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2018/01/02

【書籍】『朝日新聞がなくなる日』(新田 哲史 ・宇佐美 典也 著)読了【感想】

この『朝日新聞がなくなる日』は昨年末、手元に届いて数時間で読み終えており、既に当ブログでも内容について言及していたのですが、全体的な感想は年を越した宿題となっていました。

手元には次に読む予定の『徹底検証「森友・加計事件」――朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪』 (小川榮太郞著/月刊Hanada双書)が控えてていて、早くこの本に取りかかりたいのですが、その前にまず宿題を片付ける気持ちでここに感相等をまとめておきます。

 

 

 

 

Amazonの内容紹介

以前ご紹介したものの再掲です。

 

「なぜ朝日新聞は安倍首相を憎むのか?」

森友&加計学園問題で迫る〝悪魔の証明〟、東京都議選における異常な自民叩き、そして滲み出る記者たちのイデオロギーまで……その違和感の正体に、『アゴラ』編集長の新田哲史氏と元経済産業省官僚の宇佐美典也氏が深く切り込む。さらに蓮舫氏の二重国籍問題報道の裏側も分析。
「この本は朝日新聞への口汚い応援歌である」(おわりにより)

第1章 朝日新聞と〝反権力ごっこ〟
第2章 ビジネスとしての加計学園問題
第3章 二重国籍問題と報道しない自由
第4章 政策論争を放棄した都議選報道
第5章 昭和の体質を抜け出せない新聞業界
第6章 ゴシップ化するリベラルメディア
第7章 朝日新聞は生まれ変われるのか?

 

 

 

 

著者:新田 哲史氏、宇佐美 典也氏について)

次に、2人の著者について、表紙カバーの袖(表紙の内側に折られた細い部分)に書かれた著者の紹介から要約して紹介します。

 

新田 哲史 : 1975年生まれ。読売新聞記者、PR会社を経て独立後、2015年に『アゴラ』の編集長に就任。就任から1年で月間ページビューを300万から1000万に躍進させた。

宇佐美 典也 : 1981年生まれ。元経済産業省官僚。2012年に経産省を退職後、再生可能エネルギー分野や地域活性化分野でのコンサルタント業。『アゴラ』を始め、ネットサイトへの寄稿多数。

 

感想

この本については、著者の一人の新田氏がネット番組『言論テレビ』に出演された時に書いたエントリーで紹介した後、別のエントリーでも触れましたが、ライバル社である読売新聞の記者であり、その後ネットのニュースメディア編集長に転身した新田氏と元官僚として朝日新聞から取材を受ける側だった宇佐美氏両名による対談の形式を取っています。

従って、全編話し言葉で書かれているので読みやすい反面、話題が展開していくと「朝日新聞」から話題が外れて「蓮舫批判」になったり、「東京新聞の望月衣塑子(もちづきいそこ)記者()の話題になったりし、「第5章 昭和の体質を抜け出せない新聞業界」以降はオールドメディア(新聞)対ニューメディア(ネットメディア)の話、『第6章 ゴシップ化するリベラルメディア』では論ずる対象は朝日だけでなく東京新聞や毎日新聞も含まれるので、全編“朝日の悪口”を期待すると少し当てが外れるかと思います。

 

※東京新聞の望月衣塑子とは、(このブログに辿り着かれるような方であれば既にご存知かと思いますが、政治部ではなく社会部の記者(遊軍記者とも)でありながら、菅官房長官の記者会見会場にやって来ては、質問ではなくアジテーションをしているだけの、ある意味“名物記者”です。もちろんいい意味ではありません。自分で取材したことではなく、週刊誌などから得た“ネタ”をぶつけて鋭い追求をしたと勘違いしている記者です。

 

とは言え、この“脇道に逸れた部分”も興味深く、この本に関心のある方にも関心が深い話が多いと思うので、読んで損はありません。

 

『第1章 朝日新聞と〝反権力ごっこ〟』、『第2章 ビジネスとしての加計学園問題』、『第3章 二重国籍問題と報道しない自由』では朝日の報道姿勢、報道パターンが様々な例で語られます。

「反権力ごっこ」については、前回のエントリーでも少し異論を唱えたのですが、安倍首相を叩くのは反権力からではなく、ブログ主は単に“嫌いだから叩く”のだと思っています。反権力を隠れ蓑にして嫌いなものを叩くという理由なら、「ごっこ」というのは言い得て妙ですが。

いずれにしても安倍首相を嫌う理由はこの本でも指摘していますが、昨年(2017年)の憲法記念日に読売新聞のインタビューで改憲試案を語ったからに他ありません。(実際は、平成19年に「戦後レジーム」からの脱却を宣言した時に“きらい”のレッテルを貼ったのだと思っていますが。)

そして、“嫌いなもの叩き”に利用できるなら、前川喜平前文科省事務次官を持ち上げたり、森友学園の籠池理事長を利用し、利用価値がなくなればおもちゃのように捨てたりするわけです。そして、それに都合が悪いもの、例えば、加戸前愛媛県知事の国会での発言は「報道しない自由」を発動して無視、あるいは、アリバイとして「詳報」(国会での発言を時系列に要約して並べたもの-つまり、目立たない記事)に載せるだけ、というようなことをします。1面、2面の大きな記事と4面、5面の質疑要約の中に数行出てくるだけの記事を同じ1記事と数えるのは無理があります。

 

『アゴラ』は「蓮舫の二重国籍問題」追及の先鋒であったので、この問題についてはかなり行数を割いて蓮舫氏を批判していますが、これに関する朝日の報道姿勢として、この問題を“二重国籍を持つ人たちの人権問題”にすり替えて報道するものだったと語っています。

朝日の報道姿勢は、事実や事象をそのまま報道(ストレートニュース)するのではなく、“自分達の好むストーリー”に当てはめて報道するとこの本では断じています。

 

昨年11月には朝日が「安倍晋三記念小学校」であると報じていた森友学園の小学校の設立趣意書の黒塗りが外れて「開成小学校」と判明していましたが、朝日は、「これは籠池氏から聞いたのでそう報道した」と小さな後追い記事を載せただけでした。

 

Abeshinzou_kinen_syougakkou  

 

しかし、黒塗りになっていた部分に「安倍晋三記念小学校」の9文字が入るのは明らかに無理があり、多くの人が指摘しているように、籠池氏本人の手元にあるはずの控えを見せて貰うなりして、裏付け(エビデンス)をとればいいだけなのに、それをせずに報道するのは、“黒塗りだから分かるまい”と自分達の都合のいいように報道したに違いありません。

 

Nikkei_advertisement_sangokushi (上の画像は、日経新聞社が朝日新聞本社のある築地駅に出した、三国志とのコラボ広告。出社する朝日新聞社社員はこれを見てどう思うのでしょうか。やりますね。日経。)

 

これは福島第一原発事故の『吉田調書』が黒塗りなのをいいことに事実をねじ曲げて報道したのと同じ手法です。

この捏造による“スクープ”は朝日新聞の記者が菅直人首相に近い存在だったので、黒塗りされていない調書を見ることができたのですが、その後、政府が調書を公開したのでバレてしまいました。

 

朝日は『慰安婦報道』問題、『吉田調書』捏造問題を引き起こし、日本人や原発で働いてた人たちの名誉を汚してまでも自分達好みのストーリーを“報道”と称してまき散らした結果、第三者委員会による調査も行われたわけですが、この時の反省はポーズだけで全く生かされてなかったことになります。

朝日新聞一連の捏造問題に対する第三者委員会の報告書がネットで公開されていますが、これは数多ある朝日新聞批判の本に匹敵するくらい、朝日新聞というものを良く分析したものだと思います。

 

 

下は第三者委員会の岡本行夫氏(外交評論家)の意見を転載したものですが、例えば、これだけも読んでみて下さい。「角度をつける」というのは朝日の方針ということがよく分かります。

朝日新聞の問題を指摘し批判するという点では、朝日批判本、例えば『朝日新聞がなくなる日』1冊分の内容がここに全て要約されていると言っても過言ではありません。

 

P92, 93(PDF P.97, 98)

15 個別意見
(1)岡本委員

記事に「角度」をつけ過ぎるな

我々の今回の検証作業に対して、朝日新聞社はまことに誠実に対応した。新しい方向へレールが敷かれた時の朝日の実行力と効率には並々ならぬものがある。しかしレールが敷かれていない時には、いかなる指摘を受けても自己正当化を続ける。その保守性にも並々ならぬものがある。

 吉田清治証言を使い続けた責任は重い。しかし、同様に国際的に大きなインパクトを与えたのは、1992年1月11日の「慰安所 軍関与示す資料」と題して6本の見出しをつけたセンセーショナルなトップ記事だ。数日後の日韓首脳会談にぶつけたこの報道は、結果としてその後の韓国側の対日非難を一挙に誘うことになった。(同記事の問題点については本報告書をお読みいただきたい)。

 当委員会のヒアリングを含め、何人もの朝日社員から「角度をつける」という言葉を聞いた。「事実を伝えるだけでは報道にならない、朝日新聞としての方向性をつけて、初めて見出しがつく」と。事実だけでは記事にならないという認識に驚いた。

 だから、出来事には朝日新聞の方向性に沿うように「角度」がつけられて報道される。慰安婦問題だけではない。原発、防衛・日米安保、集団的自衛権、秘密保護、増税、等々。

 方向性に合わせるためにはつまみ食いも行われる。(例えば、福島第一原発吉田調書の報道のように)。なんの問題もない事案でも、あたかも大問題であるように書かれたりもする。(例えば、私が担当した案件なので偶々記憶しているのだが、かつてインド洋に派遣された自衛艦が外国港に寄港した際、建造した造船会社の技術者が契約どおり船の修理に赴いた。至極あたりまえのことだ。それを、朝日は1面トップに「派遣自衛艦修理に民間人」と白抜き見出しを打ち、「政府が、戦闘支援中の自衛隊に民間協力をさせる戦後初のケースとなった」とやった。読者はたじろぐ)。

 新聞社に不偏不党になれと説くつもりはない。しかし、根拠薄弱な記事や、「火のないところに煙を立てる」行為は許されまい。

 朝日新聞社への入社は難関だ。エリートである社員は独善的とならないか。「物事の価値と意味は自分が決める」という思いが強すぎないか。ここでは控えるが、ほかにも「角度」をつけ過ぎて事実を正確に伝えない多くの記事がある。再出発のために深く考え直してもらいたい。新聞社は運動体ではない。

 一方で重要なことがある。不正確でない限り、多様な見方を伝える報道の存在は民主主義を強いものにする。朝日新聞の凋落は誰の利益にも適わない。朝日の後退は全ての新聞の後退につながる。

 

 

 

 


 

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