【国会】坂本竜馬や新撰組が歴史教科書から消える!?-中教審と高大連携歴史教育研究会の関係を追求(2018/02/26) 【杉田水脈議員】
公開: 2018/02/28 最終更新: 2018/02/28 10:49
前回のエントリーに引き続き、自民党衆議院議員の杉田水脈氏の質疑で判明したことを取り上げます。
昨年末に、「歴史教科書から坂本竜馬や新撰組が消える!?」ということが話題になったのを覚えている方も多いかと思います。
前回ご紹介した質疑の模様(動画)をご覧になれば分かるように、林文科大臣の答弁は、そもそもこの案を提言した高大連携歴史教育研究会というのは一(いち)民間団体で、新指導要領の作成には全く関わっていないと明言しています。
しかし、高大連携歴史教育研究会が本当に影響していないと言えるのでしょうか?
下は杉田氏の質疑を元にブログ主が見つけた情報をまとめたものです。
高大連携歴史教育研究会の歴史用語の選定
高大連携歴史教育研究会(会長・油井大三郎東大名誉教授)とは、高校や大学の教員らで構成する民間団体で、昨年11月に、高校歴史教科書から「坂本龍馬」、「高杉晋作」、「吉田松陰」などを削除する一方、「従軍慰安婦」、「南京大虐殺」、「基地反対運動」、「戦時性暴力」などを、“考える歴史教育”の用語として精選した用語案「高等学校教科書および大学入試における歴史系用語精選の提案」を提出したことで論議を呼びました。
杉田氏の質問は、そもそもこの団体はなにか、この団体の提案が教科書にどのような影響を与えるのか、というもので、林芳正文科大臣の答弁は、「あくまでも任意の団体であること」、「文科省は関与しておらず」、「新指導要領には全く影響を与えていない」というものでした。
動画を観ると林文科大臣もやや苦笑気味で答えています。
ここまでなら、この話題の新聞やテレビニュースでの報道のしかたを覚えている方なら拍子抜けするのではないでしょうか?
手元にはもう新聞は残っていないので、例えば日経の記事を検索してみると、(無料、あるいはユーザー登録なしで閲覧できる部分のみ引用)
歴史教科書、龍馬が消える? 高校の用語半減案
2017/11/18 19:00日本経済新聞 電子版
高校の日本史、世界史で学ぶ用語を現在の半分弱の1600語程度に減らすべきだとする提言案を高校、大学の教員団体がまとめた。暗記項目を絞り、社会の成り立ちを流れで学ぶ歴史教育を重視する。歴史上の人物では坂本龍馬や上杉謙信らも削減対象とされており、教科書会社などの対応が注目される。
用語案をまとめたのは高校、大学で歴史教育に携わる教員らでつくる高大連携歴史教育研究会(高大研)。日本史B、世界史Bの主な…
この記事は全文を見ると、坂本竜馬の画像もあり、削除された(削除されるべきとした)歴史用語の一覧表も掲載されていて結構なボリュームです。
削除対象用語は例えば日本史用語では「土師器」(はじき:弥生土器の系譜につながる、古墳時代以降の素焼の赤褐色の土器。)や「蘇我馬子」、「稗田阿礼」(ひえだのあれ:天武天皇の舎人(とねり))、世界史用語では「オデュッセイア」、「エンリケ航海王子」等々。
当時の報道では、この提案がさも決定事項かのような論調だった記憶がありますが、それも理解できるのは、この提案は文部科学省の中教審(中央教育審議会)が用語改革をしようとする答申の中で出てきたものだからです。
しかも、杉田氏が指摘するのは、中教審の委員の中に高大連携歴史教育研究会の会長の油井大三郎氏が参加しており、これでは“自作自演”と言われてもしかたがないでしょう。
さらに、新たに加えるべきとされた「従軍慰安婦」という言葉も、韓国が騒ぎ出してから使われるようになった言葉で、採用するべきではないという意見も尤もです。(答弁では、「従軍慰安婦」という言葉は新指導要領案には含まれていないとのことでしたが。)
質疑の中で、昨年の小中学校学習指導要領で「聖徳太子」を消し去る案が出されたことにも言及されていました。これは、実際に案に載っており、パブリックコメントを募集した結果、消されずに残されたものです。
2017年小中学校学習指導要領に関するパブリックコメント
以下、その時のパブリックコメントをご紹介します。(リンク先はパブリックコメントトップページ)
検索結果です。
【意見募集時】
学校教育法施行規則の一部を改正する省令案並びに幼稚園教育要領案、小学校学習指導要領案及び中学校学習指導要領案に対する意見公募手続(パブリック・コメント)の実施について
案件番号: 185000878
定めようとする命令等の題名: 学校教育法施行規則の一部を改正する省令/幼稚園教育要領/小学校学習指導要領/中学校学習指導要領
根拠法令項: 学校教育法施行規則(昭和22年文部省令第11号)第38条、第52条、第74条 等
- 案の公示日: 2017年02月14日
- 意見・情報受付開始日: 2017年02月14日
- 意見・情報受付締切日: 2017年03月15日
【結果公表】
学校教育法施行規則の一部を改正する省令案並びに幼稚園教育要領案、小学校学習指導要領案及び中学校学習指導要領案に対する意見公募手続き(パブリックコメント)の結果について
案件番号 185000878
これは、【意見募集時】に掲載されている新指導要領案を読むより、【結果公表】に掲載された意見を読む方が早いかも知れません。
「聖徳太子」で検索してみたら、下のような意見がありました。ついでに、その下の2つの意見も引用します。(文科省の回答は省略。PDFをお読み下さい。)
「聖徳太子」のみならず、「元寇」や「鎖国」も無くそうとしていたようです。
- 万人に認知され、国民に親しまれている名「聖徳太子」を「厩戸王」に変えることに反対。
世代を超えて共有できる教育の継続が重要であり、小・中学校で同一人物の表記が異なるのは小中の接続の観点でも問題。教員が教えにくいばかりか、児童・生徒が混乱し、理解の妨げとなる。
- 「モンゴルの襲来」は従来通りの表現「元寇」でいいのではないか。
日本の友好国であり、多数の横綱を生み出した現在のモンゴルとフビライが樹立した「元」はまったく違う国で、誤解が生じる。
- 「鎖国」の表記を「幕府の対外政策」とすることに反対。
例外をもうけながら大枠として行った「西洋のものや西洋について書いた書物の輸入も事実上、全面禁止」という幕府の意思が重要であり、それに「鎖国」という言葉が用いられることは自然ではないか。
こんなことを、パブリックコメントを求めないと分からないのか?という疑問を、杉田氏ならずとも誰もが思うでしょう。
この時の新指導要領案については、杉田氏が質疑の中でも言及した藤岡信勝教授が『正論』(産経web)に寄稿しており、全文を読むことができます。
2017.2.23 12:00更新
【正論】
周到な「聖徳太子抹殺計画」 次期指導要領案は看過できない 拓殖大学客員教授・藤岡信勝
e-Gov:パブリックコメント検索のしかた
案件の詳細が書いてあるページを見ると分かるように、情報量(文字数)が少ないために、確実にキーワードを指定しないと検索できません。
左サイドで、上の例では「意見募集中案件」を選択(チェック)していますが、終了案件の場合は「意見募集中終了案件」を選択します。
期間指定くらい可能にして欲しいところです。。
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