【動画】浜田雅功さんの黒塗り(ブラックフェイス)問題の背景とは?
公開: 2018/01/07 最終更新: 2018/01/07 8:37
大晦日のテレビ番組で芸人の浜田雅功さんが黒塗りでエディ・マーフィに扮したことで、米・ニューヨークタイムズや英・BBCで物議を醸しているという。
これには多くの人が驚き、戸惑ったのではないでしょうか。
ブログ主はこの番組を観ていないので、どういうシチュエーションでエディ・マーフィの真似をしたのかは分かりませんが、これに対して、日本在住の黒人のコラムニストが不快だとの発言をSNSで発したとも言われています。
これに関して、過剰な反応だとか日本人は黒人に対する差別感情はないといった反応も出ていますが、調べてみたら、少し背景が分かってきました。
まず、これはこのバラエティ番組でいきなり出てきた批判ではないのです。
そもそもは、以前から(白人が)顔を黒く塗って黒人の真似をすることは差別とされており、特に昨年の8月頃にイギリスのガーディアン(Guardian)やインデペンデント(Independent)等に寄稿しているVictoria Princewillというフリーランスのライター(下の画像の人物)が“あること”にクレームをつけたというのが発端で、白人社会(白人優越社会)において議論を巻き起こしました。
その“あること”とは”black emojis and GIF”(黒い肌の絵文字やGIFアニメ)です。
YouTubeに投稿された動画はこちら。
絵文字がemoji(複数形はemojis)とそのまま使われているのは知りませんでしたが、black emojisというのはこういうもの。
そしてここで言うGIFとはGIFアニメで、アメリカ人のTwitterなどでよく使われているのですが、人の動作、例えば、人が指を指して大笑いしているようなシーンを短い動画にしたものを自分の感情を表す絵文字や顔文字代わりに使います。
m9(^Д^)プギャー ←意味合いとしてはこういう感じです。
そして、これが黒人のリアクションをGIFアニメにしたものが多い、と言うのですが、実際にそうかはよく分かりません。
要するに、黒人をイメージさせる絵文字や黒人のGIFアニメを白人が使うのはけしからんという主張だそうです。
“This, is digital black face,” she declares, before comparing the GIFs to the explicit racism of past decades and claiming the tiny images used to communicate in text messages and on social media are the “21st-century version of that”.
「明白な前世紀の人種差別主義」(the explicit racism of past decades)、「それの21世紀バージョンだ」というのは、ミンストレル・ショー(minstrel show)のことです。
ミンストレル(minstrel )という単語は「吟遊詩人」という意味ですが、ミンストレル・ショーとは「黒人に扮した白人の歌・ダンス・笑い話などによる19世紀から20世紀初頭に米国で流行したバラエティショー」だそうで、上の動画にも出てきますが、人権問題の広がりと共に、黒人に対する侮蔑として見なされました。
また、彼女はインタビューで「他の文化に敬意を払って欲しい」、「黒人の真似をするのは文化の横取り」とも言っており、絵文字やGIFだけでなく、髪型やメイクなど、黒人風にすることも批判しています。
昨年の夏あたりから、ブログ主もそうですが、日本人の知らないところで、彼女の発言がきっかけで大激論になっていたというのが今回の騒動の背景です。日本在住の黒人のコラムニストがどういうバックグラウンドかは分かりませんが、今は“touchy”(デリケートな)問題であることは確かです。
ある程度の年代の人なら覚えているでしょうが、カルピスの昔のトレードマークやダッコちゃんの人形(黒人の顔の特徴を誇張していた)、黒人のマネキン(どこかのデパートだかが採用したマネキンが黒人の顔をデフォルメしような顔で、どちらかと言うとアート的なデザインだったが、これも厚い唇などが理由でクレームを受けた)、あるいは絵本の『ちび黒サンボ』(ストーリー自体は問題がないが、主人公の一家が黒人で怠惰な人たちののような描写があった)が消えたのと同じような文脈と言えるかも知れません。
なお、彼女のYouTube動画に対してのコメントで最も多くの「いいね」を貰ったコメントを紹介します。
“Oh please, can people stop being offended by every single bleeding thing! Emojis and GIFs… that’s the problem of black people? Really?
“She talks about cultural appropriation while wearing a straight hair? Listen, I am a black person, and I don’t care what emojis people use or the GIFs they put up.
“I am concerned when people of color are killed, denied access to education, to healthcare, to housing and jobs just because of their skin color. Let’s solve those problems and leave all these silliness alone.”
これを書いたのはUkonu Obasiという人ですが、イギリスのliberal democrats(自由民主党)の議員で、彼は黒人です。
彼の発言が黒人の意見を代表するかどうかは分かりませんが、「そんなもの(=絵文字やGIFアニメ)が使われても気にしない。」と言っています。(「(Princewill氏は白人のように)髪をストレートにしててなに言ってんだ」みたいな辛辣な言い方もしています。)
要するに、彼女の発言自体も叩かれているのです。
今回のバラエティ番組の問題は、(黒人が混在する)白人社会での問題が飛び火したようなものですが、気をつけなければならないのは、
この問題を「日本人はレイシストである」とアピールする輩に利用されないようにすること
だと思います。
【追記】ちょっと思い出したことがあるのでメモしておきます。
昔、北野武さんのバラエティ番組のコーナーで、『暗闇でサンコンを探せ』というのがありました。これは、直接その番組を観たのではなく、後に北野武さんのバラエティ番組を振り返る番組で知ったのですが、サンコンさんは笑って、「こんな番組が造られること自体、日本人が黒人に対する偏見がない証拠」というようなことを言っていました。
あと思い出したのは、元近鉄のオグリビー。
手抜きしてWikipediaからコピペしますが、「オグリビーが自分のミスで試合に敗けて落ち込んでいたところ、金村義明や村上隆行などといったチームメイトに風呂に投げ込まれ、お湯を掛け合うなどしてはしゃぎ、励まされた。「メジャー時代でも白人と黒人が一緒にお風呂に入る事など無かったのに」と言い感激していた。またその際、あまりの嬉しさに浴槽の中で泳いでいたという。」。
差別は、する側よりされる側の気持ちの問題ではありますが、有色人種として差別される側の日本人が黒人を差別する側に思いもかけず立たされてしまった、というのが今回の騒動です。
決して差別のつもりはないと主張しても、現在、白人がマジョリティの世界ではポリティカル・コレクトネス(political correctness/政治的公正)に反することだと知っておくべきでしょう。その「公正」が行き過ぎたものかどうかはまた別の議論です。
この記事の続きはこちら。
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『この問題を「日本人はレイシストである」とアピールする輩に
利用されないようにすること』
ですね!
なるほど、よく分かりました。
ありがとうございます!
投稿: kanako | 2018/01/07 22:49