【2018/02/08 虎ノ門ニュース】自民党改憲本部で条文案を募集/憲法9条の解釈のしかた
今朝(2月8日)の読売新聞朝刊1面に『9条2項維持 支持多数-自民改憲本部 条文案募り検討』という記事がありました。
まずは、そのことをブログ主の覚え書きとしてメモしておきます。
このことは和田政宗参議院議員も読売の記事(※後述)へのリンクつきでTwitterで報告しています。
和田 政宗認証済みアカウント@wadamasamune
今日の自民党憲法改正推進本部会議。9条への自衛隊明記もしくは自衛権を妨げない旨を明記する案が大勢を占めた。細田会長より各議員に対し、具体的条文の提案をするよう要請があった。意見集約そして発議に向け、突っ込んだ議論が行われた。
「9条への自衛隊明記もしくは自衛権を妨げない旨を明記する案が大勢を占めた」というのは少数意見として、党が2014年に作成した憲法改正草案(2項削除、自衛権や国防軍の保有を明記)に沿ったものにすべきという石破茂氏の意見に賛成するグループがいることを意味しています。
「自衛隊明記」案は昨年の5月、憲法記念日に読売新聞に掲載された安倍総裁(自民党総裁として)の案で、「(自衛隊の名称は明記せず)自衛権を妨げない旨を明記する」案は参議院議員の青山繁晴氏が提案して、その場で一部出席者から賛同を得た案です。
憲法9条に『自衛隊』の名称を明記する場合の問題点
この“青山案”については青山繁晴氏が色々なところで解説しているのでご存知の方も多いかと思いますが、そこでは「『自衛隊』と明記してしまうと、将来名称が変わるかも知れない」、「(『自衛権を妨げない』なら)他党も反対できないはず」というような説明をしていらっしゃいます。
ブログ主などは、(本心は全文書き換え、あるいは2項削除に賛成ですが、実現性のある妥協案として)単純にその説明で納得して賛同してしまったのですが、もう一つ、『自衛隊』を明記することの問題点が、読売2面に書かれていました。
自衛隊の根拠規定については、「自衛隊を保有する」などと簡潔に表記する案があるが、自衛隊を所轄する防衛省は法律で設置された組織であるから「防衛省と上下関係が逆転する」との懸念が出ている。
要するに、「憲法」>「法律」という上下関係があるから、ということですが、これは7日の日経にも井上武史氏(九州大学准教授)も同じようなことを書いていました。こちらのほうがより詳しいので転記しておきます。
第一に自衛隊の存在を憲法に明記すれば、自衛隊は衆議院・参議院、最高裁、会計検査院などと並ぶ憲法上の組織として位置づけられる。しかも、国民投票で承認された自衛隊は、憲法制定時に国民投票を経ていない既存の国家機関よりも高い正統性を有することになる。それは自衛隊を単に合憲化する目標との関係では明らかに過剰だ。
第二に自衛隊が憲法上の組織となれば、法律で設置されるに過ぎない防衛省は組織法上、自衛隊の下位組織になる。もしそうなれば、自衛隊が防衛省に管理されている現在の状況は大きく様変わりする。
第三に自衛隊を憲法に書くのであれば、その固有の任務・権限や他の国家機関との関係も併せて記述せねばならないが、それは法的には9条2項に上書きする意味をを持つ。
読売の記事の説明は、第一と第二の説明に該当しますが、「第三~」の部分は少し分かりにくいかもしません。
これは、今朝の虎ノ門ニュースで竹田恒泰氏が解説されていた憲法9条の解釈を理解した上で理解できます。次項でこれについて考えてみたいと思います。
【DHC】2/8(木) 有本香×竹田恒泰×居島一平【ゲスト:小野寺まさる】
00:54:52 改憲 9条2項維持する案で検討 自民 条文案作り着手
憲法9条の解釈のしかた
先に、9条の条文を提示しておきます。
憲法第9条
- 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
- .前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
実はブログ主は「見ている人は竹田氏の説明で分かるかな?」とやや疑問に思ったのですが、それは、この条文がいかにダメな日本語かということも意味します。(以下は、あくまでも子供のような視点で読んでいます。)
まず、第1項は「侵略戦争の放棄」なのですが、この文を読んで子供がそのように解釈できるとは思えません。いえ、大人だって、素直に読んだらそうは思えません。「国際紛争を解決する手段としての武力行使」なんて余計だし...。(ここで言う「戦争」は既に国連憲章で禁止された戦争ですが。)
日本国民の安全を守ることを放棄しているように読めるのですよね。
また、例えば朝鮮半島に有事が起きて、それに乗じて自衛隊が乗り込んで(当然、戦闘行為も起こるでしょう)、拉致被害者を奪還することができるの?とも思います。
まあ、ここで悩んでいては先に進まないので、そこはひとまず置いておいて、「侵略のための戦争の放棄」と理解して、2項に進みます。
「前項の目的を達するため」の部分の追加は芦田修正と呼ばれ、竹田氏が解説していたように「例外」、あるいは「限定」です。
その結果、2項の解釈としては「侵略戦争のための戦力は持たない(しかし、自衛のための戦力は持つ)」となるのですが、これでは再軍備を可能にするので、現在は、この解釈は採っていません。(ね、ややこしいでしょう?)
簡単に言えば、「陸海空軍その他の戦力」は軍隊のことなのでこれは保持しない。が、自衛隊は“警察以上、軍隊未満”の戦力という無理矢理な位置づけにして“合憲”としているのです。
そのために、憲法学者の8割近くが自衛隊は違憲と考える(下図)のも当然だと思えるし、芦田修正の復活をいう声があるのも分かります。
繰り返しますが、2項は「(目的は限定するが)戦力(軍隊)を持てる」【①芦田修正の解釈】と「軍隊(に匹敵するような戦力)は持たない」【②現行解釈】の2つの解釈が成り立つわけですが、井上氏の「第三に~」の部分は、「その固有の任務・権限や他の国家機関との関係も併せて記述」することは2項の玉虫色の解釈にけりをつけることで、そうなると「2項はいらなくなる」といっているのだと思います。それを「上書き」という表現をしているのでしょう。
ですから、ブログ主としては、日本語として美しい条文に書き換えて欲しいのですが...
国民の一人として、9条に書いて欲しいことは、まず、明確に、
日本国民を守る
ということです。
「侵略戦争はしない」ということを残せというなら、それも賛成です。
自民党では、条文案を募り一本化するそうでうが、竹田氏も仰っていたように、両論の原案から国民に提示して国民を巻き込んでの議論をして欲しいと思います。
「日本人のための日本語講座」第2項の主語は?
少々蛇足を。
最初に、揚げ足取りではないことを書いておきますが、憲法9条の話題で、竹田恒泰氏の発言で気になったことがありました。
「『(陸海空軍その他の)戦力は』って、これ、主語じゃないですか」と発言したのですが、その後の「第2項には主語がない」との発言で、単なる言葉の選択ミスだとすぐに分かりました。
- 陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。
- 国の交戦権は、これを認めない。
ブログ主は個人的に興味を持って、日本語教育能力検定試験を受けたことがある(合格しています)のですが、日本語をネイティブではない人に教える場合、「~は」と「~が」の違いを教えるのはなかなかやっかいなのです。
そんなこと習わなくても生まれながらの日本人なら小学校に入る前から使い分けているからです。
日本語教育の世界では有名な一文があります。それは、
- 象は鼻が長い。
という文です。
この文の主語は「鼻」だということは分かると思います。
では、「象」は?
「が」は主語(動作、存在、状況などの主体)を表す格助詞ですが、「は」は話題を示す副助詞です。(ブログ主も「副助詞」というのは辞書で確認したので、あまりえらそうなことは言えませんが。 )
つまり、「~は」は、「~に関していえば」と、その後に述べることの「話題」を提示しているのです。
「象に関して言えば、鼻が長い」という解釈です。
「コーヒーは、濃いのが好きだ。」と言えば、書かれていなくても主語は「私」で、コーヒーでないことは明白です。
ついでに言えば、日本語教育では基本的に日本語で教える方法や理論を学ぶのですが、この「は」を英語で教えるときには、「topic marker」(トピックの明示)と呼び、意味を教えるときには「as for」(~に関しては)が適当です。
要するに、竹田氏が言っていたように、2項は「保持しない」のは誰か、「認めない」のは誰か、まったく主語のない文なのです。
※1 読売新聞記事
リンク先はYahoo記事で、紙面の記事より短くなっています。
9条2項「維持」、支持が多数…自民改憲本部
2/7(水) 21:34配信自民党憲法改正推進本部(細田博之本部長)は7日、党本部で全体会合を開き、自衛隊の根拠規定を明記する改憲案について議論した。
検討中の2案のうち、戦力不保持などを定めた憲法9条2項を維持する案を支持する意見が多数を占めた。ただ、2項削除案への支持も根強いため、10日以内をめどに双方の条文案を議員から募り、検討を重ねる。
会合後、同本部の岡田直樹事務局長は「2項を維持する考え方が多数を占めた。2項削除の意見は少数だった」と記者団に述べた。根本匠事務総長は「具体的な条文に則した議論をする段階に入った。議論は前に進んだ」と語った。
2項維持案は、安倍首相(党総裁)が提案したもので、同本部は2項削除案よりも公明党などの他党や国民の理解を得やすいとして、3月25日の党大会までの意見集約を目指す。
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