送法改革に文句をつけていました。
放送法改革により視聴者にメリットがあること等には一切触れずにです。

インターネットで調べる世代は、こちらのブログのようなネット情報で勉強ができますが、新聞とテレビしか情報源が無い高齢の方が心配です。。

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