【書籍】『徹底検証「森友・加計事件」-朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪』を訴状と比較して読む
公開: 2018/01/04 最終更新: 2018/01/04 19:42
小川榮太郞氏の著書『徹底検証「森友・加計事件」-朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪』をひとまず読了しました。
周知の通り、この本は朝日新聞社から虚偽であるとの提訴を受けているため、今回は、通常の読み方と違って、まず、訴状で虚偽だと指摘されている箇所に傍線を振って付箋を貼る作業から始めました。そして、その箇所では立ち止まって、訴状に書かれている朝日の主張を読みました。
このエントリーでは、本書全体の感想などは後回しにして、まず、問題となっている部分(最初の朝日の『申入書』とそれに対する小川氏の回答、そして、『訴状』)をまとめた段階で一度記事を公開します。
ブログ主は法律知識はない故、これが朝日のいうように虚偽と言えるかどうかの判断はできませんが、後ほど改めて、個々について文脈などを補足説明として付け加えようとは思っています。今はそこは省略します。(現在加筆中)
【2018/01/20追記】2018/01/19に『言論テレビ』でこの件に関する討論会が放送されました。近々、この番組について記事を書く予定です。
筆者(ブログ主)の見解
まとめを提示する前に、ブログ主が気づいたことなどを少し書いておきます。
朝日の訴状を読むと、まず、記事の本数の数え間違いのような明らかな小川氏のミスを見逃さず指摘しているようです。また、数量的な表現、例えば、「一行も記事にせず」とか、「前川喜平たった一人の証言で二カ月半、加計問題を炎上させ続けた」といった記述に対して、いや、○本の記事を掲載しているとか、他の関係者の記事もあるといった反論とともに訴えています。
ただ、後者については、ブログ主は朝日新聞の購読者ではないので前川喜平氏以外の証言をどのように取り上げられたかは分かりませんが、前川証言に疑いを抱かせないような内容の記事しか書かなかったり、短い記載しかなかったのかも知れません。小川氏の表現は、その期間の印象として、前川氏に関する記事だけが“加計学園問題というたき火にくべる薪のような役目”をしていたという意味なのかも知れませんし、もちろん、その間の朝日報道を見ていないので、小川氏による誇張という考え方も否定はしません。
次に、「NHKと共謀した」とか、「木村真豊中市議との接触(朝日新聞記者からの助言)」というような部分 -但し、小川氏が調べた状況証拠からの推理- のような第三者が関わることに反応しているのが目に付きます。しかし、その割には、“前川喜平氏から文書を入手”する推理のくだりは訴えの対象にはしていません。これは事実だと認めているのでしょうか?
なお、勘違いしてはならないのは、訴訟の争点となるのは『朝日新聞社に対する名誉毀損になるか否か』です。
訴状では、項目にして13項目、本文中の箇所はそれより多い20箇所程度を朝日は「虚偽」だと主張しているわけですが、記事数の間違いなど、多分事実関係としてはいくつかは朝日の訴えは認められるでしょう。しかし、それぞれが、あるいは認められたものを合わせて、“著しい名誉毀損”とまで判断されるかどうかは分かりません。
また、それらが「虚偽」(とまで言わなくても「表現上の誇張」や「事実誤認」)だとして、そこに記載されていない箇所を事実と認めるなら、全体としては、“朝日が悪意を持って報道し続けた”という印象は揺るぎません。
例えば、記事本文の内容とそぐわない扇情的な見出しをつけた記事攻勢を、「五月から六月に入り、朝日新聞の見出しは、国会質疑の実態とさえ大きく乖離した極端な安倍叩きにますます狂奔するのである。」として、その見出しを次々と挙げていく箇所(P.208~)がありますが、こういった箇所は朝日側は問題視しないのでしょうか。
13項目のいくつかが認められたら、朝日はそれで満足なのでしょうか?
尤も、朝日の真の目的は、裁判によって小川氏の文筆活動の当面の妨げをすること、今後、朝日批判をしたらこういう目に遭うぞという見せしめにすること だということは大方の読者は分かってはいますが。
ところで、朝日は各項目について「虚報だ、虚報だ」と喚き、「謝罪と賠償をせよ」と叫んでいますが、ここで『吉田調書』に関する朝日の捏造報道事件を思い出して下さい。
高山正之氏の動画について書いたエントリーにこの事件の説明をしていますが、これは明らかに意図を持った捏造報道であり、原発で働いていた方々の名誉毀損です。
上記エントリーに朝日がこの件のために作った特設サイトへのリンクがありますが、この画面を開くと下のような言葉が目に入ります。
「命令違反で撤退」という記述などに誤りがありました。読者と東京電力の皆様に深くお詫びします。
これで許されるなら、朝日が飛鳥新社や小川榮太郞氏に要求するような新聞数社に謝罪広告を載せたり、金員の請求などしなくても、小川氏のHPにでも「誤りがありました」というページを目立たないところにでも作成するだけで十分ではないでしょうか。別に、朝日新聞社はニュースサイトや本社サイトのトップに目立つようにバナーなどを貼っているわけではありませんから。
朝日の訴状を読んでみる
朝日新聞社の飛鳥新社や小川榮太郞氏に対する訴状はこちらにPDFにて掲載されています。この中で、虚偽だの名誉毀損だのと訴えている部分はP.2~15に渡り、下記のように第2>2>(2)のア~スに書かれています。(「摘示事実」の「摘示」とは「かいつまんで示すこと」だそうです。)
訴状の項番の振り方は字下げなどもなく見にくいので、下に構成が分かるように簡略化したものを書きました。
第2 名誉・信用毀損の不法行為
1.本件書籍の発行及びその頒布
2.摘示事実と名誉・信用毀損
(1) 事実に基づかない原告に対する著しい誹謗中傷
タイトルと献詞について誹謗中傷と指摘
(2) 虚偽の事実を摘示した原告の名誉・信用の著しい毀損
ア 本の中の該当箇所について反論や名誉毀損と指摘
イ
:
ス
(3) 以上のとおり、被告らの本件書籍の執筆・出版は、原告の
名誉・信用を著しく毀損する不法行為に該当する。(以下略)
本の中の該当箇所(引用とそれが出てくるページ)を示して反論をしていますが、これらは、ほぼ、それ以前に出された『申入書』と変わってはいません。
なお、参考として、先に、申入書などのURL、衆参両院での籠池氏証人喚問の議事録を先にまとめて提示しておきます。
■朝日申入書
- 「徹底検証『森友・加計事件』 朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪」の著者・小川榮太郎氏と飛鳥新社への申入書http://www.asahi.com/corporate/info/11207014
■飛鳥新社の回答
- 『小川榮太郎著「徹底検証『森友・加計事件』」に対する朝日新聞社申入書への回答』
http://www.asukashinsha.co.jp/news/n22653.html■小川榮太郞氏の回答
- 朝日新聞からの申入書に対する小川榮太郎の回答
http://psij.or.jp/2017/12/06/20171206_02-2/■国会議事録 平成29年03月23日
朝日の「申入書」、小川氏回答、「訴状」内容のまとめ
以下は下記のようなルールでまとめてあります。
- 朝日新聞社の申入書と小川氏の回答は薄いオレンジ色の枠の中に提示。
- 申入書の項番は、オリジナルは丸数字(例:①)だが、「1.」のように書き換え。小川氏が回答の中で項番を括弧付き漢数字(例:(九))で書いてあるのはそのままとした。
- 本からの引用箇所は青字で表記。
- 小川氏の回答文は「【回答】」と表記。
- 訴状の文章は要約のみ記載。「【訴状要約】」と表記。
- 【訴状要約】の末に訴状内で振られた項番(ア~ス)を「・・・ア」のように提示。
- 【補足】はブログ主が後で追記するかも知れないので予め設けておくもの。
1.「朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪」(本書題名)及び「無双の情報ギャング 朝日新聞に敬意を込めて捧ぐ」(本書2頁)との記載。
上記の記載は、事実に基づかない、弊社に対する著しい誹謗中傷であり、弊社の名誉・信用を著しく毀損するものです。【回答】
① 既述の通り「報道犯罪」は本書全体を通じての証明事項です。訂正を要求するなら拙著全部の論理構造の過ちを逆証明してください。
② 上記記載は、「事実」でなく、私の「意見の要約的表現」です。それに対して貴社がこのような通告を行うことは巨大メディアという権力による個人の執筆者の表現の自由の侵害です。仮にこのような申入を大企業や大組織が、自らを批判する著書に気軽に発出できる社会を許せば、立場の弱い個人の著者は自由な批判や表現が不可能になります。自由社会の存立を危うくする「危険な一線を越えた指摘」と言わざるを得ません。
【訴状要約】上記記載は事実に基づかない誹謗中傷である。根拠は(2)以下。・・・(1)
【補足】1の表題や献辞、次項2の「帯」に書かれた言葉はこの本全体に対する評価(名誉毀損か否か)との関係で判断されるのか? 表現の自由の範囲なのか?
2.「〝スクープ〟はこうしてねつ造された」(本書の帯)との記載。
弊社の「森友学園」「加計学園」に関する一連の報道にねつ造はありません。上記の記載は、事実に反し、弊社の名誉・信用を著しく毀損するものです。【回答】前項同様、「捏造」は本書全体を通じての「私の意見の要約的表現」です。
【訴状要約】上記に加え「『虚報』で政治をぶち壊し続ける『報道機関』の存在」(7頁)に対し、一連の報道に捏造・虚報はない。・・・ア
【補足】上記7頁の表現及び次項3の5頁の表現は前書き(「はじめに」)に書かれたもの。1と同様、この本全体に対する評価(名誉毀損か否か)との関係で判断されるのか?
3.「仕掛けた朝日新聞自身が、どちらも安倍の関与などないことを知りながらひたすら『安倍叩き』のみを目的として、疑惑を『創作』した」(5頁)との記載。
上記の記載は、事実に反し、弊社の名誉・信用を著しく毀損するものです。【回答】前項同様、これも、本書全体を通じての「私の意見の要約的表現」であり、その総括的「表現」です。
4.「『安倍叩き』は今なお『朝日の社是』なのだ」(19頁)との記載。
弊社は「安倍叩き」を社是としたことは一度もありません。上記の記載は、事実に反し、弊社の名誉・信用を著しく毀損するものです。【回答】「社是」はむろん、会社の正式な意味の社是と言っているのではなく、比喩表現であって「事実」認定の問題ではありません。貴社広報部は常識がないのでしょうか。
【訴状要約】3,4に関し、安倍晋三首相が関与したとは報じていないし、関与していないことを知っていたこともない。「安倍叩き」を目的として報道したこともない。疑惑を創作したこともない。・・・イ
【補足】「『安倍叩き』は今なお『朝日の社是』なのだ」の部分は引用のためにカギ括弧(「」)で括ったために『朝日の社是』となっているが、実際には「朝日の社是」と書いてある。“朝日の「社是」”ではないので比喩表現とは受け取れる。
なお、この前に、政治評論家・三宅久之氏と朝日の元主筆・若宮啓文氏の会話が紹介される。(若宮氏が「安倍叩きは朝日の社是」と発言されたとされるもの。但し、朝日はこれを掲載した幻冬舎に抗議したという。)更に現希望の党・長島昭久氏のTweetも引用されている。(下図)
若宮氏が言ったとされる「安倍の葬式はウチで出す」は巷間広く伝わっており、日頃の朝日記者のツィートはこれを想像させるものが多いのは確かだと思う。
5.「朝日の記者側から、何らかの訴訟を構成すれば記事にできるとの助言があった末でのこの記事だという」(22頁)との記載。
豊中市議会議員の木村真氏に対し、弊社の記者が訴訟を促すような助言をしたことはありません。上記の記載は、事実に反し、弊社及び記者の名誉・信用を著しく毀損するものです。【回答】貴紙記者から当該件を直接聞いた報道関係者への取材に基づいた記述です。
【訴状要約】当社の記者が木村氏にそのような助言をした事実はない木村氏もこれを否定している。近隣の同規模の国有地と比べて約1割の1億3,400万円で売却したことは独自の取材で報道したことであり、木村氏の提訴がなければ報道できないものではない。・・・ウ
【補足】この一文の前に、朝日が初めて森友学園への国有地払い下げを報じた記事(署名記事/その一人は吉村治彦記者)が紹介されているが、その記者と木村真豊中市議との接触があったことを示す客観的証拠(ラジオでの発言)は示されている。「~という。」という表現から伝聞形式であり、小川氏が回答している通り、取材して得た情報と受け取れる。
6.共産党や民進党の議員による国会質問や答弁について「初報をスクープした朝日新聞は、これらの質疑や会見内容を全く伝えていない」(26頁)との記載。
弊紙はこれらの質疑や会見を少なくとも2回、紙面で報じています。上記の記載は、事実に反し、弊社の名誉・信用を著しく毀損するものです。なぜこのような間違いが生じたのか理由をお示し下さい。紙面で報じた2本の記事は以下の通りです。
●2017年2月14日付 朝刊社会面「学園『ごみ撤去1億円』」
●同月18日付 朝刊社会面「国有地売却巡り国会で答弁」【回答】私の該当箇所の「全く」の文意は、「質疑や会見内容」の「主要な全容」を正しく伝えていないことの強意表現であることは、文脈上明らかです。
貴紙ご指摘の18日付朝刊の国会論戦報道は前日の国会での、共産党の宮本岳志氏、民進党の福島伸享氏の質疑によって明らかになった森友問題の全体像を全く伝えていません。
【訴状要約】(26頁に加え27頁の記載に対し)2本の記事で報じている。「安倍首相と国有地払い下げの結びつき」に関するスクープ報道をするために敢えて報道しなかった(27頁)というのは虚偽である。・・・エ
【補足】朝日の指摘する記事がどのようなものか分からないので判断不能。
(この項、申入書に記述なし。従って回答もなし。)
【訴状要約】「なお、この日、国会では自民党の西田昌司が質問に立ち、佐川理財局長から、国有地売却の全体像を的確に引き出している。もしマスコミがこの質疑をきちんと国民に伝えれば『森友問題』はほぼ収束していたであろう。しかし、朝日進運は一行も記事にせず、テレビ報道もまたこれを黙殺した。」(63頁)については、2本の記事で報じている。虚偽である。・・・オ
【補足】見落としか?
7.「見出しは上から順に、『籠池氏「昭恵夫人から、口止めとも取れるメール」』『お人払いをされ、100万円を頂き金庫に』『夫人から財務省に、動きをかけて頂いた』」と昭恵叩きの虚報三連発」(99頁)との記載。
記事は、虚偽の証言をすれば偽証罪に問われる可能性がある参議院予算委員会の証人喚問における籠池泰典証人の発言の要旨を記載したもので、上記見出しは発言内容の重要な部分を見出しとしたものです。籠池氏が上記のとおり発言したことは真実であり、「虚報」には該当しません。上記の記載は、事実に反し、弊社の名誉・信用を著しく毀損するものです。【回答】「虚報」です。証人喚問において、昭恵夫人は主要主題とはなっていません。証人喚問議事録に基づけば、昭恵夫人に関する質疑は、文字数換算にして全体の二.九%に過ぎません。文字換算だけで重要度を置換できぬとは言え、昭恵氏以外に重大な問題解明箇所が多数ありました。また籠池氏の証言能力はこの証人喚問時にも既に明らかに問題がありました。そのような実態に鑑みれば、三本の見出し全てが籠池氏の一方的な証言の引用による昭恵夫人の疑惑に関するものだというのは、見出しの立て方として「虚報」であることは明らかです。
【訴状要約】上記記事は証人喚問における籠池氏の発言要旨で、籠池氏の発言内容の重要な部分を見出しとしたものある。発言したのは事実であり虚報ではない。・・・カ
【補足】引用部分は証人喚問された国会での質疑の採録の記事に言及した部分で、所々にこのような見出しをつけていたらしい。実際にこれらの発言はあったので虚報とは言いがたいが、籠池証言の内、首相夫人に関わることのみを殊更強調して印象操作をしている感がある。
ちなみに、日経web版では、「寄付受領の詳細」、「首相夫人への働きかけ」、「稲田氏との関係」、「政治家へ協力要請」といった見出しが挿入されており、朝日とはかなり異なる。
8.「『総理のご意向』が書かれた同じ文書のすぐ下に、『総理が議長なので、総理からの指示に見えるのではないか』と書かれている。もし『総理の指示』があったらこういう言い方にはなるまい。指示がなかったからこそ『総理からの指示に見える』ような操作が必要だ――この文書はそう読める」「この日、朝日は後に政府が調査・公開した文書八枚(一部ずれがある)を既に入手していたが、『総理の意向』『官邸の最高レベル』という、安倍の関与を想像させる部分以外は、文書内容をほとんど読者に紹介せず、未公開のまま、今日に至っているのである」「朝日新聞は、最初から世論の誤導を狙って、『総理の意向』でないことが分かってしまう部分を全て隠蔽して報道し続けた」(151~152頁)との記載。
弊社は、上記8枚の文書について、その内容を本年5月17日、18日、19日の紙面で紹介しており、「安倍の関与を想像させる部分以外は、文書内容をほとんど読者に紹介せず」という指摘は事実に反します。
また、上記8枚の文書のうちの「大臣ご確認事項に対する内閣府の回答」と題する文書には、今治市での大学設置の時期について「総理のご意向」で最短距離でプロセスを踏んでいると聞いているとの記載があり、次いで「大学設置審査のところで不測の事態(平成30年開学が間に合わない)ことはあり得る話」との懸念が記載され、そのすぐ後に、「『国家戦略特区諮問会議決定』という形にすれば、総理が議長なので、総理からの指示に見えるのではないか。平成30年4月開学に向け、11月上中旬には本件を諮問会議にかける必要あり」と記載されています。一連の記載に沿って、普通の読み方をすれば、「総理のご意向」を実現するために、国家戦略特区諮問会議決定とし、総理からの指示に見えるようにするのがよいとの趣旨であることが明らかです。弊社が、入手した文書について「『総理の意向』でないことが分かってしまう部分を全て隠蔽」した事実はありません。また、世論の誤導を狙って報道したこともありません。
本書の上記の記載は、事実に反し、弊社の名誉・信用を著しく毀損するものです。
なお、獣医学部新設の時期に関しては、文科省が公表した「獣医学部新設に係る内閣府からの伝達事項」と題する文書で「平成30年4月開学を大前提に、逆算して最短のスケジュールを作成し、共有いただきたい。成田市ほど時間はかけられない。これは官邸の最高レベルが言っていること」との記載もあります。【回答】事実に反しません。貴紙において、文科省文書は、「総理のご意向」及び「官邸の最高レベルが言っている」の部分を極度にクローズアップし、それ以外の殆どを報じていないことは記事量比較をすれば容易に証明できることです。5月17~19日記事の些末な扱いで正当性を主張できるものでは全くありません。
何よりも深刻なのは、貴紙が、自分がスクープした文書八枚全部公表を全くしておらず、全部公表とそこから浮かび上がる時系列をベースにした報道を一貫して構成してこなかった事実です。スクープした文書の大半を隠蔽するようではスクープした意味がないではありませんか。
【訴状要約】(省略)・・・キ
【補足】この画像は下図のようなもの。この日を含め、朝日はこの文書の全体は一度も掲載していないという。「新学部『総理の意向』」とこの不自然な加工をした画像との合わせ技は意図的と言われてもしかたがないのでは。
9.「ある人物が朝日新聞とNHKの人間と一堂に会し、相談の結果、NHKが文書Aを夜のニュースで、朝日新聞が翌朝文書群Bを報道することを共謀したとみる他ないのではあるまいか」(154頁)との記載。
弊社の記者や幹部が、加計学園の問題について「ある人物」や「NHKの人間」と一堂に会したことはありませんし、報道について共謀したこともありません。上記の記載は、事実に反し、弊社の名誉・信用を著しく毀損するものです。【回答】これは、私の推定部分であり、そう明記しています。
読者一般に説得的な推理を展開する言論の自由は当然保障されねばなりません。
【訴状要約】「ある人物」や「NHKの人間」と一堂に会したことはなく、共謀したこともないので虚偽である。・・・ク
【補足】小川氏の回答の通り。
10.「朝日が裏取りもせずにスクープを決断」(156頁)との記載。
弊社は複数の取材源に確認したうえで当該記事を掲載しています。上記の記載は、事実に反し、弊社の名誉・信用を著しく毀損するものです。【回答】切り取り方が異常・不正です。
一五六頁の拙著該当箇所は、貴紙紙面の熟読を通じた推論箇所です。その文脈から全く切り離して十七文字を抜き出せば、私が全体で表現している合理的推論は掻き消え、貴社が抜き出した箇所を私が「事実」として記述していることになります。これは文意の完全な捏造です。
貴紙記者はこんな無茶な引用を常習としているのでしょうか。新聞社として恥を知りなさい。
【訴状要約】(この件については訴状に記載なし。)
11.「実は、朝日新聞は、加計学園問題を三月十四日の第一報からこの日まで二ケ月もの間、小さな記事三点でしか報じていない」(158頁)との記載。
弊紙はこの間に少なくとも10本の記事を全国版(東京本社発行)に掲載しています。上記の記載は、事実に反し、弊社の名誉・信用を著しく毀損するものです。
10本の記事は以下の通りです。
●2017年3月23日付 朝刊3面「『国家戦略特区』選定 野党が批判」
●同月28日付 朝刊4面 「『二つの学園』論戦の的」
●同年4月1日付 朝刊4面 「加計学園の獣医学部設置 地理的条件、昨年11月浮上」
●同月6日付 朝刊4面 「『特区』調査へPT」
●同月8日付 朝刊4面 「昭恵氏言動にやまぬ追及」
●同月11日付 朝刊社会面 「特区の獣医学部など諮問」
●同月15日付 朝刊4面 「加計学園問題 論点は」
●同日付 夕刊1面 素粒子
●同月19日付 朝刊4面 「特区に加計学園 首相の影響否定」
●同月29日付 朝刊4面 「元加計学園監事の最高裁判事任命は『異例』 慣例通り日弁連が推薦」【回答】私は、貴社の該当記事を、いくつかのキーワードから多面的にネット検索で収集し、紙媒体と照応する方法を取りましたが、指摘のあった記事の多くがヒットしておらず、記載した記事本数が不足していました。ご指摘の記事を検討しましたが、該当しない記事や素粒子まで含まれております。次回増刷分より「小さな記事三点」を「わずか十点にも満たぬ記事」と訂正します。
【訴状要約】少なくとも10本の記事があり、その半数以上は小さな記事ではない。(10本の記事を列挙)・・・ケ
【補足】見落としか?
12.「以下は、私の推理である。加計問題をスキャンダル化できる特ダネを探していた朝日新聞、NHK幹部らは三月以来、密議を繰り返してきた。その中で、文科事務次官を天下り斡旋で事実上更迭された直後だった前川喜平との接触が始まる」(159頁)及び「加計スキャンダルは朝日新聞とNHKとの幹部職員が絡む組織的な情報操作である可能性が高い」(160頁)との記載。
弊社が加計学園の問題についてNHKの幹部と密議をしたことはありません。上記の記載は、事実に反し、弊社の名誉・信用を著しく毀損するものです。【回答】これも(九)と同断であり、推測であることを明記した場所ですので、事実を争点とする主張は失当です。
13.「現時点では取材拒否が多く」(160頁)との記載。
弊社の取材窓口にはもちろん、弊社の取材班にも、貴殿からの取材申し入れはこれまで一度もありません。上記の記載は、事実に反し、弊社の名誉・信用を著しく毀損するものです。
なお、弊社は加計学園問題について、直接取材いただいた複数のメディアに対し、弊社としての見解や事実関係をお答えしております。【回答】該当箇所は、貴社取材窓口、または取材班への取材が拒否されたと書いていません。
【訴状要約】12,13に関し、NHKの幹部と密議をしたことはなく、小川から取材申し込みを受けたことも取材を拒否したこともない。・・・コ
【補足】この箇所は、前川前事務次官が一連のメモをマスコミに持ち込んだ張本人と仮定しての推理の部分。
14.「加計学園問題は更にひどい。全編仕掛けと捏造で意図的に作り出された虚報である。(中略)今回は朝日新聞が明確に司令塔の役割を演じ、全てを手の内に入れながら、確信をもって誤報、虚報の山を築き続けてゆく。何よりも驚くべきは、前川喜平たった一人の証言で二カ月半、加計問題を炎上させ続けたことだ」(164頁)との記載。
上記の記載は、事実に反し、弊社の名誉・信用を著しく毀損するものです。
「全編仕掛けと捏造で意図的に作り出された虚報」「確信を持って誤報、虚報の山」「前川喜平たった一人の証言で」とは何を指すのか及びその根拠をお示しください。また、「朝日新聞とそれに追随するマスコミは、大騒ぎを演じた二カ月半、これらの当事者に殆ど取材せず、報道もしていない。前川一人の証言だけで加計問題を報じ続けた」(165頁)との記載。
弊社は文部科学省関係者や当事者、関係者に幅広く取材をし、報道しております。上記の記載は、事実に反し、弊社の名誉・信用を著しく毀損するものです。
【回答】根拠は、拙著四章・五章全体です。よく読んで正しくご理解ください。
また、”弊社は文部科学省関係者や当事者、関係者に幅広く取材をし、報道しております”とありますが、この問題に関し、貴社は、安倍総理、加戸守行氏、義家弘介氏、萩生田光一氏、文科省担当課担当責任者ら、特区ワーキンググループの委員諸氏に取材し、その主張を充分に報じていますか。
もしそうした取材と事理を明らかにするに足る充分な報道があれば、具体的にお示しください。
【訴状要約】「仕掛けと捏造で意図的に作り出された虚報」ではない。「大騒ぎを演じた二カ月半」とは2017年月17日の第1報から7月末頃を指すと考えられるが、幅広い関係者(列記)に取材し記事にしている(記事列記)。・・・サ
【補足】朝日の言う“幅広い関係者に取材した記事”がいかようなものかは不明なため、判断不能。
15.「『官房副長官が指示』メール」ともあったが、それは加計学園の獣医学部新設を決定する過程に副長官萩生田の指示があったと見える文書が新たに見つかったことを指す。萩生田は、この文書内容をただちに全面否定したが、朝日新聞は逆に、萩生田と文科省が文書の内容を巡って対立しているとして、萩生田の言い分を全く度外視した紙面を作り続けた。この文書内容は後に文科省自身も誤りを認め萩生田に謝罪している。もはや、朝日は偽文書を元に政治家を叩くことにさえ躊躇がないのである」(217頁)との記載。
弊社は萩生田氏の言い分を度外視しておらず、本年6月16日から17日にかけての朝夕刊で3回にわたり見出しを付して萩生田氏の言い分を報じています。また、萩生田氏を叩く意図は弊社にはありません。上記の記載は、事実に反し、弊社の名誉・信用を著しく毀損するものです。
3本の記事は以下の通りです。
●2017年6月16日付 朝刊1面 「『官房副長官が指示』メール」
●同日付 夕刊1面 「『ご意向発言 認識ない』」
●同月17日付 朝刊1面 「内閣府説明、文科省と対立」【回答】萩生田氏に関する貴紙報道について、拙著では分量の関係で7行に纏め、詳述しておりませんが、実は大変深刻な「虚報」「捏造」が行われているので、この機会に改めて正確に指摘しておきます。6月15日文科省発表文書中に「指示は藤原審議官曰く官邸の萩生田副長官からあったようです」と二重の伝聞が書かれていたのみなのに、貴紙は一面トップで「「官房副長官が指示」メール」の大見出しを打ち、二面全面で「官邸関与 深まる疑念」と大きな記事にしています。これを見る読者は、誰も数文字の二重の伝聞だけが根拠とは思いません。私見ではこれは見出しによる「捏造」です。また、6月20日文科省公表文書の中身を、21日付貴紙は「萩生田氏発言」と題して「「総理は18年開学」と期限」と大見出しを打っています。ところが、記事の終わりの方には松野文科相が「「内容に不正確な点があった」として萩生田氏に「大変迷惑を掛けた」と陳謝した」事実を報じています。発表当事者である文科大臣が不正確で陳謝した文書内容を大見出しに打つのは、これも又「捏造」ではありませんか。お答えください。
【訴状要約】萩生田氏の発言は少なくとも3回報じている。また、本件書籍で「この文書内容は後に文科省自身も誤りを認め萩生田氏に謝罪している」としているが、文科省が謝罪したのは2016年11月1日付メールではなく、NHKの『クローズアップ現代+』(2017年6月19日放送)で報じた「10/21 萩生田副長官ご発言概要」と題する文書である。・・・シ
【補足】文科省職員が勝手に作成して謝罪したという文書は下図-右(「10/21 萩生田副長官ご発言概要」)であることは間違いない。(→ブログ記事『NHKクローズアップ現代+で新文書として紹介されたのはまた課長補佐の創作物だった』)
16.「時系列で読み解くと、朝日がなぜこの文書をひた隠してきたかがよくわかるはずだ」(256頁)及び「こうして八枚いずれの文書も、徹底的にサボタージュしてきた関係省庁を、藤原、義家、松野、萩生田らがそれぞれの立場から解きほぐし、圧力団体や麻生副総理の意向に配慮しながら、行政手続きと規制突破を両立させるべく腐心している様を伝えている。朝日新聞をはじめマスコミが『総理の意向』以外の部分を徹底的に隠したのはその為だったのだ」(267~268頁)との記載。
弊社は、本年5月17日、18日、19日の紙面において上記の8枚の文書の内容を紹介しており、その中で、藤原、義家、松野、萩生田各氏の行動や発言について触れています。「総理の意向」以外の内容についても報じていることは前記⑧の通りです。上記の記載は、事実に反し、弊社の名誉・信用を著しく毀損するものです。
【回答】(八)同様なので、回答を省きます。
【訴状要約】2017年5月19日付で、藤原、義家、萩生田各氏の行動や発言に触れた記事を報じている。その中で、『総理の意向』以外の内容についても触れており、それ以外の部分を徹底的に隠した事実はない。・・・ス
【補足】小川氏の言う「(八)同様」とは「総理のご意向」文書の件。
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